乱世に降り立った聖闘士 |
「みんな、帰りましょう」
崩れゆく建物、そして崩壊していく世界。
その中で煌びやかな鎧を身に付けた女性が、一人の倒れた男性を抱えて周りにいる四人に告げる。
「光ある世界へ」
−−−カッッ
「星矢、貴女は私がきっと・・・・」
「沙織さん」
「アテナ」
愛しそうに倒れている星矢を見つめる沙織と同じように二人を心配そうに見つめる仲間達。
段々と光に包まれ姿を消していく六人。
光が収まった時、ハーデスの作り上げた冥界の姿は無く、虚空とも生まれる前の宇宙とも言える何も無い真っ暗な空間のみが残っていた。
かくして、冥界の王『ハーデス』と戦女神『アテナ』
両者の気の遠くなるほど長い戦いは終結を迎えることとなった。
しかし、
〜 聖域 〜
ハーデスとの聖戦が終結してから既に一ヶ月。
アテナの守護をする『聖闘士』達は生き残った青銅と白銀を中心に新しい聖域を立ち上げる準備を行っていた。
「アテナと星矢達が戻ってこないだと?!」
しかし地上に太陽が戻り、何時アテナ達が戻ってきても良い様に行われてきた準備であったが、肝心の六人が未だに帰還していないという。
「黄金の十二人も居なくなり、アテナが居なくては聖闘士の規律をどうやって守っていけばいいのだ?」
ご存知とは思うが、聖闘士には『黄金』『白銀』『青銅』という三つの位があり、聖闘士の総勢は星座の数と同じ八十八人である。
この聖闘士の位に入らず、アテナ不在時の代行人として聖域を含む全ての聖闘士を統括する『教皇』という役職があるわけだが、
「アテナが居られなければ、新しい教皇をお決め頂く事が出来ないではないか!?」
『教皇』という役割は、実質八十八人の聖闘士全員の実権を握るという意味を持ち、その気になれば武力を持って世界を征服することも不可能ではない。
その為、『教皇』はアテナの指名か前『教皇』による『黄金聖闘士』の中からの指名でしか『教皇』になることは出来ない。
だが、『サガの乱』で前教皇であったシオンが死亡、一応教皇の座に就いていた『双子座』のサガもその時死亡し、前教皇と同様に前アテナの命を受けた『天秤座』の童虎(老師)が代理人として聖闘士達に命を出してきたが、その老師もこの聖戦で亡くなってしまった。
すなわち、今の聖域には聖闘士を統括すべき人物の選任が行われていないのだ。
これは過去幾多の聖戦を潜り抜けてきた聖闘士達にも前例のあまり無いことであった。
「仕方がないね、残っている聖闘士を全員集めてその中から代理人を選ぶしかないよ」
話が一考に纏まらない中、仮面を着けた女性の聖闘士『魔鈴』が臨時の教皇を決めるための代案を出す。
「ちょっと待ってくれ。俺達だけで損な大それたことを決めて良いのか?」
集まった聖闘士の間に動揺が生まれる中で、皆の意見を代弁する『一角座』の邪武。
「こうしていて『あーだ!こーだ!』言っていても仕方がないさ。アテナが戻られるまでの代理なんだ、教皇不在のほうが逆に問題になる」
教皇は聖闘士の統括者。
すなわち、悪さをする聖闘士を取り締まる役目も持っている。
超人的な攻撃力を持った聖闘士が一般人に対する悪事を行えばそれこそ残虐とかという惨事では済まない。
何しろ最低の位である『青銅』でさえ、その拳の動きは音速(マッハ)
普通の人間である警官達になど対処できるはずが無い。
「それもそうだな。悪さをする聖闘士を倒せるのは聖闘士だけ。教皇という頭が居なければその力を私利私欲に使う輩が現れてる不思議じゃない」
「そういうことだ」
魔鈴の言うことに納得した一同は、臨時の教皇を決めるため生き残った全聖闘士の召集に向け動き始める。
「星矢、早く帰ってきなさい」
空高く上る太陽を見上げ、愛弟子である星矢の安否を願う魔鈴。
こうして聖域は新しい時代へ向けて着々と歩を進めようとしていた。
〜 ?? 〜
「ぅ・・・、ここは?・・・おい、皆しっかりしろ!!」
何も無い平原で目を覚ました紫龍。
周りで倒れている瞬・氷河・一輝に声をかける。
「しっ・・・紫龍?」
「ぅ・・・僕達は無事に戻れたの?」
「此処は何処だ?」
次々に目を覚ます仲間たち。
紫龍は三人が目を覚ましたことでホッとする。
「わからん、気がついたら俺達は此処に倒れていたようだ」
「地上のようだが、聖域ではないようだ。此処は何処なんだ?」
紫龍の言葉を聞きながら辺りを確認していく氷河。
「ん?そういえば星矢と沙織さんは?」
「ッ!!おい、向こうだ!!」
瞬の問いかけと共に一輝は道の先に倒れている人影を見つける。
その影は太陽の光に反射し輝いている。
「あれは聖衣の輝き?もしかして?!」
「「星矢!!」」
見覚えのある光に向かって走り出す四人。
「間違いない、星矢だ!!」
向かった先に倒れていたのは、共に幾多の戦いを潜り抜けてきた仲間であり、ハーデスとの戦いで品詞の重傷を負ったはずの『天馬座』の聖闘士 星矢であった。
「あれほどの傷がなくなっている?」
星矢が同じ所に倒れていることは左程不思議なことではない。
なんせ崩壊する冥界で共に行動していたのだから。
だが、ハーデスに穿たれた心臓を貫くほどの傷がなくなっていることは説明できない。
一体星矢に何が起きたのだろうか?
「おいっ!星矢!!しっかりしろ!!」
必死に星矢に呼びかける紫龍。
「ぅ・・・ぅぅ・・・・・・ここは?沙織さんは・・・」
「「「「星矢!!」」」」
瀕死の重症であった星矢の目が開いた。
紫龍達は星矢の無事を心から喜んだ。
「はっ!!ハーデスは?!」
目を覚ました途端立ち上がって戦闘体勢を取る星矢。
「落ち着け、もうハーデスとの戦いは終わった」
「なんだと?!ならアテナは?!沙織さんはどうなったんだ!!」
星矢は最後の一撃を繰り出した後意識を失った。
その為ハーデスの最後を見届けていないため、戦いの終わりを信じられないようだ。
紫龍達は星矢が倒れてからこの場にて意識を取り戻すまでのことを説明していく。
「そうか、俺達は役目を果たせたんだな」
遥か神話の時代から続けられてきたハーデスとの聖戦。
その聖戦を自分達の代で終わらせることが出来、今は亡き老師やシオンの願いを叶える事が出来てよかったと思う星矢だが、
「それで、沙織さんはどうしたんだ?」
紫龍達の話を聞く限り、同じ光に呑まれた筈の沙織の姿が無いことが気に掛かる。
「それがわからん。俺達は同じ場にいたが、沙織さんの姿は無かったのだ」
「それにこの場所もどこかわからないんだ」
氷河と瞬がとりあえず星矢の問いに答えるが、自分達が生き残っても、肝心のアテナがいなくては何の意味も無い。
「仕方がないな、とりあえず人のいる場所を探そう」
「そうだね、聖衣のままじゃ目立つし」
そう言って五人は身に付けていた聖衣を解いた。
するとオブジェとなった聖衣が何処からか飛んできた聖衣の箱に収納されていく。
「さて、出発しよう」
飛んできた聖衣の箱は無視して街を目指して出発していく星矢達。
星矢達は己の身に降りかかる不可思議な現象を知るのはもう少し先の事である・・・・・・
あとがき
序章なのでもう一つ続きます。
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こんな○○があったらどうだろう? そんな考えの下に試作をしました。 感想などをいただけると嬉しいです。 追記 タイトルが決まり正式に話を作り始めたので復活させます。 |
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