外史異聞譚〜幕ノ五十二〜
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≪漢中鎮守府・評定の間/北郷一刀視点≫

 

俺の手に縋りながら必死で微笑もうとする懿を見つめながら、俺は内心で自分を殴打していた

 

さっきまでの俺は、懿や忠英さん、儁乂さんや公祺さんの目にはどのように映っていたんだろうか

 

多分、憎悪と悲しみに我を失った、ただヒトのカタチをした化物に見えていたんだろうな

 

 

俺は、懿の頭をあやすように撫でながら、周公謹の方に顔を向ける

 

「すまないね

 どうにも見苦しいところをお見せしてしまったみたいだ」

 

俺の言葉に周公謹は小さく頭を振る

 

「いや、多少驚きはしたが問題はない

 むしろ今は少しほっとしているところだ

 天の御使いもやはり人の子か、とな」

 

その言葉に苦笑しながら、俺はみんなに声をかける

 

「そういう訳で公祺さん

 すまないんだけど文醜と顔良の件については、俺はこれ以上口出ししない事にするよ

 これ以上みんなに心配かけるのも、ね…」

 

「まったくだ

 これに関してはアタシらに任せてもらう事にするよ

 さっきは生きた心地がしなかったからね

 仲達ちゃんには後でもう一回謝っておきなよ?」

 

公祺さんの言葉に頷くふたりと、そんな必要はないと首を横に振る懿を見て、俺は自分の卑小さを再認識する

よくまあ、みんなこんな自制のきかないクソガキを立ててくれているものだ、と

 

役人達も少しずつ先の騒動から立ち直ってきたようで、場の空気は悪い意味で今は弛緩していた

流石にこれはまずいと判断し、俺はみんなに声をかける

 

「みんな、色々と心配をかけたようだが、もう問題ないよ

 なので今は全力で対応に当たってくれ

 俺達が気を緩めれば、それだけ犠牲者が苦しむって事を忘れないで欲しい」

 

『応!!』

 

俺の言葉にみんなが一斉に返事を返し、場は再び引き締まっていく

それを見て、感心したように頷きながら、周公謹が呟く

 

「見事なものだな

 今だから正直に言うが、最初は仲謀樣を言い方は悪いが孫呉独立の質草にと思っていた

 だが、これはいよいよ、本当に婿に欲しくなってきたかも知れん」

 

「ははは……

 こんな時にまたご冗談を…」

 

「私はこういう事では冗談を言わん

 こういう冗談は苦手でもあるしな」

 

えーっと…

なんというかものすごく返事に困るんですけど?

客人の前だからみんな表情が変わってないだけで、俺を非難する空気がもうものすごい事になっています

顔にも声にも出せませんが、司馬懿さんが縋りついていたはずの俺の手は、今は別の意味で血の気が引いています

とても痛いのだけど、顔にも声にも出せません

 

「ま、まあ、その話は今は置いておくとして、状況はどうなっているか、報告してもらってもいいかな?」

 

そんな状況から逃げるように(実際逃避なんだけど)周囲に報告を求めたところ、慌ただしく役人が何人か前に進み出てくる

 

「羅局長と玄武将軍からのご報告では、無事だった民衆の避難はほぼ完了しているとの事です

 周囲の民家や商店の協力も得て、現在は戒厳令を敷き重症患者の治療に当たっているとの事です」

「死者や重傷者の数はまだ不明ですが、予断を許さぬ状況の者が200人以上いると華陀樣より報告が入っています

 備蓄されている薬石では足りないかも知れないとの事です」

「祭酒樣達から別途報告がありましたが、会場には子供や妊婦はいなかったため、見た目より被害は少なく済んでいると報告がありました」

「城門を封鎖していた近衛からの報告で、犯人の一味らしき武闘家を黄龍将軍が捕獲したとのことです

 北平太守樣がそのお仲間と追っていたのを偶然遭遇し捕獲したとの事で、もうすぐ護送されてくるかと思われます」

「任局長より、災害救助に該当すると判断し、備蓄食糧を無条件で開放して炊き出しを行うと報告がありました

 同時に魯局長も鎮守府にある薬石を買い上げるとの事です」

「向局長より、役所の開放と仮設病棟、鎮守府各所の広場に天幕を設置する、との報告も来ています

 田局長と沮局長は陽平関に向かわれたとの事です」

「筆頭軍師は罪人追跡のための準備を終え、現在司法隊と協力しての捜索を開始したとの事です

 主犯格は捕縛されたと判断されますが、従犯や協力者がいるかも知れない為、捜査を続行すると言っておりました」

 

次々とあがってくる報告に頷いていると、忠英さんと儁乂さんが一歩進み出てくる

 

「てな訳で、私も今は急ぎ研究所に戻って警備を固めようと思うんだが、ここを離れても構わないかね?」

 

「拙者も五行軍駐屯地に赴き、急ぎ全軍を掌握したいと存じます」

 

俺はそれに頷くことで答える

 

「今更言うまでもなく、みんなの判断を俺は信じてるから、思うように動いてくれ」

 

ふたりは時間を無駄にする事なく、礼をとって足早に駆け出ていく

 

この様子を眺めていた周公謹は、再び感嘆の溜息を漏らしている

 

「我ら孫呉の精鋭が霞んで見える統率力だな……

 どうやればここまでになれるか、是非ご教授願いたいところだ」

 

これに俺が答えようとしたところ、それより先に公祺さんが返事を返した

 

「まあ、なんだね

 民衆を支配してやろうとか使ってやろうっていううちは難しいと思うがね」

 

「ふむ……」

 

「これは受け売りだけどさ

 民衆っていうのは支配者にとっては川底の砂利みたいなもんさ

 時に流されたりもするが、変わらずその場所にある

 それを無理にどうこうしようと考えたら、いつか必ず無理が出るって事だとアタシは思うよ」

 

周公謹はその美しい頤に細い指を当てて呟く

 

「なるほど…

 さしずめ支配者は上を流れる水、という事か

 面白い比喩だな…」

 

「だろう?」

 

「機会があれば是非拝聴したい話ではある

 実に興味深い」

 

「アタシでよけりゃいつでも付き合うさ

 天下の美周郎と膝を交えて語らう機会なんざ、そうそうないだろうからね」

 

いや、アナタ達?

言葉は穏やかでなんというか和やかなんだけど、目が笑っていませんよ?

 

何故かふたりが火花を散らすような視線で会話しているのに内心で冷汗をかいていると、ようやく懿が立ち上がってくれた

 

なんというか、俺の代わりに取り乱したようなものなので立ち直ってくれたことに心底ほっとする

 

「……お見苦しいところをお見せしました

 私もまだまだ精進が足りないようです」

 

あ、鉄壁の猫が復活してる

今の懿の微笑みは、俺でも思考や感情が読めないくらいに完璧だ

今になって恥ずかしくなったってのだけは判るんだけど…

 

「我が君、何か言いたいことでもおありですか?」

 

俺はその言葉にブンブンと首を横に振る

間違ってもそんな懿がとっても可愛いと思ったなどと言おうものなら、明日の朝には俺は干からびてダシガラになってしまう

 

役人のみなさんも自己防衛の精神を発揮してか、懿のさっきまでの状況を見なかったことにしたようだ

 

うん、そうだよね、だってオッカないもん…

 

そうしていると、扉の奥から徳がやってくる

 

徳は俺達のところに来て完璧といえる礼を取った

 

「謹慎中の身なれど、非常時にて失礼致します

 ご報告はあがっているかと存じますが、先刻公孫太守とその友人達の協力により、恐らく楽文謙と思われる武闘家を捕縛致しました事をご報告申し上げます

 尚、公孫太守の協力者の中には、公祺殿が勧誘なされたという典奉然の姿もありました」

 

「…流石、というべきなのか、どうして、と訝しむべきなのか、判断に迷うところですね」

 

懿の呟きに首肯して徳は続ける

 

「ですので、差し出がましいようですが、私を一時護衛としてお傍に置いていただきたく思います

 仲達の力量を疑うものではありませんが、相手は武闘家でもあり、状況は混迷しております

 謹慎中の身で僭越に過ぎるとは思いますが、どうかお聞き届けください」

 

………やはり俺は果報者なんだろうな

本気で心配して怒ってくれる人達がいて、俺が間違った方向に行こうとした時には止めてくれて、こうして全力で守ろうとしてくれる人達もいる

 

「……やっぱりみんな、俺にはもったいないよなあ…」

 

「我が君?」

「一刀樣?」

 

俺の呟きに同時に首を傾げる懿と徳に、俺は笑顔で応える

 

「護衛の件は是非お願いするよ」

 

「はっ!!」

 

俺の返事に徳は笑顔で礼を取る

懿もゆっくりと頷いているから、俺の言いたい事は察してくれたみたいだ

 

こうして久しぶりに俺の右に徳、左に懿が居るという状態になったところで、近衛から報告が入る

 

「失礼致します!

 只今黄龍将軍が捕縛した賊のひとりと思われる女を連れて参りました!

 公孫太守樣とそのご友人二名、孫仲謀樣とその護衛二名も同行されており、詮議への参加を希望されております!」

 

それに俺達が返事をしようとしたところで、今度は別の近衛の人間が報告にやってきた

 

「ご報告申し上げます!

 只今張文遠樣とその側仕えの方が、劉平原相樣とその護衛二名と共に北郷樣に面会をご希望されております!

 いかが致しましょうか?」

 

………これは実はすごい事なんじゃなかろうか

 

漢中の一角に、劉備に関羽に張飛、孫権に周瑜に多分甘寧と周泰も一緒で、他にも公孫?、張遼に司馬懿に?徳に張魯、おまけに典韋、あげくは劉弁に劉協まで揃った状態で楽進に対する詮議とか、一体どうなっているんだろうか

 

いくら外史とはいえ、歴史家がこの場に居合わせたら、興奮のあまり悶死しそうな状況だよな…

 

とりあえず俺は、懿と徳と公祺さんに視線で合図をして返事をする

 

「全員にここに来てもらうように取り計らって?

 くれぐれも粗相のないようにね」

 

『了解しました!!』

 

下がっていく近衛の人達を見送りながら、俺は誰に言うともなく呟く

 

 

「さて、これから一体どうなるのかな?」

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≪漢中鎮守府/程仲徳視点≫

 

さてさて〜…

なにやら事件があったようですが、一体どうしたのでしょうね〜

 

な〜んてお約束のように言ってみましたが、状況の把握は非常に簡単なのです

 

天譴軍のお偉いさん達が選挙とかいう行事の公式公布で朝から忙しくしていたのは言うまでもありませんし、その最中にここまで騒がしくなって御使いさんが戻ってきたという事は、刺客にでも襲われたかどこかの諸侯が宣戦布告でもしてきたかくらいしかありません

 

ですが、これが宣戦布告だったら、多分公布会場はそのまま民衆に対する檄を行う場所になっていたでしょうから、まず間違いなく刺客にでも襲われたのでしょう

 

いやいや、人気者は大変ですね〜

 

風は流石に今日は暇だったので、稟ちゃんと一緒に涼州に関する策を朝から練っていました

 

なぜか星ちゃんも一緒にいたりするのですが、この策に関する重要な部分に劉玄徳さんも関係してくる可能性が非常に高かったので、稟ちゃんも私も敢えてそれを咎める事はしませんでした

策の決め手のひとつになるお話を星ちゃんがしてくれたのもあるんですけどね〜

 

ちなみに稟ちゃんは軟禁を解かれて、涼州に対する工作の下準備をするという名目で漢中での行動の自由を得てたりします

 

これが天譴軍の面白いというか嫌らしいところなんですが、稟ちゃんを失敗を前提に送り出す癖に、稟ちゃんがしっかりと成功するための準備をするだけの時間と人員、それにお金を用意してくれてたりするからです

 

なにしろ、それを伝えに来たのは皓ちゃんと明ちゃんだったのだそうですが、面と向かって稟ちゃんにこう言ったそうです

 

「元ちゃん達は貴女に期待はしていない」

「元ちゃん達は貴女が失敗すると思ってる」

「逃げても構わない」

「死んでも構わない」

『でも悔しかったらきちんと成功させて生き残って欲しいなー』

 

稟ちゃんのその時の表情が目に浮かぶようです

 

なにしろ、その直後に風の部屋に全力で走ってきて

 

「見てなさい!

 絶対ぜったい、ぜーったいに!

 この郭奉考を甘く見た事を後悔させてやりますからねっ!!」

 

とか思いっきり叫んでいたくらいですから

 

稟ちゃんならずとも、表現は違えど同じ気持ちにはなったとは思いますけどねー

 

でも、わざわざ風のところに来て叫ぶあたりが、なんというか稟ちゃんです

 

 

とりあえず、そんな事はいいんですけど、そんな感じで風と稟ちゃんが策を練りはじめたところに、いつの間にか星ちゃんも加わっていた、という訳です

 

今日も今日とてそうして細部を煮詰めて、選挙とかというものがどういうものかを見てから動き出そうと考えていたところにこの騒動です

状況が状況なので、ありえないとは思うのですが稟ちゃんや風達の関与が疑われてもおかしくない状況ですので、今日のところは急ぎ解散し、稟ちゃんは黄龍局で軟禁されていた部屋がそのまま宿舎となりましたのでそこに、星ちゃんは玄徳さん達の住んでいる宿舎に行くというので、同じように風も戻ろうかなあ、としていた訳です

 

「あれ?

 伯珪さん、どしたんですかー?」

 

「これはまた意外な組み合わせですな

 伯珪殿と孫家の方々がご一緒とは」

 

私と星ちゃんの言葉に、伯珪さんは困ったように頬を掻いています

 

「まあ、たまたまというか偶然というか…」

 

見ると全員、なんというか緊張したような顔つきなので、風は星ちゃんと顔を合わせて首を傾げます

私達の疑問を口にしたのは星ちゃんでした

 

「某達は今日は朝から部屋におったのでこの混乱がどういう理由が知り申さぬのですが、一体何があったのですかな?」

 

それに答えてくれたのは、孫家の甘興覇さん……だったですかね〜

昨日の宴席でちらっと見て挨拶した程度なので、どんな人かは判らないですが

 

「天の御使いが刺客に襲われたとの事で、我々にも犯人捕縛に関して出動要請があったのです

 我々は偶然と言えますが、公孫太守が追っていた賊と?将軍が賊を捕縛する場に居合わせ、そのまま戻ってきたという次第です」

 

「なるほど…」

 

星ちゃんは目をきらんと光らせると、慌ただしく走っている役人さんのひとりに声をかけて状況の確認をしているようです

 

「多分これから詮議があるだろうから、あたし達も同席させてもらおうと思ってな…」

 

ふむ?

なんだか伯珪さんの様子がおかしいですね〜

奉然ちゃんと知らない女の子と一緒というのも、なんだか違和感ありますし…

 

星ちゃんがそれに触れないということは、なんか色々と事情がありそうです

だったら風もここでは聞かない方がよさそうですね

 

「ふむ〜

 それって私達もお邪魔したらまずいですかねー?」

 

風の言葉に伯珪さんと孫仲謀さんが一瞬考える様子を見せましたが、すぐにふたりとも頷きました

 

「多分問題はないだろ

 誰かに聞かれて困るような内容ではないだろうしな」

 

伯珪さんはそう答えましたが、なんだか風には私達が一緒に来るという事でほっとしたように見えました

 

仲謀さんも特に何を含むこともなく言ってくれます

 

「別に構わないと思うわよ?

 公謹ももう居るようだし、聞いた話では主犯格の人間はもう捕まって詮議を終えたそうだから」

 

「袁家の宿将であった文将軍と顔将軍が犯人らしいですな」

 

仲謀さんの言葉を星ちゃんが補足してくれます

 

風は伯珪さんと星ちゃんに視線でそれとな〜く問う事にします

胸のおっきな女の子の存在だけが、どうしても違和感があったからです

 

二人は僅か視線を泳がせると視線で「後で説明する」と言っています

 

………なるほどです

どうも伯珪さんは、またまた太守らしからぬおひとよし精神を発揮して、厄介事を抱え込んだみたいです

 

なので風は、なんでもない感じを装ってみんなを促す事にします

 

「では、問題もないようなので、みんなで一緒に行くことにしましょうか〜………………ぐう」

 

『そこで寝るのかっ!!』

 

 

はい、お約束入りましたー

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≪漢中鎮守府/関雲長視点≫

 

顔叔敬を引き渡した私達は、桃香さま達の護衛を兼ねて孤児院に戻りました

 

「翼徳ちゃん、雲長ちゃん、大丈夫だった?」

 

そんな私達を孤児院の入口で待っていてくれたのは、やはりというか桃香さまです

 

「大丈夫なのだ

 ちょちょいのちょいですぐに捕まえたのだ!」

 

「おいおい、そんな事言うてるけど、逃げられそうになったのはどこの誰やねん」

 

「あ、あれはちょっと油断しただけで、すぐに捕まえる事はできたのだ!」

 

「まあ、どのみちウチらもおったから絶対に逃がしはせんかったけどな」

 

鈴々と張文遠の掛け合いを桃香さまと笑いながら見ていると、ふと脳裏に孤児院に来るまでの事が思い浮かびます

 

道すがら話してみると、張文遠は一見いい加減なように見えて、実は非常に細かな気配りのできる思慮深い人物である事が伺われます

その人柄も基本的に爽快であり、先の水関での約定もありますが、改めてそのような約定がなくともこの武人と槍を交えてみたい、そのような思いに駆られる見事な人物です

 

「おお、驃騎将軍もわざわざ参られたのか!」

 

文優殿が嬉しそうに孤児院から飛び出してきました

文遠殿がその様子に照れ臭そうにしております

 

「まあ、その、なあ?

 一応ウチは二人を預かってる身ぃやし…」

 

「そうか!

 まあ、私が言う事ではないが是非寄ってくれ!

 天下の驃騎将軍が来たとなれば子供達も喜ぶ!!」

 

本当に嬉しそうな笑顔で、文優殿は我々を中に促します

 

………実は私も鈴々も子供達の間ではそれなりに有名だったらしく、武勇伝をせがまれたりして結構もみくちゃにされました

私は桃香さまと違い小さな子供と接した事はあまりありませんでしたので、かなり困ったりしています

 

「文遠殿……

 文優殿の様子を見る限り、覚悟はしておいた方がよいですぞ

 私も子供達にもみくちゃにされましたからな」

 

これで犠牲者が増えた、などという浅ましい考えはありません

ええ、絶対にありませんとも!

 

私がにやっと笑ってそう告げると、文遠殿はがっくりと肩を落とします

 

「うへぇ……

 ウチ、そういうの苦手やねん…

 力加減とかようわからん…」

 

「大丈夫だよ〜

 みんないい子ばっかりだから

 ねー?」

 

「うむ

 今日は翼徳殿も来るという事で料理も沢山作ったのだ

 私も作ったのだぞ!」

 

桃香さまと文優殿はそう言って顔を見合わせながら頷いています

 

「………へえ?

 文優がかあ……

 そらあ是非食わせてもらわんとあかんな」

 

文優殿を見る文遠殿の目は、なんというか非常に優しくて穏やかなものです

 

こうして、私達は促されるように孤児院に入り、文遠殿と私は再び子供達にもみくちゃにされながらも、和やかな一時を過ごしたのです

 

そうして少しの時間が過ぎた頃、文遠殿が腰をあげました

 

「さて…

 そろそろ鎮守府に戻らなアカンな……」

 

そういえば、刺客の詮議もありましたし、これからどうなるかについても早めに確認をしておく必要はあります

なので私も腰をあげながら桃香さまに告げる事とします

 

「玄徳さま

 お名残惜しいでしょうが、我々もそろそろ戻った方がよいかと思われます

 我々には関係がないと言えばそうですが、実際はそうもいきますまい」

 

桃香さまは残念そうにではありますが頷いて呟きました

 

「……やっぱりそうだよね

 でも、ここを空にするのもちょっと不安かな…」

 

桃香さまの呟きには孤児院の職員が即答します

 

「もう大丈夫だと思いますよ

 先程玄武将軍の指揮で司法隊もこの区画に配置されたとの連絡もありましたし、皆様はお立場もあるでしょうからお戻りになってくださって大丈夫です」

 

ありがとうございました、と礼を取る職員達に頷き、皆が立ち上がります

 

『お姉ちゃん達、また来てねー!!』

 

元気で明るい子供達の笑顔に見送られながら、誰に言うともなく私は呟きました

 

「こういうのも、苦手ではありますが悪くはないものですな…」

 

「でしょー!

 雲長ちゃんも、もっとおっかなびっくりじゃなくなればいいのにー」

 

「そうは言うても、ウチもやっぱり苦手やなあ…

 まあ、そこの関雲長程不器用やないし、ウチは普通にできるけどな」

 

「……っ!!」

 

文遠殿の言葉は事実なので、何も言い返せない自分が悔しく思えます

 

そんな私の顔を見て笑う皆を恨めしく思いながら、私達は鎮守府に入りました

 

 

それが、これからの私達の命運を決定づける場になると気付いたのは、少し先の事だったのですが…

説明
拙作の作風が知りたい方は
『http://www.tinami.com/view/315935』
より視読をお願い致します

また、作品説明にはご注意いただくようお願い致します

当作品は“敢えていうなら”一刀ルートです

本作品は「恋姫†無双」「真・恋姫†無双」「真・恋姫無双〜萌将伝」
の二次創作物となります

これらの事柄に注意した上でご視読をお願い致します

その上でお楽しみいただけるようであれば、作者にとっては他に望む事もない幸福です

コラボ作家「那月ゆう」樣のプロフィール
『http://www.tinami.com/creator/profile/34603』
機会がありましたら是非ご覧になってください
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コメント
通り(ry の名無しさま>敢えてお約束で      寝るなっ!!(小笠原 樹)
noiさま>まあ、いるだけで罪、という立場ではあったりしますけども。国際条約なんかない時代ですし(小笠原 樹)
田吾作さま>いやあ、これからはじまる人間模様、果たして作者は書ききれるのだろうか・・・(小笠原 樹)
陸奥守さま>よい意味で読者を裏切り続けるという苦行を作者は命題としております(笑)(小笠原 樹)
根黒宅さま>この後に及んでまだ、李典の正体ばれてないんですなあ、天譴軍には(笑)(小笠原 樹)
達さま>罪を問わないことが罰になる類の人種もいたりしますけどね(小笠原 樹)
shituzhiさま>恐らくロクなことにならん、とだけ・・・(小笠原 樹)
叡渡さま>まあ、あの状況で自然にフェードアウトできなかった結果かなあ、と(笑)(小笠原 樹)
憤る稟ちゃんや、再び鉄壁の猫と化した仲達さんが可愛くて生きているのが辛(ry 一刀の手も複雑骨折してしまったことだし、とりあえず・・・ぐぅ。(通り(ry の七篠権兵衛)
真桜って今の所漢中にいたってだけで律に背いた事やってないんだよね。役者は揃った訳でどうなるか楽しみです。(noi)
あらやだ、孫呉からプロポーズをかけられたでござる。でもホイホイついて行ったら行ったで内部分裂を引き起こしかねないというわな……ま、冗談はさておいて。ついに楽文謙と李曼成の沙汰が下る番となりましたが、彼女達はどうなるのでしょうかね。李曼成は郭奉考のように生き延びそうな気はしますが結果はいかに?続きが気になります。(田吾作)
技術チートな真桜がいなくなると曹操勢は結構力が落ちるだろうから、殺すか牢獄に天下統一まで突っ込んどくかした方が良いと思いますが、この外史予想道理にいったためしがないからなあ。(陸奥守)
ふむ、李典にたいしてつっこむか、触れないことにするか、一刀がどっちを選ぶのが気になる。みんなに任せると言ったが、さすがに李典のことに関しては一刀自身がやらないといけないだろう。(根黒宅)
相変わらず終わり方が上手くてすごいです。楽進の処遇を楽しみにさせていただきます(shituzhi)
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