真・恋姫無双〜散りゆく乙女たち〜
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夢を見ることがある。

血の匂いしかなく、誰もいない場所で、血塗れた体の姿で戦場に立つわたし。

体に負った傷よりも、心の隙間からたくさんのものがわたしの光を失う。

絶望に塗りつぶされて、冷酷で、冷たい世界を見るのが怖くて、わたしの視界には暗闇の世界が広がった。

わたしがかつて永遠にと望んだ、優しい世界。

愛紗ちゃんがいて、鈴々ちゃんがいて大切な人が傍にいてくれた。

それは、どうやっても戻らない。

どれだけ手を伸ばしても、決して手の届かない。今わたしの目の前に広がるのは黒い暗闇のみ。

一人ぼっちの、寂しい夢。

 

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額に冷たい感触を感じて、劉備は目を覚ました。

いつのまにか流れていた涙を拭ってくれる優しい手、そのまま頬を撫でるように触れた手は冷たくて、でもどこか温かく感じる。

「大丈夫ですか、桃香様?」

高くもなければ、低くもない、柔らかな声が耳に届く。

いつも優しい声音で呼んでくれ、 いつものように投げかけられる優しい声に、不思議と劉備の胸には安堵感が満ちてた。

「……朱里ちゃん」

確かめるように伸ばした劉備の手を、諸葛亮はまるで当たり前のように見つけて掴む。伸ばされることが分かっていたように、諸葛亮自身が望んでいるかのように。

(……ああ、……わたし……は)

どこかぼんやりする頭で、劉備は倒れてしまったことを思い出だす。

自分は戦いに負けて、それのショックで倒れてしまったことを……。

報いだねと劉備は思う。

自分のワガママで沢山の人を死なせてしまった。本当に、本当に……と。

「桃香様?」

諸葛亮のいつもより心配気な声に、意識を戻される。

「朱里ちゃん……あの後、呉は?」

「問題ありません。あの後、魏が呉を襲撃してきたために追撃をやめられました。現在は、魏との交戦中です」

「……そう、なんだ」

よかったと劉備は思う。このまま呉の戦闘が続けばまた犠牲が増え続けたことだろう。それはこれ以上、迷惑はかけたくないし、重荷になりたくなかった。

劉備はそう思うと呉への復讐願望をかみ殺した。

「朱里ちゃん……これ以上、呉と戦争はしたくないの……」

苦しげに寄せられた眉を無理矢理笑みに変えて、劉備は微笑む。その微笑を見た諸葛亮は何も言わず、そっと劉備から手を離し、一礼すると寝室を出た。

「これで……わたし、は……」

そして、劉備は血を吐いた。

 

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「それにしても傑作だったぜ、見た!? あの劉備の逃げ腰!?」

「ああ、ちくしょう! 捕まえて見せしめにしたかったぜ!」

呉の勝利は兵士達の勇気となり、奇襲を仕掛けてきた魏さえも圧倒させる。しかし、一人の男だけはおもしろくなかった。それは自分が用意した結末とは少し違っていたからだ。

「黄色の長髪の女?」

「はっ……北郷様の指示通りに兵を忍ばせようと向かっていたのですが、すでに馬超、厳顔、黄忠とその部下達がその者に殺されておりました」

「誤報じゃないのか? それ」

「いえ、その者が厳顔を槍で串刺しにしているのをこの目で見ましたので……」

「………」

果たしてたった一人で彼女達を殺せるだろうか。答えは否。

「その話、もっと詳しく聞かせろ」

北郷はその女が危険に感じた。

 

 

 

続く……

説明
第二話
『崩壊』
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