真・恋姫†無双〜二人の王佐〜 第二章 第三話「父の背中」 |
<注意>
この作品の桂花は一刀の妹という設定の為、恋姫シリーズでみられる一刀への罵声や毒は一切言いません。というよりもむしろ逆に甘えてきます。
それにオリキャラが何人も出てきます。一例として桂花の母や妹、華琳の母などまだまだ沢山出す予定です。
そしてキャラの仕官時期が違ったり所属が違ったりするかもしれません。(そのあたりはまだ未定です。)
あと一刀にオリジナル設定を設けていますので、恋姫シリーズの一刀とは身体能力や言葉遣いなど多少変わっています。ですが根本的な所は一緒のつもりです。
それと一刀には以前の記憶がありません。なぜ無いのかはそのうち出てきますのでそれまでお楽しみに♪
ですが一度読んでみてください!それで「おもしろい」と思ってさらに読み続けていただけたらうれしいです。
<王佐の才>
『帝王を補佐するにふさわしい才能(武・智)又はそれを持つ者のこと言う。(辞書引用)』
これは、平和な世を作ろうと乱世を駆け抜けた双子の男女の物語である。
「いざ参る!!!!!」
一刀は馬を凄い速さで走らせ坂を駆け降りていく。黄巾党も一刀の存在に気付き速度を上げる。
『うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!!!!!!』
先陣はすでに抜刀を済ませ、各々激突の瞬間を待ち望んでいるかのように雄叫びを上げている。
瞬く間に近づく両者の距離。
やがて零になった時、始まった
“一刀”対“獣の群れ”の戦いが……
「はあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
ザシュッ!!
「うぎゃあああぁぁぁ!!」
ザシュッ!!
「ぐぎゃあああぁぁ!!!」
ザシュッ!!
「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一人、また一人と一刀の黒牙刀が敵を斬り伏せていく。
ところでなぜ木刀なのに人を斬ることができるのか?それは一刀が『黒牙刀』に自ら氣を纏わせて見えない氣の刃を作っているため、斬ることができるのだった。しかもこの方法、修練中に偶然思いついたものだった。と言っても最初は氣の調節が上手く出来ず、すぐに氣力切れを起こしたり『黒牙刀』全体に氣を均一に纏わせられなかったりと苦労の末ようやく会得したものだった。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「遅い……せい!!」
「ぎゃああぁぁぁ!!!」
黄巾党の一人が一刀目掛けて刀を振り下ろす。が、一刀は難なく避け、それと同時に斬りつける。それはまるで演舞でもやっているこのように優雅に、しかし鋭い動きだった。
「何やってやがる!!遊んでないで囲んで一気に殺しちまえ!!!」
「「「応!!」」」
「何人来ようが………よっと、せい!せい!せい!せい!!!!!」
四方からの同時攻撃を飛んでかわし、そのまま上から四連続で剣撃を繰り出す。
「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
ほぼ同時に絶命した四人はこれまたほぼ同時に崩れ落ちる。そしてその光景を見た黄巾党が恐怖で一瞬動きを止めると一刀はその隙を逃さず、すぐさま屍の上に着地するとその勢いのまま横に飛び、新たな屍を作っていった。
〜黄巾SIDE〜
「ちぃ!何やってやがる!!あんな餓鬼一人に手こずるんじゃねぇ!!」
「し、しかし高昇隊長!奴は化け物みたいに強いもので…」
「言い訳するな!!こんなこと趙弘様に知られたら…」
「俺様がどうかしたか?」
「え?あ!?ちょ、趙弘様!!!」
高昇と言われた男が後ろを振り返るとそこには後方にいるはずの趙弘が来ていた。
「 あ、あの、こ、これはその……す、すぐにあの餓鬼を始末しますのでど、どうか…」
「いや、あとは俺様がやろう」
「い、いえ!趙弘様のお手を煩わせるわけには…」
「なんだと?お前、俺様に逆らうのか?」
「い、いえそんなことはありません!!ですが奴の強さは化け物並ですので…」
「ああ?お前、俺様が負けると思ってやがるのか?」
「い、いえ、めめ滅相もありません!!」
「そうか、なら他の者は下がらせろ。あの餓鬼の相手は俺様がやる。それに奴は俺様には手出しができないさ。おい黒影、奴を連れて来い!!」
「(コクリ)」
趙弘が後ろに向かって怒鳴るとすぐに黒影が縄で拘束した男を連れて来た。顔は麻袋を被ってわからないが体中傷だらけで今にも死にそうなのは見てわかるほど酷かった。ちなみに黒影とは“とある人物”が一刀を殺すために趙弘に貸した、今の所戦闘力未知数の武将である。
「なにせ“こいつ”がこちらにいるんだからな!」
「!?その者は先ほど捕まえた……なるほど!」
「……………」
「ふははははははっ、そういうことだ。さあわかったらお前ら道を開けろ!!これから面白いものが見せてやる!!!!」
趙弘はそう言いながら徐々に兵によって開かれていく道を進んでいった。この歩みが死出への道とは知らず…
〜一刀SIDE〜
「はぁ、はぁ、ここから先は何があっても行かせはしない!!絶対に!!」
民を、家族を、友を護るため、坂を背に一刀は叫ぶ。すでに周りには一刀が斬った大量の黄巾党の屍が転がっておりその光景はまるで地獄絵図のようだった。……だが、
「殺せ!!殺せ!!殺せーーーーーーー!!!!」
彼らは恐れる様子はなく、逆に踏みつけ、蹴飛ばし、我先と一刀に向かっていく。彼らはすでに人を捨て殺戮と自らの欲を満たすため暴れるただの獣に成り果てていた。
「くっ!これじゃあキリがない。何か考えないと…」
そして一刀がそんな黄巾党に危機感を覚え、戦いながら策を講じていると…
「道を開けやがれえぇーーーー!!!!!!」
「えっ?」
すると突然怒鳴り声と共に賊徒達の群れが真っ二つに割れ、奥から男が姿を現した。
「がはははははっ、貴様が荀家の長男坊か!!」
「そうですが……そういう貴方は?」
一刀は相手の質問に構えを解かずに答えた。なぜならここは戦場で相手は“あの”悪逆非道の黄巾党である。男と話している間に奇襲を仕掛けられないよう周囲への警戒は怠らず、構えも解かなかったのだった。
「俺様か?俺様こそ何を隠そうこの青州攻略部隊の大将、趙弘様だ。がははははっ!!」
「そうですか、貴方が大将ですか。ということは貴方を倒せばこの軍は瓦解するわけですね?」
「まあそうだな。だが…」
「なら…」
それを聞いた一刀は趙弘の言葉が言い終わる前に切り込んだ。普段ならいくら賊とはいえ話くらいは最後まで聞く一刀ではあるが、今は自分の方が圧倒的不利なので不意打ちで敵の大将を斬ろうとしたのだった、しかし…
「お前は俺様を斬れない。絶対に。なぜなら…」
ニヤリと笑いながら趙弘が合図をすると趙弘の後ろに控えていた高昇と黄巾党が顔を麻の袋で隠されたボロボロの鎧を着た者を両脇から抱えて前に出てきた。
「なっ!?」
するとそれを見た一刀は趙弘に向かっていた足を止めて鎧を着た人物見つめた。その顔には信じられないといった感情が見て取れた。
「そ、その鎧はまさか…」
どうやら一刀はこの鎧を着けていた人物をよく知っているようだった。いや、一刀の反応を見る限り知っているなんて生易しい関係ではないようだった
「どうやらこいつの正体に気付いたようだな。そうさ!こいつはお前の…」
一刀が鎧の人物の正体に気付いたのを確認した趙弘が麻の袋を取るとそこには
「“父親だ”」
一刀の父、蒼燕がいた。
「うっ、こ、こは?」
「父様!生きていたんですね!!」
「……えっ!?か、一刀じゃないか!どうしてお前までここに…」
「僕は父様がなかなか帰ってこないので探しにきたんです。でもよかった父様が生きててくれて…」
一刀はここが戦場だということも忘れて目から涙を流した。あの時、桂花と共に父の最後を聞かされた時は我慢していたが今回は我慢しなかったのだった。
「一刀…」
「いや〜感動の再会、よかった。よかった」
趙弘はふざけたように手を叩き二人を祝福した。
「き、貴様は趙弘!!そうだ、私はあの時……くっ!」
空夜は全てを思い出したようで悔しそうに唇を噛んだ。
「ようやく自分の置かれている立場を理解したか」
「私は人質というわけか…」
「ああ?何勘違いしてやがる。おい高昇!さっさとそいつを離せ」
「はっ」
「「!?」」
一刀と空夜は趙弘の言葉に耳を疑った。二人はてっきり趙弘は空夜を人質にするとばかり思っていた。だが実際は何もせず、ただ空夜の縄を切っただけだった。
「一体どういうつもりだ!」
「なに簡単な話だ。お前ら…」
「“今から殺し合え”」
「「なっ!?」」
「それで生き残ったほうはここから逃がしてやる」
趙弘は腰に差していた空夜から奪った剣を地面に投げ落とした。
「ふ、ふざけるな!!誰がそんな要求を呑むものか!!」
「ああ?てめぇらには拒否権はねえんだよ」
「なっ!?」
趙弘がぱちんと指をならすと突然、空夜が捨てられていた自分の剣を拾い、そして抜刀するとそのまま一刀に攻撃してきたのだった。
「と、父様!?なぜ僕に攻撃するのですか!!」
「私にもわからない!!か、体が勝手に動いているんだ…」
「そんな!?」
「がっははははは!!貴様には気を失っている間に妖術をかけてあってたった今それが発動したんだよ!!」
「なんだと!」
「妖術の内容は単純だ。“自分の息子を殺す”か、“自分の命が尽きる”まで闘う、ただそれだけだ」
「趙弘貴様ぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「ぶっ!?なんだそれ?ぎゃはははははっ!!!!!!!!?」
空夜が趙弘に向かって怒鳴り声をあげたのだが、空夜の体の自由は趙弘に奪われ、なおかつ一刀と相対しているので趙弘には背を向けている状態にあるので空夜の怒気が伝わらず逆に笑われてしまっていたのだった。
「何か、何か方法があるはず…」
空夜の攻撃をかろうじてかわしながら一刀は必死に別の解除方法を考えた。しかし、解除方法などそう簡単に思いつくものではなく、一刀はただ空夜の攻撃を避け続けるしかなかった。
「………一刀」
すると空夜が意を決した険しい顔で息子の名前を呼んだ。
「父様?」
「私を…私を殺しなさい一刀!!」
「そんな!?諦めては駄目です父様!!必ず手があるはず…」
「いや、もういい。方法は最初から二つしかないんだ。私が死ぬかお前が死ぬか…それならば当然、私はお前を生かす道を選ぶ!!だから早く私を殺せ一刀!!!」
「嫌です!!!父様を殺すなんて僕にはできません!!」
「駄目だ!この場を乗り切るにはそれしかない」
「ですが……ようやく父様と再開できたのにその父様を殺すなんて………僕にはできません!!」
「一刀やるんだ!!!」
「できません!!」
一刀は力の限り叫んだ。再会した父をこの手で殺すことなど一刀には絶対にできなかった。
「これは命令だ一刀!!私は息子のお前をこんな所で死なせる訳にはいかない。私はあの時…伝令係のために特攻をしかけたあの時に死んでいたはずの身だ。息子のお前を生かすためにならこの命惜しくもないんだ!!」
「それでも……僕にはできません!!」
一刀はそれでも首を縦に振ろうとはしなかった。
「わかった。なら…」
「えっ?…うわっ!?」
すると突然、空夜の目つきがかわり、そして斬撃もさきほどとは比べられないほど早くなった。
「がはははははっ!ようやく父親の方はやる気出したか!!ほら息子もさっさと本気でやりやがれ!!」
「一刀、最後の教えだ。私を斬れ!」
「そんな!?できません!!」
ガキィィィィィィン
「ならここでお前は死ぬのか!!妹達を、桂花と蘭花、そしてお前を慕ってついてきた風里と美雷達皆を残して一人先に死ぬのか一刀!!答えろ!!!!」
空夜は蒼家の宝刀『天下鸞武』(てんげらんぶ)を目にも留まらぬ速さで繰り出していく。
実は空夜は怪我をする前は禁軍に属していた過去があり、しかも次期大将軍候補とまで言われるほどの腕前だったのだ。だがある時何者かの陰謀で足に大怪我を負ってしまい、長時間戦場で戦うことができなくなり、それがもとで禁軍を除隊してしまった。そしてその後は道場を開いて人に剣を教えたり、妻の軍の部隊で隊長としてで剣を振るう場面があっても今まで本気で剣を振るうことはなかった。それが今、一刀相手に全力でやっているのだった。
「違います!!僕はこんな所で死ぬわけに行かないだ!!」
そうは言うがやはりまだ一刀には父を殺す決意ができずにいるので空夜の攻撃を防御するだけで決して攻めには転じようとはしていなかった。
「ならお前も全力で来い!!防いでいるだけでは勝てないぞ!!」
空夜は飛び上がり頭上から一閃、それが防がれるとその勢いのまま一刀の後方に移動して死角からの一撃を食らわした。
「………ッ!?」
だが一刀はその攻撃を凄い速さで跳んでかわし、そのまま捻りを加えて空夜の正面に降り立った。
「やめてください父様!!」
「わかった。なら……」
スッっと空夜は剣を構えたまま目を瞑った。そして次に目を開けた時、空夜は一刀に向けて“殺気”を飛ばした。
「父様…」
「いくぞ!一刀ぉぉぉ!!!!!」
空夜はさきほどとは桁違いの速さで斬り込んだ。そう、本気で殺すつもりで…
「(一刀、今のお前ではこの攻撃を捌くことはできない。この攻撃を防ぐ方法はただ一つ、“あれ”だけだぞ…さあどうする?)」
空夜には今の状態の一刀では本気の空夜の太刀筋をは追うことはできないことがわかっていた。そしてわかっていてたからこそ、あえて空夜は本気で斬りこんだ、自らを殺してもらうために…
そして一刀もまた、
「(駄目だ!このままじゃ…)」
今の一刀には空夜の本気の太刀筋が読めないため、当然それを防ぐ手段がなかった。
「(死ぬ)」
そう感じた瞬間…
……お兄様ぁぁぁぁぁ!!!
「(桂花!!そうだ、僕は!!)」
突然桂花の顔が浮かんできたその刹那…
ガキィィィィィン!!!!!
金属音が鳴るのと同時に二人の立ち位置が入れ替わっていた。※ちなみに空夜が斬り込んでからのことは全て一秒の間に起こった出来事となります。
「…………」
「…………」
「……ど、どうなったんだ?」
「さ、さあ?」
「な、何が起きたんだ?」
「俺に聞くんじゃねぇ!」
一刀も空夜も一言も喋らないため、周りで見ていた黄巾党達には何が起きたのかわからずただ騒ぐだけだった。ただ一人黒影を除いて…
「(なんて迅さなの!全部は見えなかったけど蒼卦篭は六閃以上放ち、荀天若はその全てを防ぎなおかつ反撃までするなんて……彼らの実力、私達の予想を超えていたというわけね………ふふっ、でもこれで…)」
ドサッ
その時、空夜の体が倒れた。
「はっ!?父様!!」
一刀は正気を取り戻すと即座に後ろを向いて父の元に駆け寄った。
「(我らの目的は果たしたも同じ…荀天若は自ら父を手に掛けたわ。その絶望は図りしれないはず。では最後の仕上げをしましょ…)」
一刀の元に向かおうとした黒影だがここで思いがけないことが起きた。
「父様!!はああぁぁぁぁぁ!!!」
いきなり一刀ドンッと空夜の胸を勢いよく叩いたかと思ったら突然空夜の体が跳ね、その直後空夜が目を覚ました。
「ぐっ!はぁ、はぁ、はぁか、一刀?」
空夜が意識を取り戻したのだ。
「(なに!?ぼんやりとしか見えなかったが確かに荀天若の剣は蒼卦篭を捉えていたはずよ?……………!?まさか…)」
「父様、よかった…」
「私は死んでいないのか?だが体の自由が利くぞ!なぜだ…」
「それは簡単ですよ。父様は一度死んだので妖術が解けたのです」
「一度死んだって…そうか!仮死状態か!!」
「はい」
なんと一刀は一度空夜を死ぬすれすれ、仮死状態にして妖術を解き、そしてその後に蘇生させたのであった。
「(こうなったら…)」
何かを決意した黒影はさりげなく趙弘の側を離れていった。
「やはり僕には父様を殺すことはできません」
「一刀…」
「ちっ、なんだよ!殺さないのかよ!がっかりじゃねぇか!!」
すると今まで傍観していた趙弘つまらなそうな顔で二人に話かけてきた。
「父様はこっちにいる。もうお前を護るものは何もない、観念しろ趙弘!!」
一刀は立ち上がり趙弘に向かって『黒牙刀』を突きつけた。
「観念、だと?がははははははっ………いい気になるなよ小僧!!一つ面白いことを教えてやる」
「えっ?」
「実は俺の部隊、本当はもう二部隊いるんだよ」
「それがどうした!!」
「気にならないか?ここにはいない二部隊がどこに行っているのかを?」
「えっ?……!?ま、まさか…」
「ほう、どうやら思い立ったようだな!そうさ!俺様の残りの二部隊は今…」
「“お前の母と妹”の所に行っているのさ♪ぎゃはははははははっ。しかも奴らには二人を殺すよう命令してある。これがどういうことかわかるよなぁ?荀天若よぉ」
「趙ぉぉぉ弘ぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
その瞬間、一刀の氣が一気に膨れ上がり爆発した。
〜???SIDE〜
「んっ!?なんじゃこの氣は!?」
「どうした卑弥呼?」
「おや?どうしたのです卑弥呼?」
崖の上に立つ白い髭を生やした白い胸あてに褌と燕尾服“だけ”を着た漢女に仙人のような服を着た初老の男性と赤い髪の青年が尋ねた。
「少々気になる氣を感じたのだ」
「ほう…」
「すまんが私は少し様子を見てくる。すまぬが先に行っていてくれぬか?後で必ず追いつくのでな」
「いや、わしらも行こう。どうやらおぬしが向かう方角から大量の血のにおいがするのじゃ。もしかしたら今巷で噂の黄巾党にやられた者がその場所にいるかもしれん」
「そうか。ではすまぬが私は先にいってるぞ!!なにやら胸騒ぎがするのでな」
するとそう言った者は物凄い速さで走っていってしまった。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ではわしらも行くとしようかのう“華佗”よ」
「はい!“張魯”師夫!!」
〜SIDE END〜
「お前を殺す!!!!!!!」
一刀は黒牙刀に再び氣を纏わせ趙弘に向かって走り出した。しかも刃をよく見るとさきほどのように見えない氣の刃ではなく、白い炎を纏っているかのようになっていた。
「死ねぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
一刀は真っ直ぐ趙弘に向かっていったが当の趙弘は平然とした顔で
「へぇ〜、凄いじゃねぇか!でもなぁそれじゃあ俺様には届かないぜ!!全員、矢を放ちやがれぇぇぇぇ!!!」
『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
黄巾党が趙弘の合図で一斉に一刀目掛けて矢を発射した。
「そうはさせるかああぁぁぁ!!」
だが一刀は黒牙刀を自在に操り矢を弾いて徐々に趙弘に近づいていった。だがそこで邪魔が入ることとなる。
「それ以上はさせませんよ。はっ!!」
ガキィン
「なっ!?」
なんと一刀が矢を弾いた瞬間、黒影が小石を凄い速さで飛ばしてきて一刀の持つ黒牙刀を弾き飛ばしたのだった。そして弾き飛ばされた黒牙刀はくるくると回転しながら一刀の後方、丁度一刀と黄巾党の間に落下した。
「黒牙刀が!?……はっ、しまった!?」
黒牙刀が弾かれたことに動揺した一刀はそのせいで飛んできている矢の対処が遅れてしまったのだ。
「(避けられない!?)」
一刀が矢が体に刺さるのを覚悟したその時、一刀の前に影が現れ、
「一刀ぉぉぉぉぉぉ!!ぐふっ!?」
一刀の代わりにその影に矢が命中した。
「父……様……?……!?」
空夜が口から血を流して崩れ落ちた。なんと一刀に矢が当たる瞬間、地面に倒れていたはずの空也が前に出て一刀の代わりに矢を受けたのだった。
「父様!!しっかりしてください!!」
一刀は矢で倒れた父を抱き上げた。
「か、一……刀…無、事か?」
「は、はい…父様どうして……」
「親が…子をま、護るのは……当然のことじゃないか…」
空夜は涙目になっている一刀に微笑んだ。
「でも!」
「そんなことよりも…ごほっ、ごほっ」
「父様しっかりしてください!!!くっ、あの時僕が無闇に突っ込まなければ…」
一刀は己の未熟さを悔やんだ。敵の挑発にあっさり乗ってしまうだけでなく、我を忘れて突っ込んでしまったことを。もしあの時、敵の挑発に乗らなければ一刀は武器を弾かれることもなく父も自分の代わりに矢を受けることもなかったのだ。
「一刀」
「は、はい」
「いい…か。どんな時でも…決して己を見失うな。……己を見失ってしまえば必ず…隙が生じる。だから怒りや憎しみなど…負の感情に飲み込まれ……るのではなく制して力に変えるんだ」
「はい!わかりました父様!!」
「そうか、それ…と、げほっ、げほっ」
「父様!!もうしゃべっては駄目です!!」
「だ、駄目…だ。い…今、伝えないと…、がはっ!はぁはぁ」
「しかし!!」
「よく聞くんだ一刀。実…は父さん達はお前達…に今まで秘…密にしていたことがある」
「秘、密?」
「はぁはぁ、そう…秘密だ。そしてその…秘密とは…一刀、お前に関係がある…」
「僕に、ですか?」
空夜は残った全ての力を振り絞り一刀に真実を話しはじめた。
「そう…だ。一刀、お前は私達の
“本当の息子ではないんだ”」
「えっ…」
一刀には空夜の言っていることが理解できなかった。
「な、何を言ってるんですか父様!そんな冗談笑えませんよ…」
だが空夜は笑って「冗談だよ」とは言わず、真面目に話を続けていく。
「桂……花が生まれた日。…あの…日、森で食材を探していると…突然近くの茂みに流れ星が落ちてきた」
「そこで気に…なった私が…流れ星の落下した場所に行ってみると、はぁはぁ、そこには一刀、お前がいたんだ」
「そん、な…」
「そして私は…お前を拾い、その日生まれた…桂花の双子の兄として…はぁはぁ、今まで育ててきたのだ。これ…が今まで隠してきた…秘密、だ」
「そ、それじゃあ、僕は一体何のために今まで…」
全てを聞き終えた一刀は目の前が真っ暗になるのを感じた。今まで荀家の跡取りとして、そして家族を護るために頑張ってきたこの数年間、その全てのことが根底から否定された気がした。特に自分は父と母の本当の子供ではないこと…そして桂花、蘭花とは血が繋がっていないということ。このことが一刀にとって一番ショックだった。しかし、
「だがな一刀…」
次に空夜の口から発せられた言葉は一刀にとって
「私達は今まで一度たりともお前を他人だと思ったことはない。むしろお前を愛していた」
「!?」
「私達は家族だ。たとえ…血が繋がらなくても…ごほっ!…正真正銘、蒼卦篭と荀蓮若の自慢の息子で桂花と蘭花の兄だ。……それは一生変わらない私達の絆…だ」
「父…様」
父の言った「たとえ血が繋がらなくても家族」この言葉に先ほどの絶望の感情は消えうせ、代わりに一刀の中に再び温かい気持ちが溢れ始めた。
「か…ずと…」
すると空夜が一刀の手を握ってきた。
「後を…頼む。私の代わりに…家…族…を護っ…て…くれ…」
「はい!…はい!!!絶対に…何があっても絶対に護ってみせます!!!!」
「そう…か。任せ…たぞ一刀。最後に一…刀、私はお前を…愛して…いた…ぞ……」
空夜の手から力が抜け、そのまま地面に落ちた。
「父……様?ねぇ、父様ったら!!起きてくださいよ父様ぁぁぁ!!!」
しかし一刀がどんなに呼んでも空夜から反応はなかった。
「父様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
一刀に悲痛な叫びが戦場に木霊した。
「ふ〜、そいつようやく死んだか。まったく、最後まで目障りな男だったぜ!」
「!?……」
だがそんな一刀の悲痛な叫びなど歯牙にもかけず、趙弘は死んだ空夜を馬鹿にした。するとそれを聞いた一刀は叫ぶのを止め、下を向いた。
「………」
「だがこれで残るはお前一人だ。どうする小僧?大人しく殺されるか、無様にあがいて死ぬか選ばせてやるよがははははははっ!!!!!!」
『ぎゃはははははははははっ!!!!!!!!!!!』
趙弘がそう言うと周りの黄巾党達も一斉に笑い出した。しかし、
「………」
「ちぃ!おいてめぇ!!聞いてんのかよ!!!」
「………」
「何かしゃべりやがれ!!」
どんなに煽っても無反応な一刀についに趙弘は怒りが爆発した。
「あ〜そうかい。ならとっとあの世に送ってやる!おい、お前ら、遠慮はいらねぇ、ありったけの矢を撃ちやがれ!!!!」
『うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!』
趙弘の命令で黄巾どもが一斉に矢を上空に放ち一刀にいる所に向けて矢が豪雨のごとく降り注いだ
シュババババババ……………!!!!!
「もういいだろう。全員止めぇぇい!!!!」
趙弘の命令で矢を放つのを止め、みんなで一刀の死体を確認しようと砂塵が収まるのを待った。実は直前に一瞬だけ上空に向けて突風が吹き、その所為で砂塵が発生しそれが一刀を包み見えなくなっていたが、それでも彼らは何万という数の矢を射続けていたのだ。
「(これは死んだな。あれは反応できても避けられる量ではない。どれ、主に報告の為に死体でも拝んでから帰るか)」
黒影も一刀の死を核心し死体を確認しようと前に出た。やがて砂塵が晴れていき徐々に黄巾の放った矢が見えてきた。だがここで全員が驚くことが起きた。砂塵が完全に晴れるとそこには矢に全身を貫かれた一刀が………いなかったのだった。当然空夜も黒牙刀も天下鸞武も…
「なっ!?周りは俺様達が囲んでいたから逃げられないはずだ!!それなのに奴ら一体どこ行きやがった!!!」
「(確かにその通りだ。逃げ場などどこにもなかった。それは間違いない。それなのに奴は忽然と姿を消した。まさか!?奴も妖術使いだったの?)」
すると部隊の先頭、坂道の近くにいた黄巾兵から声が上がった。
「な、なんでお前がそこにいるんだよ!!!!」
「なんだと!!」
趙弘は台座に上がり声のした方を見た。なんと一刀はいつの間にか坂の上、さっきまでいた場所から百メートル以上離れている場所に一刀は立っていたのだった。そして一刀の足元には一刀が纏っていた外套で全身を包まれた空夜が横たわっていた。
「父様、見ていてくださいね」
一刀は右腰に黒牙刀、左腰に天下鸞武を差して最後にもう一度父を見てから手に持っていた牙門旗を地面に刺し、それから一瞬で坂の下に戻ってきた。
「てめぇ!!一体今何をやりやがった!!」
「ただ移動しただけだよ。それよりもお前ら覚悟はいいか?」
「(!?)」
黒影は戦慄を覚えた。なぜなら今の一刀は先ほどまでとは全くの別人と思えるほどの氣と雰囲気を纏っていたからであった。
「あん?何言ってやがるこの餓鬼!!趙弘様!!こいつ殺していいですよね?」
「ああ、全員抜刀だ!!!奴を、殺せええええぇぇぇ!!!!!!」
だが黄巾党達にはそんなことなど気付くことなく趙弘の合図で黄巾党三万人が一斉に抜刀して一刀に向かって攻めてきた。
「そうか、ならこれから“俺”はお前らを殲滅させてもらう!!」
一刀が腰の黒牙刀と天下鸞武を抜いて構えた瞬間、巨大な光が一刀を包んで爆発した。その衝撃は凄まじく、地面は隕石が落下したように大きく陥没し、前の方にいた黄巾党はその衝撃で吹き飛ばされてしまったほどだった。そしてその中からまるで白い炎のような闘氣と覇気、二つのきを混ぜた氣(のちに皇氣(こうき)と命名)を全身と黒牙刀と天下鸞武に纏った一刀が出てきたのだった。(のちにこの姿は『白極装衣』(はっきょくそうい)と名づけた)
〜???SIDE〜
「(キュピ〜ン!!)??」
「恋殿〜〜〜!!どうやら張角達は真っ直ぐこちらに向かって…恋殿?どうかなされたのですか?」
「う、ん。陳宮、向こうで凄く強い人が戦っている……気がする」
「き、気がするのですか?」
「うん。恋と同じかそれ以上に強い……と思う」
「れ、恋殿より強いんですか!?」
「多分…」
「そ、そうですか…って今はそれどころではありませんぞ恋殿!!張角達が見つかったのですぞーっ!!」
「わかった。恋も戦う。セキトやねね、それに月と詠達みんなを護るために…」
「はいですぞーっ!!」
「恋もいつかこの氣の人と戦ってみたい…かな」
ぼそりと呟いたその一言は武人としての性から出た言葉だったが後にその願いが現実になろうとは恋には知る由もなかったのだった。
閑話休題
一瞬だけ一刀の変化に戸惑ったものの黄巾党達は一刀めがけて切り込んでいった。だが、
「遅い…」
「ぎゃああああああ!!!!!!」
「うぎゃあああああああ!!!!!!」
一刀は先ほど以上の速さで黄巾党を斬り殺していった。しかも武器に纏わせる氣の量を調節することで一度に何人も斬ることが可能になっていた。
「なに!?た、たった一振りで十人も斬り殺しただと……っ!?」
「だが所詮奴は一人だ!!大勢で囲んじ…」
彼はその先を言えなかった。
「“剣技『剣爛舞踏』”」
そう言ったあと一刀の姿が立っていた場所から消え、一瞬で黄巾達の中ほどに移動するとその間にいた黄巾兵達が皆一斉に斬られて絶命した。当然先ほどの賊も例外ではなく、すでに胴が真っ二つになって死んでいた。ちなみにこの『剣爛舞踏』というのは敵を斬りながら移動する技で、本来は敵の間を踊っているかのように動きながら斬っていくものなのだが今の一刀の速さが尋常ではないため、誰も一刀が間を通ったことも斬られたことも認識できないまま死んだのであった。
「ひいいいいいいーーーーーー!!!!」
「バ、バケモノだ!!」
そしてその光景を見てようやく黄巾党達も一刀と自分達の実力が天と地ほど離れていることを悟ったようで皆慌て始めた。するとそれを見た趙弘が怒鳴り声をあげた。
「てめぇら!怖気づくんじゃねぇ!!ちっ、こうなったら…おい、黒影!!“アレ”持って来い!!」
「いいんですか?これを使うと彼らはもう二度と使い物にならなくなりますよ?」
「ふん、構うものか!代わりはいくらでも“あの三人”のところに集まってくるんだ。だから補充はいくらでもできるさ」
「そうですか。ではこれをどうぞ“太平妖術”の写本です。それと私はこれで引かせてもらいますので」
黒影が懐からお札の貼ってある本を取り出すと趙弘に渡した。
「構わん!好きにしろ!ふふふふっ、はっはははははは!!ついに、ついに手に入れたぞぉぉ!!」
「では失礼します(白から失敗の知らせが入ったし、おそらくこちらも同じように失敗だろう。所詮賊は賊だったか……だが収穫はあった。荀天若、あそこまでの実力を持っていたとは想定外だった。このことを急いで主に報告しなくては…)」
趙弘は黒影が自らの馬に乗って走り去っていくのには見向きもせず、太平妖術からお札を外して中を開いた。すると瞬間、紫色の光が趙弘を包みこんだ。
「すごい!力が溢れてくる!まるで生まれ変わったかのようじゃないか!!」
間違いなく本の影響だろう、確かに趙弘の体つきが筋骨隆々となってさっきとは別人のようになっていた。
「なんだこの禍々しい氣は?…まさか趙弘の奴が何かしたのか!?」
そして一刀も突然現れた禍々しい氣を感じて一刀からは見えないものの、氣のする方角を見た。
「ではまずは……」
そして趙弘が本に書いてある呪文を唱えた。すると周りの黄巾党達に異変が現れ始めた。
「う、うぐっ、ぐががががが…………う゛おおおおおおおおお!!!!!!!!!」
「なんだ!?奴ら様子が変だぞ!」
黄巾党達が突然苦しみだしたと思ったら急に叫びだし、逃げ出そうとしていた者達もそうでない者も先ほどのように一刀の力に恐れおののく者はいなく、全員狂気に満ちた顔になって一刀に襲い掛かってきていた。
「「「「「う゛おおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」」」」」
「くっ!やるしかない、か………はああああああっ!!!せいやーーーーっ!!」
そうして黄巾党の変化に戸惑いつつも一刀は攻撃の手を休めることなく戦い続けていき、いつの間にか三万強いた黄巾党ももはや趙弘と彼がただの盗賊の頭だった頃から手下で現趙弘の親衛隊百人だけになっていた。
「ちぃ、所詮雑兵は雑兵でしかないか…」
趙弘が吐き捨てるよう言うとその言葉を聞きつけた一刀が声を荒げて趙弘の前に現れた。
「ようやく見つけたぞ趙弘!!貴様、一体彼らに何をした!!それにその禍々しい氣はなんだ!!」
「ふはははははっ!!これか?これは俺様が“太平妖術の写本”から手に入れた無敵の力だ!そして奴らは俺様が手に入れた力を使って貴様を襲うよう術を掛けてやった」
「外道が!!だけどそれもここまでだ」
一刀が黒牙刀を腰に戻し天下鸞武を両手で構えると趙弘も台座から降り、剣を抜いて構えた。
「もうこれ以上お前の好きにはさせない。……これ以上、悲しい思いをする者を出させはしない!!」
「いいだろう。生まれ変わった俺様の力見せてやろう!!」
「いくぞ!!」
「死ねぇぇ!!」
一段と輝きを増した白い皇氣を纏った一刀と“太平妖術の写本”によってパワーアップした趙弘、この二人の勝負は一瞬で決着がついた。趙弘の走りながら繰り出した鋭い突きを飛び上がってかわした一刀が落下しながら振り下ろした天下鸞武で趙弘の体を真っ二つにしたのだった。趙弘の纏っていた禍々しい氣は所詮、本から授かった付け焼刃のような力だったので今の一刀にとって敵ではなかったのだ。
「はぁ、はぁ、自らの私利私欲で人を殺し、物を奪い、村を焼くお前のような奴に俺は負けない…………くっ、父様、仇は討ちましたよ……」
一刀が空を見上げて亡くなった父に勝利の報告をしていた一方、少人数でも逃げ出さなかった部下達もこの部隊の大将である趙弘の死亡でついに逃げ出した。
「ひ、ひゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「お、お頭がやられた!?うああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「…っとそうだった!まだ賊は残っているんだった。……奴らは逃がしちゃいけない。もし逃がせばそいつらが村を襲いまた悲しい思いをする者が出る。そんなことさせるものか!!」
一刀は視線を元に戻すと黒牙刀と天下鸞武を構え、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う黄巾党達に向かっていった。
「ひええええぇぇぇぇ!!!!お、俺達が悪かった!!だから命だけは!!」
「そう言う者達をお前達はどれだけ殺してきたんだ!!」
たとえ命乞いをする者がいても一刀は無慈悲に斬り捨てていった。
「はぁ、はぁ、次は…!?」
その時一刀の視界に父、空夜に近づく者達が見えた。
「(新手か!父様には指一本触れさせるか!!)」
一刀は近くにいた黄巾党には目もくれず父の下に向かった。
〜五斗米道師弟+漢女SIDE〜
「これは酷いですね」
「師父、彼はもう……」
「はい、もう亡くなっていますね。氣のかけらも感じることはできません」
「くそっ!!俺達がもっと早く着いていれば…」
「それはしょうがありませんよ華佗。我々も急いで来たのですから…」
「それはそうですが…」
「ですがその全ての者達を救おうとする気持ち。いつまでも持ち続けるのですよ華佗」
「はい、師父!!」
「ところで卑弥呼よ。お前さんが気になる氣を持った者は見つかったのかい?」
「ああ、どうやらあそこにいる者が私の探していた者のようだ」
「ほう、彼が」
卑弥呼の視線の先には既に黄巾党の残党と化した者達を狩っている一刀の姿があった。
「あのオノコの纏っている氣はおそらく皇氣だろう。とするとあの者はもしや…」
「卑弥呼、お前彼を知っているのか?」
「まだ予想の範囲では……ん?どうやら私達に気付いたようだな」
「なあ、卑弥呼?あいつ凄い形相でこっちに来るぞ?」
「ふむ、もしかしてその仏はあのオノコの知り合いかもしれないな」
「それってまずくないか?それじゃああいつにとってまるで俺達は知り合いに手を出そうとしている不審者じゃないか」
「かもしれないのう」
「それは厄介なことになったのう」
「師父も卑弥呼も暢気に…」
「心配するな華佗よ!あいつの相手は私がする。すまぬが少し離れていてもらえぬか?」
「わかった。なら頼むぞ卑弥呼!彼にそれは誤解だと伝えてくれ!」
「頼んだぞ卑弥呼」
「任せておけい!」
卑弥呼は向かってきた一刀に視線を戻すと拳を構えたのだった。
〜SIDE END〜
「父様から離れろおおおおぉぉ!!!!」
一刀は卑弥呼に向かって天下鸞武を振り下ろした。
「むぅ!速い一撃、お主なかなかやるのう!!」
「なっ!?俺の攻撃をかわしただと!」
しかし、卑弥呼はそれを後方に下がって紙一重でかわした。一刀はまさか自分の攻撃がかわされるとは思っていなかったので驚いた。
「なら……うっ!?」
「どうしたのだオノコよ!?」
一刀は次の攻撃に移ろうとした瞬間、体の異変を感じて動きを止めた。両手に持っていた黒牙刀と天下鸞武は一刀の手から離れ地面に刺さった。そして突然、
「がはっ!うあああああああああぁぁぁ!!!!!!………」
「「「!?」」」
一刀は口から血を吐き出し、そして白極装衣が弾け、それとほぼ同時に体中の皮膚が裂けて血が噴きだして地面に倒れた。その衝撃で一刀が身につけていた桂花からもらった首飾りの紐が千切れて落下した。
「なんだ!?一体何が起きたんだ?卑弥呼お前まさか…」
「いや、私ではない。おそらくさっきまでこのオノコが纏っていた力の所為だろう」
「さっきのってあの白い炎のような氣のことか?」
「そうじゃ。多分あの力の使用時間が限界を迎えたので体が耐えられなくなりこのようになってしまったのだろう。張魯と華佗よ。すまぬがこのオノコを治してもらえんか?」
「当然だ!!俺と師父はこの大陸の全ての者を治すために旅をしているんだ!」
「そうじゃな。だがここでは負の氣や雑菌が入って治療に集中できん。すまんが卑弥呼よ、ワシとこの患者を向こうの洞穴まで運んでくれぬか?」
「お安い御用だ」
「華佗よ、すまぬがお前は後からついて来るのじゃ。できるな?」
「もちろんです師父!!」
卑弥呼が抱えていけるのは二人が限界なため、華佗は後ろからついていくしかなかった。しかも卑弥呼の本気の走りは華佗の全力でも追いつけないほど速いので張魯は聞いたのだった。
「では急ごう。手遅れになる前に、な」
「うむ、ではいくぞおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
そう言うや瀕死の重傷の一刀と張魯を抱えた卑弥呼は猛スピードで走っていってしまった。
「さすが卑弥呼だ!もうあそこまで。っと俺も急がなくては!!…ん?」
走ろうとした華佗だったがふと声が聞こえた気がして振り向いた。
「ん?……気のせいか?」
(息子をよろしくお願いします…)
「えっ?……そうか…」
今度ははっきりと聞こえた。その時華佗は全てを理解し、そして誰もいない所に向かって言った。
「任せろ!!俺と師父で必ず救って見せる!!!」
(ありがとうございます…)
最後にそう言うと声はもう聞こえなくなった。
「父の愛は偉大、か…これで絶対に死なせるわけにはいかなくなったな。この想いに答えるためには俺も全力をだすぜ!!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
声に頼まれた華佗は頬を一叩きしてから卑弥呼の向かった方向へ全力で走り出した。
「卑弥呼ぉぉぉぉぉ!!!!師父ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!今行きまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!!!!!!!!」
こうしてのちにあの飛将軍呂布と双璧を成すことになる一刀の真の初陣は幕を閉じた。この戦いから逃げ延びた者達と遥か彼方で繰り広げられた呂布の戦いで生き延びた者達は二人のことを畏怖を込めてこう呼んだ。
一刀を“白刃の鬼神”そして呂布を“鮮血の鬼神”と…
そして黄巾乱が終結する頃にはこの二人の異名はこの大陸中に知れ渡ることとなった。
あとがき
新年あけましておめでとうございます!
今年の抱負としては良くて今年中に最終回までいくこと、悪くて赤壁か最終決戦までは行きたいと思っています。
……できるかな?
ともかく今年もどうかよろしくお願いしますm(_ _)m
挨拶も済んだ所で今回の説明をさせていただきます。今回一刀がなったあの姿、『白極装衣』ですが、ぶっちゃけるとジャンプで連載中の「○LEACH」の主人公○護の未完成状態の○現術のような姿です。と言っても能力は○護のそれとは違い、白極装衣自体が鎧のようなもので防御力があり、同時に身体能力を上昇させることができます。そして武器にも纏わせるので氣の量を増やせば大勢の敵をまとめて斬ることが可能となります。
まさに無敵っぽい『白極装衣』ですが常に闘氣を放出し続けるため、無くなれば使用はできなくなるのはもちろんだが、一番の問題は通常の倍以上の身体能力を得る代わりに解いたあとの身体にかかる負荷が大きいので長時間の使用と乱用はできないことです。
ちなみにこの弱点は今回の話のあと卑弥呼が一刀に注意したという裏設定があります。
では最後に次回予告です。
黄巾党の首領 張三姉妹が討たれ(本当は華琳に保護させている)黄巾の乱は収束した。だがそれにより露呈した漢王朝の無能さが大陸全土を揺るがす大事件が勃発する。
そう、張譲による何進の暗殺から始まる反董卓連合の結成である…
次回[真・恋姫†無双〜二人の王佐〜]第二章 第四話 「英雄集結」
『この戦いに隠された真実を見抜け!!』なんてね!
それではまた次回!!
説明 | ||
※注意 実は前の話を今回の話に合わせて最後の方を少し修正しました。なので最初に前回の話を読んでおいてください。そうしないと話がちぐはぐになるかもしれません。 相手は総数三万を超える黄巾党の群れ。 対するは『黒牙刀』一本で戦いを挑む一刀のみ。 この勝負の結末はいかに!? 拙い文ですが最後までお楽しみください。 |
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コメント | ||
せい!せい!せい!せい!!!!!は戦いの表現というよりお遊戯みたいなのでやめた方がいいかと。(車窓) 〇護ってゆうより幽〇白〇に出てくる仙〇の気鋼闘衣って感じですね(ボンちゃん) とうとう反董卓連合ですか・・ここから一気に盛り上がりそうですね。(ツクモ) 連合編ではどちらにつくのかな。十常持がいるかどうかとか洛陽の状況で変わるでしょうけど。(陸奥守) 最初の「せい!せい!せい!せい」でレイザーラモンHG思い出した自分ってなんなんだ・・・qrz 1年ってのは一刀の治療やらリハビリにかかった期間jなのかな、続き楽しみ〜(氷屋) 黄巾の終結早いなぁ。まぁ恋姫ではプロローグ扱いだから仕方ないと思うけど。(アルヤ) |
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