真・恋姫無双〜散りゆく乙女たち〜
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劉備が泣いた。倒れている黄忠を抱きかかえながら泣いていた。

「お願い! 死なないで! お願い!」

黄忠の頬に劉備の数滴の涙がこぼれた。その涙はとても綺麗見える……が、それは劉備から流されることは最悪なことだ。

「……桃香様……私は……」

言葉が思うように出ない。でも、言わなきゃいけない。劉備には、今は自分なんかのために涙を流すより、その力を惨劇の拡大を防ぐために使ってほしかったからだ。

「あ………」

けど、言えなかった。黄忠は死んだ。

あっけなく。

劉備の涙、黄忠の抱く思いなど関係なく、容赦なく『死』はすべてを切り捨てる。

 

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全てを失った。

劉備はそんな現実に目を背けて、眠りに付いた。そのまま朽ちていこうと思った。いや、事実朽ちていこうとしていた。

「―――様」

少女がこちらの名前を呼ぶ。しかし、その顔は靄がかかったようになっていて見えない。

「桃―――様」

―――私はすべてを失った。もう、何も残っていない。

そうと言うと、少女は驚いた。顔を悲しく歪ませ、身をすくめた。

「――様は、何も失っておりません。まだ、始まったばかりですよ?」

少女は、劉備の耳元で囁くように優しく言った。

―――私は間違っていた。私の無謀な理想のために大切な人達がみんな死んだ。

みんな死ぬから。自分に関わった人はみんな死んでしまうから。近くにいれば自分は必ずその人を殺してしまうから。

「……いいえ」

少女は微笑んだ後、涙を流し始めた劉備の頭を優しく撫でながら言った。

「貴方のおかげでみんなは笑顔になられたのです。誰も貴方の否定も恨みもしませんよ。桃香様……」

少女は抱きしめる。強く。でも壊さないように丁寧に。

「朱里……ちゃん……私……わたし」

泣き声が響く。

その瞬間、失ったものを確かに取り戻したと劉備は感じた。

 

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孫権が死んだ。

それを表に出すことは呉によくないと判断した文官達は影武者と実権を北郷と陸遜に委ねた。

しかし、北郷が役目を終えたとばかりに文官、陸遜共々を皆殺しにしたために、表向きは偽孫権で裏は北郷の支配下になってしまう。

「さて……これで呉は用済みだ。後は朱里の戦い時に動けばいいだけだな」

北郷は魏の自分と連絡しつつ次の朱里暗殺への舞台へと動く。

 

 

 

続く……

説明
第三話
『悪魔』
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