ハルナレンジャー 第二話「研究者誘拐」 B-2
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Scene5:天宮研究室 AM10:00

 

「…で、出勤してみたら電気は点けっぱなし、扉は開けっ放し。まあ博士が研究に夢中になってると良くあることなんで、その時は特別気にはしてなかったんですけど」

 翌朝。ちょっと戸惑った様な顔をした助手の話を聞いているのは、言わずと知れた青山である。

「様子がおかしいと気づかれたのはいつごろっすか?」

 手帳にメモを取りつつ。と言っても、どうにも手元が寂しいからで、いまいちどう書けばいいのかは分かってない。

 刑事ドラマとかだと下っ端がメモしてるよな……あれ何て書いてんのかなあ……書き方とか、講習受けるんだろうか。

 などと、益体もないことを考えつつ。余白にチューリップが増産されていたり。

「駐車場の定位置にワーゲンが……いえ、博士の愛車なんですけど、止めっぱなしでしたんで。研究所のどこかで寝てるのかなとも思ったんですが」

 どこかってどこだよ。

 ほとんど研究室で占められている研究所の見取り図を思い出して、青山は心の中で突っ込む。

 受付にさえソファーすら見かけなかったのだが、その辺の廊下で横になってたりするのだろうか?

「先ほどその……博士から電話がありまして。しばらくダル……とかなんとか……」

「ダルク=マグナ?」

「そうそう、そのダルクなんとかを手伝うから留守にすると。所には適当に言っておけと言われたのですが」

 適当ってなんだ。

 相当型破りの博士のようだ。すっかり弱り切っていた副所長の顔を思い出す。

 そりゃまあ、昨日の今日で二度目ともなればなあ……

 しかし、今回ばかりは奴らの方が一枚上手だった。

 まるで警備の配置変更を事前に察知していたかのように、鮮やかな手並みで侵入。

 朝になってあちらからの連絡があるまでは、事件があったことすら気付かせない手際の良さである。

 前日あっさり見つかって大騒ぎを引き起こした連中とは思えない。

 あるいは、油断させるためにわざとやったのだろうか。

「……ん?つーことは、博士は自分の意志でついて行った、ってことっすか?」

「はあ、まあそうなりますかねえ」

 ますます困ったような顔をする助手。

 しかし、これでは青山の方も困ってしまう。

 不法侵入はともかく、大の大人が自分の意志でついて行ったのならこれは事件ではない。

 事件ではないが……

「参考までに、博士の研究されてた内容ってどんなもんなんすかね?」

 悪用されれば大問題だ。

 いやむしろ相手は世界征服を企む悪の秘密組織であるからして、悪用しないわけが無い。

 ことによっては研究所の看板にも泥を塗る事になりかねない。

 なにより、その「悪用された研究」をまず最初に相手しなければならないのは自分たちなわけで。

 厄介な内容なら相応に対処を考える必要がある……腹痛とか風邪とか。

「いや、その……それが……」

「ああ、企業秘密っすか」

 頭を掻く助手に気を回したつもりの青山だったが、続く助手の言葉に目を丸くする。

「正直何もやってなかった、と言いますか……」

「……は?」

 

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