ロウきゅーぶ! 真帆アフター 〜Shiny−Frappe・真夏に咲く大輪の花〜9
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 「あんた、マホ……??」

 

 その日の夜、みーたんの厚意で初等部の体育館を借りて練習していたバスケメンバーの元へ私は単身乗り込んでいた。

 

 コーチかぶれのみーたんが必死に指示を送り練習が行われている。もっかんとサキとヒナとアイリーン、あの日夢に向かって突き進んでいたチームメイトの姿がそこにはあった。みんな特注品の赤い試合着に身を包んで玉のような汗を流しながら練習に打ち込んでいる。

 

 「ちょっと、サキの話だと絶望的だって……」

 「みほし、少し黙ってると良い」

 「ひなたってそんなだっけ……?」

 「みんな、練習止めちゃって申し訳ない!!! その場所で良いから聞いてくれ!!!!!!」

 

 いつだってバカみたいに騒ぐことしか脳がない自分だった。だからこそ敢えてその愚をまたおかそう。

 

 「ずっと連絡してなくてすみませんでしたっ!!!!! 今からでももしよろしければ、チームに入れてもらえませんかっ!!!!!???」

 「「「「「……………」」」」」

 

 体育館中のガラスを振動させるほどの大声を張り上げ、頭を下げたまま微動だにしない。一瞬流れる沈黙、その後に五人はどっと自分の元へ押し寄せた。

 

 「お帰りっ、お帰りだよマホっ!!!」

 「アンタってばもう、心配ばっかりかけるんだからぁ……」

 「やれやれ……ま、これで全員集合だね」

 「マホちゃん、やっと一緒だねっ!!!」

 

 もっかんが、サキが、ヒナが、アイリーンが、笑顔でやってきてくれた。それを一歩離れた場所から日和見する我らが恩師。

 

 「ほら、先生もっ!!」

 「うわっととととっ……だから私は生徒の自主性を重んじてだな……」

 「と言いつつ本当は?」

 「うわーん会いたかったよぉおぉおおおーーーっ!!!!!!」

 

 自分の胸の中にもすっぽり収まってしまうくらいに小さくなってしまった先生を抱きしめ、胸元を伝う滴の温かさに私自身も涙を流した。

 

 何だろうこの感じ、何というかこそばゆい。

 

 「ただいま〜……っ」

 「昴……お前少しは空気を……」

 「みーたん、いいんだ……すばるん」

 

 大量の買い物袋を抱えて戻ってきたすばるんの元へ私は駆け寄った。

 

 「……半分持つよ」

 「え……あ、ああ」

 

 重い。半分だけでも重いなこの荷物。これを片手で一つずつ、両手に持ってきたのだ。

 

 すごいなぁ……私らが心底心酔した最高のスターは。

 

 何とか必死でサキ達の居たところまで涼しい顔を取り繕い持ってくる。

 

 中に入っていたのは飲み物や冷却スプレー、栄養価の高い固形食だった。それらを取りやすいように並べておき、すばるんの方に向き直る。

 

 「すばるん……」……もう目をそらさない。ちゃんと見るんだ。かつての業に、身勝手な自分に。

 

 「今まで、本当にごめんなさい。すばるんの気持ちも考えずひどいことばっかり言って……許してもらえるとは思ってない、だけど……もしそれが叶うなら、償わせてほs」

 「真帆」

 「っ……はいっ!!!!」

 

 もう逃げないと決めた。すばるんの強い瞳を見つめ返す。もう、目は逸らさない。

 

 「ずっと……言えずにいた。いなくなってごめん、ずっと音沙汰もなく放置してごめん……」

 

 

 「約束、ずっとバスケ教えるって約束……破って、本当にごめんなさい」

 「すばるん……っ、ううっ……ぁぁああぁああああああああーーーーーーっ!!!!!!!!!」

 

 同じ事を思っていたのか、自分もすばるんも。お互いがお互いから目を背けて距離が遠ざかるままになっていた状況を打開したくてそれでも動けずにいたのか。

 

 そこには恥も外聞もなかった。ただただ幼い少女のように、大きな胸の中で涙を落として喚き散らした。

 

 「ほん、どにぃっ……ごめ゛ん、なざい゛ぃぃっ……んぐっ、えぐっ、ひぃんっ、んふっ……」

 「……………」

 

 静かに慟哭だけが反響する。閑散とした体育館に、ぐずる音と嗚咽が寂しく鳴るだけ。

 

 そう言えば、前に硯谷女学園に遠征に行ったときも。私がショックで逃げ出した時もすばるんは私を散々追い回して見つけてくれた。私が悪いのに謝ってくれた。全てはバスケを知らない私達が絶望しないで、バスケを精一杯楽しめるように気を使ってくれたからだったのに。

 

 「俺のせいで、バスケ……嫌いになったんじゃないかって」

 「……バスケ、楽しーもん。やめるわけ、ないじゃん」

 

 あの時と同じ言葉をぶつけた。認めたくなかったが、自分はどんなに腐っても、根源に根付いたバスケを愛する気持ちだけには嘘がつけなかったらしい。

 

 「……良かった。すごく、嬉しい」

 「だから……みんなっ!!! もう一度、お願いしますっ!!!!!!」

 

 「うんっ!!!」

 「……しゃーない」

 「やるかっ……!」

 「勿論だよっ!!」

 「にゅふふ、まとまったみたいだね!?」

 「ああ、それじゃあ、行くぜっ!!!!」

 

 

 円陣を組む。二度とほどけないくらい固く。私の反対側にはすばるんがいて。周りを見ればみんながいる。

 

 「「「「「「「おおおっ!!!!!!!!!」」」」」」」

説明
もう少し続きそうですね。何か書くたびに作品の長さが伸びて行く気がします。
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