異聞〜真・恋姫†無双:四十
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この作品はキャラ設定等が一刀くんを中心に、わりと崩壊しております。原作重視の方はご注意下さい。

時代背景等も大きな狂いがあったりしますので、

『外史だから』で許容できない方は全力でブラウザバックを連打しましょう。

 

オリキャラも出ますので、そういうのが苦手という方も、さくっとまわれ右。

 

一刀君とその家系が(ある意味で)チートじみてます。

物語の展開が冗長になる傾向もすごく強いです。(人、それをプロット崩壊という)

 

この外史では一刻=二時間、の設定を採用しています。

それでもよろしい方は楽しんで頂けると幸いです。

 

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目の前の俺の罵声が途中で掠れた理由そのもの、それは泣きながら怒りを表した袁公路さん、その人だった。

 

「わらわの前から勝手にいなくなったと思えば、七乃の差し金だったじゃと? ……適当なことを言うでない。

わらわに、わらわに愛想が尽きた、そういうことであろ?」

 

「……んで、そうなるんだよ」

 

「だったら、だったらなんで勝手にいなくなったのじゃ、胤! わらわが、わらわが、すぐに思い出せなかったからなのか!」

 

ゆっさゆっさ。

小柄で非力な彼女が、悪ぶってる少し口の悪い俺の分身の両肩をつかみ、必死に問い詰める姿が、

逆に愛らしくすら感じてしまう雰囲気を出している。

 

自分の頬が緩むのを自覚するが、どうにも止められるものでもなく。

 

「ちょっ、ちょっと落ち着け、美羽! それに、てめぇは笑ってんじゃねぇ!」

 

「いや、ごめんごめん。お前は公路さんの心をがっちりつかんでるんだな、って思っただけだよ。

まさか、『袁胤』……公路さんの従兄妹の名をもらっているとは思わなかった」

 

頬は緩むものの、聞き逃せない点もあることだしね。

とりあえず、二人がかりで公路さんを何とか落ち着かせて、話を再開できる態勢を作りつつ、

同時に七乃さんを傍に呼び寄せた。

 

孟忠(紀霊)さんに雪蓮たちとの壁になるように、遠巻きに俺たちを囲ってもらうのを確認すると同時に、更なる異変は起きた。

 

「およ? ……胤の姿、透けているように見えるのじゃ」

 

彼に……あえて、袁胤と呼ばせてもらうが、しがみついて離れない公路さんがふと漏らした言葉。

 

「あ?あ、だから、この一刀さんが戦乱を束ねるまでは身を隠しておけばよかった、のに。

私の気遣いを無視した、貴方が、悪いんですよ。最悪の予想通り、になったじゃないですか」

 

あえて冷たく、突き放す言い方をする七乃さん。だけど、震える声色は、わずかにだけど、表に出てしまっていた。

 

「ふん、ずーっと、美羽に誤解されたまま、下手したら死ぬよりもよっぽどマシだな。

あの腐った老人どもの掃除をやっておけば、美羽が生き延びられる確率が跳ね上がる。

だから、やったまでのことだ。だが、なるほどな。満足しちまった状態で、分身に会えば、こうなる……のか」

 

「い、一体、何の話をしているのじゃ……! 胤、まるで、またいなくなるような言い方などするでない!」

 

忌まわしき満月の記憶。経験をした俺には理解できてしまった。

ただ、今回は俺が見送る側であるということ。消えるのは、分身たる袁胤。

 

「覚えとけよ、相棒。俺は、記憶を取り戻した美羽に会えたことで満足しちまった。その結果がこれだ。

お前は、成すべき事を果たすまで、下手に満足なんかするんじゃねーぞ」

 

そう、満足そうに笑った後、彼は、本当に優しく──後に七乃さんが、俺の笑顔に瓜二つと教えてくれた。

その笑顔で、公路さんに微笑みかけた。

 

「美羽。俺は、この世界でもお前が『俺』を正しく思い出してくれて、納得しちまった。

お前の足かせとなっていた奴らは、先に成敗しておいたから、今回は路頭に迷う事も無い」

 

「そんな言い方……しないで……たも……」

 

「お前が行く道に迷うとしても。七乃がいる。今回は紀霊や魯粛もいる。それに、頼りになるもう一人の俺がいる。

なんせ、曹・孫・劉……三大勢力の有名な武将を誑し込んでるトンでも無い奴だからな」

 

華琳、雪蓮たち、愛紗の方を見ながら、胤は愉快そうに笑う。心配は無いよな、と。

そういう間にも、段々と、彼の姿は掻き消えるように、薄くなっていく───。

 

「七乃、頼むぜ。姫さんを絶対に一人にするなよ。ま、お前の事だ。そういう意味で心配はいらんだろうが」

 

「当たり前……でしょう? 私がお嬢様を一人にするなどあり得ませんから」

 

「おう、そうやって強がるお前を見れるのも、最後か。全く……そっちの俺には、うまく、甘えろよ?」

 

目を伏せている七乃さんの瞳は見えない。だけど、微かな震え。彼との間には、きっと確かな絆があったはずで。

 

「嫌じゃぁ! 嫌なのじゃあ……逝かないでたも、胤! お前と七乃がいれば、わらわはどこでだって生きてゆける!」

 

少女の悲鳴混じりの懇願に、胸を突かれて。

思ったんだ。俺と同じ痛みを抱える人が出来るのは、真っ平だって。

 

「気脈……解放っっっ!」

 

俺の氣は武人とは違い、全てを圧するようなものではなく。

ただ、人よりちょっと量が多くて、そして、解け合おうとする気質を持つ。

 

「諦めるのは早い! お前も俺も、まだ人事を尽くしてなんかいないっ!」

 

俺は彼の手を取り、全身を包むように氣を流し始めた。

 

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なんつーか、俺ながら、規格外な奴だ。

こいつの氣に包まれつつある俺は、確かに薄れ始めた自分の肉体を取り戻しつつある。

 

相手に迎合できるような気質なんざ、あり得るのか?

これが『御遣い』補正って言われたら、それまでだけどよ。

 

ただ、俺もその端くれだから、わかっちまうことがある。

俺が消えるのは、この世界の修正力だ。御遣いが同じ世界に複数人いるのを、

それこそ、世界は病魔の元とでも認識するんだろう。

 

こいつは、俺と違い、既に幾度も世界を駆け抜けているんだろう。

俺と同じく、特定の人だけ守れればいいと言いながら、色んな人の思いを背負い、それを捨て切れない、甘ちゃんだ。

その背負ったもんの重さ、それがこのおかしな氣の量に出てる。そう思うんだ。

 

「やめとけ。そんな量を放出しすぎたら、お前が死ぬぜ?」

 

「勝手に俺の限界を語るなよ……! てめぇをこの世界に繋ぎ止めるまでは注ぎきってやるから黙って見とけ……っ!」

 

綺麗な色だよなぁ……黄金が一番近いんだろうが、感じるのはお天道様のソレだ。

人の死に様も綺麗なもんもエグイところも散々見てきて、なお、この色か。くくっ、ある意味天晴れなもんだな。

底無しのお人好しか、面白い。

 

どっちにせよ、この氣が尽きれば、俺は消える。そして、目の前のこいつも生を終えかねない。

……ふん、兵士の壁も崩れたか。孫家の連中も兵士も、一緒に戦った連中も呆然としてやがる。

 

そんな中で、黒髪の……巻き髪とポニーテールの女二人組と、筋肉マッチョのビキニ姿の変態の瞳が引っかかった。

 

女二人は、こいつの想い人ってとこだろう。信頼と心配が交じり合った、なんとも言えない顔をしてる。

駆け寄りたくてしょうがないのに、慕う男の意志を尊重して、なんとか思い止まってる、ってとこだ。

……いい女じゃねぇか。ま、美羽や七乃には劣るがな。

 

そして、あの変態男だ。

なんか、擬態の妖術でもかけてるんだろうが、御遣いの端くれの俺には見えるんだよな。『本体』が。

だが、今重要なのはそこじゃねぇ。

 

「見通しきったと言わんばかりの、あの目。気にくわねぇ……」

 

……それに。

 

「胤……?」

 

このままオサラバっていうのも、死に切れない。なんか遺してやりたい、そんな欲が出た。

 

「美羽、ちっと足掻いてみるわ」

 

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いつしか直視できぬ程の光量となり、一帯に広がっていた黄金色の光が収まった後、視界を取り戻した者達が見たのは、

地面に両膝をつけたままの恰好で両腕を交差し、自身を強く抱きしめながら、ぼそぼそと何かを呟く袁公路と、

彼女の肩に手を添え、ゆっくりと何度も頷いている、北郷一刀、

そして、その様子を喜びと悲しみが混じり合う妙な表情で見守る、張少軒の姿であった。

 

華琳たちにしても唖然とする。反乱軍の長が、光が収まると姿も形も無く、かき消えていたという現実。

突然、一刀が自らの氣脈を解放し、徐々に強まる光に暫し視界が奪われ、状況が掴み切れぬままの急転である。

 

だが、渦中の当人たちはどうだ。慌てふためくでもなく、傍目には落ち着いているようにすら見える。

 

「七乃さん。この民の皆を俺の仲間とし、俺は街造りを始める。公路さんの代わりに、皆に呼びかけるよ。いいね」

 

「一刀さんの御随意にどうぞ。あの人の意思と重なった貴方の考えなら、結論がどうであれ、お嬢様も納得できますから」

 

「ありがとう。…………皆、聞いてくれ!」

 

御遣いと呼ばれる男は、その場に集ってい者たちに呼びかける。

 

「貴方たちを解放した御遣いは、実際に姿は見えずとも、役目を果たし消滅する運命に抗い!

俺とこの地の本来の太守!

欲に塗れた『くそったれ』共の手で監禁状態になっていた、彼が救いたいと願った、袁公路の身体にしかと宿った!

俺と彼女は、実際に彼との意思の疎通を図ることも可能だ!

 

どうしてこうなったかは分からない!

ただ、貴方達の願いが、奇跡として彼の消滅する運命を救い上げたんだ!」

 

民達はどよめく。自分たちが打倒しようとした役人の長もまた被害者であり、

自分たちを導いた御遣い、袁胤はそれすら救い出したのだと。

さらに、彼の姿が見え無くとも、もう一人の御遣いに彼は宿ったという。

理解の及ぶ域を通り過ぎたが故の、混乱であった。

 

ただ、話が終わったわけではない。

騒めきを手を掲げることで制止し、一刀は静かに、それでいて、辺りに響くように、

伝えるべきことを皆に告げていく。

 

「……彼は、甘い汁を吸っていた者を排除した後の、貴方たちの生活を、見据えていたんだ。

消え去る運命にありながらも、貴方達をこの先も守っていく為に、成すべきことを成した」

 

多くの者が息を飲む。そして、二人の御遣いの姿を無意識に重ね合わせる。

言葉使いが異なれど、彼らは自分たちを必死に守ろうとしていると。

 

「その彼は願っている! 食べるに困らずに皆が暮らしていける毎日!

俺は……北郷一刀は! その夢を引き継ぐことをここに約束する!

その実現の為に、全力を尽くそう!

 

……大陸は今、困窮に瀕している民が大勢いる。俺は、その受け皿を作りたい。

汗を流し働いた者が、真っ当な対価を得られ、飢えることの無い街。

賊に身をやつそうとしたり、一斉蜂起を図る人たちに、そんなことをする必要はなく、

この地で共に働き、笑顔で暮らそうと言える、拠り所を築きたい!

 

その為には、まず南陽、汝南、寿春、さらに江南の地を豊かな土地に変えるのが最低条件になる!

俺一人では出来る筈も無い、だけど、諦めるつもりも毛頭無い!

 

どうか、どうか皆に力を貸して欲しい! この通りだ!」

 

話を聞いていてくれた皆に、一刀は頭を下げる。

刹那の沈黙の後、割れんばかりの歓声が彼を包み込み、大地を振るわせていた。

 

「御遣い様っ! なんでもやりますぜ! どうか使ってくだせぇ!」

 

「アンタは命の恩人だ! ついていきます!」

 

「住む皆が飢えない街! 最高じゃないですか! やってやりますぜ!」

 

「あたいたちも必死で働くよ! 何でも言っとくれ!」

 

「僕たちも働くよ!」

 

「私たちも手伝うーっ!」

 

彼に賛同する声々に、一刀はあえて袁胤の言葉を持って答える。

 

「『よし、てめえら! こき使ってやるから覚悟しやがれ!

大陸全部が腹一杯食えるぐらいの食いもんを、俺たちで賄ってやろうじゃねえか!』」

説明
前回のあらすじ:民の存命を願う声を背に、寿春に降り立った御遣いと相対する一刀。
あえて雪蓮たちを挑発し、支配者からの救済など実際に救いにならぬと吐き捨てる彼に、
一刀は、自分の守りたい者の優先順位がそもそも違うと語る。

お互いを探り合う中、場に割って入ってきたのが、
袁公路…涙を両目に浮かべて、拳をきゅっと握り締めて、ふるふると身を震わせる一人の少女だった。

人物名鑑:http://www.tinami.com/view/260237

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あけましておめでとうございます。
更新が遅くなって申し訳ありません。完全にスランプ期間に入っております。

正直、超展開すぎるとは思いますが、
いずれ物語の中で、語りたいと思いますので、
今回はご勘弁ください……orz
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コメント
>陸奥守さん 満たされきれなく性欲を持てあまさせますかな?(通り(ry の七篠権兵衛)
>骸骨さん コントロールが効く辺りがここの一刀の恐ろしさ・・・・・・っ!(通り(ry の七篠権兵衛)
>jonmanjirouhyouryukiさん ピッコロさぁーーーーーーーーーーーんっ!(通り(ry の七篠権兵衛)
>mokiti1976-2010さん あれかな、そろそろ精気玉使えるようになったりするかな(おぃ(通り(ry の七篠権兵衛)
>殴って退場さん 氣で二本に増やして同時に相手出来たりするんだろか(マテ(通り(ry の七篠権兵衛)
>quarterさん それ打ち切りフラ(ry(通り(ry の七篠権兵衛)
この種馬が感じる快楽、苦痛に変わらないかなと嫉妬しながら願ってみた。(陸奥守)
もとから夜の種馬力が強いのに、これ以上増したら華琳様たち壊れるんじゃないか?w(量産型第一次強化式骸骨)
これで「真・一刀」に一歩近づいたということですね。(mokiti1976-2010)
待っていましたよ。融合で夜の方もパワーアップしたらまさに無敵状態…。あ、すでに無敵か?(殴って退場)
まあとりあえず、もげろ! ふむ・・・「満足出来たぜ・・・」→融合フラグ、「俺たちの満足はこれからだ!」→生存フラグですか(ネタ古・・・い?w(quarter)
>オレンジぺぺさん 性王から性神にクラスチェンジ……っ!(通り(ry の七篠権兵衛)
>転生はりまえ$さん セル貂蝉がいるからありですよね?(通り(ry の七篠権兵衛)
>shirouさん 本年も宜しくお願い致します。夜の種馬力が増すということは、黄色い太陽を彼が拝むことが無くなるのか・・・・・・ちくしょうもげろ(通り(ry の七篠権兵衛)
>ノワールさん 魏ルートの一刀がそんな感じですよね。やり切っちゃうと世界から役割終えたと思われてしまうと。(通り(ry の七篠権兵衛)
>根黒宅さん 『お約束』でいいよねという開き直りと申しましょうか(苦笑) 二次創作は星の数ほどあるのだから、自分で書いていて辛すぎる展開は嫌だと再認識した。そういうところです。(通り(ry の七篠権兵衛)
DBのピOコロのような状態に!?(黄昏☆ハリマエ)
そして夜の一刀力も更にパワーアップか・・・・w今年も期待しております。(shirou)
「一刀」同士が出会ったら、消滅か融合か…下手に満足してしまったら、外史から消滅の恐れがあるというのは厄介ですね…。(ノワール)
ふむ、ある意味予想通りの展開。「一刀」と融合する度にパワーアップでもするのか?(根黒宅)
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真・恋姫†無双 魏アフター 一刀 美羽 七乃 二人の御遣い 

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