LyricalGENERATION 1st 第三話 |
第三話「閉ざした過去」
なのは達との戦闘があった次の日のこと、シンはヴィアからもらった通信機である報告を受けていた。
「一度時の庭園に来てほしい?」
『うん、昨日の戦闘の事は聞いたわ、報告のついでに検査したいからデスティニーと一緒に来てくれる? ああそれと……フェイトちゃんは連れてきちゃダメよ』
「え? どうして?」
親元から離れて暮らしているフェイトにとってこのような機会はまたとない機会のハズ……それ故にシンはヴィアの言動が理解できなかった。
「フェイトだってプレシアさんと会いたがっているのに……どうしてそんなことを?」
『ごめんなさい、ここじゃ詳しくは話せないわ、とりあえず一度来てもらえる? そこで理由を説明するから』
「はあ」
シンはヴィアの言動を不可解に思いながらも、一旦通信を切った。
「というわけで今日の報告は俺とデスティニーだけで来てって言われたんだけど……どうする?」
数分後、シンは広間でフェイトとおとなフォームのアルフに先ほどのヴィアとのやり取りを話した。
「ヴィアさんが……」
「ま、まああの人が言うんだったらしょうがないよね! せっかくだし私らは公園で散歩でもしているよ!」
明らかに落胆しているフェイトとは対照的に、アルフは何故か心底安心した様子でフェイトに抱つき、子犬のようにフェイトに遊んでくれるようせがんだ。
「わかった、それじゃシン……母さんへの報告よろしく」
「わかったよフェイト」
そしてそんな二人のやり取りを、デスティニーはシンのリュックサックの中から温かい目で見守っていた。
(最初はどうなる事かと思いましたけど……少しずつ仲良くなっていますね、それに……)
ふと、フェイトはあることを思い出しシンに質問する。 「そういえばシン、さっき自分のこと“俺”って……」
昨日までシンは自分の事を“僕”と呼んでいたが、今日は“俺”と呼んでいた。
「ああ気付いた?“僕”のままじゃなんかなよなよした感じだし、思い切って自分の呼び方を変えたんだ!」
「ふーん……」
[一人称を変えたぐらいでそれ以外の何かが変わるとは思えませんが……]
するとテーブルの上にいるデスティニーの隣に置いてあったフェイトのデバイス“バルディッシュ”が、シンの行動を不思議がっていた。
「バルディッシュ……男の子というものは可愛い女の子の前ではカッコつけたがるものなのですよ」
[?]
その日の午後、シンは時の庭園に向かうためフェイト達と共に屋上に来ていた。
「それじゃ行ってくるよ、報告はちゃんとしておくね」
「あ、待ってシン、これを……」
そう言ってフェイトは二つのケーキが入った箱をシンに渡した。
「これって……ケーキ?」
「うん、母さんとヴィアさんへのお土産……」
「わかった、ちゃんと渡しておくよ」
そしてシンの足元に強大な魔法陣が現れ、彼は時の庭園に転移していった……。
数分後、シンはまずプレシアのいる時の庭園の王座のようなものがある広間にやってきた。
「プレシアさん……こんにちは」
「……シン君、フェイトはどうしたの?」
シンの姿をみるや否や、プレシアは開口一番にフェイトの事を口にした。
(なんだ、プレシアさんもフェイトと会いたがっているじゃないか)
「ヴィアさんが俺だけ来るようにって……」
「ちっ、余計な真似を」
「え?」
シンはプレシアの不愉快そうな態度を不思議に思いながらも、フェイトから預かっていたケーキをプレシアに差し出した。
「あの、これフェイトからです」
「……!!!」
するとプレシアはあろうことか、ケーキの入った箱をシンの手からパシンとはたき落した。
「な、何するんですか!?」
「フェイトに伝えておきなさい……! こんなことをしている暇があったらさっさとジュエルシードを集めなさいと!」
「……!!?」
シンはプレシアの目に殺気にも近い凄まじさが混じっていることに気付き、思わず恐怖してしまう。
「何で……なんでそこまで……」
必死にプレシアに反論しようとするシンだが、プレシアのあまりの威圧感に口から言葉を出せずにいた、そこに……。
「シン君ここにいたのね、遅いわよ」
にこやかな笑顔のヴィアがシンとプレシアの間に割って入ってきたのだ。
「ヴィ、ヴィアさん……」
「ヴィア……邪魔をしないでくれる? 私はシン君に話があるのよ」
「あなたがそんなんじゃ話なんてできる状態じゃないでしょう? 少し頭を冷やしなさい。それにあまり興奮すると体が……」
そう言ってヴィアはたたき落とされたケーキと恐怖で足がすくんでいるシンの手を取ってその場を去っていった。
「あの、ヴィアさん」
「ごめんねシン君、プレシアには後で私がきつく言っておくから」
「…………図に乗るんじゃないわよ。ゴホッ!」
プレシアはただその一言だけ呟いてせき込んだ後、王座にドスンと座り二人の背中をじっと見つめていた。
「よーっし、検査終了、お疲れ様」
一時間後、シンはヴィアの研究室で彼女から一通り検査を受け、そしてそのために脱いでいた服を着ながら彼女に質問をしていた。
「それでどうなんですか? 俺の体」
「俺? 一人称変えたのね……ふふふっ、似合っているわよ、そうね……」
ヴィアはシンのデータが逐一掲載されている書類を見ながら首をかしげている。
「うーん……悪いけど安全に引きはがす方法はまだ見つからないわね、あなたの中にあるリンカーコアとは別の何かがジュエルシードと接着剤でくっつけたようにくっついているのよ、無理に引きはがそうとすれば大変なことになるわ」
「そうですか……」
成果が思わしくなかったことを受け、シンは少なからず落胆する。
「いっそ暴走させて誰かに倒してもらって離れたジュエルシードを封印するって手もあるけど……これは流石にお勧めできないわ、下手したら死人がでるし……」
「うぇ!? それだけは……」
その時、ヴィアの机の上で消しゴムのケシカスで黒い雪だるまを作って暇を潰していたデスティニーが声を掛けてくる。
「そういえば今日のプレシア……とても機嫌が悪かったですね」
「うん、尋常じゃない怒り方だったよな、何もあそこまで言わなくても……フェイトだって頑張っているのに」
「……」
するとヴィアは神妙な面持ちで近くのパソコンを操作し始める。
「二人には……知っておいてもらったほうがよさそうね、プレシアがなんであんな風になったのかを……ちょっとこっちに来なさい」
「……?」
シンとデスティニーはヴィアに手招きされ、パソコンに映されているある部屋の様子を見せられる。
「な、なんですかコレ!?」
そこには、巨大な円柱型の水槽に入れられたフェイトと瓜二つの少女が映し出されていた。
「この子は“アリシア・テスタロッサ”、プレシアの……死んだ娘、そしてフェイトちゃんのオリジナルでもあるわ」
「オリジナル? え? なんですかそれ?」
シンは驚愕しながらも、ヴィアからフェイトに関する真実を打ち明けられる。
数年前、とある企業に勤めていたプレシアは、後任スタッフの暴走と上層部のスケジュール強行により魔力動力炉の事故を起こしてしまい、一人娘のアリシアを失ってしまう、悲しみに暮れる彼女はアリシアを蘇らせる為、“プロジェクトFATE”と呼ばれる技術を使ってアリシアのクローンであるフェイトを誕生させた。
しかしフェイトはアリシアの記憶等を断片的にしか引き継いでおらず、プレシアはフェイトに対し“アリシアに似た何か”として憎悪の感情を抱いてしまっているのだ。
「そしてそこで眠るアリシアを“蘇らせる術”を見つけたプレシアは、フェイトを使ってその“蘇らせる術”を完全にする為にジュエルシードを集めさせているの」
「蘇らせる術?」
それはほんの些細な偶然だった、プレシアは初め失われた技術があるといわれているアルハザードに向かう為、異世界に関する資料を片っ端から調べていた、そして彼女の目にある世界で研究されている細胞の研究データが入ってきたのだ。
「それがフューチャーセンチュリー……FCの世界の科学者、ライゾウ・カッシュ博士によって研究されている“アルティメット細胞”よ」
「アルティメット細胞?」
「戦争で荒廃したFCの自然を回復するため、“自己進化” “自己再生” “自己増殖”の三大理論を元に開発されたいわば自然回復マシーンね、それが完成すれば崩れた星の生態系を短い時期で修復することが可能なの」
そしてその研究に目を付けたプレシアはFCの世界に自ら赴き研究データを強奪し、奪ったデータを元に独自の理論でアルティメット細胞を完成させ、アリシアを蘇生しようとしたのだ。
彼女は天才だった、いや、娘と再び出会いたいという執念がそうさせたのかもしれない、ライゾウ博士ですら完成するまであと数年かかると言われたアルティメット細胞の研究を、動物や使い魔で実験し高い効果を見せるという段階まで進めていたのだ。
「でも死者を蘇らせるまでには至らなかった、そこで彼女はある世界で発掘された願いを叶える魔石と呼ばれるジュエルシードを強奪しようと企てた、でも……強奪は失敗に終わり、20個のジュエルシードは海鳴市に、最後の一つは……」
「俺が拾ったってことですか?」
シンの問いに、ヴィアは黙って頷いた。
「あとは君の知っての通り、プレシアはアルティメット細胞を完成させるためフェイトちゃんを酷使してジュエルシードを集めさせている……きっとすべて集まろうが集まらなかろうが彼女は捨てられるでしょうね。あの子にはアリシアしか見えていない……そして同じ顔をしたフェイトちゃんに対して憎悪に近い思いを抱いている」
「そんなの……そんなのおかしいよ!」
あまりにもひどい現実に、シンは思わず机をドンとたたいてやりきれない怒りを露わにした。
「そうね、でもプレシアはそんなこともわからないぐらい心に重い病を抱えているの、私にできることと言えばフェイトちゃんをなるべく彼女から遠ざけることぐらいしかできない、真実を知ればフェイトちゃんはきっと心に深い傷を負ってしまうでしょう」
「……!」
シンの頭には先ほどのプレシアの鬼のような形相と、フェイトの寂しそうな横顔が交互に思い浮かんでいた。
「勝手に生んでおいて……拒絶するなんて……どんな理由があろうと、俺はあの人を許さない……!」
「馬鹿な事考えちゃダメよシン君、プレシアは強いんだからあなたが挑んでも殺されるだけだわ」
シンが何を考えているか察知したヴィアは、あらかじめ彼に釘を刺しておく。そして冷静になったシンはある疑問が浮かび、ヴィアに再び質問する。
「そういえばなんでヴィアさんはプレシアさんと一緒にいるんですか? あの人とはどんな関係なんです?」
「私とプレシア? うーん……あれは11年前になるわね、この前私言ったでしょ? 君とは同郷だって、その頃私はコズミックイラで夫と一緒にコーディネイターの研究をしていたのよ」
「コーディネイターの……?」
「うん、それでナチュラルの人に疎ましく思われちゃって……ある日私たちがいたステーションがテロにあって、どういうわけか私はこのミッドチルダに時空漂流者として流れ着いちゃったのよね、そして管理局の人に保護されていろんな世界を何年も彷徨った末に、三か月前にプロジェクトFを実行したプレシアの噂を聞きつけて、彼女に出会ってアルティメット細胞の研究の手伝いをしているの、つまり私とプレシアは研究仲間ってわけ。」
「そうだったんですか……ヴィアさんもアルティメット細胞がほしいんですか?」
「……」
ヴィアは一瞬悲しそうな表情になると、一枚の写真を机の中から出した。
「私達夫婦は……これまでの研究で何人もの命を犠牲にしてきたわ、そして……この子も私たちの研究の犠牲者」
写真には金髪の男の赤ん坊が映っていた、そして隅には「ラウ」と書かれている。
「この子もフェイトちゃんと同じクローンでね、元になったオリジナルが歳をとりすぎているせいでテロメア……寿命が極端に短いの、だから私は……」
「アルティメット細胞を使って……その子達を救おうと?」
シンの言葉に、ヴィアは自嘲めいた笑顔で答えた。
「いまさらこんなことしたって私の罪は消えない、自分の子供すら実験台にした私は地獄すら生ぬるいわよね、でもプレシアを放っておけないのよ、彼女は大切な友達だし、私みたいな過ちは犯してほしくないの、フェイトちゃんもできたら救ってあげたい」
そしてヴィアはシンの手をぎゅっとつかみ、彼にお願いをした。
「お願いシン君……フェイトちゃんを支えてあげて、君ならできると思うから」
「ヴィアさん……わかりました」
ヴィアの願いに対し、シンは力強くこくんと頷いた。
そしてその後、ヴィアにケーキを渡して帰ろうとした時、シンは突如彼女に呼び止められた。
「まってシン君、これを持って行きなさい」
そう言ってヴィアはロールキャベツが大量に盛りつけられた皿をシンに渡した。
「夜ごはんのおかずよ、ちゃんとしたもの食べないとね、二人とも育ちざかりなんだから」
「ありがとうございます! それじゃ!」
そう言い残し、シンはデスティニーと共にその場を去っていった。
「……キラとカガリにもあんな弟や妹をプレゼントしてあげたかったな、考えてもしょうがないか」
そう独り言をつぶやいた後、ヴィアはモニターに映し出されているアルティメット細胞に関する数値データを真剣な表情で見つめた。
(ここ最近アルティメット細胞の成長が予測より早くなっている、どういう事なのかしら……)
次の日の夕刻、シンはフェイトやアルフと共にビルの屋上でジュエルシードの探索を行っていた。
「フェイト」
「うん、目覚める子がいる……いこうか」
そして三人はジュエルシードの反応がした方角に飛び立った、そして飛んでいる最中の事、
「シン」
フェイトは昨日から口数が少ないシンに話しかける。
「何?」
「シン……どうしたの? もしかして怒っているの? 母さんのところに行ってからなんか考え事しているみたいだけど?」
「別に……なんでもないよ」
「そう? ならいいけど」
フェイトは首を傾げながらも、これ以上詮索せずシンより少し前を飛翔する、一方そんな彼女の後姿を見てシンは昨日ヴィアから聞いた話を思い出していた。
―――きっとすべて集まろうが集まらなかろうが彼女は捨てられるでしょうね。―――
(フェイト……母親にあんなにきつく当られているのに、それなのに……)
フェイトの事を想い、シンの表情が不安と悲しみに染められる。
「この結界……またアイツらか!!」
数分後、ジュエルシードの反応がした海鳴臨海公園にやってきたシン達、そこにはジュエルシードにとりこまれた樹木の怪物と戦っているなのはと彼女の相棒であるフェレットの姿があった。
「苦戦しているみたいだね」
すると怪物はフェイト達に気付いたのか、こちらにも攻撃を仕掛けてきた。
「さっさと終わらせよう……デスティニー! ビームライフルだ!」
シンが支援射撃として放ったビームライフルの光線は怪物の根を深く抉った。
「あれはフェイトちゃん達……レイジングハート! もっと高く飛んで!」
フェイト達に気付いたなのはは上空に高く飛び桜色の羽が生えたレイジングハートを構える。
「フェイト! 今だ!!」
「うん、アーク……」
バルディッシュを構えるフェイト。
「ディバイン……」
合わせてなのはも唱える。
「セイバー!!」
「バスター!!」
金色の刃と桜色の光線が同時に放たれ、怪物は断末魔と共に消滅した。そして怪物がいた所にはジュエルシードがぽつんと浮かんでいた。
「フェイト……」
「シンは手を出さないで。」
そういってフェイトは飛び、なのはと対峙した。
「フェイトちゃん……私がただの甘ったれた子供じゃないってことを……証明してみせる!」
構えるなのは。
「フェイト」
「シン、私は大丈夫、大丈夫だから」
そしてフェイトも構える。
そして両者は猛スピードで突撃していく、振り上げたデバイスがぶつかりそうになるその刹那。
「そこまでだ!」
「「!?」」
見知らぬ少年が二人の間に入りデバイスを受け止めていた。
「デスティニー! あいつは!?」
「時空管理局……やはり嗅ぎつけてきましたか」
「ここでの戦闘は危険すぎる、時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ、詳しい事情を聞かせてもらおうか」
突然現れた少年に言われるがまま、なのはとフェイトは地上に降りる。
「まずは二人とも武器を下ろすんだ、このまま戦闘行為を続けるなら……」
そのときアルフがクロノにめがけて炎の魔法の矢を放ち、彼の周辺で爆煙が巻き起こる。
「くっ!?」
「アルフ!? なんで!?」
突然の事に動揺するシンに対し、アルフは大声をあげて臨戦態勢をとる。
「訳は後で話すよ! それよりもフェイト!」
アルフの声に呼応してフェイトは飛び出して空中に浮かぶジュエルシードに手を伸ばす、だが突如爆煙からクロノのよる青い魔法の矢が放たれ、その何発かがフェイトに命中してしまう。
「きゃあ!」
「「フェイト!!」」
真っ逆さまに地面に落下するフェイトを、アルフが激突する直前で受け止め、シンはすぐに二人に駆け寄る。
「フェイトは!?」
「大丈夫、気絶しているだけだよ」
そして魔法が放たれた方を睨むシン、その先にはデバイスを構えたクロノが立っていた。
「アルフ、フェイトを連れて先に逃げて……」
「シン!? アンタ……」
「駄目……! シン……!」
「大丈夫、絶対もどってくるから……」
「殿は我等に任せてください。
心配そうにするフェイトとアルフの瞳をじっと見つめるシンとデスティニー。
「わかったよ、でも無茶はするんじゃないよ」
そう言ってアルフはこくんと頷き、フェイトを抱え飛び去っていった。
「アルフ駄目だよ! シンを置いてなんて……!」
「アイツの行動を無駄にしちゃ駄目だ!」
「させるか!」
クロノは二人を追いかけようとする、だが……。
「何!?」
シンのビームライフルによる牽制で進路を妨げられてしまう。クロノはシンを睨みつける。
「君は何をしたのか解っているのか!? 君や彼女達がしている事はれっきとした犯罪……」
「うるさい!!」
「!?」
クロノの警告を大声で一蹴するシン。
「フェイトはただお母さんのためにやっているのに……どうして邪魔するんだ! もしこれ以上あの子を傷つけるなら!」
次の瞬間、シンの右手からビームライフルが消え、かわりに背丈よりも長い大剣……アロンダイトが現れる。
「オレが……!! 俺が全部薙ぎ払ってやる!!」
シンはそのまま一瞬でクロノの後ろに回りこみ、アロンダイトを彼に振り下ろす。
「早い!?」
その攻撃を自分のデバイス……S2Uで受け止めるクロノ、だがシンはそれでもお構いなしに右手に大剣をもったまま左手でクロノの襟を掴み。
「なっ!?」
一本背負いの如くクロノを力任せに地面に叩きつけた。
「ぐっ……! なんて馬鹿力!? コイツ本当に子供か!?」
大の字になって倒れるクロノ、シンは大剣を逆手に持ちクロノの喉目がけて突き刺す……事はせず、寸前で止めた。
「もうやめろよ……これ以上やると大変なことになるぞ!」
「主!」
その時シンはデスティニーの警告を受けてとっさに身を屈める、すると彼の頭上をピンク色の光線が高速で飛び去って行った。
「ああ! 外れちゃった!?」
「お前! 危ないだろうが!」
光線を放ったのは、襲われているクロノを助けるために行動を起こしたなのはだった。
対してシンはなのはに向かってアロンダイトで切りつけるが、彼女の杖型……というよりも槍に近い形をしたデバイス“レイジングハート”に防がれてしまう。
「まだまだぁ!」
シンは背中に翼を召喚するとなのはに対してヒット&アウェイで繰り返し切りつけて行った。
「きゃあ! くぅ……!」
「主、そろそろ撤退を……もう十分でしょう?」
「でも今のうちにこいつのデバイスを壊しておけば、後から戦うとき楽になるし……!」
今後の事も考えてなのは達のデバイスを破壊し、今後のジュエルシード集めをフェイト優位に進めようという欲張った事を考えているシン、その時シンの体に鎖のようなものが巻きつき、身動きが取れなくなってしまう。
「うわっ!?」
「まずい! チェーンバインド!?」
「まったく、手間取らせてくれる……!」
クロノが隙を見てシンの動きを封じにかかってきたのだ。
「今だなのは! この前みたいな力を使われたらまずい!」
「う……うん! わかった!」
そう言ってなのはは足に桜色の羽を生やしながら空高く飛び、レイジングハートの先端に巨大な魔力を収束させていく。
「え!? ちょ! 何その魔力!? そんなもの喰らったら……!」
「あ、主―!」
そしてなのははレイジングハートの先端をシンに向け、足元に巨大な魔法陣を展開しながら叫んだ。
「ディバイン……バスター!!!!!!!!!!!」
「うわああああああああー!!!」
シンは死の恐怖に近い感情を抱きながら、そのまま桜色の光に呑まれ意識を失った……。
「主……安らかに眠ってください」
ちゃっかり安全圏に避難していたデスティニーは、ディバインバスターの直撃を受けてクレーターの中心で気絶しているシンに対し、彼の魂に安らぎが訪れるよう手で十字架を切った。
「なのは、何もあそこまでしなくても……」
「鬼か君は。」
「にゃははは……無我夢中で手加減するの忘れてたの」
そう言ってなのははやりすぎたと反省しながら頭をポリポリとかいた。
「とにかく彼をアースラに運ぼう、君たちも来てもらうからな」
「は、はい」
そしてシンはデスティニーやなのは達と共にアースラと呼ばれる時空航行船に収容されていった……。
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FDPさん:まあ大丈夫じゃないんですか? コーディネイターだし(okura) おいおい、シンの奴大丈夫か?(FDP) |
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