加奈子の・・・その5 |
「最近加奈子、機嫌がいいみたいだけど何かあったの?」
「ん? まーね♪」
「……だらしない顔をして、そんなにもいいことがあったんだ?」
「まぁな♪」
いいこと、つーか最近は京介といる時間が多いからな。仮に嫌なことがあっても、
一瞬でぶっ飛んでいくんだよな。
「もしかしてお兄……いえ、マネージャーさんのせい?」
「京介のせい……って言うのもおかしいけど、まぁそんな感じかな?」
「――っ!? 加奈子っ、マネージャーさんの名前を知っているの!?」
「おう。この前聞いたんだよ」
いつまでも元、マネージャーっていうのもおかしいからな。きちんと名前で呼んで
やらないと可哀想だろ?
「そ、そう……なんだ」
不意にあやせの顔が暗くなったような気がした。あたし、そこまで変なこと言ったかな?
「あ、あやせ……?」
「……ねぇ加奈子。加奈子は京介さんの事、どう思ってるの?」
「ふぇ? きょ、京介のこと!? 何でいきなりそんなこと……?」
「いいから答えて!」
あたしの質問なんか無視して、京介のことをどう思っているか聞いてくる。
あたしが京介のことをどう思っているかだって!? そんなの――
「いい奴なんじゃねーの? あたしの我儘になんだかんだ付き合ってくれるし、スケベ
で鈍感で冴えない面してるけど、別にカッコ悪いわけじゃねーし、いざと言う時はカッ
コイイしこの前なんかあたしのこと、可愛いって言ってくれたし、デートなんかもしちゃ
ったりしていい雰囲気だったしそれから――」
「も、もういいわ! もう言わなくていいわよ!」
「ん? そうか? まだまだ言えっけど……」
「止めて。それ以上は、わたしの心が持たないわ」
あやせがぐったりした顔であたしの言葉を遮る。まだまだ言いたい事があったんだけどな。
「加奈子……あなた、もしかして京介さんのこと好き、なの……?」
「はぇ……? あたしが京介のことを……?」
あたしが京介のことを好き……? あたしが? 京介を――?
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
う、嘘だろ!? あたしは京介のことが好きなのか!? い、いや……別に嫌いって
わけじゃなかったけど、だからって好きってわけじゃ――
「うぅ〜〜っ」
だ、ダメだ! 京介の顔が……声があたしの頭の中で駆け巡る。
京介のあたしを見る瞳。京介があたしを呼ぶ声。京介の笑顔……
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「か、加奈子っ!? 落ち着いて!」
「お、落ち着けるわけないだろ! あたしは京介が好きなのか!? 大好きなのか!?
好きで、好きで堪らない感じなのか!?」
ガクガクとあやせの肩を揺さぶりながら質問をぶつける。
「し、知らないわよ。あと、肩を揺さぶらないで。とにかく落ち着きなさいよ」
「お、おう……」
肩から手を離し自分自身を落ち着かせる。
「はぁ……加奈子がどう思っていたかは知らないけど、あなたが京介さんを好きなのは
間違えようのない事実よ」
「ま、マジかよ……」
「ええ。と、いうよりあそこまで惚気ておいて自覚がないなんて恐ろしいわよ」
「あ、いや……」
別に惚気たつもりはないんだけど……そっか。あたし、京介のことが好きだったんだ。
確かに気に入ってはいたけど、まさかこのあたしが恋をするだなんてな。
それもあんな男に――
「それで加奈子。あなたはどうするのかしら?」
「ど、どうするって?」
「恋を自覚したのなら何か行動を起こさないといけないでしょ?」
「そっか……行動か。でも、具体的に何をしたらいいんだ?」
恋なんてしたことないから、何をすればいいのか全然分からねーな。
「それは加奈子が自分で考えないと意味がないでしょ」
「なんだよ。友達なんだから少しは考えてくれてもいいだろ」
「……友達だから加奈子一人に頑張って欲しいのよ」
「一瞬、面倒だからと思ったろ」
「な、なんのこと……? わたしはそんなこと思ったりしてないわよ?」
明らかに焦った表情を浮かべるあやせ。マジでコイツは友達をなんだと思ってんだよ。
面倒でも手伝ってくれてもいいじゃんか。それなのに――
「はぁ……もういいや。自分で考えればいいんだろ」
「ええ。頑張ってね加奈子♪」
「――ったく」
気持ち悪い笑顔を浮かべながら何処かへと行くあやせ。まぁ桐乃の所なんだろうけど。
友達を捨て置いて桐乃の所に行くあやせには色々と文句を言ってやりたいけど、それ
は今度にしよう。今は京介にどんな風にあたしのこの気持ちを伝えるかだよな。
やっぱり直接、言葉にして言った方がいいんだよな?
あたしが京介に『好き』だって。そして『付き合ってください』って。
「――む、無理! そんなこと言えるわけがないだろ!」
そんな恥ずかしいこと言えないよ。冗談とかでは言えるかもしれないけど、あたしの
この気持ちは冗談なんかじゃなくて……
「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
一体どうしたらいいんだよ! つーか、何であたしが京介のことで頭を悩ませないと
いけないんだよ! 頭を悩ませるのは京介の役割なのに!
あたしは傍若無人に我儘を言えばいいだけで、京介は情けない顔を浮かべながらも
シッカリとあたしの後をついてきて、一人勝手に頭を悩ませていればいいのに。
あ〜っ、そう考えるとほんとムカムカする。こんなのはあたしらしくないのに。
これも全ては京介が悪いんだよな。あたしにこんな気持ちを抱かせる京介が。
ぴ、ぴ、ぴ……と、京介に電話をかける。
「……あ、京介?」
『ぁ? どうしたんだ加奈子』
「学校が終わったらあたしん家に集合な」
『あ、お、おい――』
返事なんか無視して電話を切る。
京介に一言文句を……言うかは分かんねーけど、とにかく京介に会いたい。
会って何をするかも分かんないけど、何をするにしても側に京介が居ないと意味がない。
だから、とにかく京介に会って――――
「ったく、急に呼び出しやがって……一体何の用なんだよ?」
「――っ、あ、うん……」
「ん? どうしたんだ? 急にしおらしくなって」
「べ、別にしおらしくなんかなって……」
うぅ……眩しい。京介の顔が眩しくてまともに見ることが出来ない。さっきは勢いで
呼ぶことが出来たけど、少し間が空いて冷静になったら恥ずかしすぎて何も出来ない。
「おい、ほんとに大丈夫かよ。顔が赤くなってるけど」
「だ、大丈夫っ! 何でもないから!」
「そ、そうか。――で、俺を呼んで何をするつもりなんだ?」
「あぅ……そ、それは……えっと――」
ど、どうしたんだよほんと。これじゃあ本当にただの乙女じゃねーか。いや、あたしが
乙女じゃないってわけじゃねーけど、ここまで酷いとは思わなかった。
「まさか何も考えずに俺を呼んだわけじゃねーだろうな」
「違っ! そんなわけないだろ!」
ほんとは言いたいことがあるんだよ! きちんと京介に伝えたい言葉が!
でもやっぱり、あの言葉を言うのは恥ずかしくて……恥ずかしいはずなのに……
「……なんか今日のお前、おかしいぞ?」
「おかしいのはお前のせいだかんな、バカ京介!」
「はぁ!? お、俺のせいかよ!?」
「そうだよ! 京介がバカで鈍感でスケベなくせにあたしの心を乱すのが悪いんだ!」
「は、はぁ!?」
「地味で冴えないくせにあたしに優しくしやがって! あたしの我儘に付き合ってくれ
たり! なんだかんだで側に居てくれたり!」
あ、あれ……? あたし、何を言って――
「あたしはな――そんな京介のことが大好きなんだよ!」
ちょ――っ!? マジで何を言ってんだよ!? 何でいきなり告白してんだよ!?
まだ告白する予定なんか無かったはずなのに、なに勢いに任せて言ってんの!?
「か、加奈子……?」
「あたしはバカで我儘で色々と迷惑をかけるかもしんないけど、それでも京介がいい
って言うのなら、あたしと付き合って欲しいの!」
告白を止めることが出来ない。言いたくないのに、恥ずかしいのに止められない。
それはきっと、心の何処かであたしが告白をするのを望んでいるから……?
本当のところは分からないけど、言葉は勝手に出ていっている。
「あたしは京介が好きで好きでたまらないんだよっ!」
「…………」
い、言ってしまった。完全に京介に告白をしてしまった。ここまで言ってしまったら、
もう元には戻れないし、逃げることも出来ない。
ただ、京介の言葉を待つだけだ。
「……な、なんか言えよ」
「あ、その……なんつーか、なぁ?」
「なぁ? って何だよ!?」
そうじゃないだろ。あたしは今の言葉への返事を聞きたいんだよ。
京介がどんな返事をするにしろ、あたしはちゃんとした返事を聞きたいんだ。
「なぁ、京介はあたしのこと嫌い? 嫌いならハッキリと言って欲しいんだけど」
もし嫌いなら好きになってもらうように努力するし、嫌いじゃないのならあたしを
もっと見て欲しい。
そして可能なら付き合って欲しいと思う。
「京介……」
「き、嫌いなんかじゃねーよ」
「ほ、ほんとか!? じゃ、じゃあ、好き?」
「好きかどうかって言うのは……まだ分かんねーけど」
「分からないってことは、このまま好きになることだってあるんだよな!?」
「ま、まぁな」
「だったら、あたしが惚れさせてやんよ。加奈子様の魅力で京介を骨抜きにしてやっから」
まだ負けたわけじゃないのならどうにでもなる。なんてたって、あたしは世界一可愛
いんだからすぐに京介をメロメロにしてやんよ。
「京介! 覚悟してろよな!」
ぜってぇーあたしに惚れさせてやっからな!
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ちょいと迷いましたが、こんな感じかな〜? | ||
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない 来栖加奈子 高坂京介 | ||
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