魔法少女リリカルなのは TFG 第5話「喫茶翠屋へようこそ」
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八神家に居候してから一週間が経った日の夕方

 

俺こと東雲紫苑はソファに突っ伏していた。

理由は簡単疲れているから

家事の手伝いに加えて先日の手合わせ以降シグナムと鍛錬するのが日課のようになっているのである。

まぁ、魔力云々に関して全く知識がない俺にとってはそれらを教えてもらえるので全く意味がないわけではないのだが、いかんせん鍛錬の密度と、時間が半端ない。

もはや鍛錬とか言うレベルではなく、3時間ずっと真剣勝負をしているようなものなのだ。

例えるなら柳と烈風、たとえどれほど強く風が吹こうとも全くそれを意に介さずそこに佇む。

二人の模擬戦はまさにそんな様子であった。

だがいくら相手の力を利用し最小限の消耗で戦おうとも真剣勝負なのだからそれ相応に集中しなければならない

「もう動けん・・・。」

鍛錬で指一本動かせないほど疲労した俺は、夕食の準備をするまでの時間ソファで休むのが日課になりつつあった。

ちなみにシグナムの方はというと、クタクタになっている俺を尻目に優雅に鍛錬の汗を流している。

「まったく、どんだけ体力あんだよ・・・。」

(━━なんだかんだ言いつつも、家事と鍛錬を両立できている君は正直すごいと思うよ)

「・・・だったら少しは俺の疲労を和らげてくれ、お前神様だろ?)

(━━勘違いしないで欲しいんだけど、僕はこれでも君たち人間から邪神と呼ばれている存在なんだよ?そんな僕を小間使いにするなんていい度胸じゃないか。)

「小間使いって・・・そんなつもりは無いんだけどな」

(━━しかも自覚なしか、これは本格的にアレだね)

「そんなこと言ってないでちょっとだけでいいから頼むよ、な?」

(━━はぁ・・・もういいや。僕は少し寝るよ、キミは思う存分そのままでいてくれ。)

「ちょっ・・・おいナイア!?」

(━━・・・・・・。)

言うだけ言ってさっさと寝てしまうナイア・・・でもなにげにしっかりと体の回復はしてくれる

つんでれ、だったかこういうの・・・。

 

(まぁなんにせよ、これで体が動くようになったんだ。気合入れて飯作りますか。)

などと考えていたときに、玄関の方から

「ただいま〜。」

「かえったぞ〜。」

と元気のいい声が聞こえてきた。

(お?帰ってきたか、とりあえず晩飯何食いたいか聞いとくか。)

とりあえずそんなことを考えながら玄関に行く俺

「よう、早かったなチビッ子ども。」

と、軽くからかうと

「チビッ子言うな!おめーシオンのくせになまいきだぞ!」

「せや!ヴィータはともかく『ちょっ・・・はやて!?』うちはまだ成長の余地があるんや!」

というふうに実にいい反応をしてくれる。

あぁ、これはクセになるな・・・あのクソオヤジが生きていた頃同僚の奴らと一緒に俺をイジリ倒していた理由が判る気がする。

「とまぁ、冗談はこの辺にして『冗談やったんか!!』まぁそんなに怒るな、お詫びに晩飯は二人の食いたいもの作ってやろう。」

すると途端にさっきまでの怒りもどこへやら、二人とも満面の笑顔を浮かべていた

・・・全く現金な奴らだな

「ホンマ?ホンマになんでもええの?」

「あぁ、なんでもいいぞ。」

「じゃあうちグラタンが食べたいわ〜。」

「あたしはカレーが食いたい。」

「よし、それじゃあ今日の晩飯はカレーグラタンだ。はやて、手伝ってくれ。」

「了解や、ちょっと待っててな。」

と、はやてと一緒に夕食の準備をし、みんなで食卓を囲んで夕食を摂った

 

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その日の午後10時頃

俺はほかの皆が上がるのを待って風呂に入った。

なぜ最後かって?・・・うっかり誰かが入っていたらどうするんだ

避けられるリスクは極力回避するのが俺の主義だ

そして髪を拭きながら自室に戻ろうと廊下を歩いていると

「あ、紫苑さん。ちょうどええとこに。」

と、はやてに呼び止められた。

「ん?どうかしたか、はやて?」

「うんとな、明日なのはちゃん家に遊びに行くんやけど、紫苑さんも一緒に来てくれへん?」

「あぁ、別に・・・。」

別にいいと言いかけたところで、何かが引っかかった。

「どないしたん?」

「はやて、ちょっと質問していいか?」

「ほえ?・・・かまへんけど?」

何かとてつもなく嫌な予感がする。

ここで確認しないと確実にヤバイことになる・・・俺はそう直感していた。

「よし、んじゃあまず一つ目だ、そのなのはちゃんっていうのははやてが話してくれたお友達の子のことだよな?」

「せやで。」

「よし、じゃあ二つ目だ。そこにはなのはちゃん以外にも遊びに来るのか?」

「そうやねぇ・・・多分フェイトちゃんとすずかちゃんとありさちゃんも来るはずや。」

「そうか・・・じゃあ最後の質問だ。」

「なんや、えらい引っ張るなぁ。」

・・・当然だ、俺の「大切な何か」がかかっているんだからな。

「そういうなって・・・んで、その子らははやてと同い年なのか?」

「せやで、みんなおんなじ小学3年生や。」

「っつ!!」

「・・・え!?ど、どないしたん!?」

いきなり頭を抱えてうずくまる俺に面食らったであろうはやてが、狼狽えながらも

心配そうな声をかける。

気遣いはありがたいが、今はそれどころじゃないんだはやて・・・。

考えても見て欲しい。女子小学生に囲まれてその子らと仲良く談笑する青年・・・完璧なロ○コンだ、それもかなり危ない感じの。

少なくとも俺なら確実に警察に通報するな。

「な、なぁ・・・なんとかならないか、それ?」

せめてもの抵抗を試みるも

「えー、だってもうなのはちゃんたちと約束してもうたもん。」

・・・退路は絶たれたようだ。

「ソ、ソウカ・・・。」

「せやから、な?頼むわ紫苑さん。」

とそこへはやてがトドメの上目遣いのお願い攻撃(うっすらと涙目)

(クッ・・・これは、ヤバい)

紫苑のライフはゼロになった・・・。

「あぁ、わかったよ。明日だな・・・俺でよかったら付き合うよ。」

「ホンマに?ありがとうさん。それじゃあ明日忘れんといてな〜。」

と、俺が了承の言葉を言うが早いか、はやては驚くほど素早く自分の部屋に戻っていく・・・って足が悪いんじゃなかったのか?

などと俺が考えていると

(━━結局断れなかったんだ・・・ヘタレなうえにロ○コンとはね・・・。)

(ちょっ・・・それは冤罪だ!俺は別にロリ○ンでもないし、ヘタレでもない!!)

(━━断れなかった時点で君の負けだよ。)

(・・・くっ、言い返せん・・・。)

(━━ま、あとはなるようにしかならないんだ。今日のところはおとなしく寝ておきなよ。)

(・・・そうしておく。)

と、最後にどっと疲れた俺は倒れるようにしてベッドに横たわる

すると、とたんに睡魔が怒涛のように襲ってくる。

それに抗うこともせず俺は深い眠りに落ちていく

 

―30分後―

「・・・寝たのか?」

「うん、ぐっすりや・・・それじゃあ作戦開始といこか。」

 

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時刻は午前5時

紫苑はたいていこの時間に起きている。鍛錬のためだ。

(さて、今日はとりあえず昨日教えてもらった飛行の練習でもするか)

などと今日のメニューを組みながら起きようとする。

「・・・んぁ?」

・・・が腕が動かない。

(金縛り?)

とも思ったが動かないのはどうやら両腕だけのようだ。

おそるおそる右腕を見ると・・・

「くーくー。」

俺の腕を抱きながら、規則正しい寝息を立てて気持ちよさそうに眠るタヌキがいました。

そして反対側には

「うーん、むにゃむにゃ・・・もう食べれねぇって。」

テンプレのような寝言を言いながら爆睡するヴィータがいた

(何だはやてとヴィータか・・・ってなんで!?)

突然のことに動揺しつつも紫苑は昨日の行動を思い出してみる

(昨日は確か風呂入ってはやてと約束してそのあとすぐに疲れたから寝て・・・。)

(━━二人なら君が寝た少し後に入ってきたよ?)

(なんで何も言わなかった!?)

(━━そのほうが面白いに決まってるからじゃないか)

この邪神め!!と心の中で悪態を付きながら二人を起こさないようにそっと起き上がろうとする・・・が

「ふふっ逃がさへんで〜。」

「!?」

しっかりと腕をつかまれる感触と共に耳に届いた言葉に顔を向けると

そこにはしっかりと起きていらっしゃるはやてさんがいました。

「おはようさん。」

「・・・おはよう、はやて。ところでつかぬことを聞いていか?」

「なんや?」

「なぜはやてとヴィータが俺の部屋にいる?」

「昨日の夜にこっそり忍び込んでん。びっくりした?」

・・・えぇ、とっても。

「ところではやてさん、俺はそろそろ鍛錬に行きたいんだが?」

「アカン。紫苑さんにはこのままウチらの抱き枕になっててもらわな。」

「・・・さいですか・・・。」

結局その後、シャマルさんが起こしに来るまで俺は二人に両腕をがっちりホールドされながら

ベッドに横になるという状況のままでいる羽目になった。

起こしに来たシャマルさんに大いなる誤解を与えたのは言うまでもない・・・。

 

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Side はやて

(何かイケナイことしてる気分やなぁ)

なんてことを考えながら紫苑さんの部屋に侵入する。

え、鍵?そんなん家主が合鍵持っとらんハズがないやろ?

「寝たのか?」

「うん、ぐっすりや。」

目の前には気持ちよさそうに眠る紫苑さん・・・いつもか格好ええけど、こういう時はなんやかわええな・・・。

「それじゃ、作戦開始といこか?」

「おう!!」

とはしゃぐヴィータにうちは人差し指を口に当てて「しー」と言う。

全く、起きてしもうたらどないすんねん・・・。

幸いにも、それで紫苑さんが起きることもなくウチらは作戦を開始する。

作戦といっても、紫苑さんが寝静まったあと布団に潜り込んで一緒に寝るだけなんやけどな。

そんなわけで、紫苑さんの右にウチが、左側にヴィータが陣取って寝ることになった。

(・・・なんや、ドキドキすんなぁ。)

ヴィータの方は、早くも寝息を立てて眠っているようだ。

(ウチも早く寝よ。)

そう思ったのだが、正体不明のドキドキのせいで結局寝たのはそれからしばらく経ってからだった。

 

―翌朝午前5時―

紫苑さんがゴソゴソ動く音でウチは目を覚ました。

薄目を開けて顔を伺うと・・・やっぱりビックリしとる。

しばらくすると、紫苑さんが起きようとしてウチらが掴んでいる両腕を引き抜こうとする。

「ふふっ逃がさへんで?」

いきなり喋ったので驚いたのだろう。詩音さんが目を丸くしてこっちを見た・・・あぁ、かわええなぁ・・・。

「おはようさん。」

「・・・おはよう、はやて。ところでつかぬことを聞いていか?」

「なんや?」

「なぜはやてとヴィータが俺の部屋にいる?」

「昨日の夜にこっそり忍び込んでん。びっくりした?」

「・・・ところではやてさん、俺はそろそろ鍛錬に行きたいんだが?」

「アカン。紫苑さんにはこのままウチらの抱き枕になっててもらわな。」

・・・こんな気持ちええモン逃がす訳がないやろ。

「・・・さいですか・・・。」

紫苑さんも諦めたようでそれからは、大人しゅうしていた。

・・・起こしに来たシャマルがビックリしてたけど、まぁええやろ。

 

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午前10時「喫茶翠屋」前

 

「・・・なぁ、はやて。」

「なんや、紫苑さん。」

「・・・帰っていいか?」

「ええよ、って言うと思う?」

「思わん。」

「速答かいな・・・まあ、いつまでもこんなところでウジウジしとらんと、さっさと入るで?」

「あ、あぁ・・・。」

小学生に促されながら入る俺って・・・

(━━チキン。)

(うっせ。)

まぁそう言われても仕方ないんですけどね!?

 

カランカラン

 

「こんにちは〜。」

「いらっしゃい、はやてちゃん。」

「いらっしゃい、今日はいい葉が入ったんだ。ごちそうするよ。」

はやてが挨拶すると、カウンターの向こうの二人が挨拶を返す。

多分店主なのだ・・・ろ・・・う。

「ん?どないしたんや、紫苑さん。そんなとこで固まって。」

はやてが不思議そうな顔でこっちを見てる、が今は正直かまってられない。

「た、高町、士郎・・・?」

「!?君は・・・。」

そこには、意外な人が立っていた。

 

カウンターの一番端に座ると、見計らったようなタイミングでコーヒーが出された。

そのコーヒーを一口すすり(驚くほど旨かった)

「久しぶりですね、高町さん・・・。」

「あの爆破テロ以来だからな。」

「・・・っていうか生きてたんですか。」

「少し(1年くらい)入院したが、今はいたって元気だ。」

「爆発にもろ巻き込まれてその程度で済んでるとかありえないですね。」

この人はおそらく人の皮をかぶった何かなんだろう・・・。そう思わないとやってられない

「まぁ、俺はそれ以来そっちの仕事からは足を洗ったんだがな。」

「それで一切噂を聞かなくなったんですね・・・みんな言ってましたよ?不死身の高町がとうとう死んだって。」

「そのおかげで今は愛する家族と平穏に過ごしていられるんだがな。」

などと、話しているとちょうど反対側から

「紫苑さん?ええ加減こっち来てや。早くみんなに紹介したいんよ。」

などと呼びかけられてしまった。

「・・・すみません。ちょっと行ってきてもいいですか?」

と、許可を取ろうとすると

「あぁ、構わないよ・・・ただ、なのはにはあまり俺の仕事のことを話さないで欲しい。」

といった感じですんなりと許可された。条件付きで

「分かりました。」

おそらくは何かあるのだろう。

さすがに何故かを聞く気はないが、そう言うからにはきっとそれなりの理由があるのだろう。

「すまない。それともう一つ、そんなことはないと思うが・・・ナノハニテヲダシタラタダジャオカナイゾ?」

「ビクッ・・・だ、出すわけないじゃないですか・・・相手は小学生ですし。」

凄まじい殺気と共に不穏当な言葉を投げかけてきた・・・俺ってそんなに信用ないのか?

 

とまぁそんなやりとりをしながら

「東雲紫苑だ。今はこのマメダヌキの家でやっかいになってる。」

ポムッとはやての頭に手を乗せながらまずは自己紹介

「ちょっ・・・紫苑さんその言い方はあんまりちゃうん!?」

「じゃあまずわたしから『ってなのはちゃんもスルーかいな!?』・・・気にしたら負けだよ、はやてちゃん?では改めまして、名前は高町なのは、なのはって呼んでください。」

「あぁ、よろしくな、なのは。」

まずは茶色い髪を二つ結びにした女の子が、名乗ってくれた。

・・・この子が高町さんの娘さんか。何かあんまり似てないな・・・。

「わたしはアリサ・バニングスと申します、アリサとお呼びください。」

次に口を開いたのは金髪碧眼の少女だった。

なるほど、活発そうな外見に反して、礼儀正しい子なんだな。

「・・・・・・。」

ふと視線をずらしてみると、アリサを除く全員がぽかーんと口を開けていた。

「な、なによ・・・?」

「いやぁ、なんやいつものアリサちゃんとちゃうなって・・・。」

「どういう意味よ!!」

・・・訂正どうやらこっちが地らしい。

「と、とにかく、このあたしが特別によろしくしてやるって言ってるんだから素直に受け取ればいいのよ!」

「くくっ・・・了解。よろしくな、アリサ。」

苦笑い混じりにそう返したらふんっとそっぽを向かれてしまった。

やれやれ・・・。

「あ、あの・・・すみません東雲さん、アリサちゃんが失礼なことを行って・・・あっ私の名前は月村すずかって、いいます・・・すずかって呼んでください。」

などと漫才をしているとアリサの隣のおとなしそうな子がそう言ってくれた。

「あぁ、よろしく頼むなすずか。」

と笑顔と共にそう返すと、恥ずかしそうに顔を赤らめながらもすずかは頷いてくれた。

・・・うん、いい子だ。

「ちょっと!あたしのすずかになに色目使ってるのよ!!」

みたいなことをアリサが言ってた気もするが、聞こえなかったことにする。

「あと、自己紹介しとらんのはフェイトちゃんだけやな。」

「そうだね。はじめまして、フェイト・テスタロッサといいます。よろしくお願いします、東雲さん。」

「おう、よろしくな。これで全員か、はやて?」

「せやね、一応全員自己紹介はしたんやないかな?」

・・・そうか、終わったか。ならば!!

「んじゃまぁ、顔合わせも終わったことだし、そろそろ俺は帰・・・。」

「すとでも思ってんるん?」

「・・・デスヨネ〜。」

このまま帰れる、なんてこともなくあえなく拘束される俺

「さて、今日は紫苑さんの奢りや。みんな遠慮せんとい〜っぱい食べてな!!」

「「「「うん!!」」」」

しかも俺が全部奢ることになってるし・・・はやて、恐ろしい子!!

「ところで、紫苑さんっていくつなんですか?」

そこに、俺の隣に座っていたなのはが、俺に話しかけてきた。

・・・瞬間殺気のようなものを感じたが、気のせいだろう・・・気のせいだと思いたい。

「ん?19だが。」

「にしてはずいぶん大人っぽいんですね。」

まぁ、かなり特殊な環境にいたせいか、俺は実年齢通りに見られることはない。

「まぁ、いろいろあったからな・・・俺からすると、君らの方がよっぽど大人びていると思うんだが?」

ほぼ完璧な敬語、相手の気分を害さない言葉遣い・・・小学3年生には到底思えない。

「そんなことないですよ。私たちにできることなんてたかが知れてますし。」

だからそういう発言が・・・ってもういいや、なんだか堂々巡りになりそうだ。

そんなこんなで、結局その後数時間にわたって少女に囲まれて質問攻めにあうという時間を過ごした。

時折向けられる視線がすごく痛かったのは言うまでもない・・・。

 

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そんな悪夢とも呼べる日の数日後、俺はミッドの研究所のようなところにいた。

「・・・あの〜。リンディさん?ワタクシめはこれからここで何をすればいいんでしょうか?」

「ん〜・・・ひ・み・つ(はぁと)」

「・・・・・・」

「な、なによ、その反応は!。」

「だって自分の年齢考えてみたらどうですか?いい歳こいて、『はぁと』って恥ずかしくないんですか?」

「・・・全然!!」

・・・さいですか。

「まぁ冗談はさておいて、すぐにわかるわよ。」

「・・・さいですか。」

とまぁこんなやりとりをしながら建物の中を歩いていくと、リンディさんがとある部屋の中で止まった。

「さ、入って。」

プシュー

開いた自動ドアの先には、

「やぁ、紫苑おっひさ〜。」

旧知の友がいた。

 

「・・・で?なんでてめぇが生きてて、こんなとこにいんだよ?」

「まぁまぁそう怖い顔しないでよ、それに、きみにとっても悪い話じゃないんだよ?」

突然俺の目の前に現れたこいつはギルバート・M・ロアフィールド通称マッドギル

黒髪を無造作に伸ばし、目の下に深いクマをつけた顔立ちに年齢不詳、経歴不明、といういかにも怪しいやつだが、ことメカに関しては天賦の才を持つ男である。

元々オヤジのPMC「円卓の傭兵団(Mercenary of Rounds)」のメンバーで、

オヤジがMIA(作戦行動中行方不明)となり団が自然消滅してからも個人的に色々と世話になった・・・なったのだが・・・。

 

「お前は、2年前に実験中の事故で死んだんじゃなかったか?」

「まぁ、その事故自体は実際に起こったんだけど、そんとき俺は死んだんじゃなくてこの世界に飛ばされたってことさ。」

・・・こいつ、とんでもないことをさらりと言ってのけた。

「そんなことより、この世界はすごいよ!!魔法なんて正直眉唾物だと思っていたけど本当にあるんだね!!」

そんなことって・・・あぁもう!そんなキラキラした目でこっち見るな!!

ま、こいつが人の話を聞かないのなんて今に始まったことじゃないけどさ・・・。

「オーケーまずは冷静になろう。まぁお前がなんでここにいるのかは聞かないでおくが・・・なんのために俺を呼んだ?」

「相変わらず切り替え早いね〜。まぁ、そこがいいんだけどね・・・っと用件だったね、今日呼んだのは他でもない、君のデバイスを作るためだよ。」

なるほど、俺のデバイスを作るためか・・・ってマジか!?

と、一通り驚いてふとギルを見ると、なんかすごくいい顔をしてた

ムカつくので、殺気を出しながら、満面の笑みを浮かべながら近づいてみる

「いやぁ、その顔が見たかったんだよ!最高に気持ちがいい・・・って嘘嘘!!冗談だって!!

だからそんな怖い顔して近づいてこないで!?」

・・・まぁ本気でビビってるみたいだしこれはこれで面白いからこの辺で許してやるか。

「・・・そんなことより、俺のデバイス・・・だったか?ができるにはどのくらいかかるんだ?」

いらん前置きをしてこれ以上からかわれるのも癪なのでいきなり本題に入る。

そうしたらギルの奴、その言葉を待っていたと言わんばかりに気色の悪い笑みを浮かべ

「ふっふっふ・・・こんな事もあろうかと!!」

と叫びながら指をパチンと鳴らした。

 

すると奥から一人の女性がアタッシュケースを持って出てきた。

ギルは女性からアタッシュケースを受け取ると

「これが君のデバイスだ!!」

などとほざきやがった・・・ナメてんのか?

「・・・そんなことより俺のデバイスはいつぐらいに出来上がるんだ?」

「だ・か・ら、これが君のデバイスだって今言っただろ?」

「・・・そんな簡単に専用のデバイスってできるものなのか、リンディさん?」

「え!?・・・あぁ、普通じゃ無理ね。実際一週間弱でデバイスができてるなんて私だって思わなかったもの。」

今の反応、完全に俺とギルのやりとりを観戦者気分で見てたな・・・。

「・・・ところで、今一週間弱って聞こえた気がしたんですけど。」

「あぁ、それはあなたと会った後すぐにこっちにきて博士に製作をお願いしたのよ。」

「いやぁ、話を聞いたときは驚いたよ。まさか君までもこっちに来ているなんてね。」

・・・もはや何も驚くまい。いちいち気にしていたらキリがない。

「とまぁそんなわけでデバイス自体は完成しているから、あとは使っていくうちに調整かけてキミに最適化するだけだよ。」

「それはいいんだが、・・・俺はまだそのデバイスとやらを見ていないんだが?」

「そう焦らないでよ、説明も兼ねて今から見せるからさ。」

そう言うと、ギルはアタッシュケースを開け中を見せた。

 

ケースの中身は手のひらサイズの棒だった。

「・・・・・・これが武器なのか?」

「まさか!これはいわゆる待機状態これから起動するんだよ。」

そう言うと、ギルは中身を取り出しそれぞれを机に並べる

「マイスター権限行使、コール。」

キィィィン・・・

ギルが何かを行った直後棒が光り始めその光が収まったあとそこにあったのはSOCOMによく似た銃だった。

「・・・これは・・・。」

「君のデバイス、名前はまだないから便宜的にTAって呼んでる。」

「TA?」

「タクティカルアームズの略称さ。」

「そうか・・・で?」

「で、って?」

「今回はどんな機能をこいつに組み込んだ?」

こいつの悪い癖・・・それは、自分で開発した装備に必ずと言っていいほど余計な機能を組み込むことだった。

以前も、頼んでおいたXM8の口径が無駄に大口径化していたり

普通のナイフを頼んでいたのにスペツナズナイフになってたり

しかもそれを事前に説明しないものだからなおのことタチが悪い。

「随分な言い方だなぁ・・・まぁ今回は色々と実験的な機能をつけたけど、一言で言うならあらゆる状況に対応できるデバイスかな?。銃3種に篭手、刀、槍に変形できるよ。」

「銃はまだわかるが、刀や槍ってなんだよ?今まで使ったこと無いぞ。」

「ボスや他の人にいろいろ教わってたのを僕が知らないとでも?」

「・・・あれを『教わってた』って言えるんならな・・・。」

 

そう、それはまさに地獄だった。

オヤジがまだ健在だった頃俺は親父について各地を渡っていた(もちろん戦闘もしていた)

うちの団は、オヤジをはじめ戦闘狂ばかりで構成されていた(俺とギルを除く)ため、

事あるごとにやれ手合わせだやれ模擬戦だなどと理由を付けては俺をいたぶっていた。

・・・アレ?なんだか突然ピンク髪の剣士の姿が思い浮かんだが、キットキノセイダロウ・・・。

ともかくその中で格闘術、刀術、槍術、鋼糸術、etc・・・を強制的に仕込まれたのだ。

まぁおかげで先日のシグナムとの手合わせの際にあれだけ相手を圧倒できるほどの技を手に入れらたのであるが・・・。

「まぁ、使う使わないは君の自由だから。」

「そりゃそうだが・・・。」

「じゃあそういうことで、使い方やその他の情報はこの端末に入れといたからちゃんと見てくれよ?」

「メンテ方法は?」

それだけいろいろな機能を付けたモノだこまめなメンテが必要だろう

「もちろん入ってるよ、いつも通り設計図付きで。しかしいつも思うんだけど、君って本当に万能だよね。」

「・・・どういうことだよ?」

「だって普通自分で装備をばらしてオーバーホールしようなんて考えないよ?」

「俺なんて大したことないさ。オヤジなんてオーバーホールどころか自分で設計してたぞ?」

「・・・あの人は万能っていうより超人だったからね、比べようがないよ。」

はぁ・・・と二人揃って溜め息をつく、全くあのクソオヤジは・・・。

と、改めてあのオヤジの人外度に辟易としつつもデバイスやバリアジャケットなどに関して、ギルから大まかな説明を受け

 

「まぁとにかくありがたく受け取っておくさ、またなんかあったら頼む。」

「あぁ、楽しみにしておくよ。」

最後にそう言葉を交わして俺は研究所を後にした。

 

帰宅後、シグナムから

「模擬戦をするぞ!!」

としつこく言われたのは言うまでもない・・・やらなかったけどね!?

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あとがきに似せたメモ

 

どうも、お久しぶりです

前回から実に週間も間が空いてしまいました。申し訳ないです。

しかもちょっとづつ書いていたためだいぶ構成がおかしくなっている可能性があります。

読んでいてアレ?と思うところがあれば遠慮なく書いてください。

ただし、「つまんね」とか「駄文書くな」など、ただ単に否定するのは遠慮してもらえるとありがたいです。

 

ちなみにデバイスの外観イメージですが

篭手・・・真・恋姫?無双の焔耶が付けている篭手

刀・・・スパロボOGのシシオウブレード

槍・・・境界線上のホライゾン本田二代の蜻蛉切

銃@・・・H&K SOCOM Mk23

銃A・・・H&K XM29

銃B・・・バレット XM500

 

ってな感じです。

詳細が知りたければググッてください。

 

参考までに紫苑君の魔導士ランクはAAA+で、魔力量はなのは(9才時点)の約半分程です。

そのうち設定をまとめたものをあげたいと思います。

自分でも把握しきれなくなるんで・・・。

 

ではまた次回お会いしましょう

 

2011 12/15 初稿

2012 7・16 本文を一部改訂 

説明
久々の投稿になります

あとがきにも書きましたが今回はかなり構成がおかしくなっていると思うので
少しでもおかしいところがあったら教えていただけるとありがたいです

あとタイトルを変えました。
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コメント
最近見つけて楽しjく読まさせていただいてます、なのは達との自己紹介のところで「紫苑」が「詩音」になってます(氷屋)
骸骨さんコメントありがとうございます。斬艦刀にしてしまうと力任せにぶった斬る感じがしたんで、シシオウにしました。(june)
勇心さんコメントありがとうございます。その手があったか!!>カズマのシェルブリッド(june)
紫苑、オーバーホール出来る時点で十分すごいよ。私は刀と聞くと、ダイゼンガーの斬艦刀を妄想しますwww(量産型第一次強化式骸骨)
今回も楽しく読ませていただきました。メカニックでオリキャラ友達はアツイですね〜。デバイスの篭手も焔耶のやつならかっこいいので自分的には大いにありですね!!自分は装着型をイメージするとスクライドのカズマのシェルブリットを妄想してしまいますがww(勇心)
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