LyricalGENERATION 1st エピローグ |
―――PT事件から一か月後―――
オーブのとある学校、そこでシンは花壇の花に水をあげながらフェイト達の事を思い出していた。
「フェイトやデスティニー達元気かな……あれからどうしたんだろう?」
事件後、シンは管理局による軽い事情聴取の後、オーブにいる両親の元に帰されていた。
デスティニーは管理局により性能の調査という名目で没収されており、彼女は現在裁判を受けているフェイトやアルフ、ヴィアと行動を共にしている。
因みにシンがいない間家族や学校は大騒ぎしたらしく、いじめを苦に家出したとか、いじめっ子が何かとんでもない事をやらかしたとか、とある反コーディネイター組織に攫われたとか、そりゃもう沢山の人が疑われるちょっとした大事件になっていた。
(フェイトが知ったらきっと落ち込むんだろうな……)
その為なのかシンをいじめていた子達は周囲に皆に疑いの目を掛けられ色々酷い目にあい、彼が無事に帰って来た時はもういじめを行うことはなくなっていた。
「まあそれだけはラッキーかな? 学校の勉強遅れちゃったけど」
そして花壇の整備を終えたシンはカバンを背負ってそのまま家に帰るのだった。
数分後、帰宅してきたシンを彼の母親と妹のマユが出迎えた。
「あ、お帰りなさいシン」
「ただいまー母さん」
「おにいちゃーん、あそんでー」
まだ幼稚園の年少程度のマユはシンがしばらく家にいなかった反動か、最近彼によく甘えるようになっていた。
「ちょっと待っていろよー、今うがいと手洗いしてくるから」
「うんー」
そんなシンの様子を、シンの母は嬉しそうに見つめていた。
「ふふふ……なんだかシン、あの事件から随分としっかりしてきたわね」
その時、家にある電話が鳴り響き、シンの母は受話器を取った。
「はいアスカです……ええ?……ああ、はい……」
その頃シンは居間でマユの遊び相手をしていた。
「ねえねえおにいちゃーん、またまほうみせてー」
「またかよ? しょうがないな」
そう言ってシンは指先に魔力を溜めると、そこから綺麗な光を放った。
「わ〜! きれい〜!」
「ほーらほら、字も書けるぞー」
シンは今もジュエルシードがリンカーコアを形成している影響か、デスティニーがいなくても簡単な魔法を使う事ができた。
「おにいちゃーん、マユもまほうつかいたいー」
「うーん……こういうのは適正があるかどうかだからなー、今度リンディさんに頼んで検査してもらうかな?」
するとそこに、電話に出ていたシンの母が彼等の元にやって来た。
「シンー、リンディさんからお電話よー」
「リンディさんから!?」
そう言って母はシンに受話器を渡す。
「もしもしシンです……はいお久しぶりです……ええ!? フェイトが!? わ、解りました……父さんにも伝えておきます……」
シンは話を終えると受話器の通話ボタンを切る。
「おにいちゃん、さっきのおでんわなーに?」
「うん……リンディさんから、今度フェイトがこの世界に来るって……」
数日後の土曜日、シンはリンディに指定された海岸線にある崖の上の公園にやってきた。
「リンディさんが言っていた場所は……あ! あそこにいるのは!」
そこでクロノと人型形態のアルフ、そしてフェイトの姿を発見する。
「おお〜! シン! 久しぶりだねえ〜!!」
まずアルフがシンの姿に気付き、まっさきに彼にギューっと抱きついてきた。
そしてアルフの後ろをクロノとフェイトが歩いてくる。
「あ、アルフ苦しいよ!」
「ああ、ごめんごめん……」
アルフの豊満な胸の圧迫付きのハグから解放されたシンは、そのままフェイトとクロノの方を向く。
「二人とも……久しぶり」
「ああ」
「シン……」
その時、クロノが持っていた鳥かごのようなものから、突如デスティニーが飛び出してきた。
「主、お久しぶりです」
「デスティニー!」
「管理局の検査が終わって許可が下りたんだ、デスティニーを君に返還する、その方が彼女にとっても良さそうだし」
クロノの話を聞きながら、シンは30センチほどしかないデスティニーを自分の右肩に座らせ、頭を優しく撫でてあげた。
「今日から一緒に暮らせるんだな! 父さんや母さん、マユもデスティニーの事歓迎してくれるよ!」
「そうですか、とても嬉しいです」
デスティニーは心の底から嬉しかったようで、シンに向かって優しい笑みを向けた。
そんな二人を見て、フェイトはモジモジしながら話しかけてきた。
「あの……シン、少し二人で話したいことがあるってリンディさんが伝えてくれたと思うけど……いい?」
「話は聞いているよ、それじゃデスティニー……ここでみんなと待っていてくれ」
「畏まりました」
「ここにいられる時間はあまり無いからな、要件は簡潔に済ましておけよ」
クロノに時間が無い事を聞きながら、シンとフェイトは二人で公園の奥の方に、横に並んで歩いて行った。
「ここ、なんだか海鳴に似ているね、潮風が気持ちいい……」
「そう言えばそうだなあ、ん?」
その時、シンはツインテールを作っているフェイトのリボンが、いつもの黒い紐状の物ではなく白い布状のものになっていることに気付いた。
シンはそのリボンに少し見覚えがあった。
「フェイト、そのリボンもしかして……なのはの?」
「うん、実はここに来る前に海鳴に寄ったんだ、そこでなのはとリボンを交換したんだ」
「へえ、似合うじゃん」
よく見るとフェイトは先ほどまで泣いていたのか、目の下が少し赤くなっていた。
「泣いちゃったの? やっぱり」
「うん……でももう大丈夫、実はなのはと私は友達になったんだ、このリボンはその証……」
そう言ってフェイトはなのはからもらったリボンを愛おしそうに撫でた。
シンはそんな彼女の姿を見て、心臓がドクンドクンと鳴っているのを感じた。
(フェイトのあんな優しく笑う顔……初めて見るかも)
そして二人は自身の近況など何気ない会話をしながら、公園の中でも一番の名物である海が一望できる花畑にやってきた。
「すごい……きれいな海だね」
「うん……」
フェイトは透き通るような雲一つない青空と、それを映し出す広大な海を見て思わず声を漏らす。
そして二人は再び歩き出し、花畑に植えられている色とりどりの花を眺めながら言葉を交わした。
「裁判のほうはどうなの? やっぱり牢屋とかに入れられちゃうの……?」
「大丈夫だよ、リンディさん達が弁護してくれているし、それに私……裁判が終わったら管理局で働くつもりなんだ」
「え!? そうなの!?」
フェイトの話を聞いて、シンは目を見開いて驚き、思わず彼女の方を振り向いた。
「うん、そうすれば刑も軽くなるし、それに……」
「それに?」
「私や母さんみたいに悲しい思いをする人を、少しでも減らせればいいなって思って……」
「そっか……」
シンはフェイトの決意の裏にある悲しみに気付き、思わず目を逸らしてしまう。
「ゴメン……」
「どうして謝るの?」
突然謝られ、フェイトは理解できずに首を傾げてしまう。
シンは悲しい顔をしながら言葉を続ける。
「俺がもっと強かったら、プレシアさんを助けることができたのに……悲しい思いをさせて……」
するとフェイトは優しく微笑み、そのまま首を横に振った。
「それは違うよ、母さんは私たちを守るためにあの選択をしたんだ、とても悲しかったけど……それでも最後に母さんの優しさに触れることができてよかった、それに……」
フェイトは俯いたままのシンの前に立ち、彼の手を自分の両手で優しく包み込んだ。
かつて暴走したジュエルシードを両手で抑えようとした時、彼が自分にそうしてくれたように、自分のぬくもりを伝えるように。
「シンは私に沢山の物をくれたよ、シンが傍にいてくれたから、なのはと向き合う勇気を持てたし、母さんと心で通じ合うことができた、ありがとう……」
「う、うん……」
シンはフェイトの微笑みを見て、心臓の鼓動をさらに激しく鳴らす。
(なんだろうこの気持ち? すごくドキドキする、フェイトの顔は何度も見ているのにどうして……)
シンは自分の心の変化に戸惑いつつも、フェイトに伝えたいことがあるのを思い出し、少し声のトーンを高くして彼女に話しかける。
「そうだ、あのさフェイト……実は俺も管理局で働きたいって思っているんだ」
「え!? そうなの!? でもどうして……?」
「そうだなあ……俺もフェイトと同じ理由だよ、悲しい思いをする人なんて出さないよう、皆を守れる強さが欲しいんだ、管理局にはそれがあるかなって思って……」
シンの頭の中に、時の庭園で共に戦ったゼスト隊の戦いぶりが思い浮かんでいた、彼らの素晴らしい戦いぶりに……シンは一種の憧れの様なものを抱いていた。
対してフェイトはとても嬉しそうな顔で、シンの決意を歓迎した。
「うん……うん、いいと思うよ、もしかしたら私たち同僚になるかもしれないんだね」
「だな、でもまずは互いにやるべきことをしっかりやらないと」
「そうだね……」
ふと、シンは花畑の中心に建てられている柱の先端に付けられた時計を見る、長針はもうすぐフェイトが出発する時刻に迫っていた。
「もうそろそろ行かなきゃ……それじゃまたね、シン」
「うん、いつかまた会おうな、今度はマユやなのは達も一緒に!」
「うん……!」
そんな二人の様子を、物陰からコソコソ観察している影が三つ。
「むう、主とフェイトさん、どちらかが告白するかと思いましたが……予想が外れてしまいました」
「いい雰囲気なんだけどねえ」
「なんで僕まで付き合わなきゃいけないんだ……」
二人の様子が気になって仕方がなかったデスティニーとアルフ、ついでにクロノは気付かれないように尾行していたのだ。
(ま、二人なら私が心配しなくても自然とくっつくと思いますが……障害も私が取り除けばいいんですし)
そんな中デスティニーは、シンとフェイトを母性に満ちた目で優しく見守っていた。
(大丈夫……大丈夫、私が主を幸せにする……運命なんかに邪魔はさせない)
そして少年少女達は未来へ歩き出す、自分達の歩く道が、いずれ皆の道と重なり合う事を信じて……。
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エピローグ「私は笑顔でいます、元気です」
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〜一か月後〜
海鳴市にあるなのはの実家で喫茶店でもある“翠屋”、そこになのはは友達と共に学校から帰ってきた。
「ただいまーお母さん!」
「おかえりなのは、フェイトちゃんからお手紙来ているわよー。」
「フェイトちゃんから!? わかったー!」
なのははすぐさま母親から手紙を受け取る、その後ろからなのはの友達二人が内容を確認するため覗き込んでくる。
「フェイトって確かなのはの外国の友達よね?」
「私も見たいなー」
「うん! いいよー!」
そしてなのはは友人らと共に自分の部屋に向かって行く、そんな彼女たちの後姿をなのはの母親は優しく見送った……。
ミッドチルダのとある医療施設、そこでクロノとエイミィは集中治療室で眠っているアリシアを観察しながら今後の事について話し合っていた。
「経過の方は特に問題ないようだな」
「うん、でも予断は許さない状態みたい」
「ああ、ヴィア博士はいつかあの細胞を作ったカッシュ博士とやらに会って意見を聞きたいと言っていたがな……彼のいる世界には色々と問題があるらしい、中々許可が下りないそうだ」
「問題?」
「FCの世界は現在、戦争が起こる可能性があるらしい……そんな危険な世界に上層部は関わりたくないようだ、まあその内許可を取り付けてみせるさ、あの子の為にもね」
「ふふふ……もしかしたらクロノ君、あの子のお兄ちゃんになるかもしれないもんね」
アースラにあるフェイトの自室、そこでフェイトはアルフと共にビデオレターの撮影を行っていた。
「じゃあフェイト、スイッチ押すよ」
「うん」
フェイトはアルフがスイッチを押したのを確認すると、緊張した様子で喋り始めた。
「えっと……久しぶりだねシン、そっちはうみゃ……うにゃ……」
「はい駄目ー、カミカミじゃないかー」
そう言ってアルフはビデオの録画ボタンを切る。
「うーん、なのはの時は緊張しないのになー……ちょっと休憩してからにしよっか」
「わかったよー」
ふと、フェイトは机の上に飾られている写真立てを見る、そこにはプレシアと幼い日のアリシアが映っている写真が入っていた。
「あ、そうだ……」
フェイトはある事を思い出し、先日買っておいた新品の写真立てにとある写真を入れ、プレシア達の写真立ての隣に置く。
その新しい写真立ての中には、先日オーブに行った時に撮ったシンとフェイトが一緒に映った写真が入っていた。
(シン……私これからも頑張るよ、どれだけ離れていても……アナタと一緒だから)
オーブのとある公園、そこにシンはデスティニーとマユと一緒に来ていた。(マユに魔法を見せてとせがまれたので)
「それじゃ今からセットアップするからな、よーっく見てろよマユー!」
「がんばれー!おにいちゃーん!」
「周りに人の気配はありません、いつでもどうぞ。」
そしてシンは背中に大きな翼を生やして、大空へと飛び立った。
「シン・アスカ! デスティニー行きます!」
それは、星の海を掛ける“白い悪魔”と呼ばれる機械人形が、世界を平和へ導く英雄として君臨するいくつもの物語と、数多なる世界を駆け秩序を管理する魔導師達の世界が、一つの物語として融合していく物語。
それは……本来少年が辿る筈だった悲しい運命が、一人の少女との出会いにより大きく変わって行く物語。
やがて少年は少女に守りたいものを守る黄金の剣を貰い、数多の世界を守る“ストライカー”へと成長していく……。
海鳴市のとある海沿いの遊歩道……そこで車いすの少女が少し年上の少年と共に散歩をしていた。
「もう六月なんやな、どうりで最近暖かくなってきた筈や」
「そうだな……」
「花火大会今年はできるんやろうか……去年は雨で何回も順延しとったから」
「その前に誕生日だろう? プレゼントは何がいいんだ?」
「えー? そんな気を使わなくてええよー」
「そうか……」
その時、先程まで晴れ模様だった空が急に曇り空に変わっていった。
「ん? これはひと雨来るな……はやて、そろそろ家に帰ろう」
「うん、それじゃ帰ろか……スウェン」
Next Stage “Lyrical GENERATION STARGAZER”
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エピローグになります、この後短編を挟んでAs編に行きます。 | ||
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FDPさん:ストライカーズ編はまだ大分先になっちゃいますねえ(okura) おわっちゃいましたね〜〜 ストライカーズになった時が楽しみです。(FDP) |
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