魔法少女とま☆ラビ(第二話)
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<魔法少女とま☆ラビ>

 

 

第二話

 

 

とまとウサギ族の【とま】と、人間の・・・そして、とまに受け取った杖を使い、不思議な力を使って

魔法少女へと変わった人間の【ラビ】。

このヘンテコな組み合わせの二人は、唱えた言葉によって開かれた、まるで地面と空が

入れ替わったかのような光景の中に入り、ゆっくりゆっくりとそのトンネルの中を進んでいった。

そのゆっくりとした感覚は、そう、例えるならまるで時間が止まっていくような、周りが時間を失くしていくのに、

それなのに自分達だけが動けるような、時間と体の感覚のズレがあるようだった。

 

そして、その感覚に体が慣れていくようになってきた頃、二人の眼前に外の世界の風景が迫ってきた。

ゴォッという勢いとともに地面に降り立った二人は、ようやく異世界に足を踏み入れたのだった。

 

ラビは、興味津々で辺りを見回した。自分の住んでいる世界と何が違うのか?それを早速見てみたかったのだ。

だが、辺りには生い茂る森とその山道があるだけで、ラビの想像していたそれとは、どうやら大きくかけ離れていたようだった。

 

「・・・・森? ただの森じゃん。なにそれ〜〜〜。」

「わたしの世界の森と何にも変わんないよ? とまちゃん、ココってホントに異世界なの?」

 

到着地点の様子から、どうせそんなことを言うだろうと予想していたので、とまはフゥッとため息をついてから

「もちろん、異世界よ。あのね、異世界っていっても、何でもかんでも人間のいた世界と違うってワケじゃないの。

住人達の姿は様々だけど、基本的に似たような世界だと思ってもらっていいと思う。」

「部分的に違うことにも出くわすでしょうから、そのへんが人間界との違いってとこかな。」

 

それに付け足すように、とまはさらに言う。

「違いが見たければ、姿をいろいろ変化させるタイプもいるわよ。あたしもそうだし。」

 

そう言ったと思ったら、その途端にとまの姿がみるみる大きく変化し、人間のような姿へと変わっていった。

ラビはそれを見て大喜び!

「すっごーーい!とまちゃんって、変身出来るんだ!?」

 

目をキラキラさせながら、ぴょんぴょんと跳ねるように喜ぶラビの様を見ていたが、とまはすぐに再び、元の小さなウサギ姿になってしまった。

それを見てラビはガックリとしていたが、とまは仕方がないでしょうという顔で、

「変身には大きなエネルギーっていうか、心の力が必要なの。で、あたしはおまけにまだ未熟だから、短時間しか変身出来ないのよ。」

そして、そっと小さな声で、「この変身によって出せる力を使う時は・・・たぶん・・・の時だし・・・。」

 

「えっ?なに? 何か言った?」

キョトンとした顔つきで聞いてきたラビに、とまは空々しい顔で

「何でもない。うん。」

「ちなみに、ラビちゃん。あなたに渡したその杖も変身するそうよ。文献がボロボロでよくわからないことの一つなんだけどね、

変身するってとこまではわかったんだけど、そのためにはどうすればいいのかがよくわからないの。」

「元々、あたしの家に伝わってたものみたいなんだけど、今まで何も反応してないのよね。」

「魔法少女への変身だって、書かれてたことだけれど実際に効果を見たのは、あたしも初めてだったし。」

と、考えこむように下を向きながら、続けて言った。

 

「たぶん、何かのきっかけが必要なんだと思うんだけど・・・。」

ふぅんという顔をしながら杖をジロジロと見ているラビを見て、とまは頭を切り替えてラビに行動を促す。

 

「さぁ、まだ当てはないけど、とりあえずここを移動しましょう。森の中だと何がいるかわからないし。」

その言葉にラビはギクッとしながら、

「も、もしかして・・・森には何かいるの・・・?ヘビとかイヤなんだけど〜〜。」

その様子にニヤニヤしながら、とまは意地悪そうに言った。

「あれっ?ヘビなんかが怖いの?人間界と違うところを見たかったんじゃなかったっけ?変わったのが出てくるかもよ〜?」

 

そういえば森にはどんなのがいたっけな?と、とまは少し考えた後で思い出し、

「森にはヘビもいるかもしれないけど、もっとヤバイのもいるわ。例えばネコとか。」

 

その言葉を聞いて、ラビはなぜネコくらいで、とまがヤバイ発言をしているのかがわからなかった。

「へっ?ネコ?ネコってあのネコ? なんでそんなのがヤバイの?可愛いくらいじゃん♪」

 

人間の世界では、ネコといえば飼い猫かあるいは野良猫でも、さほど実害を容易に想像させるほど危険と思える存在ではない。

まして例えば大きなヘビとネコを比べたら・・・したがって、ラビが疑問に思うのは当然といえば当然のことだった。

 

「ラビちゃん、もしかしてネコって人間界のと同じだと思ってるでしょ?」

「さっき、あたしは基本的に人間の世界と似てるって言ったけど、ネコは違うわ。見た目は似てるかもしれないけど、

その大きさや凶暴性なんかは、種族によっては人間界とはまったくと言っていいほど違うのもいるかも・・・。」

 

異世界において、ネコは森に住むことが多い。したがって、あまりこういう場所に長居するのは良策とは言えないのだ。

「なるべく見晴らしの良い道を見つけながら、早めに行動しましょ。」

とまのその言葉を聞いてもラビは、ネコといっても人間界のそれしか想像することが出来なかった。

ただ、真剣な顔つきで説明していた、とまのその様子から念のため、後ろにピタリとくっつくようにしながら、そそくさと足を進めようとした。

 

「・・・なんで、あたしを前にするのよ。ラビちゃんの方が体おっきいんだから、前行ってよ!」

ラビは姿を想像出来ないその気の緩みから、半分笑みを浮かべるように言う。

「だって、そのへんなネコ出たら怖いじゃん〜〜。」

それに対し、

「そーーんなこと言ってると、ホントにネコに出くわすかもよー?」

やたらと冗談半分で怖がっている様子のラビに、とまは意地悪そうな顔つきでそう言った、その時だった。

 

ガサッ!  ガサガサガサッ!!

とまとラビ、その二人の近くで草むらをかき分ける何かが向かってきている・・・!

 

二人は身構えるように、その音のする方向をじっと見ながら

「と、とまちゃん・・・ねぇ? まさかだよね? まさか、言ったそばからなんてこと、ないよね〜〜。」

「あああ当たり前でしょ・・・!」

 

どうしても、たかがネコという軽い気持ちが捨てきれなかったのと、何が出てくるのかという好奇心の方が大きかったせいか、

ラビは笑みを必死で隠しながら、とまを驚かそうと大げさに怖がってみせた。

とまだけは、変わらず真剣な表情で身構えている。

 

その時、二人の斜め前方の草むらから勢いよく何かが飛び出し、それを見るなり、とまは大きな声で言った。

「キャ、きゃぐるみット!!」

「えっ?なに!? キャぐる・・・なになに!?」

 

顔をキョロキョロさせながら、突然の襲撃者にただひたすらオロオロするだけのラビ。

だが、ラビがその姿をよく見ると、それはとまの真剣な表情から想像出来るような、おどろおどろしい様子ではなかった。

「なにこれ・・・着ぐるみ?ちょっと可愛いかも。」

 

と、軽々しく近寄ろうとするラビを見て慌てて語る、とま。

「それは【キャぐるみット】っていって、見た目に騙されちゃダメ!物凄い力とスピードで襲ってくる、ネコ族の中でも

特に乱暴なヤツよ!!早くもっと、距離を取って!!離れてーーーっ!」

 

だが、まだ半信半疑のラビは、はいはいと子供をあやす大人のような動きで、今一つ行動に移すのが遅れている。

このままだと危険と判断したとまは、自分の身を盾にするようにキャぐるみットに立ち向かっていったが、

あまりにも違いすぎるその体格差と力の差に、あっという間に叩き落され、なすすべもなくキャぐるみットに軽く踏みつけられてしまった。

 

「とまちゃん!!」

そのキャぐるみットの、一連の凶暴な様子と動きを見て、ようやく身の危険を感じ始めたラビは、慌てて

とまの言うとおり、大きく距離を取ろうとしたが、慌てたせいでつまづいてしまい、少しの間合いを作るのが

精一杯だった。

 

 

「どうすればいいの・・・・!?」

キャぐるみットに踏まれ、ジタバタともがくとまを目の前に、ラビは何も出来ず腰を落として青ざめて震えていた。

その姿を見て、とまを踏んづけて笑うように調子に乗っていたキャぐるみットは、やがてラビに目を向け始めた。

ギクッ!

森の中という状況で、ましてや来たこともない世界で、普通に誰も助けなど呼んでも来るかどうか・・・?

いや、普通に考えても森の中で通りすがる者など来ないだろう。

そんな中で、どんどんと胸の鼓動を激しくするラビは、心の中で無駄と知りつつも、ひたすら助けを求めるのだった。

 

説明
オリジナルの魔法少女としてイラストで描いてきたものの文章化・第二話です。
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