IMMORTAL MAN(不老不死の男の独白) |
人々が言う、私は「イモータルマン」だと。
ある国の言葉で不老不死の男。
ああ何百回目かの冬が来る。
これで最後だと言い続けて、疲れて自分の心臓にナイフを突き立てた。
無駄なことだと気付き、旅をすることにしている。
世界は回り、戦争がおこり、国はいくつも別れて合併を繰り返す。
「イモータルマン」になる条件は意外に簡単だった。
今はもう存在しないけれど、昔は存在していた、人魚。
その心臓を食べるだけ。
戯れに食べた心臓は生臭い、としか覚えていない。
いつだったかな、「イモータルマン」になったのは。
記憶の彼方、思いだそうとしても無理というもの。
生まれたのもいつだったかな。
そういえば、ある青年がいた。人魚の心臓を探して人魚に食われた。
青年よ、死の無い生活は案外疲れるぞ。
木枯らしが吹く、人々の衣装も変わり、賑わうのは城下町。
このローブも、さすがに三十年使ってはぼろぼろだ。
当時新品の毛織物も三十年でぼろ布に変わった。
そろそろ、新しいローブと手袋がほしい。
この国に来たのは百回、周っていない国などないが、ここが一番豊かで盛んに商店が出ている。
気に入った、これを買おう。
ああ何百回目かの冬が来る。
世界が変わって人が何千何万何億死んでも私は変わらない。
病に侵された国王に呼ばれた。
お前は「イモータルマン」かと。
「条件は何か」と震える手で聞いてくる。
死を恐れる哀れな老人を私はみつめた。
「人魚の心臓を食べるべし」と告げれば、たちまち老人は激怒。
「童話の話をしろとはいっておらん!」
城を追い出された。
童話の時代から生きているのか。
「イモータルマン」も中々疲れる。
ああ何百回目かの冬が来る。
新調したローブもいつかやぶれるけれど、手袋は今は暖かい。
ああ何百回目かの冬が来る。
説明 | ||
うちのサイトにあるIMMORTALの番外的作品。 テキスポ800字バトルに投稿しましたー。 IMMORTALで青年が手に入れられんかったものを、たわむれに食べたら不老不死になってしまった男。 お題・手袋、これで最後、商店街 入れなくてもOKだったんですけどね! |
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