寂しがり屋の女の子の為に…… 拾捌話
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俺は今、華琳に呼び出されて華琳の部屋に来ていた。

 

「一刀……あなたに二つほど知らせたいことがあるの」

 

華琳は辛そうな顔をしながらそう言ってきた。

別に華琳のことじゃないのにな。

 

「父上と何進が死んだってことか?」

 

昨日、中央から手紙が来て父上と何進が死んだことを知った。

別に手紙がこなくても知れることだったから手紙を送ってこなくても良かったんだけどな。

 

「知ってたのね……あなた、何進と陛下の葬儀に行かなくても良いの?」

 

「別に良いさ。葬儀に出る暇があったら乱世を鎮める努力をしろって父上に怒られるだろうからね。

何進も同じだろうし」

 

あの二人は自分が死んだら他人に悲しんで欲しくないって常に言ってた二人だからな。

今回葬儀が開かれることも良しとしていないだろう。

なのに……何で……何で華琳は悲しそうな顔をしているんだろう?

 

「一刀……少しは素直になりなさい。

泣いても良いのだから」

 

「ふっ……そんなこと言うなよ」

 

俺はそう言いながら微笑んだ。

 

「俺は別に大丈夫だよ」

 

「嘘ね」

 

華琳はそう言いながら立ち上がり俺に近づいてくる。

 

「嘘じゃないさ。俺は別に……華琳?」

 

華琳は俺を後ろから抱きしめていた。

 

「泣きたかったら泣きなさいよ。そうでなくても悲しかったら私には素直に悲しいって言いなさい。

私はあなたの伴侶なんだから」

 

「そんなことを言うなよ……」

 

そんなことを言われたら……

 

「泣きたくなるじゃないか」

 

俺は手の平で目を覆い隠す。

華琳に目から流れている物を見られない様に……

華琳はずっと俺の顔を見ないでいてくれた。

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華琳の部屋に呼び出された翌日俺は華琳と共に街に視察に来ていた。

それで華琳が良く来ると言う店に向かっていた。

 

「あれ?季衣じゃないか。お〜い!」

 

俺は季衣に向かって手を振る。

季衣は俺気付いて手を振り返してきた。

何だか華琳が俺に殺気を向けてるのはきのせいだと思いたい。

 

「兄ちゃん!華琳様も!」

 

「やぁ、季衣、何をしていたんだ?」

 

「秋蘭様が美味しいって言ってたお店でご飯食べようと思ってさ」

 

季衣はそう言いながら店に入る。

何だか気を使わせてる様な気がするな……

何だかんだ言って季衣も良く気を使ってくれるからな。

華琳も同じことを思っているのか苦笑していた。

俺達は店に入って適当な席に座る。

 

「俺は炒飯大盛り二つで良いかな?華琳は何食べる?」

 

「あなた、炒飯大盛りを二つも食べられるの?」

 

「まぁね。ところで華琳は何食べるの?」

 

「一刀と同じで炒飯よ。でも、大盛りじゃないからね」

 

確かに華琳が炒飯の大盛りを頼んでいるところを想像しても想像できない。

 

「すいませ〜ん」

 

「は〜い!あ、曹操様」

 

「今日は誘いに来た訳じゃないわ。

この人と昼食を食べに来たのよ」

 

俺が呼んだ給仕の人は華琳と知り合いらしい。

華琳がさっき『誘いにきた訳じゃない』と言っていたのが気になるが今は注文が先だ。

 

「えっと……炒飯大盛りを二つと普通の炒飯を一つで」

 

「はい、分かりました!」

 

給仕の人はそう返事をして厨房に戻って行く。

そこで俺は華琳に尋ねる。

 

「なぁ、華琳は今の人誘ってたのか?」

 

「ええ、とても料理が上手いから召抱えようと思っているのだけど何でも知り合いとこの街で合流する約束を

しているらしいのよ」

 

「へぇ、なら俺が協力できるかもな」

 

俺は警備隊を手伝っている俺ならば色々と協力できる筈だ。

そんなことを思っていると先程の給仕さんが料理を持ってやって来た。

すげぇ……俺が頼んだ奴全部一回で持って来た。

 

「なぁ、知り合い待ってるんだって?俺、警備隊の手伝いをしてるから手伝えるよ。

その親友の特徴教えてくれないか?」

 

「えっと……住みこみの仕事が見つかったって連絡が来たんですけど……

力に自信がある子だから多分力を使う仕事だと思います」

 

「へぇ……じゃぁ、その親友の真名じゃない方の名前を教えてくれないか?」

 

「えっと……許緒です」

 

………はい?

今何だか聞き覚えがある名前が聞こえた様な気が……

 

「えっと……許緒だよな?」

 

「はい」

 

えっと……許緒って確か季衣の姓名だよな?

つまり許緒=季衣ってことでこの人は許緒を探してるんだから季衣を探してるってことだよな?

季衣だったら……

 

「許緒だったら……あそこに居るぞ」

 

「え?あーーーーーーーーーっ!」

 

俺が指した方を見て給仕の人は叫んだ。

その叫び声を聞いて季衣は給仕の人を見る。

 

「流流!どうしてたの?遅いよ」

 

「遅いよじゃないわよーっ!あんな手紙を寄こして私を呼んだと思ったら、何でこんな所に居るのよーっ!」

 

「ずーっと、待ってたんだよ。城に来いって書いてあったでしょーっ!」

 

「季衣がお城に勤めてるだなんて冗談としか思わないわよ!

大きな建物をお城だと勘違いしてると思って……もうぅっ!」

 

すまん、季衣……

多分俺も彼女と同じことを思うかもしれない……

 

「季衣のばかーーーっ!」

 

「流流に言われたくないよ!」

 

おわっ!武器を取り出しやがった!

!まずい……!

 

「一刀、止められる?」

 

「言われなくてもやるさ!」

 

俺はそう返事を湯呑みを持ってして立ち上がり二人に近づく。

そして……

 

バリンッ!

 

湯呑みを握り潰した。

これ破片が手に刺さらない様に工夫するの大変なんだよなぁ……

 

「二人共やめろ。それ以上は許さない」

 

二人共俺の覇気(勿論本気では無い)に二人は怯えて武器をしまった。

 

「そちらのお二方も止めようとしてくれて感謝する」

 

俺は季衣と流流を止めようとして立ち上がった二人に頭を下げる。

俺が急いで止めたのも二人が無茶をしない為にだ。

 

「いえ、結局何も出来ませんでしたから」

 

「アニキすげぇな!何者?」

 

「俺はこの地を治める曹孟徳に仕えてる劉喬契って者だよ」

 

「「劉喬契って……剣神!?」」

 

何とまぁ、ホントに俺は有名なんだな。

いつも思うことだけど俺が剣神だったら俺が本気の時でも一撃しか入れられない翁は何になるんだろう?

 

「ついでに言うと私、曹孟徳の夫よ」

 

華琳さん、そう言うことを公言しないでください。

あなたは恥ずかしくないんですか?

 

「……お初にお目にかかります、曹孟徳殿。私は顔良と申します」

 

ああ、この人華琳に用があったのか。

てか、途中まで放心してたな。

 

「あたいは文醜!我が主、袁本初より言伝を預かり南皮の地よりやって参りました!」

 

その言葉を聞くと華琳は不機嫌そうな顔になりこう言った。

 

「聞きたくない名前を聞いたわね。

まぁ、良いわ。取りあえず城に戻りましょう」

 

華琳の言葉で俺達は城に戻ることになった。

と言うかまだ季衣と給仕の子が睨み合ってるんだけど……

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玉座の間

 

「袁紹に袁術に公孫賛、西方の馬騰まで……

良くもまぁ、有名どころの名前を並べたものね」

 

華琳が言った名前はいつか来ると思っていた反董卓連合に参加する有力な諸侯の面子だ。

やっぱり牡丹は来るのだろうか?

 

「董卓の暴政に都の民は嘆き、恨みの声は天高くまで届いていると聞いております。

先日も、董卓の命で官の大粛清があったとか……」

 

「それをなげいた我が主は、よをただすため、董卓をたおすちからをもったえいゆうのかたがたに……」

 

「見事な棒読みだな」

 

夜月、それを言ってはいけないんだよ……

 

「持って回った言い方はやめなさい。あの麗羽のことだから……

どうせ、董卓が権力の中枢を握ったことへの腹いせなのでしょう?」

 

「う……っ」

 

図星か。

 

「その大粛清も都で悪い政事をしていた官を粛清しただけと聞いているわよ。

統制が取れていない文官がやりたい放題にしていることを、董卓の所為にしているだけではなくて?」

 

「……良く知ってますねー」

 

バラすのかよ……

 

「あまり知りたくないけれどね。どう思う、桂花」

 

「は。顔良殿、先程挙げた諸侯の中で既に参加が決まっている方々は?」

 

「先程挙げた皆様は既に。今も、流れを見ていた小戦力や袁家に縁のある諸侯達を中心に続々と参加の表明を受けております」

 

劉備や孫策は参加するのか?

だったら会ってみたいな。

 

「おい。その中に孫策と言う奴は居るか?」

 

春蘭は借りがあるからその借りを返したいのか。

 

「孫策……ですか?文ちゃん、知ってる?」

 

「んー。袁術さまの怖い姉ちゃんかな……?」

 

怖い姉ちゃんって……やっぱり孫策も女なのか?

 

「おお、それだ!」

 

「その方なら、恐らく袁術様と一緒に参加されるかと」

 

「華琳様!」

 

春蘭が嬉しそうに続けようとしたが桂花がそれを遮った。

 

「春蘭、私情は控えなさい。個人的な借りを返す為に参加するなど愚の骨頂よ」

 

「うぐ……」

 

まぁ、春蘭には悪いけど正論だな。

それを分かってるから春蘭も何も言い返さない訳だし。

 

「桂花、私はどうすれば良い?」

 

「ここは参加されるのが最上かと……」

 

その言葉に春蘭が反応する。

 

「貴様、私の意見は散々こき下ろしておいて、結局は賛成なのではないか!」

 

桂花は呆れながらこう言った。

 

「……当たり前でしょう。華琳様、これだけの英傑が一挙に揃う機会など、この先あるとは思えません。

ここで大きな手柄を立てれば、華琳様の名は諸侯の間に一気に広まります」

 

「同意見なのです」

 

美蓮が手を振りながらそう言った。

確かに董卓はもう世間の間では悪とされているだろう。

その董卓を民は既に恨んでいる筈だ。

だから、参加しなくてはその悪を擁護するとされこちらの状況を悪くするだろう。

そう言えばあの手紙の主と会うのも反董卓連合の時の洛陽だと書いてあったな。

 

「顔良、文醜、麗羽に伝えなさい。

曹操はその同盟に参加する、と」

 

「はっ!」

 

「ありがとうございます!これで麗羽様にお仕置きされなくても済みます!」

 

袁紹も文醜達のお仕置きするのか……

そりゃ、この時代で同性愛者が多いのは知ってるけれども……

はぁ……

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「この辺と聞いたんだけどな……」

 

森を進んで行くと木々の間から轟音が鳴り響いた。

木刀や模造刀をぶつけ合う程度じゃない。

金属の塊がぶつかり合う様な明らかな異様な音だ。

更に信じられないのが……

 

「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……」

 

「ふぅ……ふっ…ふぅ……ふぅ、ふぅ……」

 

この息をきらしている少女二人がこの異様な音を出していると言うことだ。

 

「どう?調子は?」

 

その言葉に先に来ていた真桜が答える。

 

「この通りですわ」

 

「本当に徹底的にやってるぜ」

 

「ウチ、何度死ぬ思うたか、教えたろうか?」

 

「いや、良い……」

 

俺達が話してる間も二人の激突は続いている。

二人共一撃必殺の攻撃だな……

流石の俺でもあの攻撃の中央に入るのは迷うだろうな。

 

「……流流、お腹すいた」

 

「……作ってあげるから降参しなさい」

 

「……やだ、流流をぶっ飛ばして作らせるんだから!」

 

「言ったわね!なら季衣を泣かせてごめんなさいって言わせてやるんだから!」

 

攻撃は一撃必殺だけど喧嘩の理由は本当に子供だ。

 

「ちょりゃぁぁぁぁっ!」

 

「てやぁぁぁぁぁぁっ!」

 

まだやるらしいがあれで良いだろう。

変にしこりを残すよりはましだろうからな。

 

「ところで面会ってどうなったん?」

 

「結局俺達は都に遠征することになった。

もう沙和と凪には準備をしてもらってるよ」

 

「都かぁ……」

 

「恐らくこの遠征で都の権力は失われる。

大陸ももっと混乱する筈よ」

 

「そうだろうなぁ……」

 

恐らく黄巾党の時が凪の海位に思える位混乱するだろう。

恐らく今回守るための力を溜めずに遠征したのは混乱が起こるのを外から見るよりも

内側からしっかり見届け確実に収めたいと言う思考があるんだろう。

まぁ、そんな思考が無かったら俺も華琳には仕えなかったけどな。

そんなことを思っている間にも季衣と季衣の親友の決着が着きそうになっていた。

 

「……きゅう」

 

「……うみゅう……」

 

「相討ちか……」

 

まぁ、分かっていたことだけどな。

 

「……ごめんね、流流、ボク、流流と早く戦いたくて……

ちゃんと手紙を書かなかったのがいけなかったんだよね」

 

「……いいよ。わたしも季衣と早く働きたかったから。

州牧様の所で働いてるのは驚いたけどね」

 

「じゃぁ、ご飯作ってくれる?」

 

「うん、一緒に食べよ」

 

あの二人は仲が良いなぁ。

そんなことを思っていると華琳が季衣と季衣の親友の二人に近づきこう言った。

 

「ようやく決着が着いた様ね」

 

「あ、華琳様……」

 

「曹操様……」

 

「立ちなさい、典韋」

 

典韋!?

誰も持ち上げられることができなかった牙門の旗を片手で持ちあげたことで趙龍に一目おかれることになった

あの!?

典韋と呼ばれた少女は頷きながら立ち上がった。

 

「もう一度誘わせてもらうわ。季衣と共に料理人としてではなく一人の武人として」

 

「分かりました。季衣にも会えたし季衣もこんなに頑張ってるならわたしも頑張れます」

 

「ならば、私を華琳と呼ぶことを許しましょう。

季衣、この間の約束、確かに果たしたわよ」

 

その言葉に典韋は首を傾げる。

それを見て俺は捕捉説明をする。

 

「季衣の願いを一つ叶えてやると約束してたんだ。

あ、俺は劉喬契って言うんだ。

よろしくな」

 

「劉喬契ってまさか剣神劉郷さんですか!?」

 

俺ってこんな子供に知られる程有名だったのか。

自分でも知らなかった。

 

「季衣、流流の件は任せるわ。流流も分からないことは季衣に聞きなさい」

 

「はいっ!」

 

「分かりました!」

 

俺達はこうして典韋こと流流を新たな仲間として迎えた。

説明
拾捌話目投稿です。
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コメント
カイ様コメントありがとうございます。すいません、真桜ではなくて凪の方でした。すぐに修正します。(DOWANNGO)
すいません、質問です?真桜は、季衣・流琉の喧嘩を見てたんですよね?何時準備する暇があったんですか?(カイ)
きたさん様コメントありがとうございます。すいません「相討ち」でしたね。すぐに修正します。(DOWANNGO)
「相内か……」って「相打ち」「相撃ち」「相討ち」  さてどれが正解?(きたさん)
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