ハルナレンジャー 第二話「研究者誘拐」 B-3
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Scene6:ダルク=マグナ極東支部榛奈出張所内研究施設 AM10:00

 

「たかだかあれっぽっちの研究費で何が出来るか!」

 天宮博士が吼えていた。

 ビル地下にあつらえられた研究施設。

 煌々と照らす蛍光灯の下、チリ一つない室内には最新式の計測機器が運び込まれ、博士がもといた研究室とは雲泥の差だ。

 ちょっとばかり、上に立っているビルより床面積が広いような気もするが、ご愛敬という奴である。

「儂の理論が実用化された暁には、エネルギーの新時代が開けようと言うのに!

 それをどいつもこいつもトンデモだ妄想だとバカにしおって!

 だいたい……」

 延々と演説やら愚痴やらわからない暴言を吐き続ける博士の前には、いつもの戦闘服の上から白衣を着た戦闘員数名が直立不動で整列している。

 一団から少し離れて興味なさそうにそれを眺めていたシェリーがこめかみを押さえ。

「やれやれ……で、研究予算の認可は取れたのか?」

 いつものように背後に立つジルバに問いかける。

「は。現時点では限度額ぎりぎりと言ったところですが。期待した結果が得られれば増額もありうる、と」

「景気のいい話だな」

 軽く肩をすくめて目をやれば、話は博士の大学時代の青春物語にまで発展していた。

「……そう、あの時誓った!科学の星の元、共に世界の頂点を目指そうと……」

 拳を握りしめ、涙なんか光らせつつ熱弁を振るう博士。戦闘員も拍手までして、もうノリノリである。

「お前の判断に間違いはないと信じたいところだが、アレが使い物になると思うか?」

「天才というものは、皆どこか奇矯なものと相場が決まっております」

「じゃあなにか。学会に行くとああいうのがよってたかって激論を戦わせているとでも言うつもりか、貴様は」

 相手の話を聞かずに延々わめき散らす一個大隊の天宮博士を想像しかけて眩暈を感じたシェリーは、思わず壁に手をついた。

「論文にあった推定値とこちらの実測値の誤差はわずかです。こちらの研究にご協力頂ければ、互いになんらかの成果は得られるのではないかと」

「貴様が言うなら間違いはないのだろうがな……」

 仕方がない。駄目なら駄目で別の手を考えるだけだ。

 拭いきれない不安と疑念を頭を振って追い払うと。

 しくしく

 しくしくしく

 しくしくしくしく

 鬱陶しい鳴き声の主に目をやる。

 レミィが部屋の隅で膝を抱えて泣いていた。

 指で壁の継ぎ目をいじいじとつついてたりして。

「……いい加減泣きやまんか」

「怖かった……怖かったでやんすよお……」

 帰り道もずっとあの調子でまくし立てられ、隙あらば装備のあちこちをいじり回され、すっかりトラウマになっているレミィなのであった。

 

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