| ■宇宙の幾何構造が崩れ去るとき。■宇宙が甚だしい無秩序状態に陥り、時間・空間が一度に消えてしまうケースが存在するという。この無秩序状態は、宇宙を構成する粒子や力といったものよりもさらに深い、宇宙の実在の本質的なレベルで起きる。その過程は極めて複雑で、単にいつ、どの場所で起きるとは言えない。この現象を直観的に理解する方法のひとつに、いわゆる「ホログラフィック原理」がある。■1.私たちの宇宙の本質は（恐らくは）二次元なのだが、そこに表れている規則性が三次元に見せている。目に見える宇宙とは、二次元のホログラムが記述している、幻影として映し出す三次元像のようなものだ。■2.星が崩壊し、産み出されるブラックホールの付近では、宇宙は次第にカオス的になり、物事がどこで、どのタイミングで起きるかが曖昧になる。■3.最終的に、宇宙の三次元像はすべて崩壊し、極度に複雑化した二次元系のみが残る。■この過程は、氷の塊が溶けるプロセスと似ている。この時、水分子の並びは規則的な結晶構造配列から、液体の無秩序な混乱状態に変化する。■この状態に陥ると、空間と時間によってこの世界の構造を語ることはできなくなる。もし物体の位置を測定しようとしたら、一か所ではなくあちこちにあるように見えるだろう。空間的な分離は意味をなさなくなり、物体はある場所から別の場所に、その間の空間を通ることなくジャンプしてゆく。こうなってしまうと、生物の生存はおろか、物質が物質であることさえできなくなるだろう。（論文内容より引用）借用文原題名:Could Time End? (SCIENTIFIC AMERICAN September 2010) 訳:日経サイエンス編集部 監修:細谷曉夫 |