ハルナレンジャー 第二話「研究者誘拐」 B-5
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Scene8:ダルク=マグナ極東支部榛奈出張所将軍執務室 AM09:00

 

 モニタを前に座るシェリーと、後ろにたたずむジルバ。

「朝方ちょっとした騒ぎが起こったようだが」

「例の連中が天宮博士を連れ戻しに来た、とのことで」

 キーボードを操作すると、幾つかのデータリストが表示される。

「当面の成果は拾えたようだな」

「は。並行して幾つかのサンプルも完成しておりますが」

「ふむ……実践での確認検証が必要、と。アレにやらせれば良かろう」

「ご随意に」

 一礼してジルバ。そのまま引き下がろうとするところを、

「待て」

 と引き止める。

「連中が、連れ戻しに来ただと?」

「当面博士の作業もございませんし、特に問題なくお引き取り願いましたが、何か」

「問題大ありだろうが!曲がりなりにも敵に拠点が知られているのに何を悠長に報告しておるか、貴様ァ!」

 手甲をはめた手で力一杯殴られた机が悲鳴を上げる。

 怒鳴られたジルバの方は、その激昂もどこ吹く風と右手の人差し指で軽く眼鏡を持ち上げるだけ。

「……弁解があるなら聞いてやろう」

「今回の任務につきましては、拠点を秘匿する必要は特にないと判断いたしました」

 手甲を押しつけられたままの机がさらにぎしりっと悲鳴を上げる。

「幸い周辺住民とは友好的な関係を築けておりますし、市当局も表立っては介入してきておりません。当面の作戦行動に関しては、大きな弊害を引き起こさないと愚考いたしますが」

「周辺住民と友好的な関係、だと?」

「は。主には市街清掃活動、引っ越しや搬入の手伝い、アーケードの活性化協力などとなっておりますが」

「……ど」

「『ど』?」

「どこの世界に侵攻先の周辺住民と仲良くやる侵略者がおるかぁっ!」

 ばきっ

 シェリーの怒りにとうとう机の天板が裂けた。

 レミィが見ていれば泣き出すこと間違いなしのどす黒いオーラを前にして、しかし長髪の軍師は一切動揺せず、淡々と言葉を続ける。

「宣撫作業の手間を考えますと、当初から友好的な関係を結べるに越したことはないと」

「そこは否定せんがな……」

 正体を知られないことは恐怖を生み出す。作戦における威圧効果の減衰を思ってシェリーはこめかみをおさえかけ……ふむ、と顎を捻る。

「今回本来の目的が侵略行為にない以上、影響は軽微というわけか」

「御意」

「……しかし、さすがに敵に本拠を知られたままというのはな」

 いらいらと爪で椅子の手すりを叩く。

「あちらの本拠及び構成人員についても把握しておりますので、特に情報面で不利を被ることはございません」

 ジルバの手元の操作にあわせてモニターが切り替わっていく。

 興味なさげにそのデータを追っていたシェリーの眉間に皺が寄った。

「……貴様は先ほど、市当局の介入はない、と言っていたようだが?」

 

 

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