仮面ライダーEINS 第二十六話 巨剣
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――2012年1月11日 14:00

――新東京国際空港

「……4年ぶりかな、日本」

 そう呟いて一人の青年が久しぶりに日本に帰国した。

「一騎君と会うのも久しぶりだな。映司君もああ言ってたし……」

 旅の途中で出くわした発掘現場。そこで出会ったのは自分の後輩だった。

未だに踏み込むのを躊躇ってしまうその土。未だに後悔の残る拳。未だに傷の残る笑顔。かつてたくさんの笑顔を守ったその青年は、自分の事は何一つ守れずにいた。

 

――力というものはどれほどまでに責任と犠牲を伴うものなのか……。

 

――ヒトがそれを知る由もない。

 

 * OP:Kamen Rider KUUGA  *

 

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EPISODE26 巨剣

 

――2011年1月11日 14:02

――学園都市 中央区 事務科

――市長室

「お帰りなさいませ、学園長」

 一騎は市長室で学園長を迎えたところだった。

「済まない。せめて君の容態くらいは確認したかったのだが……」

「いえ、お気になさらず。ところでオーズとフォーゼはどうでした?」

 一騎の問いかけに対し、学園長は満面の笑みで答えた。

「素晴らしい青年達だった。もう私たちの時代は終わったのかもしれないな」

「何をおっしゃる」

「今回は彼らに助けられ、そして教えられた。たまには前線に出るのも良いものだ」

「まだまだ次の世代に伝える事がたくさん残っています。ご自愛ください」

「ははっ、この老害が必要とされているとは……了解した」

 一騎の注意を軽く聞き流すように、学園長はいつもの椅子に身を預けた。

「学園都市の方はどうだい?」

「はい。現在、尾木・K・小次郎を指名手配しております。年をまたいでなお見つからないということはおそらく外に出たかと。また今回の宣戦布告、及び日本政府から派遣されたツヴァイチームがそれを行った事に対して抗議の旨を伝えたところです。既にマスコミはこぞって今回の事件を取り上げてます」

「何故財団Xはツヴァイチームを使って学園都市を攻めた?日本政府に非難が集まるだろうに?」

「その意図は不明です。財団Xの実態を日本政府という国家で隠すためか。……ハルはレム・カンナギに依頼された陽動じゃないかと言ってましたが……」

「陽動ついでに完全撃破か……腑に落ちないな」

 そう言って学園長はいつものように学園都市を見渡せるガラス窓に近づいた。

「しかし今回の銀河王事件で学園都市が手薄になったのは確かです。どちらかといえば二面作戦かもしれません。いずれにせよ、幹事長の辞職という形で今回の事件に決着をつけるつもりでしょう」

「ふむ……ところで君はどうだ」

「ヌルに問題はありません。身体のほうはやはり進行していましたが」

「どういうことだね?」

 一騎の言葉に驚いたのか、学園長は目を見開いて一騎を見た。

「椿先生の診断ではどうやらアインツへの変身がヌルにある程度刺激を与えていたようです。やはりガイアメモリおよびロストドライバーの濾過技術では、使用されているエネルギーの違いから完全にスポイル出来ていなかったと考えられます。今回の変身で一気に進んだようです」

「ということは……かなり進行している……と?」

「五代先輩ほどではありませんが」

 付け加える様に言い放った。それもまるで他人事のように。

「大丈夫です」

 サムズアップはなかったものの、受け継がれた言葉だった。

「それにしても……オーズやフォーゼを見ていると、初めて君に出会ったときを思い出すよ」

「まあ、みんな似たもの同士ですよ」

 

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――時は遡り2005年

――城南大学

――考古学研究室

「で、五代君は帰ってこないと」

「なんか……帰りたくなさげでした」

 まだ若い一騎は、かつて戦士クウガの数々の謎を解明したその場所で、沢渡桜子准教授と向かい合っていた。

一騎がヌルに変身してから、雄介はすぐに彼の知人に連絡をとり、彼を日本に強制送還した。といっても法的なものではないが。

「窓、開けておくって言ったのに……」

 今使っているコンピュータも薄く新しくなっていた。

「で、君のお腹にもアマダムが入ってるの?」

「けど装飾品とか違って……俺が変身した姿は、五代先輩曰く"凄まじき戦士"に非常に似てるって」

 荒々しい黒い装甲。色は違えど体表を走るどす黒い血管。金色の角。そして……

「瞳の色は?」

「え?」

「五代君が凄まじき戦士になったとき、瞳はいつもと変わらない赤い瞳だったんだ。伝承では全身真っ黒で目も真っ黒って聞いてたから……」

「そういえば五代先輩、瞳だけ明るい赤って言ってました」

「そっか、じゃあ大丈夫だね」

 雄介に見せていた笑顔を、彼の後輩にも見せていた。

「そうなんですか?」

「聖なる泉枯れ果てし時 凄まじき戦士雷の如く出で 太陽は闇に葬られん」

 紡がれた言葉は究極のクウガを示す言葉。

「え?」

「五代君がね、凄まじき戦士になったらゴウラムは砂になって消えちゃうはずだったんだけど……」

 そう言って沢渡准教授は何枚かの写真をデスクからとりだし、一騎に手渡す。

「これが……ゴウラム」

「うん」

 一番上の写真には黒き甲虫ゴウラムが。続いて雄介や沢渡准教授の姿も見える。

そうして写真を見ながら色々説明を受けているうちに、研究室のドアがノックされる。

「あ、学園長かな?」

 そう言って沢渡准教授はドアに駆け寄った。

「ああ、ありがとう。沢渡先生」

 開け放たれたドアから学園長と……まだ少年と言うべき男性も入ってくる。この少年を沢渡准教授も知らないのか首を爨げた。

「君が雨無君だね。私が城南大学学園長だ」

 そう言って学園長は一騎に手をさしのべた。

「雨無……一騎です」

 仮にも自分が所属している大学の最高職だ。緊張するのも無理はない。しかし学園長の後ろに付き添っていた少年はそれを一切感じさせない。

「君は……仮面ライダーというものを知っているかね?」

「仮面……ライダー?」

「そうだ。君は力を望んで手に入れた。確かにその瞬間は正しかったかもしれない。だが、今考えればどうだ?その力がどんなものか分かるか?その力を御する技術を知っているか?君はその力を正しく使う自信はあるか?」

「それは……」

「君が君自身で作るんだ。雨無君。君の居場所を君自身で」

「僕達が手伝うよ」

「君は?」

「やあ、ミスター雨無。僕はハルヒコ・タチバナ。世間一般に言う飛び級のマッドサイエンティストさ」

 そう、この瞬間こそ、アインツチームが誕生の瞬間だったのだ。

 

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――2012年1月25日 10:02

――学園都市 中央区 事務科

「雨無くん」

 呼びかけられて振り返ったそこには、彼が尊敬する警察官が笑顔で佇んでいた。

「一条さ!?……一条警視」

 伝説。一騎はかつて彼をそう例えた。かつて仮面ライダークウガを支えた最高の相棒。一条薫その人だった。

組織は違えど、所属しているのは警察組織。彼への敬意は敬礼という形で示された。

「久しぶりだな、何年ぶりかな?」

「は、はい。五年ぶりです」

「そう堅くならないでくれ」

 随分笑顔が変わってしまった。

「連絡して頂けたら迎えに行きましたのに……」

「いや……少し場所を変えないか?」

「じゃあ私の研究室に」

・・・

・・

「昨年12月に学園都市を襲撃した政府チーム、あの怪人体のほうだが未確認生命体第46号に酷似していた」

 いつもの机を挟んで、一条警視と一騎が、そして晴彦がデータを纏めながら話し合っていた。

「タイプブラッド・コーカサスですか」

 一条が取り出した書類に載っている未確認生命体第46号、そして今回のタイプブラッド・コーカサス。雄々しい一本角に電撃体に強化できる身体能力など、共通点が非常に多い。

「タイプブラッドは遺伝子情報を元に細胞を分子、原子レベルで一時的に作り替える技術なんです。その遺伝子情報は普通の動物、植物なんかも含まれるのですが……」

「グロンギのものが使われたと。そしてその遺伝子情報はどこから得られたのか?」

「07年の情報漏洩のスキャンダル。榎田さんら科捜研が作製した神経断裂断が紛争地帯で見つかったってやつですね」

 一騎と晴彦に解説に、ふうと一息ついて一条警視はソファに身を預けた。

「……大丈夫ですか?」

「自分たちが……何より五代が成した事が否定されているようでな」

「……そうですね」

 そう言って一騎も一息入れるために紅茶に手を伸ばした。

「当事者じゃないとわからないんですよね。特に日本は無駄にマスコミの声がでかくて、政治屋が警察上層部に指示して、現場の士気に支障が出る」

「学園都市はそう言った循環から抜け出すために造られました。世界を縛っている大きな網。それを破るために」

 珍しく晴彦が熱く語っていた。少し前の彼はどこか人を小馬鹿にした少年だったが、アインツチームの一員として成長していた。

「綺麗事ですけどね」

「綺麗事だ。だから現実にしたいんですよ」

「……五代と同じような事を言うんだな」

「後輩ですから」

「……そういえば、五代が日本に帰ってきているぞ」

「え?」

 

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――2012年1月25日 14:02

――学園都市 理系学区

 大通りから少し中に入ったところで、亜真菜はいつもの帰り道を歩いていた。

普段と違うところといえば、旧友の身体が異常なまでに変貌していたのを知っていたくらいだろうか。

だからこそ狙われた。

突然男が亜真菜の行く手を阻んだ。

「貴様……しゃべって貰うぞ」

「え?」

 前にもあった光景だ。違うと言えば目の前にいる人間が、今は落ちぶれたツヴァイの装着者、尾木・K・小次郎であることくらいか。

もちろん指名手配されているので顔はよく知っていた。

「貴方……指名手配の!」

「雨無一騎……あいつはどうなっている!」

 もはや支離滅裂になっていた。もうあの男に何度敗北したか分からない。

必死だった。その必死さは彼に向けず、別の方向へと、悪い方向へと暴走していた。

 

『Zwei!!』

 

突如、ツヴァイドライバーにカードを装填し、大剣を携えながらツヴァイに変身する。非戦闘員に、それも何の装備も防具もしていない一般市民に襲いかかろうとしていた。

「私はこうみえても看護士よ、患者さんの情報を漏らさないくらいの覚悟はあるわ!」

 尾木がツヴァイに変身してもなお気丈。その勇気は、墜ちるところまで行ってしまったツヴァイには眩しく、そしてうっとうしいものだった。

「貴様!」

 ツヴァイが手にした大剣で亜真菜に斬りかかろうとしたその瞬間、勇ましいバイクの音が鳴り響きツヴァイがバイクに弾き飛ばされた。

「大丈夫?」

「は、はい」

 いつもなら一騎のはずだ。だが、雰囲気が違う。

そして少し遅れて、ロードチェイサー・カスタムがそのバイクに横付けされた。

ヘルメットのバイザーをあげた一騎は、そのバイク・ビートチェイサーをみて、そして搭乗者の顔を見て、大きく目を見開いた。

「五代先輩!?」

「おお、一騎君」

 あげられたバイザーからのぞいたのは、少し変わってしまった笑顔。それでも大空よりも大きかった。

「雨無ぃ!」

 ビートチェイサーにふっ飛ばされたツヴァイが立ち上がり、一騎と雄介に迫ろうとしていた。

「五代先輩、和泉をお願いします」

「了解」

 4――9――1――3

 アインツドライバーを召喚し、左手を右天に突き出し覚悟を叫んだ。

 

――変身!

『ENERGYFORM』

 

アインツコマンダーをアインツドライバーと合体させ、アインツギアとなる。それと同時にアインツギアから白いリングが跳び出し、それが一騎を中心に回転を始め光球となり、光が振り払われたその中にアインツが登場した。

前回不意を突かれて大破したが、その面影はなく少しマイナーチェンジが行われた。

大剣を手に吶喊してきたツヴァイの手を掴み、頭突きで間合いをあけた。

「尾木!お前、非戦闘員を巻き込んで……誇りはないのか!?」

「うるさい!貴様ら勝利者に何が分かる!」

 大剣の大振りに当たる訳もなく、出来た隙に目を覚まさせる様に打撃を叩きこむ。

「お前の大義はどこにいった!」

「くっ」

 動きが止まった。

「お前、何のために自衛隊から外人部隊に入って何で日本に戻ってきたんだよ!日本がどれほど危機状況下か、そして国民がその事実を知らないってことを憂いたんじゃないのかよ!」

 反則だった。それは分かっていたがツヴァイの頬に拳を入れたくて仕方なかった。

ふっ飛ばされたツヴァイは起き上がる事もせずに、地面に身体を預けていた。

「確かに俺には分からないさ。とんとん拍子で事が進んで、お前を蹴り倒して今の地位を手に入れて。だけどお前がやりたかった事は他にも出来たんじゃないのか?」

「だからこそ!」

 ツヴァイが突如起き上がり、カードを装填する。

 

『オルタナティブ』

 

 全身にブースターが現れ、大剣がもう一振り追加される。

「だからこそ、なおさら貴様が許せないのだ!!」

 身体の後方に付けられたブースターが点火し、大剣をクロスさせるようにアインツに斬りかかる。

「こんの!分からず屋がぁ!!」

5――5――5――4

 

『ENERGY!!Release!!』

 

『ENERGY!!RIDERPUNCH!!』

 

 リミッター解除後、即必殺技のコードを発動した。アインツの白い装甲が赤く燃え上がると同時に、手が猛火に包まれツヴァイドライバーに突き刺さった。

しかし突き刺したのは拳ではなく、掌であった。ツヴァイドライバーを業炎と共に掴んだアインツは、手を押し出すと同時にそれを握りつぶした。

ライダーパンチを受けて大きく吹き飛ばされたツヴァイは、体中からスパークをあげツヴァイの変身が解かれ、尾木が地面に突っ伏した。

「ふう……」

 ツヴァイドライバーは完全に破壊できた様だ。アインツの拳の中には変身に必要なカードの残骸も握られていた。

「一騎君」

 ツヴァイを破壊した事で尾木は戦闘不能になったはずだ。安心した雄介が亜真菜を連れてアインツに歩み寄ってくる。 

しかし尾木が突如立ち上がった事で事態が再び急変した。

「尾木……お前?」

「俺は……お前に勝ちたかったんだよ!!ただそれだけなんだよ!!」

 咆哮と共に尾木が一枚のカードを取り出した。突き出されたカードにはMaskedRider VIERとKAMENRIDEと言う文字。突き出されると同時に尾木の腰にベルトが転送された。

「それは!」

『KAMENRIDE!VIER!!』

 カードがベルトに吸い込まれる様に装填されると、ベルトから四つのリングが跳び出し、尾木の身体を隠すように回転し始める。

「何で貴様がフィーアシステムを?」

「うおぉぉぉ!!!」

 白銀のフリューテッドアーマーを思わせる装甲に、顔を隠すヘルム。騎士甲冑を思わせる装甲を纏った仮面ライダー、フィーアが姿を現した。

 

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――五代先輩は戦わないでください

 

――だから見ててください!

 

――さあ盛大に、そして派手に行こう

 

EPISODE27 変身

説明
この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。
執筆について
・隔週スペースになると思います。
・日曜日朝八時半より連載。
・後三話です。
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タグ
仮面ライダー 仮面ライダーEINS アインツの世界 TINAMIの世界 仮面ライダーフォーゼ 

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