そらのおとしもの 走れ智樹 |
そらのおとしもの 走れ智樹
とある国に住む少年、桜井智樹は用事の為に国の首都「ソラミ」へとやって来た。
そこで智樹はあることを街の人達から聞いた。
それは国の王(会長)が人間を信じられないとして次々に罰すると言う悪政を行っているとのことだった。
「なんて王様、いや会長だ! 俺が文句言ってやる!」
智樹は会長のいる城へと殴り込みに行ったが、黒服の兵達が簡単に智樹を取り押さえ、会長の前へと連れ出された。
「会長に何か用かしら?」
この国の王(会長)の美香子が智樹を問いただす。
「あんたが人を信じられなくて罰してるって聞いて文句を言いに来たんだ!」
「人間って裏切るものなのよね〜。だから会長はイマイチ信用できないの〜。
それとこんなことをした以上、処刑よ〜」
美香子が処刑宣告を智樹に言い渡すが…。
「待ってくれ! 俺の故郷には病気で体の弱い幼馴染の女の子がいるんだ!
せめてそいつに別れの挨拶がしたい! だから一度帰してくれ!」
「そう言って逃げる、会長は知ってるのよ〜」
「俺は絶対に逃げない! 信じてくれ!」
「信じられないわね〜」
「……だったらこの街に来てる守形って人を探してくれ!
その人なら俺の身代わりになってくれるはずだ!」
「仕方ないわね〜、探してらっしゃい」
「はっ!」
兵達は守形を探し、数分後に見つかった。
智樹は守形に事情を話した。
「なるほど、分かった。いいだろう、俺が身代わりになろう。
智樹が帰ってこなければ俺を処刑すればいい」
「あら、いいのかしら? その子、帰ってこないかもしれないわよ〜?」
「俺は智樹を信じている」
守形の目は信じ切っている眼であった。
「なら会長が暇つぶしに試してあげるわ〜」
「それで期限は? 俺の故郷、思ったより遠いから片道で半日ギリギリかからないくらいなんだ」
「半日ね〜。それじゃあ、1日後の日暮れまでにするわ〜。時間にして30時間よ。
それまでに帰ってこなかったら、このメガネ君を処刑しちゃうわよ〜」
「分かった。先輩、それじゃあ俺行ってくる!」
智樹は急いで城を出て、故郷へ走っていった。
「…………」
美香子は黙って見過ごすわけがなかった。
「カオスちゃんいるかしら?」
「呼んできます」
黒服に連れ出されたカオス。
「どうしたの?」
「カオスちゃんにお願いがあるのよ〜」
「お願い?」
「ええ…………」
カオスにあることを吹き込む美香子。
智樹は約半日かけて故郷へと戻って来た。
「そはら……」
智樹は病気で体の弱いそはらの家へとやって来た。
「そはら」
「どうしたの智ちゃん? 突然…」
そはらはベッドから起き上がって返事をした。
「ダメだろそはら、寝てなきゃ…」
「だって智ちゃんが突然来るんだもん」
そはらを寝かせる智樹。
「それで智ちゃん、何か用があって来たんでしょ? 何しに来たの?」
「それは…」
智樹はとどまった。
ここで自分は城に戻って殺されることを言えばそはらは確実に大泣きをしてこういうだろう。
(ダメだよ! 城に戻らないで! 私と一緒に追手が来ないところまで逃げよう!)
智樹はそんなことが予想できていたが、病弱なそはらを連れての逃避行は難しい。
またここで城に帰らなければ守形の命がない。守形は智樹にとっては色んな意味で助けてもらった。
そんな守形を智樹は裏切れなかった。
「……………」
智樹は言うに言えない状況に陥った。
「智ちゃん?」
「それはな……、おっぱいを揉みに来たのだーーーーー!!」
智樹はそはらが病弱なのをいいことにそはらの胸を揉みまくる。
「いや…あ、………智ちゃんの……エッチーーーーーーーーー!!」
そはらは必殺の殺人チョップで智樹を吹き飛ばした。
「だああああれえええええええ!!」
智樹はそはらの家から城の方向へと吹き飛ばされていった。
「智ちゃんのバカ」
そはらは布団にもぐりこむ。
「いててて……」
そはらに吹き飛ばされた智樹は起き上がる。
吹き飛ばされた場所は運よく城と故郷の村の間であった。
「ここは……時間短縮が出来た!
待っててください、先輩!」
智樹は起き上がり、走り出す
そして智樹の前に小さな女の子が立っていた。
「うん? なんだちみっこ?」
「お兄ちゃんが桜井智樹なんだよね?」
「そうだけど、俺今急いでるんだ。悪いけど遊んでる暇は……」
智樹は女の子を通り過ぎようとした時、その女の子の背中から尖ったものが現れ、智樹を襲おうとする。
智樹はその攻撃から紙一重で避けた。
「な、なんだ?」
「ねえ、お兄ちゃん遊ぼうよ」
「遊ぼうって…俺は忙しいって!」
「だってお兄ちゃんが遊んでくれるって会長が言ったんだよ?」
「はあ?」
智樹は何のことか分からなかった。
智樹が出て行ってすぐのことであった。
「え? 遊び相手?」
「そうよ〜、桜井智樹って言うお兄ちゃんが遊んでくれるのよ〜。カオスちゃん、最近遊び相手がいないって困ってたでしょ?」
「そのお兄ちゃんが遊んでくれるの?」
「そうよ。今そのお兄ちゃんはこの城から出て行って半日くらいかかる村にいるのよ〜。
そこを通っていけばいいからいってらっしゃい♪」
「うん♪」
カオスは背中の羽を使って出て行った。
「酷だな、美香子」
「それほどでも〜」
そう言うわけでカオスがそこにいたのだ。
「くそ、あの会長の仕業だな。俺が帰られないようにして約束を破らせるために……」
「ねえお兄ちゃん、遊ぼうよ〜」
カオスが迫って来る。
智樹は考える。ここでカオスから逃げてもカオスは追いかけてくるだろう。
そうなってはうまく城に戻れるかどうかは分からない。
かといってここでカオスの相手をしていたら約束の時間を過ぎてしまう恐れもあった。
(どうすれば……どうすればいいんだ)
智樹は考える。そこであることを思いついた。
「そうだちみっこ、鬼ごっこだ!
俺が逃げるから、お前が鬼な?
言っておくけど、その背中のを使うのはなしだからな!」
「うん♪」
智樹の考えたこと、それは鬼ごっこをしながら城に戻ると言うものであった。
「待て待て〜」
智樹を追いかけるカオス。
カオスから逃げながらも城へと戻っていく智樹。
そして約束の時が来た。
「帰ってこないわね〜」
「ああ」
「それじゃあ約束通り、英君は処刑よ〜」
守形が首都広間で処刑されそうになった時であった。
「待ったーーーーーーー!!」
智樹の声が聞こえてくる。
「智樹!」
「先輩、待たせちゃいましたね!」
「お兄ちゃ〜〜〜〜ん」
智樹の後ろからカオスがやって来て、カオスが智樹の背中をタッチする。
「お兄ちゃんが鬼ね」
「ああ、そうだな」
智樹は涙を流していた。
「お兄ちゃん、どうして泣いてるの?」
「鬼になりたくてもなれそうにないからな。それでだよ……」
智樹はもうこれからこの世とお別れをしなくてはならないのだ。
とは言っても智樹に考えがあったのだが……。
「それじゃあ、桜井君の処刑を始めるわよ〜」
「へ?」
智樹は黒服の兵士達に腕を掴まれる。
「ちょ! なんで!?」
「なんでって、そう言う約束でしょ? 英君は桜井君の身代わりだから、桜井君が戻ってくれば桜井君を処刑をするのは当然♪」
「いや、ここは約束を守ったのをみて感動して、俺達の処刑を取りやめるんじゃ……」
「会長、こんなことで感動はしないわ〜。
むしろ桜井君が英君を見捨てて逃げていれば、会長は感動して英君の処刑を取りやめたんだけどね〜」
「えええええええええええ!?」
美香子の本質は悪。
そのため、裏切りなどを見るのが好きだったのだ。
つまり人を信じられないと言うのは人間不信からでなく、ただ単におもしろそうだったからである。
「それじゃあ、桜井君の処刑よ〜」
美香子がどこからか剣を取り出す。
「ひええええええええええ!!」
泣き叫ぶ智樹。しかし美香子は聞く耳持たず、そんな時であった。
突然広間の方に光の衝撃波が飛んでき、美香子の持つ剣を叩き折る。
「これは……」
「はあ……はあ……」
そこに現れたのは病の体をおしてやって来たそはらだった。
「そはら!」
「智ちゃん……」
「なんでこんなところにいるんだ!? 寝てなきゃダメだろ!」
「智ちゃんが死ぬ気だっての、会ってすぐに分かったよ」
「! なんで? 俺は一言も言ってないのに」
「一体何年智ちゃんの幼馴染してると思ってるの? 智ちゃんの考えることくらいすぐに分かるよ」
そはらは少し歩いただけで息切れを起こしていた。
「なんで、来るんだよ!」
「だって智ちゃん、私を置いて死ぬんだよ。そんなの嫌だよ。
もし死ぬんなら、一緒に死にたい……」
そはらは涙ぐみながら智樹に近づき、智樹と触れ合った。
その様子を見た美香子は……。
「会長、思わず感動しちゃったわ。処刑は取りやめよ〜」
こうして智樹は処刑されずに済み、そはらも体調がよくなり病弱体質も改善され、二人は幸せに暮らしたとさ。
めでたしめでたし
説明 | ||
今回のお話はとあるアニメで「走れメロス」を題材にしたお話を見て書いたものです。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1174 | 1145 | 2 |
コメント | ||
さすが会長、王様より性質が悪いですね。その悪性を智樹以外に向けられないというジレンマさえなければ世界を支配していたんだろうなぁ。(tk) 悪まっしぐらの会長さんも愛には弱いんですね。心温まるストーリーだぜ!!(枡久野恭(ますくのきょー)) |
||
タグ | ||
そらのおとしもの 桜井智樹 見月そはら 守形英四郎 五月田根美香子 カオス | ||
BLACKさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |