加奈子の・・・最終話 |
「……おい、加奈子」
「何だよ、京介」
「いや……何でお前は俺の膝の上に座ってるんだ? わざわざ俺の膝の上に座る必要はないよな?」
「はぁ……京介。お前はほんと、何も分かってねーな。確かに普通に座るだけなら、別
に京介の隣でも構わねーよ。でもそれじゃあ、あたしに惚れされること出来ねーじゃん」
京介にはきちんとあたしを意識してもらわないといけないんだから。
あたしが女の子で、京介のことが大好きだというのをちゃんと理解してもらわないと
いけないんだから。だからあたしはこうして、京介の膝の上に座っている。
「だから、隣に座っても惚れさすことくらい出来るだろ。こんなわざとらしく膝の上に
座られちまうとその……」
京介が僅かに照れたような顔を浮かべている。これはもしかして――
「にひひっ♪ もしかして京介、加奈子に座られてエッチな気分にでもなった?」
「ば――っ!? お、お前は何を言ってんだよ!? 俺がお前にエッチな感情とか抱く
わけねーだよ!」
「む……っ」
堂々とエッチな感情が湧かないとか言われるとムカつくな。
目の前に――それこそ触れる距離にあたしが居るんだぞ? つーか、あたしの尻とか
もうすでに京介の膝に当たってるつーのに。それなのに何もエッチな感情が湧かないと
かもしかして京介の奴……
「京介ってまさか女に興味ない、のか?」
それなら妙に納得出来てしまう。この超絶美少女の加奈子様がこんなにもアプローチ
しているってのに、全然動揺してる様子がないのも女に興味がないからじゃ……
だ、ダメだぞ! そんなのぜってー認めないかんな! 京介はあたしのモノなのに、
あたしに興味を示してくれないとか絶対に嫌だかんね!
「おま――っ、何バカなこと言ってんだよ。俺は女の子に興味津々だっつーの」
「ほ、ほんとか? 本当に女に興味があるんだな?」
「当たり前だろ!」
「じゃ、じゃあ……加奈子に座られて何も感じてないっていうのは嘘なんだな?」
ほんとは、あたしにエッチなことをしたくて堪らなかったんだな?
「いや、それは……」
「やっぱり女に興味が――」
「あーもう! 加奈子の尻の感触にドキドキしてたよ! 加奈子から香るふわっとした
甘い匂いにもドキドキしてたよ!」
「きょ、京介……?」
「俺も男だからな、好きだって告白されてこんな風にアプローチをされたら変な気分の
一つや二つは抱くっての!」
今まで溜め込んでいたものを吐き出すように叫ぶ京介。
あたしの感触にドキドキしてるって。あたしの匂いにドキドキしてるって言った。
京介があたしに女を感じてくれていて……
「にへへ〜♪」
「……何、笑ってんだよ? そんなにも俺が加奈子にドキドキしてたのが面白かったのかよ?」
「ち、違げぇよ。そんなことで笑ってなんかねーよ」
あたしはただ、京介があたしのことを意識しててくれたことが嬉しくて笑っただけだっつーの。
「――ったく、何で俺がこんなことを叫ばないといけないんだよ」
「にしし、叫んだのは京介がアホなだけで……まぁ、その代わり加奈子様の尻の感触を
味わわせてるんだから我慢しろよな」
むしろ、乙女の尻の感触を味わえるだなんて得以外の何物でもないだろ。
普通、女の子の尻を触ろうとしたら警察に捕まるんだぞ。それを考えれば、今の状況
はご褒美でしかないだろ。
「足りないって言うのならもっと味わわせてやんよ。ほらほら〜♪」
グリグリと尻を動かして感触を伝える。
「ちょっ、加奈子! マジで止め――おぁっ!?」
「ほらほら、どうよ――――ん?」
尻を動かしていると不意に何か固いモノが……
「なぁ、京介コレって……」
「言うな。つーか何も言わないで下さいお願いしますから」
京介が今にも泣きそうな顔を浮かべて俯いている。あたしの尻に当たっている固いモノ。
これってやっぱ、アレ……だよな? えーと、そのつまり京介はあたしのせいで……
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
あぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
は、恥ずかしい。今のこの状況が物凄く恥ずかしい。そりゃまぁ……この状況を作り
出したのはあたしなんだけどさ、なんつーかその……男の人のこういう現象を見るのは
初めてだし、あたしのせいとはいえ恥ずかしいのです。
「きょ、京介! そのわ、悪ぃ……」
「いや、こっちこそなんというか悪い……」
「京介が落ち込むことはないぞ!? こ、これも全て魅力的な加奈子様が悪いっつーか、
やっぱ可愛すぎるっていうのは罪だよな。あはは……」
色々と京介を誘うようなことをしてきておいて、いざこんな状態になると恥ずかしく
てまともな思考をすることが出来なくなってしまう。
いつもはオタ共を手玉にとっているあたしだけど、相手が好きな人となるとダメらしい。
好きな人の前ではただの年相応の乙女になってしまう。
「な、なぁ……京介」
「何だよ?」
「あ、あたしのせいでそんなことになってしまったんだよな?」
尻に当たる固いモノを指差し確認を取る。
「…………あぁ」
「だ、だったら――せ、責任を取らないといけないよな?」
あたしのせいで京介のが、こんなことになってしまったんだからその責任を。
「はぁ!? お、お前――自分が何を言ってるのか分かってんのか!?」
「……うん」
言葉の意味は理解しているけど、正常な思考が出来ているとは思わない。
こんなのあたしらしくないし、こんなことを言うのはきっとテンパってしまって正常
な判断が出来ていないからだろう。でもあたしはそれでも京介が好きだから。
「ちょっ、少し落ち着けよ。お前は一体、何をそんなに焦ってるんだよ?」
「……焦ってなんかない」
「明らかにおかしいって! 俺に告白をしてからお前の行動はおかしくなってるって!」
「そんなこと……」
――ない、とは言えないけど、京介にはあたしの魅力を伝えていきたんだもん。
京介が他の誰かに盗られてしまう前にあたしに惚れさせないといけないんだもん。
「あのな。お前は何をそこまで焦っているか知らんが、今までの加奈子でいろよ。変に
小難しいアプローチとかせずに今までのバカみたいに明るい笑顔で我儘を言ってればいいんだよ。
俺はそっちの方の加奈子の方が好きだぜ?」
「す――す、すす、好き!?」
「ああ。俺は今までの加奈子が好きだぜ。まぁ、しおらしくて可愛げのある加奈子もい
いが、やっぱり素の状態の方が気が楽だしお前らしくていいと思うけどな」
改めて惚れてしまいそうな笑顔でカッコイイことを言う京介。これで一部分が固くな
っていなかったら最高にカッコイイんだろうな。
「……そっか。今までのあたし、変に気を張り過ぎてたのかな?」
「かもな」
うん……少しあたしらしくなかったかもしれない。好きだという感情が前に出過ぎて
しまっていたのかもしれない。
京介は昔のあたしが好きだと言ってくれた。だったらあたしのすること一つしかないよな。
「よし、京介! あたしと付き合え!」
「はぁ!?」
「これは命令だかんな。あたしと付き合って、あたしにメロメロになってあたしだけを
愛してくれないと怒るかんな!」
あたしらしく傍若無人に我儘に――
「自分で言ったことの責任はきちんと取らせてやっからな。覚悟してろよ京介」
乙女モードじゃない、本気を出したあたしの力を見せてやるからな。
にひひっ♪ この来栖加奈子様から逃げられると思うなよ京介。
説明 | ||
はい。一応のラストになります。 まーた、微妙なオチですがとりあえず終わりですね。 |
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない 来栖加奈子 高坂京介 | ||
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