空の帰り道 |
聖白蓮の開放に使われることの無かった、余りものの飛倉。
飛倉は、夕暮れの空を悠々と漂うその船を見つめていた。
その船からは不思議と、とても楽しそうな雰囲気を感じた。
船は所々傷つき、甲板で舵を操る船長はボロボロ。
その隣にいる、復活して間もないはずの白蓮でさえ傷ついている。
だが、それら全てが笑顔だった。負の感情など見当たらない。
生々しい傷は見ているだけで痛みを感じるというのに、それでも何故、あの人らは笑顔でいられるんだろうか。何故、楽しそうに肩を組み合えるんだろうか。
――
「いやあ、白蓮が戻ってきてくれて本当によかった」
「貴女方こそ、こんな長い間私を慕っていてくれてありがとうございました……」
「何を言いますか。
貴女の存在がなければ、私たちがこうして団結することなど不可能に等しい」
「それに白蓮は、目的を達成した私たちの繋がりを更に強めてくれた」
「雲山も、白蓮には感謝していると言っています」
「……みんな……」
「さぁーて、今晩は宴だね! 面舵一杯、しっかり掴まってな!」
――
余りものの飛倉は今も、遠くの山の向こうに沈む夕日とともに、傷ついた船を眺めていた。
時々船の甲板から聞こえてくる笑い声は、夕暮れの空に色濃く残り、そして溶けていく。
飛倉には、その笑顔の理由が分からない。その肩を組み合っている理由が分からない。
飛倉は、何か楽しいことでもあったんだろう、と思うくらいしかできなかった。あんな傷すら忘れてしまうような、楽しい何かが。
どう足掻いても、飛倉には理解し得なかった。
白蓮たちにとっては、考えるまでも無い、当たり前のことだった。
人であるからこそ感じる悲しみ、
人であるからこそ感じる喜び。
飛倉は、感じ得なかった喜びを目の当たりにして、
少し残念に思いながら、飛倉自身もまた、夕暮れの空を漂っていった。
以下、あとがき
* * *
どうも、((珠屋|たまや))です。
あ、名前に振ってるルビはテスト兼分かりやすさのためです。初投稿です。
これは小説じゃなくてSSですねー……ショートストーリーとサイドストーリー、2つの意味で。
作品について。
俺自身一介のノーマルシューターなので、Exクリアする程度が精一杯です。
なので、そりゃあ途中でUFO見逃してたりするわけです。
あいつらひじりん解放し終わった後は何してんのかなー、と思って書いてたら出来上がった作品。
勿論、飛倉には感情はないでしょうから、彼女らが何を考えているかなど分かるはずもないでしょう。
……というか、飛倉が物を考えられるのかって話もありますけど。
まぁそれはさておき、人の身――もしくは妖怪の身にしか分からないことってのもあるんです。
そんなことを飛倉視点で書いた作品です。
説明読んだ後で読み返してみると、また何か違うかもしれませんね。俺の力不足。
※台詞の部分は、誰が何言ってるか想像して当てはめてみてください。
説明 | ||
久し振りに聖蓮船やったら投稿したくなりました。 作品タイトルについては、 東方聖蓮船スタッフロールテーマ「空の帰り道 〜 Sky Dream」より。 |
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