LyricalGENERATION 1st 第一話 |
第一話「巡り会う運命」
昔々ある世界に、“コーディネイター”と呼ばれる遺伝子を調整した人間と、“ナチュラル”と呼ばれる普通の人間が一緒に暮らす世界がありました。
その二つの種族は時に相手を罵り、時に相手を見下し、時には殺し合いをしてしまうほど仲が悪かったのです。
初めてコーディネイターになった人は悲しみました。「僕達は殺し合いをするために生まれてきたわけじゃないのに、みんなが仲良くするための手助けをする為に生まれてきたのに」と……。
その時、彼の願いが届いたのか……その世界に“女神”が現れました。 女神はその世界を皆が泣かなくてもいい幸せな世界にするため、コーディネイターとナチュラルが仲良くなるきっかけを作ろうと考えました、その方法とは……。
CE66年、オーブと呼ばれる国のとある町、そこに一人の9歳程の少年がカバンを背負って一人で下校していた。
「はあ、やっと終わった……でも明日も学校行かなきゃいけないんだよなぁ、嫌だなぁ……」
少年は憂鬱そうに溜息をつきながら速足で家に向かっていた、その時……彼は道端に赤く光るものがあることに気付いた。
「あれ?なんだろうアレ……?」
少年は光るものがあったほうに近づく、そしてそこで赤く光る宝石のようなものを発見した。
「宝石……? きれいだなー」
少年はふと、まだ二歳ぐらいの幼い妹の顔を思い浮かべる。
「そうだ! これはマユにプレゼントしてあげよう、きっと喜ぶぞー」
そう言って少年は宝石をズボンのポケットに入れようとした、その時……。
パアアアア……!
「うわ!?」
突如宝石が強い光を発し、少年は思わず目をギュッと閉じる、そしてしばらくして目を開くと宝石は少年の手から消え去ってしまっていた。
「な、なんだったんだ一体……?」
少年は不可思議に思いながらその場で首を傾げた。
そんな彼の様子を、影から見張っている二つの影があった。
「フェイト大変だよ!ジュエルシードがあの子に……!」
「わかっている、しょうがないね……」
数分後、少年は先ほどの出来事に不思議がりながら通学路を歩いて下校していた。
「あーあ、あの石綺麗だったのになー……絶対マユにあげたら喜んでいたのに……」
そう言って少年は道端に転がっていた石ころをつま先で蹴飛ばす、その時……。
「あれ? なんか変だな……?」
少年は違和感に気付いた、辺りは静止画のように音もなく、動きもなく静止し、彼の周りにいた通行人やハトなどが姿を消したのだ。
「ど、どうなっているのコレ……!?」
あまりの異常事態に少年は後ずさる、その時……近くに植えられていた木の陰から、金髪をツインテールにまとめ上げた赤目の少女が現れ、少年の前に立った。
「き、君……誰?」
この異常事態に普通に動いている少女に驚きながらも、少年は彼女に話しかける、すると彼女はゆっくりと口を開いた。
「ごめんなさい」
「う!?」
突然、少年の体に電流が流れ、彼は自分の身に何が起こったかわからないまま昏倒してしまった。
「フェイトやったね! 早く封印を!」
すると少女の後ろから、オレンジ色の長髪の隙間から犬耳のようなものを生やした、見た目が16歳程の少女が現れる。たいして少女はこくんと頷くと、倒れている少年に向かって機械でできた鉄の杖のようなものを翳した。
「そうだね、ジュエルシードシリアルナンバー……あれ?」
だが少女は違和感に気付き、詠唱を途中でやめる。
「ん? どうしたんだいフェイト?」
「ジュエルシードが出てこない?なんで……」
「えええ!? じゃあどうするんだよ! このままにしていたら暴走するかもしれないのに……」
「……」
少女は倒れている少年を前にしてどうしたものかと深く考え込む、そして……ある結論に達した。
「んんん……? ここは……?」
それからどれだけの時間が経ったのだろうか、少年はとある部屋のベッドの上で目を覚ました。
「目が……覚めましたか?」
「!?」
そしてベッドの傍らには、先ほど少年に電撃を喰らわせて気絶させた金髪の少女がイスに座っていた。
「き、君は……!」
「ごめんなさい……痛かったですか? あの時はああするしかなくて……」
「え? ああ、うん……」
素直に謝られて困惑する少年、そして彼は少女の姿を見て首をかしげる。
(……? なんでこの子こんなところで水着着ているんだ?)
少女は体のラインがぴっちり見える黒いスクール水着のような服に、足にはニーソックスにゴツゴツしたブーツ、そして腰にはベルトに何故か股の部分は隠せていないスカートという、なんというかとてもマニアックな格好をしていた。
(なんでこの子水着着ているんだろう? いつでも入れるようにしているのかな?)
「あの……どうかしましたか?」
少女はまじまじと自分の体を見てくる少年に困惑する。
「いや、君の格好って変わっているよね」
「ああ、確かにバリアジャケットってあなたから見たら珍しいかもしれませんね」
「ばりあじゃけっと?」
少女の口から意味不明な単語が飛び出し少年は首をかしげる、そして少年はさらにあることに気付いた。
(よく見たらこの子……可愛いな……)
その時、二人がいる部屋に黒いドレスを身に纏った黒髪の女性が入って来た。
「フェイト……その子、目を覚ましたのね。」
「あ……はい」
「だ、誰ですか貴女……?」
「私はプレシア、この時の庭園の主よ、君の名前は?」
「ぼ、僕は……」
少年はその女性から発せられる何とも威圧的な空気に恐怖を感じながらも、自分を必死に奮い立たせて自信の名前を名乗った。
「僕はシン……シン・アスカです」
その後少年……シン・アスカはプレシアと名乗る女性からすべての事情を聴いていた。
「僕の中にあの宝石が?」
「私達は“ジュエルシード”と呼んでいるわ、そのジュエルシードは全部で21個あるんだけど、そのうちの一個が君の世界に落ちて偶然君の体の中に入り込んでしまったのよ」
シンは信じられないといった様子で自分の胸元を見る、そしてプレシアは話を続けた。
「ジュエルシードは持ち主の願いを叶えるという特性を持っているの、でもそれが暴走してしまえば周辺にかなりの被害が出てしまう……一刻も争う時だったからフェイトが君をここに連れて来たのよ」
「そうだったんですか、それでそのジュエルシードを取りだす方法ってないんですか?」
シンの質問に、プレシアは首を横に振った。
「ごめんなさい……どういうわけかジュエルシードが何らかの理由であなたの中に張り付いてしまっているの、無理に引き剥がそうとすれば命に関わるかもしれないし」
「そんな……」
プレシアの言葉に落胆するシン、そしてさらに彼女の口から重要な事実が突き付けられる。
「いつジュエルシードが暴走するかわからないし、このままだとあなたの家族も危険な目に遭うかもしれないわ、だから今はあなたを家に帰すことはできないの……」
「……! そんな……!」
もしかしたら二度と家族に会えない、そんな悪い未来予想図を思い浮かべてしまったシンは目から涙を流した。
「……私もできる限り手を尽くすわ、だからしばらくの間ここにいなさい」
そう言い残し、プレシアは金髪の少女を連れて部屋を出て行った。
そしてシンのいる部屋から大分離れた位置でプレシアは、金髪の少女に対し……。
パシン!
「うっ……!」
強烈な平手打ちをお見舞いした。
「まったく……何をしているの!? あなたがもっと早く行動していればあんな面倒なことにはならなかったのよ!」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい……!」
少女はひどく怯えた様子で何度も何度もプレシアに謝った。
「フェイト……母さん悲しいわ! なんであなたはそういつもいつも……! またおしおきされたいようね!」
「ひっ……!?」
プレシアは殺意に近い感情で鞭を取り出し、壁に向かってそれを打ち付けた、その時……。
「その辺にしておきなさい、プレシア」
突如プレシアの背後から栗色の髪をした女性が現れ、少女を暴行しようとする彼女を制止した。
「ヴィア……これはあなたには関係のないことでしょう! 邪魔をしないで!」
「そういうわけにもいかないわ、フェイトちゃんをいじめたってジュエルシードが集まるわけでもないでしょう、少し落ち着きなさい」
「……」
プレシアは栗色の髪の女性……ヴィアにいさめられ鞭をしまった。
「フェイト……グズグズしていないで早く行きなさい、母さんを失望させたいの?」
「はい……ごめんなさい……」
そう言って少女は平手打ちされ腫れあがった頬を抑えながらその場を去ろうとした、その時、
「あ、ちゃんと叩かれた痕は氷水で冷やすのよー」
ヴィアにアドバイスされ、少女はコクンと頷いて改めて去って行った。
そしてその場に残った二人は、シンについてどうするかその場で話し合っていた。
「で? あのシンって子はどうするの? おうちに帰したほうがいいと思うけど?」
「そういうわけにはいかないわ、ジュエルシードを取り出すまで手放すわけには……管理局に横取りされたらたまらないし、最近は邪魔も入っているみたいだし……」
「あの白い子のことか……でもそれじゃシン君が可哀相じゃないの?」
「知らないわそんな事……あなたはただ自分の研究を進めていればいいのよ」
プレシアはそう吐き捨てると自分の研究室に戻って行った。
「まったく……さて、一応あの子と話をしてみるか」
一方ヴィアは意を決してシンのいる部屋に向かって行った。
その頃シンは毛布に潜り、家族の名前を口にしながらぐすぐすと泣いていた。
「お父さん……お母さん……マユ……」
「あらら、ホームシック?」
するとシンのいる部屋にヴィアが入室し、彼は慌てて涙を拭うとベッド上で正座した。
「あ、あの……どちら様ですか?」
「まあそう固くならないで、私はヴィア、プレシアの友達の研究員よ、君がシン・アスカ君ね」
「は、はい」
先ほどのプレシアとは違い柔らかい雰囲気のヴィアにシンは気を緩めた。
「それにしても災難だったわね、ジュエルシードが体の中に入っちゃった上に、こんなところまで連れてこられて……ああでもフェイトちゃんのことは責めないであげて、あの子は母親の為に必死になっていたから」
「フェイト? あの水着の子の事?」
「水着……まあバリアジャケットのことを知らないんだったらそう勘違いしてもしょうがないわね、さあて……まずどこから話したらいいのかしら……」
そしてヴィアはシンに対して自分たちが今いる世界について説明を始めた。
この時の方舟はいくつも次元世界の狭間にあるということ。先ほどのプレシアとフェイトはシンにとって異世界人だということ、魔法という技術が存在していること……シンにとってはあまりにも現実味のない現実を突き付けられていた。
「……まるでマンガやアニメの世界みたいですね」
「プレシア達にとって君の世界も十分マンガよ、ちなみに私もあなたと同じ世界の出身なの、よろしくね」
「はい……」
そして説明が一通り終わった後、ヴィアは今後の行動についてシンにある提案をする。
「ねえシン君、あなたの体からジュエルシードを引き剥がす方法だけど……私にひとつ考えがあるの、ついてきてくれる?」
「わかりました……」
シンはヴィアに言われるがまま、時の庭園内にある彼女の研究室にやってきた。
「な、何ですかコレ……!? 妖精!?」
そこで彼は50センチ程の大きさの試験管の中に入れられている、30センチ程の大きさの赤い髪に、触覚のような二本の黄色い髪の束をぴょこんと立たせた少女の妖精をヴィアに見せられた。
「これは私が作ったデバイス、“Gデバイス”って言う魔法を使う為の杖みたいなものなんだけどね、君にこの子を使って魔法を使ってほしいのよ。」
「僕が魔法?」
ヴィアが言うには何らかの原因でジュエルシードを取り込んだ影響で、シンの中に魔力の根源であるリンカーコアというものが形成されているらしい。
「君の中にあるリンカーコアの魔力の流れを見ればジュエルシードを取り出す方法が解るかもしれないわ、そこでね……君にフェイトちゃんの手伝いをしてほしいの。」 「あの子の? どういう事ですか……?」
「フェイトちゃんはね……今プレシアの言いつけで残り20個のジュエルシードを集めているの、でも成果は思わしくなくてね、このままじゃあの子……潰れちゃうわ、だから傍で支える人が必要なのよ」
「えっと……もしかして魔法を使ってですか?」
「そう、ジュエルシードを引き剥がす手段を見付けて君をお家に帰すことができるし、万が一暴走してもフェイトちゃんが傍にいるし、私達はジュエルシードを集める手伝いをして貰える……どう? 悪い話じゃないでしょう? 大丈夫、魔法の使い方は私がちゃんと教えてあげるから、この子もサポートしてくれるし……」
そう言ってヴィアはGデバイスの入った試験管をシンに渡した。
「僕が……」
その時、試験管の中に入っていた培養液が抜きだされ、中にいた少女の姿をしたGデバイスが目を開いた。
「お、起きた!?」
「目を覚ましたようね……“デスティニー”」
ヴィアはそう言って試験管の蓋を取り外し、Gデバイスを外に出してあげる。そしてシンは試験管から出てきたGデバイスをジッと見つめた。
「……アナタのお名前は?」
対してGデバイスは見つめてくるシンに対して名前を尋ねる。
「喋った!? ぼ、僕はシン・アスカ……」
「シン……アスカ……!」
Gデバイスはシンの名前を聞いた途端、驚いた様子で吊り上った目の瞳孔を開かせた。
「私は……デスティニーとお呼びください、我が主シン・アスカ」
「主……? うん、よろしくねデスティニー」
シンは戸惑いながらも、デスティニーと名乗ったGユニゾンデバイスの小さな手を握り握手する、そしてその光景をヴィアは暖かく見守っていた。
「まあ一晩その子と一緒に考えるといいわ、私としては君を危険な目に遭わせたくないけど……最善の方法がこれしか思いつかないのよね」
それから数分後、シンはデスティニーと共に部屋に戻り、今後のことを話し合っていた。
「なんか……今日は色々なことがあったなぁ」
「それで? 主は今後どうするのです?」
デスティニーはテーブルの上で8等分されたリンゴを食べながらシンに質問する。
「帰る方法がそれしかないっていうなら……やるしかないよね、でも僕に魔法なんて使えるのかな?」
「それは大丈夫です、私とヴィアが手取り足取り教えますので、一週間である程度戦えるようになると思います」
「そっか、ありがとう……」
そう言ってシンはベッドにコロンと寝転がり、重みを感じた瞼をそのまま閉じた。
(そうだ……あのフェイトって子と一緒に戦うことになるんだよな……あの子と仲良くなれるのかな……?)
シンが寝静まったのを確認したデスティニーは、そのまま彼の枕元に立ち、とても小さな声で彼に語りかけた。
「大丈夫です……今度こそ、今度こそあなたを幸せにしてみせます」
シンとフェイトは同い年設定、以降彼らの年齢に合わせて原作に大体沿った物語が展開していきます。
デスティニーはリインフォースツヴァイとVividに出てきたセリスを組み合わせたようなデバイスをイメージしました。某所では大体受け入れられたけどここではどうなんだろう……。
説明 | ||
第一話です。 なのは第一期、種運命本編の7年前の話になります。 |
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FDPさん:周りの種なのクロスを描いている人と差別化を図ったらこうなりました。(okura) これはまた・・・・予想外な展開に・・・・(FDP) |
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