東方天零譚 第八話 |
無事にゆそう列車を破壊することは出来た。
しかし、破壊した場所の近くにはトランスサーバは無く、旧プラットフォームまで徒歩で帰らなくてはならなくなった。
これ、地味にしんどい。ただでさえ戦闘が終わったばっかなのに。
「つかれた〜〜パッと転送で帰れたらいいのに〜〜」
ついつい文句が出てしまう。
隣で黙々と歩くゼロはそんなことを一言たりとも言わないのが、また小憎たらしい。
そんなわけで、やっとこさ旧プラットフォームへ到着。すぐさまトランスサーバでベースへと帰還した。
「二人ともお帰りなさい!」
司令室へ戻ると、すぐさまシエルが駆け寄ってきた。
「二人のおかげで攫われたサイバーエルフは助けることができたわ!」
笑顔で話しかけてくるシエルに天子は疲れながらもピースを決めてみせる。
その様子を見て、労わりながらも更に嬉しそうにシエルは話を続ける。
「おまけに敵のほきゅう路も破壊する事ができたし…ありがとう二人とも。全て、あなた達のおかげだわ」
「べっつに〜こんくらい余裕よ余裕」
強がってみるが、視線はゼロへと向く。今度こそは負けない! という思いを込めてゼロを睨みつける。
だが、当の本人はどこ吹く風といった様子。まったく、クール野郎め。
その後、助けたサイバーエルフを大事に育てて欲しいという話をした所で解散となった。
疲れていた天子は挨拶もそこそこに司令室を後にする。
すると、扉を出たところでドンっと何かにぶつかった。
「いたっ」
「あっすみません!」
ぶつかった何かは人だった。レジスタンスの服を着ているから兵士だろう。
「もうっ、気をつけてよ」
「はい、すみませ…って、ああっ! 天子さん!?」
いきなり至近距離で大声を出された。思わず耳を塞ぐ。
「いきなり大声出すな、馬鹿!」
「す、すみません! それよりも、天子さんですよね?」
「そうよ」
「うわー! お会い出来て光栄です! ミッションに出てたから、お会いするのは初めてなんです!」
「そう。それじゃあ、さよ―――」
「お噂通り美人な方ですね! なのにゼロさんと同じくらいの凄腕とは! 尊敬します!」
「ありがとう、それじゃ―――」
「僕も負けないようにミッションをこなそうとするんですけど、どうも失敗が目立っちゃって! だから天子さんが―――」
「もう、何なのよあんたは!」
ずっと喋り続けそうな勢いだったので、強引に話を止める。
そこでやっと話すのを止めたかと思いきや、一歩下がっただけで、
「これは申し遅れました! 僕はコルボー・チームのリーダー、コルボーと申します!」
「いや、名前を聞いたわけじゃないんだけど……」
「少人数のチームでゲリラ活動や諜報活動を行っています! 困ったことがあればいつでもお助けしますね!」
そう言って、コルボーはニコニコしている。その純粋無邪気な笑顔を見て天子は、
「……じゃあ、さっそく助けて欲しいんだけど」
「はいっ、何でしょうか!」
「疲れたからどいて」
扉の出口を塞いでいるコルボーに、冷ややかな視線を浴びせながら言ってのけた。
天子がプリプリと歩いていく様子を見送った後、コルボーは司令室へと入る。
そこにはシエルとゼロがいて、なにやら会話をしていたらしい。
「コルボー、どうしたの?」
司令室に入ってきたことに気づくと、シエルが声をかけてくる。
ゼロは何も言わず、ただこちらを見るだけ。
「お願いがあって来ました」
「お願い?」
「我がコルボー・チームに、敵の基地への侵入許可を下さい」
「えっ!?」
シエルは目を見開いて驚いていた。
「いつもゼロさんや天子さんに戦ってばかりで申し訳ないんです。だから、自分たちにも出来ることをやりたいんです!」
「でも、危ないわ! 基地に侵入だなんて…」
「お願いします! 何か役に立ちたいんです!」
そう言って頭を下げるコルボー。シエルは困ってしまい、ついゼロを見てしまう。
ゼロは、否定をしなかった。
そんなゼロを見て、シエルは決断をする。
「わかったわ、コルボー。でも、無茶だけはしないでね」
「はい、ありがとうございます!」
言うが早く、コルボーはきびきびと司令室を退室する。
シエルは、不安そうな表情で司令室の扉を見続けていた。
それから数日後。この数日間、天子はぐっすりと休んでいた。
無理もない。この世界に来てからほぼ連日戦い続けてきたからである。ゆそう列車のミッションの前に休める時間はあったが、それでも疲労は溜まっていたのだろう。
起きて身支度を整えたら、ベース内をブラブラと散歩してみる。
未だにイブーが座り込んでいたので、持っていたエネルゲンすいしょうを分けてあげた。すると、彼は見た目とは裏腹にテキパキと仕事をするようになった。
イブーの奥の部屋に進んでみると、サイバーエルフがいた。後でゼロに持っていってやろう。
そのまま、セルヴォのいる動力室に入ってみる。彼は熱心に何かを作っているようだ。
「こんにちは。何してるの?」
「あぁ天子か、いらっしゃい」
セルヴォは円形の何かを持ってこっちに近づいてくる。
「なにそれ」
「これはゼロの新しい武器だよ。あぁ、名前がまだ決まってなかったな…そうだ、シールドブーメランにしよう!」
「ふぅーん、また新しい武器が出来たんだぁ……」
「悪いね、君に新しい武器を作って上げられなくて。君はレプリロイドじゃないから、どういう武器を作ってあげたらいいかわからないんだ」
「別にいいわよ、そんなの羨ましくなんかないし」
ぷいっとそっぽを向く天子。その様子を見れば、自分だけ武器を貰えなくて拗ねているのは明らかであった。
「前にも聞いたけど、君の能力でどうにか出来ないのかい?」
「だから、上手く能力を使えないんだってば」
「例えばさ、このシールドブーメランはエネルギーを展開することによって、敵の弾をはねかえりたり、チャージして投げることが出来るんだけど。君の能力で似たようなものはないのかい?」
「だからむり……いや、どうだろう?」
はたと気づく。そう言えば普段は攻撃ばっかで全然使ってないから忘れてたけど……。
天子はセルヴォと距離を取ると、要石を取り出す。
いつもはそれを射撃に用いるが、今回はこれを四つ取り出してみて、体の周りで回転させる。
そうすることで、要石自体が天子の体を守るバリアとなった。
「おぉ、なんだ出来るじゃないか!」
「あれ、出来た……」
天子にとって、自身の能力で出来ることが要石の射撃と緋想の剣の二通りしかなかった。だが、今また一つ能力を取り戻すことが出来た。
「やった、セルヴォありがとう!」
「まぁ、私は何もしていないのだけどね…」
気分はハッピー、小躍りしながら部屋を出ようとする天子をセルヴォは慌てて呼び止める。
「待ってくれ! このシールドブーメランをゼロに渡しておいてくれないか?」
「はいはーい、そんなのお安い御用よ!」
シールドブーメランを受け取って、意気揚々と動力室を出る天子。
残されたセルヴォは苦笑いをしながら、
「まったく、現金だなぁ」
嬉しそうに呟いた。
気分よくシエルのいる司令室へと足を運ぶ天子。
見れば、シエルは随分と落ち着かない様子であった。
不安そうに顔を俯かせ、ただひたすらにミッションの時に用いるサポート用デスクにじっと座っている。
「どうしたの?」
天子が声をかけると、シエルはゆっくりと顔を上げた。
「天子…」
「何かあったの?」
半ば確信しつつ問いかける。
その問いに、シエルは首を縦に振ることで肯定を表した。
「話して。私が行く」
まっすぐに見つめられて、シエルがぽつぽつと話し始める。
「実は…仲間のコルボー・チームがゼロや天子ばかりに戦ってもらって申し訳ない、って言ってね」
コルボー。その名前には聞き覚えがある。
若干の嫌な予感を感じながらも、話の続きを聞く。
「地下鉄ルートから敵の基地に侵入したんだけど、そのままかえって来ないの…」
数日前、ニコニコと元気良く話していたコルボーが帰ってきていない。
レプリロイド処理施設の時と違い、面識のある人物がピンチに陥っていることには少なからず動揺する。
「それに…」
話すシエルの表情がさらに曇っていった。
「様子を見にいったゼロの帰りが遅いの…もうついていてもおかしくないのに」
「え?」
あのゼロが?
いつもクールにミッションをこなしてきた、ゼロが帰ってきていない?
常に天子にはクールで力強い所を見せてきていただけに、この知らせには驚いた。
「だから私、不安で…」
そう言って、泣き出しそうになるシエル。
そのシエルの肩を掴んで、天子は優しく声をかける。
「大丈夫よシエル。私が迎えに行くから」
「でも…」
「大丈夫よ、ゼロもコルボーも、みんな連れて帰るから!」
コルボーのことは純粋に心配だ。
彼の戦闘能力はどの程度のもか知らないが、ゼロほどでは無いと思う。
そしてゼロ。
あいつが連絡出来ない状況にあるだなんて、よほどのことだ。
だから、同じくらい強い私がいかないと。
それに、この前助けてもらった借りを返しておかないとね。
「待ってなさい、ゼロ。この私が直々に迎えに行ってあげるんだから!」
「敵の活動がさっきより活発になってきてる。コルボーたちも、それにゼロも、もしかしたら敵に見つかったのかも」
「まぁその可能性は高いわね。むしろ、それ以外考えられない」
「天子も気をつけてね」
「うん、わかってる。それじゃあ、ミッションスタート!」
通信を終えて、天子は走り出した。
今いる場所は、前回ゆそう列車が止まっていた旧プラットフォーム。
そこを、やはり前回の列車の進行方向へと進んでいく。
ゆそう列車を止めたあと、延々と歩いた道を再び歩くはめになるのだったが、
「いきなり面白いことになってるわね」
道が途中で断裂していた。
さらに敵が警備に当たっており、地形と相まって進みにくそうであった。
「正面突破で行くしかない!」
幸い、敵の数は多くは無い。冷静に敵を倒しながら進めば、正面突破も楽だろう。
そう結論付けた天子は、さっそく目の前の雑魚を緋想の剣で斬り伏せる。
そして、
「そうだ、実験しちゃお」
先ほど使えるようになった、守りの要を展開する。
すると、雑魚が放った銃弾が、守りの要によって跳ね返された。
「これはいいわね!」
守りの要を展開しながら、近づいて緋想の剣で斬る。
と、ここで天子は気づいた。
守りの要を展開しているときは、要石の射出か緋想の剣、どちらかしか使えない事を。
つまり、同時に使える武器または能力は二つまでだということを。
現に、三つ目を使おうと思っても、力の制御が上手く出来なかった。
「そこらへんは、気をつけないとね」
そう言って、断裂した道の穴をジャンプして飛び越える。
すると、その地面が少し揺れた後、落下を始める。
「あぶなっ!」
慌てて違う足場へと飛び移る。
「気をつけようとした直後にこれだもんなぁ」
自分の行いに苦笑しつつも、天子は先へと進んでいく。
一度引っかかったトラップに二度も引っかかる天子では無く、順調に進んでいく。
途中、亀のような雑魚敵も出てきたが、装甲の柔らかい部分を狙って攻撃することで難なくクリア。
そうして進んでいくと、道が無くなり、代わりに敵が浮遊する足場に乗って攻撃してくるエリアが続くようになった。
「ふーん……」
しばらく観察し、浮遊する足場のパターンを見極める天子。
そして、見極め終わるやすぐに雑魚敵を射撃攻撃して破壊し、その浮遊する足場に飛び移る。
同じ要領で、ポンポン飛んで進んでいく。
やがて道が見えてくる。そこに飛び移ると、もう断裂は無さそうであった。
そのまま駆け進んでいく。すると、道端に複数の人が倒れているのが見えた。
それは、普段ベースで見かける制服。
「あれは、まさかっ!」
慌てて駆け寄ってみるも、既に息絶えていた。
その場に倒れている全員を確認してみるも、生存者は誰もいなかった。
と、そこで一人例外を見つけた。うずくまっているが、確かに生きている。
「ちょっとあんた、大丈夫!?」
声をかけながら体を起こす。すると、そこには見知った顔があった。
「あんた、コルボー!」
「天子さん…」
チームのリーダーであり、天子にニコニコと話しかけてくれた、コルボーがそこにいた。
「何してんのよ、あんた!」
「すいません…足をくじいてしまって…」
どうやら彼はそのせいで帰れなくなっていたらしい。
と、そこでコルボーは慌てて天子に話しかける。
「それよりも、ゼロさんを助けてあげてください!」
「ゼロを……助ける?」
助ける、なんて言葉がゼロのために出てくるとは。
「そうです…あいつは強くって…いくらゼロさんといえど…」
話が断片的ではあったけど。
これは、どうやら相当なピンチのようだ。だからゼロは連絡を取る余裕が無かったのだろう。
「わかった、私に任せて。コルボーはここにいて」
コルボーにそう告げると、天子は立ち上がって進んでいく。
方向はあっている。さっきから、力のぶつかり合いのような気配を感じているからだ。
どうやら、緑色の敵と戦闘中らしい。
すると、敵の攻撃を食らったのか、ゼロがこちらに吹っ飛んでくる。
追撃をしかけてくる敵の突進を、天子は守りの要で受け止めた。
「くっ……うっ!」
受け止めた敵を蹴って、引き離す。
そうして、ここでやっと敵を観察する余裕が出来た。
敵は、ゼロと同じ人型のレプリロイドのようであった。
全体的に緑と白でカラーリングされている。二対の翼のような頭部のパーツが特徴的であり、背中からも翼のような二対のパーツが供えられている。
地面にうずくまっていたゼロは、そこで立ち上がる。
「これで前回の借りは返したからね」
「すまない」
素直にゼロは謝罪し、それにちょっとだけ拍子抜けするも、改めて気合を入れて敵を見る。
敵は、鋭いまなざしで天子とゼロと見ながら話しかけてきた。
「お前が天子か」
「そうよ、私は天人の比那名居 天子よ!」
「わが名はハルピュイア。エックスさまにおつかえする四天王がひとり」
「四天王……?」
知らない単語が出た。否、言葉の意味はわかるのだが、それが意味するのは……。
「そんなことどうでもいい」
ぴしゃりと言い放つと、冷徹な目で天子達を見ながら話を続ける。
「伝説の英雄と、同じくらいの力量を持つ者達であろうものが、人間にあだなすイレギュラーどもをかばいだてするとは、おろかな…」
「なによ、勝手に決め付けないでよね! 彼らは人間に対して何もしてないわ!」
ベースで過ごしてきた日々の中で、直接人間に危害を加えるようなことはなかった。
あくまでも、自分たちの身を守るために彼らは戦っていた。
「存在しているだけであだなしているのだ。そんなことにもきづかないようであれば、その罪、おのが みで、つぐなえ! ゼロ、天子!」
一方的に話を切ると、ハルピュイアは紫色に光る二振りの剣を展開する。
「なんて自己中な!」
憤慨しながらも、天子も戦闘態勢を取る。ゼロもまた、ダメージを食らいつつも戦うつもりのようだ。
「いくぞっ!」
そう言って、まず動いたのはハルピュイアであった。
素早く跳躍すると、空中で急停止、さらに勢い良く飛行する。
「えっ!?」
さらにハルピュイアから、衝撃波が放たれる。完全に不意を突かれた天子は、この攻撃をまともに食らってしまう。
攻撃を食らってたたらを踏んでいた天子。すると、肩を何者かに掴まれる。
「捕らえた!」
掴まえたのはハルピュイア。そのまま、ハルピュイアは飛翔する。
「うっ、ぐぅ!」
加速するGに思わず呻く。自分の力で飛ぶのなら平気だが、誰かに飛ばされているのでは話は別であった。
「落ちろっ!」
ハルピュイアがそう言うと、上空で急停止した後、一気に地面への降下を開始する。
そうして、落下のスピードを乗せたまま、天子を地面に叩きつける。
「うあっ!!」
いくら強靭な肉体を持つ天人でも、高所からの叩き落しは堪えるものがある。
だが、黙ってやられる天子達ではない。地面に天子を叩きつけて隙が生まれたハルピュイアに、ゼロのチャージバスターが着弾する。「ぐあっ!」
呻いて地面に落下するハルピュイア。すぐさま天子は距離を取ってチャージを開始する。
だが、ハルピュイアは自身の持つ武器ソニックブレードをその場で振るった。
すると、小さいけれど遠距離まで届く衝撃波が発生した。
それを跳んで避ける天子とゼロ。だがハルピュイアは衝撃波を三つ繰り出したあと、上昇しながら大きな衝撃波を放ってきた。
避けきれず、被弾を覚悟する天子。だが、ゼロが天子の前に出てその攻撃を代わりに食らう。
「ゼロ!」
「気にするな! 戦いに集中しろ!」
言われて、天子は敵へと意識を向ける。
ハルピュイアは空中に留まり、小さなビットを二つ繰り出す。
そのビットをゼロはバスターで打ち落とす。その隙に天子はチャージをする。
だが、そう簡単には態勢を整えさせてはくれなかった。
ハルピュイアが何かオーラのような物を纏うと共に、天子達の両脇をビットから放出する電撃で退路を塞ぐ。
そして、天子達の身長の倍の高さくらいある竜巻が天子達を外へ追い出そうとする。
その外への道は電撃が塞いでいる。つまり、竜巻を使って強制的に電撃に触れさせようとしているのだ。
「これ食らっちゃマズいわよ、ゼロ!」
二人は必死で竜巻に逆らう。すると、急に抵抗が無くなり、前へつんのめる。そこへ竜巻が背後から迫り、逆方向へと追い出そうとする。
「〜〜〜〜〜っ! このっ!」
なんとかハルピュイアへとチャージショットを撃ってみるも、オーラのような物に阻まれてしまい、敵へは届かない。
「さすが四天王ってところよね! これまでの雑魚とは大違いだわ!」
そう強気に言って見せるが、劣勢であることは天子自身よくわかっていた。
基本的に敵の攻撃は素早く、射程も長い。
そして、何よりも敵の気質は雷属性を指していた。
今の天子には、雷属性に対抗出来る気質を持っていない。
「だからって、負けるわけにはいかないわ!」
シエルが帰りを待っている。今ここで、負けるわけにはいかない。
闘志を燃やして、天子はハルピュイアの動きを観察する。
敵は基本的に上空にいる。だけど、こちらの射程内には、いる。
素早い飛行で移動しながらの衝撃波、または掴みからの叩きつけ。それと、ビットの展開に竜巻による電撃攻撃。
地面に降り立てば、武器を振るっての三連続衝撃波。そこからの上昇に伴う大きな衝撃波の攻撃。
今この時点までに観察出来た攻撃はこのくらい。
ここから、戦略を立てる。
高速飛行からの衝撃波をギリギリでかわし、観察を続ける。
そこで天子は、ある事にきづいた。
「ゼロ、ちょっと来て!」
呼ばれたゼロは、チャージをしつつも天子の傍に来る。
「私の推測が正しければ、奴に攻撃をする機会が生まれる! そこを狙って!」
「わかった」
散開し、攻撃のタイミングを伺う。ビットを展開してきたので、天子は射撃でこれを撃ち落し、ゼロはハルピュイアにセイバーで斬りかかる。
斬られたハルピュイアは地面に落下すると、衝撃波の三連続攻撃を繰り出す。その衝撃波の軌道を見切り、冷静に避ける。
上昇しながらの大きな衝撃波に対しては、ある程度距離を取れば避けられた。
そうしてハルピュイアが高速飛行を開始しようとしたとき、
「今だっ!」
素早くハルピュイアの方へとダッシュする。
二人は高速で動くハルピュイアの背後を取った後、すぐに射撃攻撃。
「うああっ!」
二人分のチャージショットを食らい、地面に落ちるハルピュイア。
ここまでの流れで、天子は確信した。
「やっぱり、こいつ装甲は薄いのね!」
恐らく高速で飛行するためだろう、ハルピュイアの装甲は薄そうであった。
だからこそ、チャージショットでも十分ダメージを与えて地面に落とせるのだろう。
そして、地面に落ちたら衝撃波を冷静に避ける。
上空に上がったとき、ハルピュイアの最大の弱点を天子は見抜いていた。
掴みにかかってくる時、又は高速飛行からの衝撃波を放つとき。敵はほぼかならず、少し上昇して勢いをつけてから攻撃に移る。
その隙にダッシュして移動すれば、敵は高速で動いているからこそ、目標地点の変更が効きにくく、元々天子達がいたあたりに攻撃を仕掛けてくる。
そうして背中をさらしたハルピュイアへと、攻撃を浴びせていく。
一見単純な作戦であるが、これは天子とゼロ、この二人のダッシュが優れているからこそ実行出来る作戦であった。
そうして敵の竜巻攻撃も適度なダッシュで回避、その他の攻撃もいなせるようになった時、ハルピュイアは攻撃を食らって地面にうずくまった。
「っく、まさか、ここまでとは…ゆだんした…」
「ふん、そうやって私達を舐めているから痛い目みるのよ!」
ここぞとばかりに得意げになって高らかに笑う天子。
その様子を忌々しそうに見ながら、
「このかりは、いつか返させていただく…さらば!」
ハルピュイアは去っていった。
去っていった時に落としていったサイバーエルフをゼロが回収した所で、天子はぺたっと地面に座ってしまった。
「さすがに今回は、きびしかったわよー!」
そうして地面に座って休みながら、天子は考えていた。
ハルピュイアは言っていた。自分は四天王の一人、だと。
といいうことは、同じくらいの強さを持った奴があと三人いることになる。
そして、そんな四天王を束ねているエックス……。
「どうやら、退屈しないで済みそうね……!」
これから先の戦いの激しさを予感しながらも、強気の態度は崩さない天子であった。
説明 | ||
いよいよハルピュイアの登場です! なるべく強くなるよう頑張りましたが、いかんせんハルピュイアだとハメ技が出来て……(笑) | ||
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