真・恋姫†無双〜覇王を育てた男〜曹嵩編(プロローグ)1 |
目を覚ました時、俺は見知らぬ部屋の中に居た。
「……どこだ?ここ」
体を起こそうとすると四肢のあっちこっちが痛んだが、無理矢理起こしてみたが、俺は自分が居る部屋がどんな場所なのか判らなかった。
少なくとも自分の部屋でないことは判ったが…
「何故こんな所にいるんだろう」
俺の名前は北郷一刀。年は25才、大学を終えて爺の道場の師範代理をしている。
爺は北郷流剣道の師範で、俺は後々免許皆伝をしなければならない立場であった。子は母一人しか居なかった爺は、俺が産まれた時から俺に道場を譲ろうとしていたらしい。
いやそんなことはどうでもいい。
ここで目が覚める前に俺何していたっけ。
確か夜ジョギングしていたら突然走ってる道の向こうから光が近づいてきて、その光に包まれて………
「俺、死んでね?」
冷や汗がした。
いや夜いきなり光に包まれて起きたら見知らぬ場所とか…キャトられたか死んだかのどっちかだろ。
くっそー、せめて死ぬ前に爺に一度でも勝ってみたかったなー。
と、ふざけたこと考えていたら突然向こうのドアが開いた。
「お目覚めですか?」
「はい?」
古代(古代?)風の服を来た女の人が頭を少し下げながら言った。
「あ、はい、あの…あなたは…」
「わたくしはここの主『曹嵩』さまに仕える侍女です。貴方様のことを侍るよう命じられました」
「じ…侍女?」
侍女って、ここってそんなに凄い所なのか?どうしてそんな所に俺が居るんだ?
「…うん?待って、今ここがどこだって言いました?」
「はい、ここは曹嵩さまのお屋敷でございます」
「…そうすう…って?」
聞いたことがある。
どこだろう。
「曹嵩さまが、貴方様がお目覚めになると至急に対面なさいたいと仰っておりました。お身体の方は大丈夫でしょうか」
「……いや、待って、そうすうって、あの魏の曹操の父のこと?」
「……?仰っている意味が良く解りませんが……」
あ、なんか違うっぽい。
そりゃそうだよな。俺も何昔死んだ人の名前出してんだ。
「いえ、何でもありません。それより、ここの家の主人さんに会いに行けばいいのですか?行きます」
「畏まりました。では、私に付いてきてください」
取り敢えず前も後ろも分からないまま、ただ考えてるだけで妥当な判断が出来るはずもなかったので、私はその侍女さんの言う通りここの主に会いに行くことにした。
「曹嵩さま、例の殿方を連れて参りました」
ある部屋で立ち止まった侍女さんは部屋の前でそう告げた。
「入らせて頂戴」
中から女の人の声が聞こえて、侍女さんはそっとドアを開いた。
「どうぞ」
「あ、はい」
俺が中に入ると、侍女さんは外から門を閉じた。
「あ……」
中に入ると、部屋の奥に簾が降ろされていて、中に物陰があった。
「近くに来なさい」
奥の居る館の主らしき人が力が篭った声でそう言うと私は無言に簾の前に近づいた。
簾があるというのは、何かしら顔を隠す理由があるのか。それともただ神秘感増すためなのか良く分からないけど、後のこと言わせてもらうと、その人は声だけでも十分に男を惑わせるような人だった。
「この屋敷に入って来ようとした男は少なからず居たけれど、あなたのように空から落ちてきたのは初めてよ。一体どうやったのか不思議なものね」
「…へ?」
どういうことなのか判らなかった。
「しかも、着ている服もなかなか不思議な感じがして、最初は倒れたものただ街に放り込んでおくようにしようとしたけれど、特別に起きるまで待ってあげたのよ。感謝なさい」
「は、はぁ……」
「それで、言ってみなさい。どうやってあんなことが出来たの?」
「あんなこと…とは?」
「…私は戯れ事は好きだけど、私を馬鹿にすることは許さないわよ」
中の人は少し怒りが篭った声を出した。
「いえ、そういうつもりではありません。ただ自分も本当に何がなんだか良く判らなくて…夜普通に走っていただけなのに急に気を失って、目を覚ましたらここで…それに、自分だって聞きたいことは沢山です。この屋敷もどこか古い中国風な感じでとても日本って感じじゃないですし、さっきの侍女さんの服も…」
「日本?」
「はい?」
「…日本って何かしら」
「……はい?」
日本を……知らない?
「ここって、日本じゃないんですか?」
「ここは徐州瑯邪郡にある曹家の私有地よ。あなたのような無礼者なたまに入って来ようとしたりするけど、元々ここは男禁の場所なの」
「じょしゅう?ろうじゃぐん?」
分からない。
いや、判らなくはないけど……でも、さっきの話がやっぱり合ってるってことにしかならない。
「その、貴女の名前って」
「私の名は曹嵩、字は巨高よ」
「………」
もう詰んだ。他の答えが出ないや。
この人曹嵩だ。曹操の父……いや、この場合…
「貴方の名はなにかしら」
「あ、はい、自分の名は北郷一刀です。姓は北郷、名は一刀、字はないです」
「字が、ない……そしてそういう姓、聞いたこともないわ」
まあ、だろうな。『中国』にこんな姓はないよな。
「貴方、何者なのかしら。ただここを覗きに来た無礼な男というわけではなさそうね」
「さっきも言ったとおりに、自分は自分も知らない間にここに居ました。ここが自分が居ちゃいけない所だとしたら直ぐに出ていきます」
「………」
「失礼しました」
向こうが何も言わなかったので、俺はそれを肯定の印と見て、屋敷を出ようとした。
最悪の場合、ここが本当に古代中国、後漢時代であるならこれから大変なことになるだろうけど、取り敢えず急いだ方が生き残る可能性も高くなるだろう。
「ちょっと待ちなさい」
そんなことを思いながらドアを開こうとしたら簾の奥の曹嵩が私を止めた。
「まだ私はあなたを許すとは言ってないわ」
「……どういうことですか?」
「男禁の区域に勝手に入ってきたのよ。事情はあるようだけれどこのままただで帰らせるわけには行かないわ」
「なら、どうすれば…?」
そもそも何故ここは男禁区域なのだろうか。
「……あなた、ここを出たら行く宛はあるの?」
「…ないということはないでしょう」
「言ったでしょう?私は馬鹿にされることは嫌いなの。……あなた、ここの者じゃないわよね?」
「…………」
「屋敷を歩いていたら空からあなたが落ちてきた…最初から悪戯な男とは思って居なかったわ」
「……」
「さっきも言ったように、ここは男禁の場所よ。宦官の父さえもここには入れない。誰も私の許可がなければここに入ってくることはできないわ。もし貴方がこの屋敷を出ていくのを誰かに見られたら、そしてそれを父に見られたりすれば、貴方の命はないでしょう。でも、ここに残っていれば貴方の命を私の保護下に置かれるわ。私がここに誰も入らせない限り、あなたがここに居ることも誰にも知らされない」
「……」
「さて、どう思うのかしら。ここを出ていくよりも、残って私に従った方があなたのためよ?」
「お断りします」
話を聞いていた俺は即座にその話を断った。
中の影が驚いたように動くのが見えた。
「聞いてなかったかしら。ここを出ると貴方は死ぬのよ」
「はい、けどそれ自体、貴女とは関係のない話です。あなたが自分を助けようと思うのは、自分に得があるからではなく、ただ面白そうだからです。暇な貴人の暇つぶしの気まぐれのようなもの」
「……」
「そう言ったものに乗るよりは、死ぬとしても自分の力で歩くことにします。最も、人の前で顔も見せずに偉そうにしているお嬢さまの戯言を信用できるかも微妙な所ですが」
「!!」
「では……」
「待ちなさい」
俺は今度こそ出ていくつもりでドアに触れた。
「待ちなさいって言ってるでしょ!」
でもその時、後頭部に何かが当たって石の床に落ちた。
後ろを向くと、床には筆が落ちていて、簾を退けて筆を投げたらしい姿勢の女の人が小さく息を立てていた。
「あ」
両側にクルクルと巻いて金髪に、溺れそうな海の色の瞳がそこにあって、
俺は初めてみるその女の姿に暫く見蕩れていた。
「……美しい」
「!」
知らぬ間に漏れたその言葉に曹嵩は直ぐ様近くに置いてあった剣を抜いてあっという間に私の頸の先まで伸ばした。
「!」
あれが真剣であることに疑いはないだろう。
「良くも私をここまで侮辱させたわね。本当に死にたいの?」
「そういうわけでは……」
「ここに残るって言いなさい!」
「何でそこまで必死なんだよ」
「……!」
美しかった。
確かに美しかったけど、一度簾を退けて神秘感が消えると、そこに居たのは俺と同じぐらいの女の子だった。もう敬語を使う気にはならなかった。
「お前の話が本当だということは信じるよ。でもだからと言ってもお前がここまで必死に俺を助けようとする理由が分からない。俺が外に出て死んだ所で、お前に何の関係があるんだよ」
「それは……!気持ち悪いでしょ?私のせいで人が死ぬとか気に障るのよ。いいからここに残りなさい。さもなければここで私の手で殺してあげるわ」
「わ、わかった。分かったからその剣を降ろせ。危ないぞ」
そんな感じだった。俺と曹嵩、いや、『曹家』との縁、この世界との縁はそうやって始まった。
これは、今から俺がこの地に骨を埋めるまでの物語だ。
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コメント | ||
続きがもの凄く気になる・・・(nano) たぶん惚れたんだろうな。華琳と一緒で自分の気に入った物は手に入れる性格なんだろうな(VVV計画の被験者) 雪さんのお母さんの話はよくありますが、華琳さんのお母さん?の話は珍しいですね、ぜひ続きをおねがいします・・・桃さんのお母さんの話って見たことないけど、難しいのかな?(suga) 良い、すごく良いです。続きが読みたいです。(下駄を脱いだ猫) うむ・・・続くのでしょう? 続きますよね? 続きください!! お願いします!!(azu) 是非とも続きが読みたいです!? あと、誤字情報です。 「ここで目が冷める前に私は何をしていたっけ」ではなく「ここで目が冷める前に俺は何をしていたっけ」ではないでしょうか? 一刀が最初「俺」と言っているのに、この一部分だけ「私」なのは変な感じがします。(劉邦柾棟) 続きが……読みたいです。(readman ) あいかわらずTAPEtさんの設定は斜め上にいきますね。(根黒宅) |
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