いつかのメリークリスマス |
『ゆうっくり〜と12月の灯かりが灯りはじめ〜♪〜♪』
冬になると毎年流れる、定番のクリスマスソングがあちこちで聞こえてくる。
「クリスマスか。そうかもうそんな季節なのか・・・」
俺は立ち止まり、少し前のクリスマスのことを思い出していた。
「そっか、もうあれから五年か」
12月に入り、クリスマスのイルミネーションが飾られ始め、街は慌しくなってきた。
みんな、それぞれ思い思いにクリスマスの準備を始める。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。やべぇ…間に合うかな?」
「頼むから、間に合ってくれよ、俺!」
俺は閉店まぎわの家具屋に急いでいた。
「はぁ…はぁ。あ、あった。やった…間に合った」
全力疾走した甲斐があり、何とか閉店まぎわに間に合った。
「はぁ…はぁ。す、すいません…、こ、この椅子ください」
俺は、閉店間際になんとか、俺の彼女、白河ことりの欲しがっていた椅子を買うことができた。
俺とことりは、風見学園を卒業した後、同じ大学に入学した。
本島へ行き、今は2人で一緒に暮らしている。
「ふ〜、間に合あってよかった。ことり喜んでくれるかな?」
帰りの電車の中、さっき買ったプレゼントの椅子を大切に抱え、
ことりの喜ぶ顔を想像すると、嬉しくて俺は幸せだった。
クリスマスの一週間前、俺とことりはデートをしていた。
「わあ〜、この椅子可愛い。ねえ純一くん、この椅子可愛いよね」
「どれ?」
「ほら、この椅子」
「そうか?俺にはよくわからないけど」
「そうなの。私にはわかるの」
「ふ〜ん。そんなもんか?」
「そんなもんなの。行こう、純一くん」
「あれ?いいのかことり?」
「いいの。早く行こう純一くん。デートの時間なくなっちゃう」
そう言って、ことりは俺の手を引っ張っていくのだった。
「ま、待てよことり。引っ張るなって」
「ほら、はやく。純一くん」
「い〜つまでも 手をつないで〜〜♪」
俺は少し前に流行ったクリスマスソングを歌いながら線路沿いを歩いていた。
「ただいま。あれ? ことり?」
玄関のドアをあけると、ことりはいそがしそうに夕食を作っていた。
「あ、おかえりなさい、純一くん」
ことりは笑顔で俺を迎えてくれた。
「ことり」
「何? 純一くん?」
「これ、ことりへのクリスマスプレゼント」
俺はさっき買ってきた、ことりへのプレゼントを誇らしげに見せた。
「わあ〜〜〜。ありがとう、純一くん」
ことりはすごく嬉しかったらしく心から喜んでいた。
「ことりあのとき、これ欲しかったろ」
「うれしいよ純一くん。けど、よく覚えてたね」
「いや、何てことないよ」
「わ〜〜い♪」
ことりは、俺があげたプレゼントを嬉しそうに抱きしめ、満面の笑顔でいる。
(やべ、かわいい。)
そう思った俺は。
ぎゅう。
「え、純一くん!?」
俺はことりを抱きしめていた。
「どうしちゃったの? 純一くん?」
「喜んでることりが可愛かったから」
「もう。純一くんったら」
それから2人で、ことりの作った料理を食べた。
今部屋には、ロウソクの火だけが灯っている。
俺とことりは、その火を2人で見つめていた。
「ことり」
「なに? 純一くん」
「これからもずっと2人で一緒にいような」
「うん。もちろんだよ、純一くん」
ことりはそういい、俺に体をあずけてきた。
「え!? 純一くん?」
「ん? どうした、ことり」
「純一くん泣いてる」
「え?」
そのとき俺は、頬を伝わる熱いものに気がついた。
「あれ? 何で俺…」
ぎゅう。
「ことり?」
ことりが俺を優しく抱きしめていた。
「心配しなくても大丈夫だよ。私はずっと一緒にいるよ純一くん。」
「ことり…。そうだな」
俺もことりを優しく抱いた。
この今感じている、ことりの温もりが何より嬉しかった。
(そうだこの温もりは、ことりは、絶対に離さない。離しちゃいけないんだ。)
俺はこのとき初めて、人を愛するということに気がついた。
「ん?」
立ち止まっていた俺の横を俺より少し若い男が走っていった。
嬉しそうな顔をし、手にはプレゼントが抱きしめられていた。
「少し前の俺も、あんな風だったのかな」
「さて、随分立ち止まってたな。そろそろ行くか」
あの時付き合っていた彼女、白河ことりもういない。
なぜならば彼女はもう………
カチッ、ガチャ
「ただいま」
彼女、白河ことりはもういない……
だって彼女は……
「お帰りなさいあなた」
「ただいま、ことり」
ことりは今はもう、白河ことりではなく朝倉ことりだからだ。
〜Fin〜
説明 | ||
D.C.より、白河ことりの二次創作です。 昔、某所に投稿したものです。 初投稿なのでなので、やり方が分からなく、見にくかったらすいません。 |
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ことり ダ・カーポ D.C. | ||
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