真・恋姫無双  とある書物への考察
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外史

 

その言葉を世に定着させた一つの小説がある。

外史とは本来、王朝、朝廷の命により編纂されたものではなく、個人が編纂した歴史書を意味する。

しかし、かの書物が周知とさせた意味は正史、我々が知る歴史から離れた所謂「if」の歴史を外史と称した。

歴史を知る者ならば誰もが想いを馳せたような、織田信長が本能寺にて討たれなかった歴史、または関ヶ原において石田光成が徳川家康を降す歴史。

それらを外史と呼ぶようになったのである。

 

「三国乙女演技」と題されたその小説は発売から瞬く間に部数を伸ばし、世に三国志ブームを再燃させることとなった。

先の小説は三部作で構成され、一部一部が独立した物語となっている。

 

第一部 曹魏ノ巻

第二部 孫呉ノ巻

第三部 蜀漢ノ巻

 

何れも、現代日本からタイムスリップした一人の青年が天の御遣いとなり、女性と化した三国志の登場人物たちと天下を治めていくお伽噺である。

作中には三国志をモチーフとしただけに、魅力的なキャラクターが多く、初版から5年近く経つ今現在でも読者たちに愛され続けている。

 

さて、そんな熱狂的なファンをもつ「三国乙女演技」だが、作者 ホウケイ氏については謎に包まれている。

続編を待ち望まれながらも音信不通、謎の失踪を遂げ、様々な憶測が飛び交う結果となり、未だに議論の絶えない日は無い。

ある者は創作活動が上手くいかずに逃げたと言い、またある者は今頃は悠々自適な印税生活を楽しんでいると言う。

その中に与太話とも取れる、一つの噂が真しやかに囁かれ続けている。

 

曰く、作中の天の御遣いこと北郷一刀は作者自身であり、再び三国の世へと降り立ったのではないかと。

良識の有る者が聞けば笑い飛ばすような話が未だに根強く語られているには幾つかの根拠があった。

 

一、作中に登場する、聖フランチェスカ学園とは実在するものであり、北郷一刀なる人物が籍を置いていたことがあること。

 

二、在学中、北郷一刀氏は数日間行方不明となり、捜索願が出ていたこと。また、消息を絶っていたのが三日であったこと。

 (各陣営、魏、呉、蜀での出来事が現実世界での一日として処理されたのではないか、とのこと)

 

三、ホウケイ氏が筆を執った「三国乙女演技」には冒頭に共通して以下の文が記されていたこと。

 

  『外史の扉とは想いによって開くもの。願いの力が強まれば新たな外史の幕が開く。』

 

読者の幸せな結末、(特に孫呉、曹魏ノ巻は悲劇性が強い)を願う力が集い、三国の乙女たちが誰一人と欠けることのない世界への扉が開かれた結果、北郷一刀は恋焦がれた姫たちの元へと帰還を果たしたのではないか、といったものである。

 

成る程。なかなかに面白い論説ではあるが、やはりナンセンスだと言わざるを得ない。

それでもこのような推論がされるのは、偏に彼の作品が多くの人の心を掴んで離さないからであろう。

 

何れにしても、事の真相は解明されず、彼、ホウケイ氏が使用していたとされる部屋は未だ無人ままである。

 

 

説明
恋姫と銘打ちながらも今回の作品では人物の登場はありません。
真・恋姫無双と萌将伝との繋ぎとなればいいなというお話です。
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コメント
アルヤ様  中々人には伝わりづらいものがあるかなと思っていた作品なので気に入って頂けて嬉しいです。(y-sk)
短いがゆえに良い作品ですね。個人的には気に入りました。(アルヤ)
タグ
真・恋姫†無双 萌将伝 

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