真・恋姫無双〜散りゆく乙女たち〜 |
蜀軍が攻勢を続け、呉はじわじわと押し込まれるという情勢が続いていた。
どうしてそうなっているのかというと、総大将の陸遜が女性であるという理由で、呉軍の諸将は勝手な行動を取り続けており、それを彼女が剣を手にかけることで軍権が自分にあることを諸将に見せしめて、やっと命令に服するというありさまだったからだ。
そんな情勢では、今の蜀軍を止めれるわけもなく、とうとう本陣まで来てしまう。
「……さすがにここまで来ると相手も陸遜の指示に従うようです。桃香様」
呉本陣がよく見える場所に辿り着いて最初に発する趙雲。
「そうだね。さすがに、今までみたいに簡単にはいかないみたいだね」
その陣を見渡しつつ策を考える劉備。
「……それにしても、すごく暑いね。なんか息が苦しいよ……」
今日は晴天。
劉備は服を緩めて自身の周りを今度は見渡した。ちょうど木が沢山生えていて日の光を防げそうな場所だ。
「星ちゃん、各隊に森を中心として陣を張る指示を。それで少しは暑さが防げると思えるから」
「御意」
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蜀軍が陣形を張っている構図を見た陸遜は微笑む。
「何を笑っているんだ隠?」
陸遜の補佐北郷は尋ねる。
「それはですね〜」
のほほんとした口調で理由を述べるがその内容は敵視点から見れば残虐な話だった。
「……君に軍を任せてよかったよ」
北郷はその内容を聞いた後、改めて彼女の才能を褒め称えるのだった。
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その日の夜、風が燃え、星空が燃え、大地が燃えた。
劉備は目の前に広がる光景を憎んだ。
「なんで、なんでこんな事になるの……?」
蜀軍七十万の軍勢と呉軍五万の軍勢が雌雄を決した戦い。蜀軍の総大将である劉備は義妹達を殺した孫権を殺すために挙兵した。その行いは一部を除いて賛同された戦いであり、正義という名の戦とも思えた。
でも、実際は正義でもなんでもなかった。劉備のワガママと人々をただ不幸にするだけの戦だった。
圧倒的な軍勢は少数の軍勢に追い込まれ、瀕死な状態へと陥っていた。
「なんで、なんでなの!? どうして愛紗ちゃんや鈴々ちゃんを殺した奴を味方するの!」
劉備は叫んだ。声が乾いている。戦いの轟音が彼女の声をかきけしている。劉備の傍にあった『蜀』と描かれた旗が倒れ炎で燃える。
「……簡単だよ桃香。君が悪だからみんな抵抗するのさ」
劉備は振り返った。
そこにいたのは北郷一刀という男がいた。
「…え、ご主人様……?」
驚きで声が出ない。なぜなら劉備がご主人様と言った男は随分前に自決したハズだからだ。信頼できる趙雲から聞いたのだから間違えないはずだ。
「……自決しろ桃香。それが今君が出来る責任の取り方だ」
「な、何を言ってるのご主人様? 自決するべきなのは孫権……」
「違うね。孫権も死ぬべきだけど君も死ななきゃいけない。君は責任を取らなきゃいけない」
「責任……」
「君は勝てる戦に負けた。君は信頼された兵士達を裏切った。それが悪でなくて何?」
「それは……」
「自決しろ桃香。いや、君は生きることさえ罪なんだから……」
そういうと北郷は炎の中へと消えていく。
「待って!? ご主人様、行かないで! 私を―――私を一人に―――!!」
追いかけようと駆け出そうとしたが、煙が劉備を取り囲んだ。
「ゲホッ、ゲホッ、待……って……」
そして、劉備の意識は途切れた。
続く……
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第四話 『夷陵の戦い』 |
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