雛人形 |
私は霊感とかは無い人間なんだ、多分。
片手間で町内会の会報の記者をしてまして。
ある老人ホームの取材の仕事があって、うかがったんですね。
ある老人ホームに行った時のことですかね。
小雨まじりの天気の中、3人1 組で取材に行くんですが。
私のほかは、いずれも「明日にでもここにお世話になれ!」と
いわんばかりのロートル記者ばかりで。
入り口を入ると小びろいエントランスがあって。
いきなり、ちょいと変になったよな婆さんの雄叫びに出迎えられて。
まぁ、よくあることで。
ナニ云ってるのかはわからんケド。
私たちも必要も無ければそこにいる
高齢者との必要以上の接触があるわけではないんですが。
次に調査者モードで所内を観察してゆく。
4月なのにね。ま〜だ、雛祭りの雛壇が飾ってあって。
ふ〜ん、やっぱりこういうの、やるんだなぁー。
みたいなことで。
ひと通りの取材をして。
昼食の時間になって。
同行のロートル記者たちと話すのもイヤだったんで。
エントランスあたりにでて。喫煙所がそこだったこともあって。
そしたら、さっきの入り口に居た婆さんがまた雄叫びを上げていて。
日がな、こんなことしてるんだろか。
そんなことを思っていたら。
比較的若そうな女性のヘルパーさんが、私の眼を気にしてか
その婆さんを部屋に連れて行った。
喫煙所でタバコを燻らせておると
さっきのヘルパーさんが来て、煙草を吸い始めた。
なんにも喋らないのもバツが悪いかな、とか思ってですね。
目に付いたのが雛人形で。
いや、なかなかデカくてしっかりしたもので。
あぁ、立派な雛飾りですなぁ〜。
「そうですよね、毎年出すんですけど結構大変なんです」
そうでしょうなぁ、豪華七段飾りってヤツですかぁ〜。
そんなとき、私、なんか寒気がした。
これはぁ、こちらでお買い求めになったんですかぃ?
「いいえ、どこかのかたが寄付してくれたみたいなんですけど・・。」
なんだろ、この雛人形に触れたがらないような様子で。
やっばぁ〜、変なこと聞いちゃったかな・・・な雰囲気が漂っていて。
話題を切り替えようとしたところ、ヘルパーさん、堰を切ったように
話し始めたんです。
「ココだけの話ですけどね・・・」
え?やっぱり・・・そういう・・・そっちのハナシぃ?
「この雛壇の一番上の段の敷板の裏側にマジックで書いてあるんですよ。
<わたしが10 さいのたんじょうびをむかえたら>って。」
どういう意味?
「なんでもね、この雛飾りを買ってもらった女の子が難病で
亡くなったらしいんですよ、7 歳で。生まれて間もなく長生きは出来ない
って云われてたらしいんですけどね。お人形が大好きで。でも遊んでいたら
お姫様の片手がとれてしまって。そのときにね、10 歳になったら
新しい雛人形と買い替えよぅって話していたらしいんですよ。」
切ないハナシですなぁ。
「出るんですよ、ここ。結構強烈なのが・・。」
んわぁ〜、勘弁してくださいなぁ・・。
「ダメですか、こういうハナシ・・」
ダメ。絶対ダメ。
だけど聞きたい。
「最初は夜勤の人たちが、見たって言うんですけど
その女の子が来ているって。」
うわぁ、マジですか。
そしたら、巨大なオバさんのヘルパーさんが割って入ってきた。
「そぅそう、夜中にね、遊んでいるのよ。唄を歌ったり走り回って・・。」
そりゃぁ、やばいですよね。
「そんなもんじゃないのよ、ここのは」
「おじいさんがね、夜フラフラ廊下を歩いていてね、一緒に散歩していたとか」
「そのおじいさんが、翌日突然、死んじゃったとか」
「そうそう、オタネさんもいっしょに貼り絵をしてたって云って」
「そのあとすぐに死んじゃったね・・・」
マジですか。お迎えに来てるんですか?
「そうかもねぇ。でね女の子はね、昼も居るんですよ」
マジっすかっ!
「そうそう。ハッキリ見えるもんねぇ、マリカちゃん」
マリカちゃん?
「そう、さっきの文章の後に<まりか>って書いてあるの。」
「だから、人形出すの止めよ、っていうんだけど、
出さなかったら、出さなかったで・・」
ナニナニ・・・?
「夜中といわず昼といわず、全館放送で泣くのよ。<出してぇーッ!>って。」
え・・あ・・ええっ?!そ、そりゃぁ、強烈ですなぁ〜。
そんな話を聞いた後、取材続行。
ま、ありきたりの取材でして。スムーズに進みまして、終了。
そんなあと、よせばいいのに同行したおばさんの記者はデジカメを
取り出して「皆さんとお写真でも」とか云って。
私は、そんな話し聞いた後じゃ・・私は、いいですからぁ〜。
とことわりながら、撮る側に回った。
またまたよせばいいのに雛壇の前で・・。
私は、撮った。
で、プレビューをみたら。
雛壇の後ろに。まっくろな霧みたいのが映っている。
建物の中に。デジカメでもあるんですな、こういうの。
もう背中に冷たい汗をかきながら。
「それじゃ、もう一枚。」
おばさんの記者は調子に乗って云った。
仕方なしに撮ったらさ。
プレビューみたら、はっきり映っているんだもの。
髪の長い女の子が。列の横に。
私は笑顔で・・・、消去した。
いやぁなモン見たなぁ〜って思ってですよ。
ささ、帰る段になって、下駄箱のまえで。
例の雄叫びを上げるバアさんが出て来てですよ。
また、雄叫びを上げた。
その声に、その言葉に私は戦慄した。
「まりかちゃーん、行っちゃダメェーッ!」
説明 | ||
クソ忌々しいというかクソ禍々しい映画の代表作 「エクソシスト」の続編「エクソシスト2」は 世間的には評判がすこぶる悪いが 私的には「エクソシスト」を離れたところで、 監督ジョン・ブアマンの観念的SF映画として、 かなりの完成度を持った映画だ。とは思うんだ。 だが、あまりの評判の悪さに今度は原作者自信が その続編に着手した。 原作者ウィリアム・ピーター・ブラッティといえば、 第一作の出来をめぐってキチガイ監督フリードキンと派手にやりあったとされる人物。犬猿の仲を通り越したまるで悪魔同士の戦いを繰り広げたらしいんだが。 んな、キリスト教なんぞ、全然関係ないワシとしては、この続編 の続編。「エクソシスト3」は・・というと。 あー、やつらこんなのが怖いんだねぇ、と思ったんだが八百萬の神の国の民である私としては単純に 病院に巣食う婆さんの悪魔が天井を這いずり回り でかいハサミで襲ってくるシーンは、かなーり怖かった。 さて今回投稿するのは、以前某掲示板で書いたものを 再構成したものであるが、ストレートに体感温度を間違いなく10度下げる・実話90%の高純度ピュアほん怖話。 2010年夏作 2012年1月「エクソシスト3」より改題 |
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