ロウきゅーぶ! 真帆アフター 〜Shiny−Frappe・真夏に咲く大輪の花〜6
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 「ちょっとアンタ、来てるなんて全然知らなかったんだけど!!!?」

 

 夏にも関わらず少しばかり肌寒い廊下に甲高い声が響く。

 

 長い髪を後ろで一本にまとめた、勝ち気な瞳を湛えた大人っぽさの中にも幼さを残す彼女は、薄く白い頬を桃色に染めながら膨らませ、きっ、と猫のように睨む。

 

 「ふう……まあ、ごめんな、葵」

 「ごめんなじゃないわよっ!!!! 美星さんが教えてくれなきゃ気づかなかったんだから、また私の事なんてほっぽってどっかいく……」

 

 昴は頭を掻く。上下共にバスケの試合着に着替え体も温まっている。

 

 「……ま、まあ良いけどさっ。折角なんだから格好いいとこ見せなさいよねっ!」

 「まあな、しっかり決めてやるさ」

 

 笑顔を返し、昴は控え室へとつま先を向け足を踏み出す。

 

 その時だった。

 

 「す……」

 「あ、マホちゃん」

 「あっ……」

 

 

 出会ったのだ。私とサキは、すばるんとあおいっちに。今のサキの一言は残念ながら聴き逃せなかった、聴き逃せなかった……!!

 

 「久しぶり、マホちゃんも試合見に来たんd」

 「こう言うことかよ、サキ」

 「マホ……」

 「久しぶりじゃんすばるん、元気そうで何よりだよ」

 

 血が下唇から滲んでいるような錯覚すら覚えた。顔の筋肉がうまく働かない。自分はものすごく変な顔をしているのではないだろうか。

 

 「今日の試合、すばるんも出るんだ? すげぇじゃん、ファン想いの立派なスターだ、最高のプレー期待してっかんね」

 「マホ……行きましょう」

 「……………」

 

 すばるんは何も言わないでいた。私も何も言わない。何も言わずにきびすを返す。

 

 「……すいません、長谷川さん」

 「……今日のところは、試合を楽しんでくれると嬉しい」

 

 サキは走っていく私を追いかけてきた。絶対に追いつかせまいと思っていたら、段差に足を引っかけバランスを崩し、左手を強く床に付く。それが決定的に二人の距離を縮めた。

 

 「あのさぁサキ、休養思い出したんだけど、帰っt」

 

 パチン、乾いた音が響く。眼鏡越しに滲む涙に自分は気づいていなかった。

 

 「何も言わないのは悪かったって思ってる、でもあんただって……っ!!!!」

 「そう熱くなるなって……もうあの時の私じゃない、私だって大人になった、世辞の一つくらい繕える」

 「……………」

 

 嫌な奴だった。こうして、下らないことばかり覚えて汚い大人になっていく。

 

 サキは何も答えなかった。私はサキに背を向け走っていく。追ってくるかこないかは知らないが、別にどうでもよかった。

説明
少し迷走気味なんですが、最後あたりの台詞は気に入っています。
大人になることを求めた過去の真帆と、大人になった今の現実に葛藤する真帆の対比を表わしています。
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