インタビュー ウィズ リザードマン |
「おいこら、トカゲ」
「なんだよ、猿」
「さっきから、何見てるんや」
「去年の話やけどな。アルゼンチンで、三つ眼の魚が獲れたらしいのや」
「それがどないしたんや」
「獲れた湖には、原発の冷却排水を流し込んどったらしいわ」
「ちゅうたら、アレけ? 放射能のせいで目玉が三つになったと」
「お前、分かってるクセに、わざと放射線のコト、放射能て言いよるやろ。
嫌味やし、止めたほうがエエぞ」
「やかまし。初代ゴジラ公開後は、放射線を放射能と言うてもええようになったんや」
「無茶苦茶言いよるなぁ」
「ワシが今そう決めた。抵抗は無意味や」
「また無体なコトを」
「で? やっぱ放射線の影響なんか?」
「いやぁ、今の話だけではなんとも。そうかも知れんし、違うかも知れん」
「相変わらずハッキリせぇへんやっちゃなぁ。
トカゲの話は、キッパリ言い切らんであかんわ」
「せめて、一匹だけか、他にもおるか。他にもおるなら、別種の奇形も発生しとるんか。
みたいな情報が無いと、判断付かへんで」
「でも、偶然の突然変異で、目玉が三つになったりするもんかい?」
「先祖がえりでそうなった、ちゅう可能性は否定しきらんかもな」
「ほぉ。昔の魚には、目玉が三つも付いとったんかいや」
「ん〜、元々は四つほどあったかも知れんなぁ」
「お前なぁ、昔の魚は、皆四つ眼のバケモンやった、て言うんかいな」
「その前は、もっとあったかも知れへんで」
「んな、無茶な! 目玉が、そんなぎょうさんあってたまるかいや。
今の生きモン見てみぃや。たいがい二つ眼て、相場は決まっとるがな」
「ま、今の生物の目は、構造もややこしいし、いっぱい持つのは難しいやろからな」
「昔やったら、そうでもないと?」
「例えば、や。大昔の目玉ゆうたら、解像度も低ぅて、色も白黒。
自分の周りが明るいか暗いか、ぐらいがざっと分かる程度のモンやったとしてみ?」
「ふんふん」
「身体の周りに、ぐるっと目玉を取り付けて、身の回りの様子が分かったら便利や。
そういう単純な目から得た情報の処理に、脳みそいっぱい使う事も無かろうしな」
「それが、何で二つ眼生物の世界になってしもうてん?」
「そんなん、想像するしかないけど、やっぱ視覚情報は便利やからな。
生物は、目の玉のツクリを、どんどん進化させていったんやろ」
「デジカメとか、次々とええのが出てくるようなモンやな」
「目玉が高級品になってくると、ぎょうさん持つのは大層や。
どんどん数が減っていって、とうとう二つ一組だけが残ったんとちゃうか?」
「ふぅん。それで、生きモンの目玉が四つとか三つの時代があったちゅうワケか。
でも、三つ眼言うのはヘンやないか。 普通、目玉は左右で二つ一組やろが?」
「四つ眼から二つ眼に進化(ちゅう言葉はアレやけど)する途中で、
ボツになる方の組が、松果体と頭頂眼(頭のてっぺんの目)に変化した、ちゅう話がある」
「またまたぁ。そないなホラを」
「ホラではないで。wikipedia の『ムカシトカゲ』とか見てみ?
ちょっと長い記事やけど、真ん中あたりの『感覚器官』のトコな」
「でもコレ、お前の仲間のトカゲの話やろ?」
「まぁそうやが。でも、世間には収斂進化ちゅうのがあってな。
違う種の生きモンでも、似たような進化をする、いうのはあったかもしれん」
「大昔には三つ眼の魚も、泳ぎよったかもしらん、いうコトけ」
「まぁな。で、その頃の形態が、先祖がえりで出てきよった可能性も、
完全には、否定しきらんと思うワケよ」
「でもまぁ、顔とか目玉の変異は、見た目のインパクトがゴツいからなぁ。
興味本位で騒いだらいかんのやろうとは思うけど、やっぱキモいわなぁ」
「その気持ちは分からんでもないけどな。 でも、去年の11月の話が、
二ヶ月後の今は大して誰も気にしてない、ちゅうのもどうかと思うぞ」
「そうは言うても、続報が無いと騒ぎようもないやろ」
「別に騒がいでもええがな」
「ネットの話題は、騒いでナンボやで」
「それがアカン、ちゅうのや」
「難しいやっちゃなぁ」
「この手の話は、結論出すんに年単位どころか十年単位かかるんも稀やない。
もっと腰据えた調査と議論が必要や、とワシは思うで」
終
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ちょっと関西弁が入ったハイファンタジー超短編。 前 http://www.tinami.com/view/326374 頭 http://www.tinami.com/view/325056 |
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