真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 17話(前編) |
思春たちが豫州にくる一週間前
蓮華SIDE
それは、何者から送られてきたのか分からない書簡から始まった。
「これは、何?」
「はい、今朝扉の前に立っていた者からもらったものです。誰からもらったものなのかまったく説明はしていなかったのですけど……」
「…どうしたの?なんて内容だったの?」
明命は言葉そこで言葉を止めた。
私はじれったくて問い直した。
「送り手は鳳統様からでした。そして、私たちに袁術を助けて欲しいと言っていました」
「!!」
鳳士元が……?
袁術を?どういうこと?
私は書簡を開いて内容を読み始めた。
『孫権さんへ
孫権さん、
私たちは今予定通り豫州に居ます。
が、今豫州では戦乱の兆候が感じられています。
長く続いた袁家の圧政に及び凶作により、豫州の民心はこれ以上酷くなれないほど袁家から去っています。そして近頃、豫州にて阿片を入れた蜂蜜が広く流通されていることに、袁家が関わっていることを知った民たちが力を合わせ、これから数日内に反乱を起こすことになるでしょう。孫権さんの姉である孫策がさんは袁術さんに反乱軍を率いる将である太史慈という者の討伐を命じたのですが、恐らく孫策さんはこの機に及んで袁家への復讐を果たし、豫州を孫家の地にしようとしてくるはずです……
ですが、私たちが調べた所、この戦いは袁家の元老たちと、反乱軍のどこかに潜んでいる阿片入りの蜂蜜を流通した商人の間の仲間割れによった戦いであることが判明されました。戦乱の始点となったこの両側は、戦が始まっては直ぐに逃げてしまうでしょう。そしたら残るのは、戦で傷ついた民と孫家の姿が残るまでです。この戦が始まってしまったら残された孫家に全ての矢が向かうことは明白です。今の孫策さんでは、戦乱で弱まった豫州を保てるほどの力がありません。戦っても、戦わなくても、この戦が始まってしまったら孫家は滅びます。戦を始めた者たちを事前に捕らえ、戦を止めること以外には方法がありません。
蓮華さまには、甘寧さんと周泰さんに命じて、袁家の元老たちの家を包囲するように命じて欲しいです。反乱軍が動いて、少しでも逃げる動きがあったら、全て捕縛してください。ただし、殺してしまっては孫策さんに不利益がいく恐れがありますから、密かに動いた方が宜しいでしょう。詳しい状況は、寿春に来てみれば明らかになると思います。
この手紙を読んで、孫家の未来の存続を望むのでしたら、私たちを助けてください。孫家と一刀さんの命が、孫権さんにかかっています
鳳士元より』
手紙を読み終えた私は考えた。
まずこの内容のどこまでを信じればいいのか。
姉さまが危険な状況に嵌っているということは分かった。
豫州で本当に反乱が起きるとしたら、姉さまが袁術軍となって戦うはずがない。この機を見て、孫家の独立を果たそうとなさるだろう。
そしたら負けた場合は言うまでもなく、反乱軍が勝ったとしてもその後反乱軍との争いが始まる。
それがまたうまく行って、豫州を手に入れるとしても、続いた戦に弱くなった豫州を手に入れた所で、何の役にも立たない。ちゃんとした整備を整える前に周りの劉表や曹操などに狙われるに違いない。
なら普通に袁術に従った場合は?
それも駄目。その場合反乱軍は確実に負けるだろう。
でも、豫州の民が集まって出来た反乱軍を袁家と一緒に打ってしまっては、姉さまの名が落ちてしまう。以後袁術を討って豫州を手に入れるという計画が泡になってしまうのだ。
戦を傍観した場合、反乱軍が勝つと、袁家の下に居た我々に矛先が向くだろうし、袁術が勝てば助けなかった我々の責任を問うだろう。
要するに、この戦は孫家にとって起きてはならない戦だ。
どう転がっても、我々にとってこの戦は損でしかならない。
なら鳳士元の話に従うべきなのか……でも、そうすると、私の手で袁術を助ける様になってしまう。
姉さまがこれを知ったらなんと思うだろう。
「蓮華さま、どうしましょう」
「……明命、思春と凌操を連れて来て頂戴」
「判りました」
・・・
・・
・
「蓮華さま、これは…」
「思春、どうするべきかしら、私は…」
「……私は、動くべきだと思います」
思春は少し悩んでそう答えた。
「奴らは我らに嘘を言って得するものがありません。袁家に強迫されてることも想定できますが、それならこんな回りくどい方はしないでしょう」
「私はこの手紙の真偽を疑っているわけではないわ。ただ、この手紙通り動いて良いのか、それが心配なだけよ」
「私は分かりません。雪蓮さまに戦いを止めるように言ったら済む話ではないのですか?」
「姉さまは戦を避けるような人じゃないわ、明命。そもそもそうやって済む話だったら冥琳が止めていたでしょう。こんな話が届いたということは、そう行かない状況だってことよ」
「………」
「姫様、んじゃ話は決まってんじゃねーのか?」
凌操がそう気軽く言った。
「牙莎、これがそんなに簡単な話だと思うのか?」
「知るかよ。俺が知ってることは、北郷一刀、あいつが姫様に損になる話を持ってくるような奴じゃないってことだよ」
「………」
「それに、あの鳳統お嬢ちゃんも、あいつの意思に反するようなことをする奴じゃねーしな。奴らは純粋に戦争を止めたいだけだ。それに姫様の力が欲しいだけだろ」
「確かに、一刀様なら例えこの話が孫家に置いて損になる話だとしても、私たちに助けを求めていたと思います」
「明命、お前はあ奴が我々を騙して、我々に孫策さまの足を引っ張るようなことをさせようとしていると言うのか?」
明命の意見に、思春は険しい顔になってそう言った。
思春はどうやらこの手紙の内容通りに動くと、逆にその行動が孫家にとって損になるのではないかと心配しているからそう言うのね。
でも、明命は
「そうは思いません。そんなことでしたら、そうだと書いてあるはずですから」
「つまり、明命と凌操は、一刀たちが姉さまの事情とは関係なく、私に助けて欲しいと言っているのだって思うわけね」
「はい」
「蓮華さま、どういうことですか?」
「思春、もしこの手紙の内容が嘘だとすれば、あなたは私たちが動いてはならないと思うのかしら」
「当たり前です。それだったら、我々が動くことこそが奴らの思うツボではありませんか」
「思うツボって?」
「孫家を貶めようとしているに決まって………あ」
そう、一刀がそんな策略しかけるはずがない。
一刀が私たちに嘘を言って得することがない。最初に思春が言っていた言葉だった。
そして、私たちがこの手紙通りにして、それがもし少しでも孫家にとって損になることがあるとしたら、それを言及しない一刀たちではない。それは例え鳳士元が書いた文だとしても同じ。
「明命、昔あなたが連れて諜報隊員を全て呼び戻しなさい。思春と一緒に部隊を連れて寿春に向かって頂戴」
「いいんですか?そんなことしたら袁術の耳に直ぐに届くと思いますけど」
「この内容が本当なら袁家は今戦の準備で忙しいはずだから、報告が間に合わないはずよ。それに、姉さまも反乱軍に付いていると分かってるとすれば、こっちが動いたとしても逆におかしくは思えないでしょう」
「しかし、我々が行ってしまったら蓮華さまの護衛は」
「俺が残るだろ。蛾一匹も通らんようにするから、お前らは安心して行って来い」
凌操が私のことを心配してくれる思春を安心させた。
「……分かった。では蓮華さま、直ぐに準備をして豫州に向かいます」
「頼んだわ、思春。明命も、しっかりやって来なさい」
「お任せ下さい」
一刀、これはあなたを信じてるこそすることよ。
あなたが私に、孫家に悪いことをすると思わないからよ。
お願いするわ、一刀。
もう、姉さまのことを許して頂戴。
??SIDE
「……さま、豫州から手紙が届きました」
「豫州から……?周瑜さんからではないのですか?」
「はい、まったく分からぬものから…ですが…とにかく、読んでみてください」
「……?」
私は、秘書の者からその書簡をもらって内容を読み上げました。
………
……あらあら
「これは…とてもいい情報ですね」
「既に、3百ほどを潜ませました」
「私はまだ良いとは言っていませんよ?」
「……さまなら、きっとこの商売に乗ると思いましたので」
「……そうですね。でも、それだけではないでしょう?あなたが商団護衛のための軍を動かせたのは」
「………」
「まぁ、結構です。私もこの話に乗ろうと思ってますから。しかもただ金銭的な益のためだけではありませんからね」
「では?」
「この手紙を送った人の名前…私の記憶が正しければ、私の親友が褒めちぎっていた可愛いお嬢ちゃんに違いありません。そんな娘の願いを断れるはずありませんから」
一度会ってみたかったのです。百合さんがあんなに自慢する妹たちでしたからね。
「はぁ……」
「…いえ、こうしていられませんね。私が直に豫州に向かいましょう」
「!それは些か危険では…」
「大丈夫ですよ。商売に危険は付き物ですから。そうじゃありませんか?
麋竺さん」
「はい、その通りです、魯粛さま」
雪蓮SIDE
「また会ったわね、太史慈」
「ええ、久しぶりね、孫策」
豫州に私たちが太史慈の反乱軍と共に反乱を起こそうとしているという話が広まって間もなく、私が直ぐに太史慈とまた接続した。
その時、彼女の隣には以前見なかった男が一人居た。
「随分と汚い手を使ってくれたじゃない。あなたは随分と義を重要に思う人間と思ったのだけれど」
「何ですって」
「そこに付いては私が説明いたしましょう」
私が太史慈を挑発すると、後ろに控えていたその男が前に出た。
「あなたは?」
「私は麋竺と申す者。太史慈殿の青州での武勇に惹かれここ豫州にて民兵を起こすことを申した者であります」
「……なるほど、つまり私たちを巻き込んだのは、あなたの仕業ということね」
「麋竺、どういうこと?」
太史慈はまったく知らなかったかのように自分の軍師にそう聞いた。
「申し訳ありません、太史慈殿。ですが、大義があると言ってただただ正しき道ばかりでそれを成し遂げるというわけにはいかないのです」
「……」
「太史慈殿が人との約束を如何ほど重要に思っておられるかは重々承知の上でしたが、それでもこの戦で勝つには孫策殿の力は必要不可欠だった故、勝手ながら孫家が動かざるを得ないように策を使わせて頂きました」
「……麋竺、私を騙したわね」
太史慈は険しい目つきで麋竺を睨んだ。
それに比べ麋竺はただただ何の欲もないかのような顔で太史慈を見ながら話した。
「殿を騙した罪、許されるとは思いませぬ。ですが、この戦、民への安寧に繋がるべきこの戦に勝つためであれば、私一人の命など容易いものでしょう」
「………」
「太史慈、言っておくけど、彼を殺した所で私たちはここで退くわけにはいかないわ。既に私たちが袁家を裏切ったということが袁術の耳にも伝わっているはず。今彼を殺すことは無益よ」
「私は武人よ、孫策。学んだものもそれほどない。だけど、私が一つだけ大事にしているものがあるとすれば、それは人との信頼よ。どんな形であろうとも人を騙すことを私は許さないわ」
堅い奴ね、まったく……
「……だけど、確かに貴女の言う通りね。今彼を殺しても意味がない。あなたの罪は全て終わった後に問うとしましょう。それまでは今までの民のために頑張ってもらうわ」
「はっ」
なんとか許しをもらった麋竺は太史慈に臣下の礼をし、前にあった円卓に地図を出したわ。
「現在、我々と志を同じくする民たちは各地方に散発的に存在します。その中でも蜂蜜の中毒によった事件がもっとも多かった汝南では太史慈さまの後に続く者が多く、その数、汝南だけでも、おおよそ3万に至ります」
「凄い数ね。良く今までバレずにやってきたものだわ」
「恐れながら、そういう孫策殿も、太史慈殿の存在を知らなかったと存じますが」
「………」
確かに、こっちの情報網でもわからなかったわね。
「無理もないでしょう。これは軍事とは違って、民たちの口から口へと話が広まったもの。どこからそう言った話が始まったのかも判らなければ、その事を疑わなければそういう事実があることさえも分からなくても仕方のないことでしょう」
「で、あなた達はこれからどうやって袁家を倒すつもりなの?」
「これより二週間後、民たちが同じ時期に一斉に一揆を起こすことになっているわ。汝南、寿春各地で村々から人たちが集まって各地の官吏たちのある城を攻撃するわ」
「地方の官吏たちは単に袁家の力だけを頼りにし悪政をしている者が多半数。咄嗟に起きた一揆に対抗する手段はないでしょう」
「寿春の本城はどうするつもり?」
「そこで、孫策殿の力が必要とされます」
麋竺は更に寿春の城の付近の地図を出して言った。
こんな細密な地図をどこから手に入れたのかしら。
「本城内でも我々の味方は居ますが、他の所よりはその数が少ないです。もっとも現在寿春には袁家の私兵一万以上が待機されているため、彼らだけの動きを望むことは無理でありましょう。そこで孫策殿の兵と、太史慈さまが自分自身で訓練させた軍勢で攻撃を始めます」
「私たちの兵と言っても、あなた達と合わせて一万を満たさないわ。その数で城攻めはできないわよ」
「何も攻め落とそうというわけではございません。ただ、孫家が攻めてきたという示しだけ見せたら、後は袁家は内側から崩れるでしょう」
「どういうこと?」
「袁家の私兵と言っても、袁家の元老たちが金で雇った者たちが多いそうよ。一度孫家が動いたら、隙を見て中に居る味方たちが元老たちの屋敷に火を起こす。そしたら、元老たちは慌てて自分の私兵たちを呼び戻すことでしょう」
「その隙に城門をこじ開けて中の民たちと一緒に戦うというわけね」
「そういうことになるわ…袁術の近衛兵が少し厄介だけれど、その他は問題にならないでしょう。元老たちは自分たちだけ逃げようと忙しいでしょうから」
既に策は全部考えていたというわけね……あの狸のような元老たちが本当に恐れて引っ込むだろうかは疑問だけれど、こっちとしても他の打つ手がないわ。
「二週間後ですって?」
「はい、それまでに我々が民たちに密かにこの情報を告げるつもりです」
「その後はどうするつもり?袁術を潰したら、それからはあなたが豫州に君臨するって?」
「私はそういう仕事には向いてないわ。だからあなた達を巻き込もうとしたのよ」
「……?」
「私はこの反乱が無事に終わったら、静かに豫州を出るつもりよ。それからのことは孫策、貴女に任せるわ」
「そうは行かないわ。あなたが居なくなって、民たちが私たちに付いてくると思ってるの?今の私たちの能力じゃ、反乱で混乱している人々をしずませることは無理よ」
「こうすれば如何でしょう。太史慈殿が孫家に正式に仕えるのです。さすれば民たちも納得することでしょう」
麋竺が自分の案を述べた。
「ある程度民たちの混乱が収まったら、それからまた豫州を離れるかを考えても良いと思います。なにせ太史慈殿はこの反乱を始めた責任があります。最後までを見届ける責任がありましょう」
「……仕方ないわね。そうして丸く収まるのだったら、一応そうすることにするわ」
それで丸く収まったら、の話だけどね。
なにせこの戦、勝ってもその後が問題よ。
どの道これから孫家が行く道は私が考えていたのよりももっと厳しい道になりかねない。
・・・
・・
・
二週間後、約束された時間
直ぐ様汝南から一揆が起き始めたという斥候からの報告が届いた。
既に準備は済んでいるわ。
「冥琳」
「ああ、行くぞ、雪蓮」
いい方向に考えましょう。
これで母さまを仇を、もっと早く討つことが出来たって。
太史慈SIDE
「麋竺」
「はい、各地から既に一揆が始まっているとの報告が入っています」
「……そうか。後は私がやるべきことを成すだけだな」
「はい、間もなく孫策殿との合流します。あの忌々しき袁家を地獄の底で落としましょう」
「……」
やっと待っていた時が来た。
青洲で、私は一人で全てをやりこなした。
悪徳な官吏の城に一人で忍び込み、一人で戦い、一人で殺して、一人で逃げた。
だけど、今回は違う。
私と心を一緒にしてくれる人々が居る。
自分たちを助ける者を待つばかりではなく、自分たちの力で己を救わんと立ち上がったのだ。
これでこの民たちが救われるのであれば、この人々はきっとこれからも沢山のことが出来る。自分たちを救うことが出来る。
でも、今はまず……
「報告します!」
「孫策軍が到着していますか?」
先に出した伝令が報告に戻ってきた。
「はい、袁術軍も既に城に集まっていることを把握しました。」
「数はどれぐらいだ」
「多くはありません。恐らく五千弱と言った所」
思った以上に少ないな。
何か裏があるのか?
「恐らく元老たちが先に臆して兵を自分たちの屋敷に配置したのでしょう。我々にしては好都合です。孫策軍と連携し奴らを討てば、以後の戦いを有利に出来ます」
「…取り敢えず、孫策たちと合流しよ。奴らの意見を聞くべきだ」
私たちはそのまま孫策軍との合流地点に向かった。
・・・
・・
・
彩(紀霊)SIDE
城壁の上から孫策軍と反乱軍の姿が見えてきた。
「亜季、倉、準備は良い?」
「うん」
「久しぶりの戦だな。早く暴れたい」
「…亜季、今回はそういう戦いじゃないからね」
「え、どういうこと?」
そういえば、この娘たちには何も話してないわね。
「私たちが今回戦い目的は『時間稼ぎ』よ。だから、戦うのは私だけ」
「……一騎打ち?」
「ええ、一騎打ちで相手の大将と出来るだけ時間を稼ぐわ」
「おお、それならオレが出る!」
「いいえ、私は出るわよ。太史慈という者。なかなかの強者らしいわ。亜季には無理よ」
「なんだよ、そんなのやってみたいとわからないじゃないか」
「亜季!」
「<<ピクッ>>わ、分かったよ……」
あ、つい大声を出しちゃった……戦になると直ぐこれだから…いけない、いけない。
「……紀霊、もし相手が一騎打ち受けないて攻めてきたら?」
「受けるはずよ。向こうは民たちの声に従って立ち上がったと言っているし、乱戦になるよりも一騎打ちで将を打ったとなった方が、民たちの士気も上がるから」
「……そう」
って、そろそろかな。
「じゃあ、私は行ってくるね。亜季、私が居ない間軍の指揮は任せたわよ」
「分かった……ちぇ、オレもやりたいなー、一騎打ち」
まったくあの娘は……
・・・
・・
・
幾つかの兵を連れ城を出てきた。
あれは孫策軍……そしてあっちの武装そろって内容が太史慈の軍ね……。
孫策軍はいざとなったらどう動くか分からないけど、太史慈は一騎打ちは必ず受けてくるはず。
「我が名は紀霊!袁術さまを守る第一の矛なり!民を誑かし戦乱に巻き込んだその罪、この場でその生命を以て償ってもらおう!民がためと立ち上がった自称する者は今直ぐ我を倒してみよ!」
一騎打ちを申し出て間もなくして、民兵の所から赤い服装に赤い槍を持った女が現れた。
あれが太史慈ね。
「我こそが太史慈!民を苦しめ己の腹を肥やした貴様らの罪!我が槍でさばいてくれる!この太史慈、敵将紀霊に一騎打ちを申し込む。
「一騎打ち上等!袁術さまに逆らった罪。その身をもって知るが良いわ!」
来たわね。
さて、
楽シイ楽シイ戦ノ時間ヨ。
倉SIDE
『まず倉ちゃんは彩さん…紀霊さんたちと一緒に反乱軍に対し時間を稼いで。紀霊さんは一騎打ちをするでしょうけど、孫策がどう動くは知らないから、その場合の判断は倉ちゃんに任せるよ。こっちの状況が終わったら、周泰ちゃんをそこに向かわせるから』
昨日雛里ちゃんはそう言っていたけど……
やっぱり来た。孫策も……
あいつを殺したら、おじさまたちが喜ぶかな……
多分、そうじゃないと思う。そうは思うけど、だからって復讐したという気持ちがないとは言えない。
もし、一騎打ちに出るのが孫策なら、あたしは紀霊を置いて自分で奴に戦いに行くかもしれない。
今のあたしなら、孫策に勝てるかもしれない。炎の中で死んでいった皆の復讐を、あたしの鬱憤を晴らすことが出来るかもしれない。
「遙火……遙火」
「?!」
「オレの話聞いてなかったのかよ」
亜季ちゃんがなんか言ってた。
「…聞いてない」
「はぁ……あのさ、彩ってああ見えても戦争になると性格変わるんだよ。一騎打ちなんて始めたら、後はお前とオレだけで兵指揮しなきゃ行かないからしっかりしろよな」
「…性格変わるって?」
「なんつーかオレよりも遙かに戦争狂なんだよ。彩って」
戦争狂………?
ガーーン!!
「あ、始まった」
>>アハハハハハハハ、ねえ、あんた弱いよ。それで私に勝つつもりなの?!
>>ちっ、言わせておけば!
城壁の下で一騎打ちが始まった。
……さっきと違う人が戦ってる。
>>あんたのその赤い服気に入ったわ。私もこれからは赤い服着ようかな、あなたの血で染めて……!
>>くっ、てやーーっ!!
「あれ……紀霊?」
「うん、彩だぞ」
いつもと違う……というか力はほぼ同等なのに、口だけだと圧倒的に紀霊が勝ってるみたいに聞こえる。
元の作戦だとここで助けに行くのだったけど、その必要なさそう……。
あ、作戦と言うのは……あ
「亜季ちゃん、孫策軍が前進する」
「え、おお、マジだ」
なんか一騎打ちで時間稼いでる紀霊のことに足を止められた太史慈の軍とは関係なく、孫策軍が動き始めた。
「よっしゃー!じゃあオレも行くぞ!」
「……駄目、戦い始めるともうこっちの負け?」
「いいじゃん、どうせ一騎打ちやってるのにお構いなしにやって来る方が悪いんだぜ」
「………じゃあ、あっちとも一騎打ちする」
「ふえ?」
ここで戦ったら駄目。出来るだけ時間稼がないと……
「行ってくる」
「って、遙火どこ行くんだよ!オレも行くぞ!そこのお前、向こうで攻撃したら斉射しろよ、分かったな!」
「は、はっ!」
あたしはそうやって亜季ちゃんと一緒に孫策軍の方へ向かった。
??SIDE
「おい、準備出来たか」
「はい、○○さまの財宝は既に例の所にかくしておきました。誰も盗むことは出来ますまい」
「ふ、ふふっ、良いぞ。んじゃあ、さっさとこんな所逃げてやりますか」
あのおろかな商人め。金に目が眩んでこんなことまで起こしやがって…だが、そう簡単に殺される俺ではない。こんな時のために、屋敷に隠し通路を作っておいたんだ。豫州さえ出れば後は残った財宝でどこにでも行って悠々と人生を楽しめばいい。
あいつと((民|虫けら))どもから絞りとった金さえあればどこでもやり直せるってもんだ。
「さ、○○さま、早く」
「うむ」
戦の後のことは傀儡の袁術と張勲どもに押し付ければ良い。俺は逃げてこの屋敷を燃やしてしまえば俺は死んだことになるだろう。
へへっ、使えない連中かと思えばこんな所で逆に使い道が出るとは。袁術に蜂蜜を飲ませておいて正解だったな。
・・・
・・
・
隠し通路を通って行く時にも笑いが止まらない。
上で苦労している連中が殺したいのは俺だろうに、まったく関係ない連中同士でたたかっているんだ。
いや、関係ないとは言えないだろう。自分たちの無能さ、愚かさがこんな状況を招いたのだからな。
それに比べて俺は賢かった。今までここで稼いでおいたものがありすぎて回収できてない馬鹿な長老どもも沢山いる。そういう連中はどうせ金の使い道も分からん馬鹿どもだ。ちゃんと退く時を知らずに食ってばかりだからこんな目に合うんだ。
はは、ははははははっ!!
「と、そろそろ出口が見える頃だな」
「はい、私が開けましょう」
「と、その必要はない」
「へ?うっ!」
最後に、ここまで連れてきた側近の奴の後ろに匕首を刺す。
「お、己……」
「悪いな。俺の居場所を漏らすような奴が居たら困るからな。感謝しろよ。孫策どもに千切り殺されるよりはマシだろ?」
「こ、ころ……」
呪いの言葉も終えずに奴は倒れた。
さあ、門を開けよう。新しい、俺が望んだ理想の世界が待ってい……
「悪いですけど、一緒に行かせてもらいます」
「なっ!」
それは咄嗟のことだった。
いきなり後ろから出てきた刀が俺の頸を狙っていた。
「な、何者だ、貴様は……」
「あなたの命を預っている者でしゅ」
………
「はうあ…と、とにかく大人しく来てもらいます。他の長老たちも既に捕まりました。抵抗した場合は……」
「…くっ!」
こんな所で捕まってたまるか!
あともう少しなんだ。もう少しだったんだ!
「ええい!放せ!」
「無駄です!」
必死に匕首を振った私から一度離れた刺客は再び私の腕を掴んで腕を折って匕首を落させた。
「ぐああああ、折れる、折れる!!」
「大人しくしないからです」
「周泰!大丈夫か!」
そんな所で、もう一人声が聞こえた。
「あ、一刀様」
「独りで行くとか危なさすぎるだろ」
「すみません。でも道が狭かったので沢山行った所で意味ないと思いましたから…出口の向こうにも何人か行かせたのですけど間に合わなかったようで……」
「そ、そこのお前。お、俺を助けてくれ!」
通路が暗くて良く見えないが男の声が聞こえた。
俺は最後に賭けをすることにした。
「助ける?そうやって僕に何の得がある」
「お、俺をこの女から助けてくれたら、お前に俺の財宝の居場所を教えてやる」
「……ほぉ」
よし、奴が惹かれた!
「良いだろう、場所を言え」
「ま、まず俺を助け…」
「僕は君がここで死んでも別にいいけどな」
「わ、分かった。話す!ここから西に10里離れた湿地にある洞窟だ。俺を早く助けろ!」
「………周泰、聞いたな」
「はい。外の二人、彼が言った場所に行って財宝を回収してください!」
「なっ!!」
おのれ……!!
「他の長老たちの話だとお前が持っていった金が一番多かったらしくてな。隠して置いたものを探すのも面倒だから、だったら、自分で吐かせてもらえばいいだろう…って、雛里ちゃんが言ってた」
「き、貴様……!!」
「というか周泰、合わせてなかったのに良く分かったな」
「…一刀様嘘苦手でしょ?バレバレです」
「うん、それは雛里ちゃんからも聞いた。『一刀さんは嘘つくと顔に出ますから出来るだけ顔を見せない状況で陰険な声で話してください』と」
こいつら……一体どこの何者だ。孫策軍か?いやそんなはずはない!だからと言って張勲がこんな奴らを連れていたという情報は聞いたことがない。
「貴様……何者だ」
「僕?僕は北郷一刀。そして僕たちは、この戦を始まる前に止めようとする人たちだよ」
戦を…始まる前に止める…だと?
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韓国は明日から正月の連休です。 ちょっと実家行ってきます。 会計士試験一ヶ月残った……っべー |
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最後の一刀の名乗りカッケェwww(アルヤ) 始まってしまった。あとは上手く進むかのみ、少しでも被害が少なければいいのだが……(山県阿波守景勝) |
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