はがない 肉はロリ分が少ない 承
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肉はロリ分が少ない 承

 

 

「ふっふっふっふ。あたしってば超完璧〜♪ 自分の溢れ出てしまう才能が怖いわ♪」

 徹夜明けは太陽が眩しい。そして視界全体が黄色く見えている。時々意識だけ空へと飛んでしまいそうになる。理科の言葉を借りればユニバ〜〜スな感触。

 けれど、この眩しさと浮遊感があたしの勝利を前祝いしてくれているかのように感じる。

 

 『小鳩ちゃんは俺の嫁計画のプレリュードに仕方なく小鷹攻略大作戦』

 

 超マジ天使小鳩ちゃんを小鷹の近親相姦の魔の手から守る為、あたしが人身御供になって小鷹と付き合うという壮大にして献身極まりない全米が涙する感動の超計画。

 あたしはその計画を実施する為の準備を怠らなかった。獅子はウサギを狩る為にも全力を尽くすものなのよ。

 まあ、この計画が上手くいったら食べられちゃうのはあたしの方なんだけど♪

 って、だからそんなことがあるわけないじゃない!

 小鷹はあたしの絶対服従の従者になるのよ。そう、24時間恭しく付き従う従者に。

 そうなると、小鳩ちゃんは羽瀬川家で独りきりになってしまうから柏崎家で引き取ることになるのはもう決定路線よね。

 そうしたら一緒に暮らしている内にあたしと小鳩ちゃんの間に愛情が芽生えるのも当然。

 そしてゆくゆくはあたしが小鷹のお嫁さんになって、小鳩ちゃんをお嫁にもらう。両手に華。ううん、両手に小鳥状態よ。

まさに完璧。完璧過ぎる計画だわ。あたしは自分の才能が怖すぎるわっ!

 

「見て。柏崎さんが空に向かってヘラヘラ笑ってるわ。病気よ。病気」

「あんな性格だから、頭もスタイルも良いのに友達いないんだって早く気付けば良いのに」

「自分が完璧過ぎるから同性の友達がいないんだって勘違いしているから無理よ」

 

 通り過ぎていくクラスメイトたちが不穏当な内容を囁き合っていた気がするけれど無視。

 あたしの崇高なる目的の前に、新学年になって半年過ぎても名前と顔が一致しないあの子たちの戯言に付き合っている暇はないの。

 そう、今のあたしは小鷹を攻略することで頭がいっぱいなのよっ!

 

 

 そしていよいよ放課後を迎えた。

 小鷹を攻略するべく入念な下準備を積み重ねた作戦をいよいよ実行に移す時が来た。

 服装もロリっぽさを出す為に制服からゴスロリに着替えてみた。小鳩ちゃんと同じデザインだけど、あたしの清純さを強調する為に色は白にしてみた。金髪に白って最強よね♪

 そう。今のあたしは白小鳩ちゃん。髪型もツインテールにしてみた。これで小学生は最高だぜのシスコンである小鷹に負ける要素はどこにもなくなったわ!

 あたしは自分の頬をパンっと軽く叩いて気合を入れてから部室の扉を開いた。勝利と栄光を確信しながら。

 

「小鷹お兄ちゃ〜ん♪」

 

 『ロウきゅーぶ!』とそのファンサイトを丹念に探求した結果、あたしは男子高校生がみんなロリコンであることを再確認した。

 そして男子高校生が“お兄ちゃん”と呼ばれることをこの上なく好む人種であることも確認した。

 このあたしの超絶的な可愛らしさとカラオケで採点機能上位を独占する超美声をもってすれば小鷹は絶対に落ちる筈っ!

 さあ、小鷹。今だけ特別に許すわ。このあたしを力いっぱい抱きしめなさいっ!

 そして、愛の言葉を囁くのよ〜〜♪

「な、なあ……星奈……」

「何? 何っ? 小鷹っ?」

 あたしの愛らしさに参ったのよね?

 だったら、その気持ちを押さえ付けないでさっさと言葉にして開放しちゃいなさいよ。男でしょ!

「何か、辛いことがあったのか? 俺でよければ相談に乗るぞ」

「へっ?」

 小鷹が真摯な瞳であたしを見ている。素で、心配されちゃった?

 でも、まだ負けた訳じゃないわよ。小鷹はきっと、ロリ可愛くなったあたしに野獣の本性を示してしまうことを恐れているだけなのよ。部員全員の目もあることだし。

 だけどね、小鷹。あたしは羽瀬川兄妹両手に華エンドという崇高なる目的の成就の為にこんな所で止まっているわけにはいかないのよ!

 見てなさい。あたしだって伊達に毎日小鳩ちゃんを見つめ続けていたわけじゃないのよ。

 ロリっぽい言動の真髄を今、見せてあげるわ!

「クックック〜。何を言っておるのだ。柏崎星奈とは仮の名。あたしの本当の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア・星奈。1億年と2000万年の時を生きる闇の血族にして聖天使神猫なのよ!」

 右手で右目を隠す小鳩ちゃんの愛らしポーズも完全再現。

 そしてロリを極めたあたしの攻撃はこれだけに留まらない。隣人部のもう1人のロリ、高山マリアも当然チェック済みなのよ!

「うんこうんこうんこ。バカ夜空のうんこ〜っ! 小鷹お兄ちゃんは神の使徒であるあたしの威光に跪いて靴をなめなさいっての。このうんこ小鷹〜〜っ!」

 フッ。最高よ。最高ね、あたし。世界一のモノマネ芸人と呼んでも過言ではないわ。

 さあ、小鷹。ロリな魅力満載のあたしに惚れちゃいなさいっ!

「その、星奈、さ……何か知らないけれど……すまなかった」

 ……小鷹に謝られてしまった。立ち上がって背筋を真っ直ぐに伸ばし、腰を90度深く丁寧に曲げて謝られてしまった。

 何でなの?

「あんちゃん。コイツ、小鳩の真似しちょる。ウチのことをバカにしちょるんじゃああぁ!」

 小鳩ちゃんは泣きながら小鷹にしがみついた。あれっ?

「星奈のバカバカバカバカ! うんこうんこうんこうんこうんこっ!」

 マリアが泣きながらあたしに駄々っ子パンチを繰り出して来た。あれっ? あれっ?

 あたし、今、最っ高に可愛い筈なのに何で小鳩ちゃんとマリアに泣かれちゃってるの?

 しかも、すっごくキツイ瞳で睨まれちゃってるし。

「ああいう、自分のキャラに全く似合わないコスプレをして周囲を引かせる人ってどこの会場でもいますよね」

 理科は窓の外ばかり見てあたしと視線を合わせようとしない。

「星奈のあねごの今の姿を見ても動じないのが真の男……でも……グフッ」

 幸村は目と口から大量の血を流している。目を固く瞑り過ぎて、唇を強くかみ締め過ぎて血が流れ出ているらしい。

「どこのイメクラに就職したんだ、肉?」

 対照的に、あたしの肩に手を置く夜空はいつになく艶々した楽しげな表情を見せていた。

「最高に出来の悪いイメクラだ。だが、それが却って本職ぽくってグッジョブだぞ、肉!」

 夜空は白い歯を光らせながらサムズアップしてくれた。

「なぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」

 エッチな職業の女呼ばわりされて悔しい。腹立つ。でも、どうしても確かめない訳にはいかなかった。

「それじゃあ、あたしの超絶可愛い小鳩ちゃん化は……」

「肉はロリ分が少ないんだ。気持ち悪いことするな、この発情しか知らないイメクラ肉奴隷が」

 夜空に素の表情で言われてしまった。

「夜空のバカァアアあああああああああああぁっ!」

 あたしは泣きながら部室を去った。

 100mを9秒台で駆け抜けながら去った。

 涙が止まらなかった。

 

 

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 あたしが我に返ったのは自宅まで全力疾走してベッドに飛び込んだ後だった。

「失敗した原因は何? 何故小鷹はあたしに愛の告白をしてくれなかったの?」

 天才にして努力家であるあたしは上手くいかなかった際の原因の特定と打開策の選定を忘れない。

「男子高校生はみんなロリコンなのは間違いないわよね」

 『ロウきゅーぶ!』をこよなく愛する自称普通の男子高校生500人を対象にインターネットでアンケートを実施した所、498人の回答者が彼女にしたい女の子の年齢は小学生と答えた。残り2人は幼稚園児だった。

 つまり、世間一般の男子高校生はみんなロリコンであることが統計学的にも証明されている。

 だからあたしは自分の中のロリの魅力を精一杯引き出しながら小鷹に挑んだ。

 でも、結果は惨敗。

 小鷹に真剣に心配されただけじゃなく、小鳩ちゃんとマリアには泣かれ、夜空にはイメクラとバカにされた。

「一体、あたしの何がダメだったと言うの?」

 ジッと自分の体を眺めてみる。

 ロリっ娘の定番アイテムと言えるゴスロリ服を装備。しかも髪型はツインテールだし、髪の色はブロンドだし、目の色は青いし、負ける要素はどこにもなかった筈。

 でも、あたしは自分の体をじっくりと観察することができなかった。

「胸が邪魔で全然何も見えないじゃないのよぉ〜っ!」

 首を曲げてみるものの、夜空には一生縁がないに違いない大きな胸が邪魔をして視界が塞がれてしまっている。

「そうなのね。この洗練され過ぎた超ナイスバディーが、あたしのロリ化を失敗させてしまったのねっ!」

 夜空が血の涙を流そうと足元にさえ及ばないあたしの超抜群のプロポーション。このダイナマイトボディーこそがあたしの敗因だったのだ。

「セクシー過ぎるあたしにロリキャラは無理があったのよぉ〜〜っ!」

 自分のナイスバディーぶりが恨めしかった。涙が、次から次へと零れて来た。

「あたしは、あたしは小鷹を諦めなくちゃいけないの……?」

 気分が沈んでいく。ベッドに顔を埋めて泣いてしまう。

「こんなにも、小鷹のことが大好きなのに……」

 言ってから気付く。自分が小鷹のことをどう思っているのかを。

 それは普段であれば決して自分自身で受け入れられない想い。

 でも、弱ってしまった今のあたしには、突っぱねて返す気力さえない。

 素直に認めるしかない。

 あたしは、小鷹のことが大好きなのだと。

 

 

「諦めてたらそこで試合終了ですよ、お嬢様」

「ステラ?」

 いつの間にか目の前に柏崎家の家令であるステラが立っていた。

「ノックぐらいしなさいよ……」

 泣き顔を見られてしまったのが恥ずかしくて枕を抱きしめながら膨れっ面を向ける。

「ノックならしましたよ。心の中で」

「そういうのをノックとは言わないわよ!」

 ステラはとても有能な使用人だけど、ちょっと考え方がずれている所がある。

「そんなことよりもお嬢様」

「何よ?」

 ステラが話し掛けて来たことで憂鬱な気分はかなり吹っ飛んでいった。

 けど、同時にちょっとカチンとも来た。長い間あたしの使用人しているんだから、そっと抱きしめて慰めるぐらいのことはしてくれても良いのに。

「お嬢様は羽瀬川小鷹さまのことをお諦めになるのですか?」

「えっ?」

 ステラの言葉に驚いて息が詰まる。

「お嬢様は一度アタックが上手くいかなかったぐらいで小鷹さまへの想いを諦めてしまうような軟弱者だったのですか?」

「そ、そんな訳がないじゃないの!」

 ステラに軟弱者呼ばわりされて反射的に否定する。そして否定してから気付く。嵌められたのだと。

「つまりお嬢様は小鷹さまのことがお好きなのですね?」

「そ、そうよっ! 小鷹のことが好きじゃ悪いっての!」

 ステラに反論してもまた丸め込まれるだけだと思い、むしろ強気に肯定して逆転を狙う。

「そうですか。お嬢様にも遂に好きな殿方が。実に素晴らしいことです」

「何よその、如何にも悪いことを企んでますと表現しているような艶々した笑みは?」

 まるで夜空があたしを苛める時みたいなスマイル。

「悪いことを企んでいますから仕方ありません」

「少しは否定しなさいよ!」

 ステラってこんなヤツだったっけ?

「確かに私は今悪いことを企んでいます。ですが、悪辣なぐらいでないと羽瀬川小鷹さまは攻略できませんよ。ライバルは手ごわいでしょう?」

「えっ?」

 あたしの眼前に一筋の光明が差した。そんな気分だった。

「ステラは、あたしの恋を応援してくれるの?」

「勿論です。私はいつでもお嬢様の味方です。そして今の旦那様に仕えるのも飽きて来た所ですから小鷹さまには早くこの家の主になって頂かないと退屈で死んでしまいます」

 後半部分はノイズとして聞かなかったことにする。ステラがあたしの味方になってくれるというその言葉だけでとても嬉しい。

「あたしは、小鳩ちゃんやマリアと戦うことができるの? 夜空のバカには負けないけど」

「勿論です。我に秘策ありです」

 ステラは親指をグッと突きたてた。

 その姿はとても頼もしかった。手首ごと指の向きが天地ひっくり返ったのが少しだけ気になったけど。

 

「だけど、あたしのライバルはあの小鳩ちゃんなのよ。その可愛らしさはグローバルレベル。ううん、ユニバ〜〜スなのよ!」

 この世界であたしと同レベルの可愛らしさを誇っている存在といえば小鳩ちゃんしか存在しない。小鳩ちゃんはいつまででもペロペロしていたい超マジ天使。

 決して侮れない可愛らしさ。そして──

「男子高校生がみんなロリコンである以上、あたしにはどうやっても勝ち目がないのよ〜〜〜っ!」

 自分のゴスロリ姿を見ながら再度確認する。

 ナイスバディー過ぎるあたしにはロリ分が欠けている。

 あんな超絶可愛い小鳩ちゃんが同じ屋根の下にいるんじゃ、小鷹の気をあたしの方に引くなんて……土台無理な話なのよ。

「確かに日本の男子高校生はみんなロリコンです。それはもう、疑いを抱くことさえも愚かなほどに事実です。ロリコンでないと名乗り出る男子高校生は嘘つきに違いありません」

「だったら……」

 声が、沈む。顔も沈む。

「ですが、ロリコンだけが彼らの唯一無二の属性ではないのです」

「えっ?」

 顔を上げる。するとそこには光り輝いているように見えるステラの姿があった。懐中電灯を自分に向かって当てている。

 でも、そんな些細なことはどうでも良かった。あたしにはステラが光り輝いていることが重要だった。

「わたしが秋葉原で二次元美少女にしか興味を持てない社会不適合者犯罪者予備軍な普通の男子高校生300人を対象にアンケートを実施した所、彼らのほとんどがマザコンであることが判明しました」

「そっ、そうなの!?」

 驚いた。日本の男子高校生がみんなロリコンだけじゃなくてマザコンでもあったなんて。

「更に彼らの大部分がおっぱい星人で巨乳好き。かと思えば貧乳、というか可愛ければ男でもオーケー。むしろこんな可愛い子が女の子の筈がないと考えている猛禽にも劣る下種な存在であることも判明しました」

「ロリコンのマザコンで巨乳好きの貧乳好きで、可愛ければ男もオーケーだなんて……一体、日本の男子高校生の好みはどうなっているのぉっ!?」

 わからない。まるでわからない。小鷹がどんな女の子を好きなのかまるでわからない。

「ちなみに彼らは口を揃えて18歳以上はダメ。でも見た目ロリなら30代超えてても無問題と戯言を叫んでおりました」

「見た目ロリな30代って何? ね、熱が出て来たわよぉ」

 頭がクラクラする。

「以上のデータを総合して分析しますと、お嬢様の賞味期限は後1年です。後1年以内に小鷹さまとゴールインできなければ婆さんは用済みと見向きもされなくなるでしょう」

「1年以内に小鷹と結婚しなくちゃいけないのぉ〜〜〜〜っ!?」

 ステラの出した条件の厳しさに大声を上げてしまう。

 だっ、だって、だって、だってよ。

 あたしも小鷹もまだ高校生なのよ! なのに、なのにもう結婚を考えろだなんて!

「……私がこの家での給仕を楽しむ為には1日でも早く新しいお笑い要員を補充してください」

 ステラが何かを呟いたけれどよく聞こえない。

 で、で、でも、でもでも。でもでもよ。

 小鷹がどうしてもって言うなら……か、考えてあげなくもないわ。

 小鷹と夫婦になるということは、あたしは小鳩ちゃんの本当のお義姉ちゃんになるということでもあるのだし。うん。悪くない。

 でも──

「小鷹があたしに靡いてくれるかしら?」

 恋のライバルは小鳩ちゃんと+α。夜空や理科に負けるとは思わないけれど、ライバルの壁は厚過ぎる。

「大丈夫です。お嬢様の最強の武器を活かせば勝機はきっとあります」

 そう言ってステラはベッドの上に上がって来て

「ひゃぁあああああぁっ!?」

 あたしの胸を正面から思い切り揉んだ。

「なっ、なっ、何をするのよ!」

 ステラから離れて両腕で胸をガードする。

「私は先ほど申し上げた筈です。男子高校生はロリコンではあるが、その多くが巨乳好きでもあると」

 ステラの視線があたしのふくよか過ぎる胸に集中している。

「つまり、あたしのナイスバディーを活かして小鷹を落とせと?」

「ただの肉攻め誘惑では面白くな……いえ、見た目硬派なヤンキーっぽい小鷹さまはお嬢様に靡いたりはしないでしょう」

「じゃあ、どうしろと言うの?」

 ステラは1冊の漫画をあたしに見せた。

「これがお嬢様を勝利へと導くマニュアルです」

「ToLOVEる? えっと、何て読むの、これ?」

 あたしの質問にステラは笑って返すばかりだった。

 

 そしてあたしはこの日、『ロウきゅーぶ!』と並ぶ運命のバイブルに出会ったのだった。

 

 

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「ラッキースケベっ! それこそがわたしに勝利をもたらす唯一の道なのねっ!」

 完徹してToLOVEるの1巻から17巻までを読み倒した。最終巻だけはステラが無くしたと言って読むことが出来なかったけれど、メインヒロインであるララちゃんとリトが結ばれたに違いない。

だってララちゃんはあんなに可愛いし明るいし優しいし頭良いし一途であたしそっくりだから結ばれない訳がない。

 ちなみに作中であたしの一番のお気に入りはリトの妹の超美少女小学生の美柑ちゃん。ペロペロしたい可愛らしさでクールなツンデレお兄ちゃん大好きっ娘。ヒロイン指数は超高いのだけどやっぱり妹だからリトとは結ばれない運命なの。

 つまり、この漫画は如何にあたしと小鷹が結ばれるのが必然なのか証明している物語に他ならない。

 そして、あたしと小鷹を結び付ける為の絆。

 それこそがラッキースケベだったのよ!

 

 走っているだけで、偶然女の子を押し倒しながら転んでしまい胸を揉んでしまう。

 階段を登っているだけで、偶然接触した女の子ともつれながら転げ落ちてスカートの中に顔を突っ込んでしまう。

 花に水をやっているだけで、偶然触手と化した花が女の子を襲い裸を見てしまう。

 追われて逃げ込んだ先はいつも偶然女子更衣室。

 風呂場にシャンプーやタオルをお気に行けば偶然いつも着替え中の女の子に遭遇。

 

 それこそがラッキースケベ。小鷹も持っているに違いない宿命。

 そして、偶然の中でお互いの性を意識していくことで2人の間に強い絆が生まれていくのよ。

 考えていれば、あたしは自宅と海でもう2回も偶然に小鷹に裸を見られている。

 つまり小鷹はあたしにラッキースケベなのよ。あたしが小鷹のララちゃん、メインヒロインなのよ。

 なら、このラッキースケベを推し進めてあたしは悲願を成し遂げてみせようじゃないの。

 待っていなさいよ、小鷹。今、あたしの魅力でメロメロにしてあげるんだからねっ!

 

「問題は、どうラッキースケベな展開を起こすか、よね?」

 ラッキースケベの真骨頂はエッチな展開が偶然発生することにある。

 理科みたいに自分から露骨にエッチな展開に持っていこうとするのは全然ラッキースケベじゃない。そんなのはただの痴女。

 ラッキースケベは偶然の末に成立する非意図的な結果の産物。でも、ラッキースケベが起きる空間、状況は割と限定されている。

 言い換えれば、ラッキースケベがどんなケースで起きるのか研究し尽くせば、ラッキースケベが高確率で起きる環境をセッティングすることが出来るって訳よ。

 天才にして努力家であるあたしは研究を怠らなかった。漫画を繰り返して読み漁って気付いたことをノートに記して、最後にパソコンで統計も用いながら整理してみた。

 そしてあたしは必勝の布陣に辿り着いたのだった。

 

「羽瀬川家が一番のポイントだけど、それはさすがに無理よね」

 お風呂ハプニングや寝起きハプニング、着替えハプニングとラッキースケベイベント満載の羽瀬川家が最も良いポイントであることは間違いない。

 けれど、あたしは羽瀬川の住人ではない。そしてあたしが羽瀬川家に自由に行き来できるようになった場合にはきっと“ラッキー”な“スケベ”は必要ない。あたしは既に小鷹の彼女、しかも親密な関係になっているに違いないのだから。

 という訳で羽瀬川家でラッキースケベ作戦は諦める。

「やはり決戦は学校よね」

 となると、二番目に良い戦場は聖クロニカ学園となる。

 教室、廊下、階段、校庭、更衣室とイベント発生場所は幾らでも存在する。

 学校、それはまさにラッキースケベイベントを引き起こす為に準備された空間。

 政府はよくこんなエッチなイベント専用空間の存在を許しているものだと思う。

 でも、ラッキースケベの聖地学校にも弱点は存在する。

 それは、学校では誰にラッキースケベが降り掛かってしまうのか予測が付かないという点だ。

 自宅であれば家人と訪問者がラッキースケベの対象になる。言い直せば対象はごく限られている。

 羽瀬川家で言えば、小鷹のラッキースケベは小鳩ちゃん相手に限定される。きっと小鷹は無垢な小鳩ちゃんをそそのかして毎日のように裸や寝顔を見ているに違いない。羨ましいわっ! 小鷹も小鳩ちゃんもっ!

 一方、戦場が学校の場合、ラッキースケベはあたしじゃなくて、夜空の馬鹿にも、幸村や理科、マリアに降りかかる可能性がある。モブキャラにエロイベントが起きないとも限らない。

 故に、小鷹が最もイベントを起こしそうな場所を慎重に見定めた末に待ち構えている必要がある。

 言い換えればこの勝負、あたしと小鷹の行動先読み合戦なのよ!

「あたしはどんな勝負だって負けないんだからっ!」

 こうして小鷹のハートをゲットする為の壮絶な戦いは始まりを告げた。

 

 

 続く

 

 

 

 

説明
気が付くと、はがないも終わり。
アニメ版はサービスと小ネタのオンパレードに終始しちゃったかなと思わなくも。
元々残念生態記録だから話に大枠があるわけでもないのですが。

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