秋の味覚とゲイジュツと。甘い空の綿菓子と。(銀魂・万事屋) |
秋の味覚とゲイジュツと。甘い空の綿菓子と。
「くっそ〜。あの、アレ、空に浮いてるやつ、全部綿菓子だったらいいのになァ」
秋晴れの空の下。土手に寝転がり流れる白い雲を追いながら、銀髪の青年はぼやく。
甘いもんが喰いてェ。秋といえばアレだ、ホラ。
スイートな自然の甘味で乙女達を魅了する黄色くてホクホクのやつら。
イガイガの甲羅で己を隠しながら、その実金色の輝きで、
ご飯と一緒に炊き込んだりグラッセにしたり。
あのシロップを纏ったゴージャスの輝きといったら。
ゴツゴツ不思議な形のアイツもいいぜ。
包丁を入れるのも苦労するほど固いくせに、火を通した後のあの柔らかさ。
スープにしても良し、プディングにしても良し、ケーキにだって合う合う。
おかずでも甘味でもいけるアイツはすげえ。
極めつけはヤツだ。
コイツも煮ても焼いてもおかずにもおやつにもなるんだが、
なんといってもアレよ。アレアレ。
やっぱアレには何人たりとも勝てやしねえ。
しっとり、ホクホクとしたあの甘さと柔らかさ!
意外と売ってるおっちゃんの車は早くて、
「いやーん行っちゃうワv」とかいって恥ずかしがってると損するぜ!
大声出して恥かいても親父を呼び止めろォォォォォ!!!!
その後に待ってるホクホクドリームがお前の幸福を約束するぜ!
…みたいな。
……………。
「あー…マジで糖分摂取してえよ、糖分」
手を伸ばしてみる。綿菓子に似たそれは高すぎて、届くことは叶わない。
珍しく空には天人の飛空挺が浮かんでいない。
丁度航行時間からはずれているらしく、
こんなに蒼い江戸の空を見るのは久しぶりだった。
「銀ちゃーーーーん」
「ぐふぅぅ!!!!!!」
聞きなれた少女の声がしたとともに、腹の上に巨大な物体が乗っかる。
一瞬にして視界は青から白へと変わった。
「もー銀ちゃんたらずるいネ。定春と遊んでばかり」
「もー僕らが働いているときにじゃれあってないで下さいよ!」
………。
「…お前らコレが遊んでいるように見えるのか。臓(モツ)でそうだったぞ、モツ!!
ていうか助けろォ!オイ!」
定春は銀時などまるでいないかのように寝そべっている。
彼の呼吸が上下するたびに、銀時の腹は圧迫され、たまったものではない。
「もうッ!銀ちゃん遊んでばっかアル!いいよ新八、さっさとコレ食べるネ」
プウン、と甘い香り。
定春に押しつぶされてて気がつかなかったが、
コレは確かにアイツの香り!
「糖分ーーーーーーーーーーーーーッッッ」
がばーっと。焼いもの香りに誘われて、
自分の何倍もある定春を跳ね除けて起き上がった。
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ホクホクしっとりのアイツは、甘くて柔らかくて最高。
「いやー秋はコイツに限るな」
ところどころに引っかき傷を負った青年は、
そんなこと意にも解さず満面笑顔で焼いもをほおばる。
神楽も、新八も、定春も、皆幸せそうにたいらげた。
「ところで、焼いも(これ)どうしたんだ?」
「ん?手伝いをしたおじさんにお礼としてもらったアル」
「………仕事じゃなかったのか?」
「…………ッッッ!!!!給料貰い忘れたァアアアアア!!!!!」
新八の絶叫が空に響き渡る。
「うーんまあいいじゃねえか。こんな美味い焼いもくれたんだ」
何てことないかのように空を仰ぐ銀時。
隣では神楽も定春もうんうん、と頷いていた。
「良かあないッスよ!!明日からどう暮らしていく気だオラア!!!」
「「それもそうか」」
少し間をおいて、やっとどっこらしょ、と立ち上がる二人と一匹。
「しょがねーな。いくぞ新八」
「イヤイヤイヤしょうがなくない!ちっともしょうがなくないよ!」
喧騒と笑いと糖分と。
綿菓子のような雲の流れる空の下、万事屋三人+一匹組が、
今日も賑やかに歩いていく―。
-終-
説明 | ||
銀魂、よろず屋三人のある秋の日の物語。 | ||
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