織斑一夏の無限の可能性33
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Episode33:学年別トーナメントE―マイ・サン・スタンディング―

 

 

 

 

 

 

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【一夏side】

 

 

カーテン越しに差し込む朝の陽射しを感じ、目を覚ます。 ふと視線を目覚まし時計に向けると、いつもの起床時間である。

 

人間、毎日同じ時間に起きていると、余程の事がない限り、自然と同じ時間に起きてしまうものである。

 

 

「あれ? 一夏、起きたんだ?」

 

 

次第に浮上する意識に瞼が動く。 それを見ていたのか、既に目覚めてるシャルロットが心癒される優しい口調で話しかけてくる。

 

視界に映るのは俺のクラスメイトであり、ルームメイトでもあり、学年別トーナメントのパートナーでもあるシャルロット・デュノア。

 

流れるような金色の髪は美しく、俺を見る碧眼の瞳は優しげで、端正な容姿を持つ彼女。

 

そんな彼女が前に俺があげたシャツを着ている。 大胆にも胸元がはだけている。 覗く谷間が悩ましい。

 

そして大胆にも開いた胸元には何も装着されていない......そう、ノーブラだ。

 

大事な事なのでもう一度言わせていただく。

 

ノ ー ブ ラ だ 。

 

略称ではなくフルネームで言わせていただくと、

 

ノ ー ブ ラ ジ ャ ー。

 

 

「一夏? どうしたの?」

 

 

なかなか起きない俺を変に思ったのか、覗き込むようにして俺を見つめるシャルロット・デュノア。

 

しかし、ここで俺は大変な事態に陥っているのだ。

 

思春期真っ盛りの俺の体は俺の意識に反した反応を示しているのだ。

 

そう、主に下半身が。

 

分かるだろう? 男の生理現象の一つである寝起きのマイ・サン・スタンディング。

 

そんな状態でベッドから起きてみろ?

 

目の前には理由あって男の格好をしているが、普段は女の子な容姿端麗な美少女がいるのだぞ。

 

いくら伝説のおっぱい戦士と誇ろうが、この状態を異性に見られるのは男として恥ずかしいっ。

 

前にラウラが俺のベッドに潜り込んできたときは、騒いでる最中に有耶無耶の内に鎮まったのだが、現時点においては俺とシャルロットの二人きり。

 

同室になった最初の頃はシャルロットはジャージだったので何とか布団の中で鎮まるのを待つだけでよかったのだが、俺のシャツを寝間着代わりに着るようになってからは毎朝がマイ・サンとの格闘だ。

 

しかも今朝は大胆に胸元をはだけ、ノーブラだっ!!

 

俺の理性が崩壊寸前だっ!!

 

 

―――おっぱい01より司令部へ緊急伝達!! 俺のマイ・サンが限界だっ!! 至急、応援求む! 繰り返す。 至急、応援求むっ!

 

 

―――司令部よりおっぱい01。 マイ・サン鎮圧のため、応援了解。 至急、『五反田弾の裸』を想像しろ!

 

 

―――おっぱい01了解。 よしっ、『五反田弾の裸』イメージ開始......

 

 

............

 

 

.........

 

 

......

 

 

...

 

 

オェェエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーー!

 

 

鎮圧......完了......。

 

 

「一夏、どうしたの? 顔色悪いけど?」

 

 

「だ、大丈夫だから」

 

 

急に青くなった俺を心配して、シャルロットは心配そうに声を掛けてくる。

 

『五反田弾の裸』イメージ作戦のおかげで寝起きは大変気持ち悪いものになってしまったが、マイ・サンは何とか鎮圧された。 俺は上体を起こし、シャルロットに大丈夫だ、と声を掛けるも、シャルロットは俺の体調を心配してくれたのだろう、右手で俺の前髪をかきあげ、左手で自分の前髪をかきあげ、おでこを合わせてきた。

 

眼前に迫るシャルロットの顔。 きめ細やかな肌、艶やかな薄桃色の唇。 俺を見つめるクリスタルのような碧い瞳。 そして俺の理性を狂わせるたゆんたゆんなおっぱい。

 

想像してみよう。

 

目の前に異国の美少女がノーブラで胸元をはだけた状態で目の前にいるのだ。

 

しかも来ているのは自分のシャツ。 そう、俺より体の小さい彼女が着ると、そのシャツも大きでぶかぶかだ。 覗き込めばピーチなBチックが見えてしまうかもしれないギリギリな状態で目の前にいるのだ。

 

そこで俺の理性は一瞬、崩壊した。

 

 

もみもみもみもみ......

 

 

「や......あ、はぁん......。 い、一、夏? あん、あ......はぁ......ん」

 

 

もみもみもみもみもみもみもみもみ............

 

 

「い、一夏......そ、そんな......と、つぜ......あん.....」

 

 

はっ!

 

 

気が付くと目の前には頬を上気させたシャルロットが、身悶えていた。

 

 

しまったぁぁぁあああーーーーーーーっ!!

 

 

「あ! わ、悪いっ! シャルロット」

 

 

俺はすぐさまベッドから飛び上がり、床に着地と同時に土下座。

 

あまりにも見事なおっぱいだから自然と揉みしだいてしまった!

 

 

「も、もう。 急に揉んでくるから吃驚しちゃった。 まぁ、嫌じゃなかったけどさ......」

 

 

最後の方は小声だったの聞こえなかったが、どうやらシャルロットは怒ってはいないようだ。

 

 

「本当にごめんな、シャルロット。 あまりにも見事だったので、つい......」

 

 

「ううん、いいよ。 好きな人に触れてもらえるのは......その、嬉しいし......」

 

 

また最後の方が小声だったが、どうやら許してもらえたようで何よりだ。

 

 

「と、取り合えず、今日は僕達、二回戦だから急いで準備しなきゃ」

 

 

「あ、ああ、そうだな」

 

 

おっぱい揉み揉みのおかげでシャルロットの顔は未だに赤いままだ。 まぁ、しどろもどろになってる時点で俺も赤いんだろう。

 

さすがにあそこまでダイレクトに揉んでしまうとは......両の手に残るはシャルロットの柔らかなおっぱいの感触。 素晴らしい感触だった。

 

我が生涯、一片の悔い無し。

 

 

「い、一夏、そ、それ」

 

 

ん? さらに顔を赤くしたシャルロットの視線が下半身に向いている。 何だ? 視線を自身の下半身に向けると......

 

男の生理現象である、

 

 

マ イ ・ サ ン ・ ス タ ン デ ィ ン グ

 

 

............

 

 

.........

 

 

......

 

 

...

 

 

 

ぎゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああっ!!

 

 

............

 

 

.........

 

 

......

 

 

...

 

 

 

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*◇*◇*◇*◇*◇*◇*

 

 

 

 

「もうお婿に行けない......」

 

 

「は、ははは......」

 

 

二回戦が行われる第六アリーナのピット室でISスーツに着替えた俺は片隅で膝を抱え、のの字を書いていた。

 

 

「し、仕方ないと思うよ。 だって男の子なら当然なんでしょ? 僕は気にしないよ」

 

 

さすがに同年代である異性にマイ・サン・スタンディングを見られるのはどうなのだろう?

 

恥ずかしいにも程があるっ!

 

おっぱいに関しての想いには誇りもあるが、マイ・サンを同年代の女の子に見られて平気なほど、俺は落ちぶれていない。

 

 

「そ、それに、いつかは一夏と迎える初夜のためにも僕は気にしないよ?」

 

 

「え?」

 

 

「ううん、なんでもないなんでもないよっ」

 

 

「そ、そうか?」

 

 

取り合えず、今は目の前の二回戦に集中しよう。

 

いつまでも落ち込んでて、試合に負けたら俺の貞操が危ないからなっ!

 

 

「そういえば、今日の二回戦の相手は四十院さんと鏡さんペアだっけ?」

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

今日の二回戦の相手―――四十院神楽さんと鏡ナギさんは俺とシャルロットと同じ一組の生徒である。

 

特に鏡さんは俺の席の後ろでよく休み時間に話したりもする。 なかなか明るく打ち解け易いという印象を受ける子だ。 メガネをしており、髪はショートで胸は小振りであるが、なかなか愛くるしいという感じだ。

 

そしてそんな鏡さんとペアを組むのは四十院神楽さん。 この子は箒とは違った印象を受ける和風美人といった感じだ。 髪型はポニーテールで、容姿も整っており、さらにスタイルが抜群なのである。 IS実習の時に知ったのだが、おっぱいは箒よりも小さいが、それでも常人よりは大きい。 何度かあのおっぱいに挟まれたいと妄想した事もある。

 

 

「一夏」

 

 

瞬間、急激に下がる体感温度。

 

底冷えする声を発したのは、目の前にいるシャルロットである。

 

 

「ふふふ、何を考えてるのかなぁ?」

 

 

「やましい事など何も考えておりませんっ」

 

 

「そっかぁ、やましい事考えてたんだぁ? 朝、僕のおっぱい揉みしだいたのに?」

 

 

今の俺の状態を説明すると、蛇に睨まれた蛙という表現がしっくり来る。

 

震えが止まりません。

 

 

「今日もお仕置だね?」

 

 

「ひぃっ」

 

 

闇化したシャルロットには逆らえるはずもなく、俺は小さく悲鳴を上げる事しかできなかった......。

 

さて、本日は学年別トーナメント三日目であり、A・Bブロックの二回戦が行われる日である。 ピット室に設置されたモニターに映るのは、午前九時に試合開始という事もあり、朝も早くから会場には一日目二日目同様に生徒達だけではなく各国の要人にIS関連企業の人達、そして一般客などで賑わう会場である。

 

アリーナ会場ピット室でも外の賑わう音が聞こえるくらいに。

 

 

「今日も観客席はいっぱいのようだね」

 

 

「あ、ああ。 そうみたいだな」

 

 

ふぅ、どうやら闇化は治まったようだ。

 

 

「やっぱり世界で唯一の男性IS操縦者の一夏の注目度は高いって事かな」

 

 

「いや、今のところ、唯一じゃないだろ。 シャルロットも男装してるわけだし」

 

 

「ううん、僕が男性という設定はIS学園だけだよ。 僕が男性として世界に公表してたら各国から調査が入っちゃうし」

 

 

「そうなのか?」

 

 

そういえば、俺もIS学園に入るまでに色んな身体検査とか受けたな。 見ず知らずの屈強な黒服さん達に囲まれて研究所に放り込まれて、連日、検査の日々。 今、思い出すだけでも嫌な思い出だ。

 

結局、検査の結果、何で俺がISを動かせたのかは分からずじまいだったわけだが。

 

 

「デュノア社も表向きではフランス国内で第三位のIS企業ではあるけど、裏ではいろいろやってるみたいだし、各国から調査が入るのはマズイって事でIS学園に入学するときに僕が男性だという事は極秘にされたんだ。 一応、僕の遺伝子データとかは偽造されて、IS学園側に提出されたから、入学する際の検査も簡単なもので済んだし。 それにただでさえ、今年の新入生には男性IS操縦者が一人いるって事でIS学園側も混乱を避ける為に世間に公表するのを控えたみたいなんだ」

 

 

シャルロットの父親であるデュノア社社長。 シャルロット自身の幸せの為にもいずれ白黒、決着をつけなければならない相手。 自分の利益のために、自分の都合のために、親が子を好きに使ってもいい、なんて事は許せるわけがない。

 

俺自身、親にはいい思いがない。 俺と千冬姉を捨てた俺の両親。

 

俺が物心つく頃には千冬姉しかいなかった。 俺の両親の写真は既に千冬姉が処分してしまっていたから、俺は自分の両親の顔さえ思い出せない。 でも寂しいと思った事はない。 俺の傍には千冬姉がいたから。

 

シャルロットには母親しかいなかった。 そんな母親と死に別れ、一人になった。

 

俺には千冬姉がいたが、シャルロットはIS学園に入学するまで誰にも愛情を向けられず一人だった。 実の親からも道具扱いされているのに、自分を必要としてくれているからという事で父親に従ったシャルロット。

 

 

「ふぇ? い、一夏?」

 

 

気が付けば、俺はシャルロットの頭を優しく撫でていた。 

 

 

「シャルロット。 今は俺もいるし、箒やセシリア、鈴にラウラもいる。 お前は俺が守るし、もう一人じゃないんだ。 何かあったら俺でもいいし、皆でもいい、頼ってくれよ」

 

 

「......ありがとう、一夏」

 

 

俺に頭を撫でられるシャルロットは頬を赤く上気させながら笑顔で感謝を告げる姿に、照れくさくなってシャルロットの頭を撫でてた手を離すと、シャルロットは「あっ......」と名残惜しそうに俺の手を見つめてくる。

 

 

「そういえば、デュノア社の人も今日の会場に来ているのか?」

 

 

「あ、うん......一回戦の時も来てたから来てると思う。 今回の学年別トーナメントは各国のISを調査できる公式の試合でもあるから、自社のIS開発の為にも偵察はかかせないからね」

 

 

「まぁ、今は目の前の試合に集中しよう。 優勝しなきゃ、俺の貞操が......」

 

 

「うん、頑張って優勝しようね!(そして一夏の貞操は僕がいただくから♪)」

 

 

 

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*◇*◇*◇*◇*◇*◇*

 

 

 

 

【ナギside】

 

 

「やっと来ました! 私の時代がっ!」

 

 

拳を突きあげ、高らかに宣言するのは私、鏡ナギ。 IS学園一年一組在籍、そして織斑君の後ろの席に座るめがねっ娘とは、私の事だぁぁぁぁぁぁっ!

 

 

「はいはい」

 

 

本日テンションマックスな私のパートナーである神楽ちゃんこと四十院神楽は溜息を吐きながら私に冷めた視線を投げかけてきてるが、気にしないっ!

 

小学校の頃から成長しないおっぱいの大きさも気にしないっ!

 

気にしちゃ負けなんだよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!

 

 

「ねぇ、ナギ。 項垂れてるところ悪いんだけど、もうすぐ試合って分かってる?」

 

 

「もっちろんだよ! 神楽ちゃん」

 

 

(`・ω・´) bビシッ!! とサムズアップ。

 

 

そもそもこの試合は織斑君の貞操がかかっている大事な試合!

 

今まで後ろの席だというのに大した進展も見せないまま、既に五月まできてしまった。 これは由々しき事態なのであるっ!

 

もう、黛先輩から購入した織斑君の隠し撮りの写真に(*´Д`)ハァハァしている場合でもないし、いつも寝る時に使っている織斑君仕様の抱き枕で満足している場合でもないっ!

 

生織斑君をこの手中におさめるまでは私は負けられないのだから!

 

右手でこめかみを抑えている神楽ちゃんはひとまず置いておいて、今日の試合は織斑君とデュノア君のペアが相手だ。

 

真面目に考えれば、勝率はかなり低い。

 

デュノア君に関してはフランス代表候補生だし、織斑君に限っては代表候補生にも勝る実力を有している。

 

一介の女学生である私には勝ち目すらないに等しい。

 

ペアの神楽ちゃんは実家が古流武術の道場らしく、その実力は折り紙つきだが、あの二人相手には正直厳しいかもしれない。

 

でも、私は諦めないっ!

 

織斑君の事は徹底的なストーキンg......じゃなくて調査をした結果、弱点があることが判明したのだ。 彼はおっぱいに目がないらしい。 常におっぱいを気に掛けていると言っても過言ではない。 私のおっぱいはまだ成長過程で将来に期待なのだが、運がいい事に私のパートナーはナイスおっぱいな持ち主だ。

 

ふふふふふふふふふふ、神楽ちゃんのおっぱいを使えば......ふふふふふふふふふ。

 

 

「ねぇ、何で私を見ながら不気味に笑うの? 正直、怖いんだけど......」

 

 

「え〜笑ってないよ〜。 自意識過剰だなぁ、神楽ちゃんは。 ふふふ」

 

 

神楽ちゃんは私の視線に何かを感じたのか、身を守るように自身の腕でおっぱいを隠すようにしている。

 

まったく、神楽ちゃんも失礼しちゃうなぁ〜。

 

私は女の子に発情しちゃうような変態さんじゃないのに。

 

 

「じゃあ、そろそろ試合開始の時間だし、行こっか」

 

 

私の声を合図に神楽ちゃんと二人、ピット室に準備されているISを装着する。

 

私はラファール・リヴァイブ、神楽ちゃんは打鉄だ。

 

鎮座しているISに乗り込むと同時に搭乗者を受け入れるために開いていた装甲が閉まり、体のサイズに合わせて自動で装着されていく。 この瞬間、ISと私の体が融合するかのような感覚を覚えるのは私だけじゃないはずだ。

 

 

―Access,System start―

 

 

視界に表示される空間投影モニターでは私の体とISの情報を次々と表示しては、消えていく。

 

 

「ナギ。 準備はいい?」

 

 

「うん、OKだよ。 神楽ちゃん」

 

 

「それで今日の試合なんだけど、神楽ちゃんが最初、織斑君を相手してもらってもいいかな? 近接戦は私、苦手だし」

 

 

「もちろん。 織斑君の強さには前々から興味あったし、問題ないよ」

 

 

彼女は純粋に一介の武術家として織斑君の強さに興味があるのだろう。 でも、今回は作戦があるからこそ、織斑君の相手は神楽ちゃんにお願いしているのだ。 もちろん、どんな作戦かは彼女には告げてないが。

 

神楽ちゃんには悪いが、私はこの試合に勝つために鬼にも悪魔にもなろう。

 

それ程に今回は優勝したいからだ。 織斑君の貞操は私が奪うっ!

 

お互い、準備が完了したところで、二人揃ってピットから今日の試合会場である第六アリーナ会場まで飛び立つ。

 

ISに乗り始めた頃はなかなかこの飛び立つという感覚に慣れなかったが、今では普通に飛行を行う事は出来るようになった。

 

私自身、IS実習の成績はクラスの中でも飛び抜けていいという事もなく、真ん中くらいの成績だ。 それでも、学年別トーナメントに参加すると決めてからは学園が始まる早朝やお昼休み、放課後と時間を惜しんで特訓した。

 

そして一回戦も無事勝ち抜く事はできた。

 

でも、まだまだ優勝には遠い上に今日の相手は織斑君、デュノア君ペアだ。 神楽ちゃんがいくら古流武術の使い手であろうが、誰もが織斑君、デュノア君ペアの勝利を確信しているに違いない。

 

しかし今日の私は違うっ!

 

今日の試合に勝つために秘策があるのだからっ!

 

既にアリーナ会場には今日の対戦相手である織斑君にデュノア君がISを装着した状態で待機していた。

 

 

「四十院さんに鏡さん、クラスメイトだからって手は抜かないぞ」

 

 

「無論、手を抜かれては困る。 私だって武術の使い手。 負けるつもりは毛頭ないから」

 

 

織斑君の言葉に反応したのは私のパートナーである神楽ちゃん。 彼女は強い視線を織斑君へと投げかけている。

 

もちろん、私だって負けるつもりはないし、勝つつもりでいる。 何より対織斑君用の秘策があるのだから。

 

四人がそれぞれに武装展開したところで試合開始を告げるアナウンスが流れる。

 

アナウンスが終わると共に駆け出したのは織斑君と神楽ちゃんだ。

 

お互いにブレードを展開し、素人目でも凄いと分かる斬撃を交互に繰り出しながら、お互いの隙を伺っているような状態だ。

 

ただ、この試合は一対一ではなく、二対二のタッグ戦だ。 私もこのまま黙っているつもりはない。 デュノア君から距離を取るようにブーストを展開し、後方へと移動しながらアサルトライフルを展開、そのままデュノア君を牽制するように射撃を開始する。

 

 

「このっ! このっ!」

 

 

しかし、デュノア君はブーストによる加速と停止を使い分けながら、私の射撃を簡単に躱し、マシンガンによる射撃をしてくる。

 

正直、一回の女学生である私が代表候補生の相手が務まるわけがない。 このまま一対一の状態になると私達に勝ち目がなくなる。

 

少しだけでもいい。 隙が出来れば―――すぐにでも秘策を発動させるのに。

 

なかなか思い通りに行かない現状に気持ちだけが逸る。 しかし焦った所で事態は好転しない。 デュノア君を近づけないように牽制をしながらも、思考を落ち着かせる。

 

ISに関する実力はデュノア君の方が上なのは当然だし、正直レベルが違い過ぎる。 でも、秘策を発動させ、織斑君を撃破できれば、二対一という事態を作り出せる。 今の状態よりも勝率は上がる。

 

神楽ちゃんは古流武術の使い手であり、ISの実力はクラスの中でも上位クラスだ。 一組は代表候補生が多いから、神楽ちゃんは埋もれてしまっている感が否めないが、それでも実力は高い。

 

だからこそ、秘策の発動がこの試合のカギとなる。

 

一瞬でもいい、隙が作れれば。

 

秘策を発動させるには、織斑君からデュノア君を離さないといけない。 援護が入らないようにするために。

 

私は何か手がないかデュノア君に気を配りながらも周囲に視線を配る。

 

そして上空に視線を向けた時に、ひらめいた。 

 

上空にある太陽目掛け、ブーストを全開にし、空中で停止する。 そのまま、デュノア君目掛けてブーストを全開にする。

 

デュノア君にしてみたら、一瞬の目くらまし程度にしかならないが、一瞬でも隙を作り、神楽ちゃんと織斑君の所に行かなくては秘策が使えない。

 

 

「ただの女子高生でも負けられない理由があるんだぁぁぁぁぁぁっ」

 

 

「なっ!?」

 

 

虚を突かれた形になったデュノア君に対して、グレネードを二発発射する。

 

しかし、虚を突いた形となった二発のグレネードも命中することはなく、完全に防御されたため、大したダメージは与えられてない。 でも、隙を作るのはこれで十分だった。 すぐに反転し、神楽ちゃんと織斑君の所目掛け、ブーストを全開にする。

 

私だって優勝したい。 もうストーキンg......じゃなくて、遠くから見てるだけで満足できないのっ!

 

織斑君の貞操は私が奪うんだからぁぁぁぁぁぁっ!!

 

 

 

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【神楽side】

 

 

強い。

 

それが織斑君と対峙している私の感想だ。 私だって、幼い頃から実家の道場に通い、古流武術を学んできた。

 

当然、有象無象の輩に負ける事はないし、ここ最近では道場内でも私に勝てるものはいなかった。 だから、織斑君の強さを目にしてもここまで押されるとは思わなかった。

 

オルコットさんとのクラス代表決定戦、山田先生との模擬戦、凰さんとのクラス対抗戦、乱入者との対戦、そして一回戦での織斑君の戦い方を見て、強いとは思っていたが、負ける事はないと思っていた。

 

思い上がりだったのだ。

 

別に私自身、実力を隠していたつもりはないが、ここまで差があるとは思わなかった。

 

ISの技量に関してだけ言えば、織斑君はこの学園に入学して初めてISを操縦したくらいの初心者である。

 

そんな彼に対して、押し負けている。

 

あらゆる方向から迫る斬撃を凌ぐだけで精一杯なのだ。

 

 

「くぅぅっ!」

 

 

こちらの袈裟斬りをいなしながら、反転して横一閃の斬撃をブレードを盾にして、防ぐも衝撃までは抑え切れない。 盾にしたブレードから伝わる衝撃に眉をしかめてしまう。

 

ISには操縦者保護機能により、操縦者の生体機能を補助するものが備わっているが、重い衝撃は操縦者にも伝わる。

 

何とか体勢を整えようと距離を取ろうとするが、目の前で対峙している織斑君はブーストを旋回にしたかと思うと、離した距離を一瞬で詰めてくる。

 

 

「ーーーっ!?」

 

 

「はぁぁぁああああああっ!」

 

 

居合い抜きの要領で、左腰に備えたブレードを一瞬で抜き放つ。

 

ヤバいっ!

 

そう思った瞬間、直ぐにブレードを前にして、その斬撃を直接受けないように盾にする―――しかし、居合い抜きの要領で抜き放たれた斬撃による衝撃は到底抑え切れぬものではなく、私は後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

何とか途中でブーストを展開し、空中で停止する。 ふらつく頭を横に振り、意識を覚醒させる。

 

このままでは負けてしまう。

 

ここ数年は感じた事の無かった敗北感に襲われる。

 

何なのだ、この強さは?

 

私と同じ年であるはずの彼と、どうしてここまで差があるのか?

 

私自身、幼い頃から古流武術を学んできた。 同じだけの年月を過ごしてきた彼とここまで実力に差が開くのは何故か、分からなかった。

 

困惑する思いを落ち着かせようと、息を静かに吐き、そして吸う。

 

気持ちで負けてしまっては、そこで終わってしまう。

 

道場主であり、私の師でもある父の言葉を思い出す。

 

 

―――強敵と対峙しても気圧されるな。 これまでの自分の努力を、修練に費やしてきた日々を

信じろ。 そして何よりも自分を信じろ。

 

 

そうだ、試合中に負けると思うな。

 

私だって、これまで父の厳しい修練に耐えてきた。

 

そのおかげで今や道場で私に勝てるものはいなくなった。

 

自分を信じる。 簡単なようで難しいことであるが、私は自分がこれまで費やしてきた時間を無駄にするつもりはない。

 

織斑君は強敵だ。

 

でも、だからこそ私は織斑君に勝ちたい。

 

私自身、学年別トーナメントに参加したのは自分の強さがどこまで通用するのか試してみたかっただけだ。

 

他のクラスメイト達みたいに、織斑君の貞操に興味があるわけではない。 まぁ、織斑君に対しては気の毒にと思う節もあるが。

 

ただ、織斑君の強さには興味があった。

 

彼が強いというのはこれまでの試合を見ても分かるものだ。

 

だからこそ、彼と戦ってみたいという想いがあった。

 

しかし、対峙してみて分かったが、彼は私よりも高みにいるようである。 このままでは負けてしまうかもしれない。 でも、私は諦めない。

 

私は―――織斑君に勝ちたい!

 

ブレードを正面に構える。

 

同じように織斑君もブレードを構える。

 

そんな時だった。

 

空間投影モニターにナギが映し出される。

 

 

「神楽ちゃん、おっ待たせ〜♪」

 

 

緊迫した空気をぶち壊すかのようなお気楽な声に気勢を殺がれる。

 

 

「ナギっ!? あれ? デュノア君は?」

 

 

「ふふん、一瞬の隙を付いて逃げ出してきました♪」

 

 

......頭が痛くなってくる。

 

私はパートナー選びを失敗したかもしれない......。

 

空間投影モニターにはナギを追うかのようにデュノア君が追いかけている様が映り出されてる。

 

 

「さぁ、もう時間がないよっ! 秘策発動だよ!」

 

 

「え? 秘策?」

 

 

私はそんなものがあるなんて聞いてないんだけど?

 

どういう事だろう?

 

対峙している織斑君もナギのあまりにも緊張感のない姿を見て、ポカーンとしている。

 

しかし、当事者であるナギはそんな事もお構いなしに私に近付き......あろうことか......私の胸を揉みしごき始めた。

 

 

「ナ、ナギ!? な、何を、するの?」

 

 

突然の事に思考処理が追いつかない。

 

私の背後にまわり、後ろから両手を使って、私の胸を揉みしごく。

 

 

「ふぇ? あっ、ま、待って。 そこは、つ、つままないで。 やぁ......ん......」

 

 

同じ年頃の男子を前に胸を揉みしごかれる。 私は羞恥に耐える事ができず、織斑君から目を背けるも、それでもナギは胸を揉むのを止めない。

 

 

「ふぇへっへっへ。 ええんか? ここがええんか?」

 

 

「ナ、ナギ。 いい、かげんに、や、......あん.....め......なさ......ぃ......」

 

 

チラッと前を見ると、何故か前かがみになってる織斑君が見える。 空間投影モニターに映るデュノア君は顔を赤くしがら呆気に取られてた。

 

 

 

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【一夏side】

 

 

目の前でおっぱいを揉みしごかれる四十院さん。

 

さっきから思っていたが、その見事なおっぱいは俺の視線を釘づけにしていた。 袈裟斬りを放ちながらもぶるんぶるん揺れるおっぱい。 斬撃をかわしながらも視線はおっぱいに。 そんな状態で試合を楽しんでいたら、四十院さんのパートナーである鏡さんが乱入してきた。

 

二人同時に迫ってくるのかなと思ってたら、何故か鏡さんは四十院さんの背後に廻り、四十院さんのおっぱいを揉みしだきだした。

 

鏡さんの手で形を変え、縦に横に揺れる四十院さんのおっぱい。

 

 

サ イ コ ウ だ 。

 

 

思わず、視線が釘付けになってしまう。

 

しかし、ここで予想に反した事態が起きてしまった。

 

いや予想に反した事態とは言えない、これは男子における自然な生理現象の一つなのだから。

 

そう......今朝同様に

 

 

マ イ ・ サ ン ・ ス タ ン デ ィ ン グ

 

 

しかし、今は試合中だ。

 

こんな状態は間抜け過ぎる。

 

しかし羞恥に歪む四十院さんの表情が艶めいていて視線が離せない。

 

頬を朱に染め、薄桃色の唇をつむぐ、その様にそそられてしまうのだ。

 

そんな俺の状態を確認した鏡さんの目が一瞬光った......そんな印象を受けた時だった。

 

直ぐに鏡さんは俺目掛けて、その手にブレードを展開しブーストを全開にして迫ってきた。

 

 

「織斑君っ! 隙ありぃぃぃいいいいいいっ!」

 

 

ふふん、いくら、マイ・サン・スタンディング状態であろうが、さっき前屈みになった瞬間に直ぐに向きを変えた。 そんな俺に怖いものなどないっ!

 

鏡さんの突撃を難なく避けた後、返す刀で一閃する。

 

その斬撃が致命打となったのであろう、鏡さんのシールド・エネルギーが0になった。

 

 

「うにゃぁぁぁ〜っ」

 

 

悲鳴を上げながらも鏡さんは地上へと不時着し、そのまま動きを止めた。

 

これで残すは四十院さんだけだ。

 

 

「......ナギは後でお仕置き決定だな......」

 

 

ボソッと一言。

 

四十院さんは修羅になっていた。

 

鏡さん......自業自得です......でも、いいもの見せてくれてありがとうございました。

 

 

「さて、四十院さん。 決着を着けるとしようか」

 

 

「そ、そうね」

 

 

未だに顔が赤いのは仕方ないか。

 

 

「シャルル。 ここは俺に任せてくれないか?」

 

 

四十院さんもどうやら俺と同じく武術を学んできているようだ。

 

決着を付けるなら一対一で付けたいし、四十院さんもそうだろう。

 

 

「いいの?」

 

 

「もちろん。 俺は四十院さんと一対一でこの試合の決着を着けたい」

 

 

「望むところ」

 

 

改めて、雪片弐型を左腰に添える形で構える。

 

 

「その技はさっきも見たけど、同じ技が通用すると思ってるの?」

 

 

「それはやってみてのお楽しみって事で」

 

 

対峙する四十院さんもブレードを正面に構える。

 

そして、四十院さんがブーストを全開させ、渾身の斬撃を叩き付けようと上段から振り下ろしの斬撃を放つ。

 

 

「やぁぁぁああああああっ」

 

 

「はぁぁぁああああああっ」

 

 

その斬撃を迎え撃つ形で左腰に添えた雪片弐型を一瞬で抜き放つ。 その斬撃は四十院さんのブレードを破壊する。

 

 

「なっ!?」

 

 

四十院さんも予想していなかった武器破壊。 今の斬撃でブレードが破壊されると思っていなかったのだろうが、これまで俺の斬撃を悉く受けてきた四十院さんのブレードの耐久値も限界が来ていたようだ。

 

そのまま右手だけで握っていた柄を両の手で掴み、そのまま二の太刀による袈裟斬りを叩き込む。

 

その斬撃が決定打となり、四十院さんのシールドエネルギーも0となった。

 

同時に試合終了を告げるアナウンスが会場に流れる。

 

 

―――『試合終了。勝者―――織斑一夏、シャルル・デュノア』

 

 

「やったね、一夏」

 

 

「ああ」

 

 

「で・も」

 

 

「でも?」

 

 

「さっき四十院さんが胸を揉まれてる時、食い入るように見てたよね?」

 

 

「......そんな事ありません......」

 

 

「そんな事あるよね? ね、一夏」

 

 

笑顔のシャルロット。 でも、何故か目が笑ってない。 そして俺の膝が震える。

 

 

「じゃあ、今日も反省会だね」

 

 

「きょ、拒否し......」

 

 

「ん?」

 

 

「......はい」

 

 

振り返ったシャルロットさんがあまりにも怖かったので俺は否定の言葉を告げる事ができず、肯定を示す事しかできなかった。

 

 

説明
第33話です。
TINAMIでは本当に久しぶりの更新となってしまいました。
でも、その分、今回の話は長くなってます。
まぁ、いつも通り、一夏が残念なのは致し方ありませんが。

さて、今回は新キャラ登場というか原作モブキャラが二名出ます。
この二名は本当に苦戦しました。
面白く書けてればいいんですが......楽しんで読んでもらえれば幸いです。
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インフィニット・ストラトス 織斑一夏の無限の可能性 織斑一夏 シャルロット・デュノア 鏡ナギ 四十院神楽 

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