仮面ライダーEINS 第二十七話 変身
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――2012年1月25日 14:02

――学園都市 理系学区

 路地裏から突然煙が巻き起こり、一つの影が大通りに投げ飛ばされた。

学園都市では比較的見るのがたやすい風景だったが、放り投げられたのは学園都市を守る仮面ライダー、アインツの方であった。既に装甲は赤で金色が縁取られており、リミッター解除は終了していた。

危険である事が増したのもあってか、人々は蜘蛛の子を散らす様に避難を始める。その群れの流れに逆らう様に一条警視が騒動の中心に走っていた。

「早まるなよ!五代!!」

 アインツと共に路地から逃げ出した人間のままの雄介を見て杞憂だったことを知るが、起き上がったアインツ・エナジーフォームリミットカットには白銀の仮面ライダーが襲いかかっていた。

「五代!」

「一条さん!」

一条警視の姿を見つけた雄介が、亜真菜を連れてすぐさま安全な位置まで待避する。

「あれは!?」

「一騎君が倒したと思ったら、仮面ライダーに……」

 フィーア。学園都市が極秘に造りだした仮面ライダー。"他の世界"の仮面ライダーの技術を使っているため必要以上に秘匿されていたはずだった。

それが、何故か、敵の手に渡っていた。

「ちぃ、完成していたのか」

 一騎が三ヶ月前に監修したときは、全体の40%といったところだった。必要以上に学園都市に破壊工作を仕掛ける財団Xに対抗するもののはずだった。

 

『ATTACK RIDE BEET』

 

 そうこうしているうちにフィーアの両腕にトンファが装備された。

そのトンファはアインツをかすめ、アインツが背にしていた壁が吹き飛んだ。穴が開いたというレベルではない。

「おいおい、当たったら死ぬぞ!」

 おそらくリミッターが施されていない。

学園都市ライダーは敵を殺さない。あの威力で顔を殴打されようものなら消えて無くなる威力だ。

そのトンファに当たらない様に、的確に腕の攻撃のみを躱しながら、蹴りを抱えて自分を軸に大きく振り回す。

「おりゃぁ!」

 例え性能差があっても、この男はそれを感じさせない戦いを作り出す。

放り投げたれたフィーアは空中で姿勢を変え、腹に備え付けられたバックルにカードを再び装填する。

 

『ATTACK RIDE KICK』

 

 今度は脛にブレードが装備された。

「おいおい、まじかよ」

 触れる隙すら無くなった。全身凶器の装甲とでも言うべきか。

これにはさすがのアインツも身構えた。

その全身の武器がきしむ音を鳴らしながらフィーアがアインツに向かって吶喊する。これに僅かに後ろに下がったアインツは、フィーアの吶喊とタイミングを併せて空中に跳び上がり、肩を踏んで後方に跳ぶ。空中でアインツコマンダーを開きコードを入力する。

 

『BLAST!Release!!』

 

 空中でブラストフォームリミットカットに変身し、リングの中から背中に向かって掃射する。

一瞬で旋回を終えていたフィーアは、このエネルギー弾をトンファで弾きすぐさまアインツにそれを打ち付ける。

たやすく吹き飛ばされたアインツは地面を転がってしまう。

「強い!」

 雄叫びをあげるフィーア。

「暴走しているのか?」

 起き上がった途端にトンファが顔面にとんでくるが、これをしゃがんで躱し、通り過ぎた背中を蹴り飛ばす。蹴りに全く怯まなかったフィーアはすぐさま旋回し、アインツの腹に重い一撃を加え再び吹き飛ばした。

「一騎君!」

「雨無君!」

 雄介と一条警視が思わず声をあげた。おそらくタイプブラッド・コーカサスとツヴァイを相手取ったときよりも圧倒されているだろう。

あまりの戦闘能力の差を感じたのか、雄介が一歩前に出て覚悟を決める。そう思った瞬間だった。

「五代先輩は見ててください!!」

 再び吹き飛ばされた。

雄介の足下にアインツが転がってくるが、それでもアインツは雄介の変身を押しとどめたいようだ。

「俺はあのとき変わりました!五代先輩と出会って!たくさんの人に支えられて!たくさんの人に出会って!学園都市にたどり着いて!」

 静かに起き上がった。そしてフィーアはのっそりと静かに近づいてくる。

「学園都市ではたくさんの研究者が笑顔を造り続けています!!俺はその人達の笑顔を守ります!!」

 息を整え、受け継がれた意志と、受け継がれた言霊を、アインツは叫んだ。

「だから見ててください!俺の!変身!!」

 そしてあのときと同じように覚悟を叫んだ。

突如フィーアの周辺に黒い物体が飛び回る。その黒い物体はフィーアに何度か突撃攻撃を行い大きな隙を生じさせる。その物体は仮面ライダークウガの相棒ゴウラムにうり二つ。違うのは大きさとヒトの手に造られたということ。どこからともなく空間を食い破って登場したソレは、カブトゼクターを参考に製作した新たな力の鍵"ドライゴウラム"だ。

いつものように超変身の様に左手を右の天に突き上げる。違ったのは、ドライゴウラムがその手に収まったという事だ。アインツコマンダーへ被さる様にドライゴウラムがマウントされた。

 

『DRAI!!』

 

 アインツドライバーから赤のリングが跳び出し、そしてドライゴウラムの二本牙と羽根が展開しそれぞれ青と緑のリングが跳び出し、三つのリングがそれぞれ回転を始め、黒い光球が形成される。

その深淵は内部から大空に向かって穿たれ、雛が孵るように破れ始めた。

孵った雛はあまりにも強靱すぎる。殻は力強く大剣に振り払われ、新たな仮面ライダーが姿を現した。

ヌルと同じ漆黒の鎧を身に纏い、体表に走る血液は明るく光る黄金。右手には力の象徴である大剣。

 

――そして赤い瞳は優しさの証

 

 腕を、大剣を振り回すだけで衝撃波が生じフィーアを身構えさせる。

「仮面ライダードライ」

 名を唱えた瞬間、背中からエネルギーで形成された金色のマントが空になびいた。

「さあ盛大に、そして派手に行こう」

 大剣の切っ先をフィーアに向けながら走り始める。

もちろん見え見えの突撃は避けられる。しかし横に避けたのが判断ミスだ。そのまま大きくなぎ払いフィーアはそのついでかの様に吹き飛ばされる。

「お前は二倍かもしれないが、俺は三倍強くなったんだぜ」

 一から三へ。

その破壊力は、相手を倒す事だけに特化されたものだ。時にその圧倒的な攻撃力は相手の命を奪ってしまうものだ。

 

『FINAL ATTACK RIDE VIER!』

 

 焦ったか、それとも倒せるとでも錯覚したのだろうか。フィーアはカードをバックルに装填し必殺技を発動させた。

空中に跳び上がり、脛に展開されたブレードを押しつける様に突撃してきた。

「ビット!」

 ドライがそう叫んだ瞬間、ドライの肩と太股にマウントされていた放熱板のような破片が空中に飛び出す。そして手にしていた大剣ドライティターンを変形させ、ガンモードに換装する。その二つを持ってフィーアを迎撃した。

意欲的に様々な技術を詰め込んだのがこのドライだ。

大剣ドライティターンは別世界の仮面ライダー、ゼロノスが使用していたゼロガッシャーと同じく大剣モードとガンモードを持つ。そして響鬼が使用していたディスクアニマルからヒントを得たビットシステムは、高速で動き回る敵の迎撃から周囲のエネルギーの制御までこなすものだ。

ビットに空中で迎撃されたフィーアは地面に転がり回る。

「さあ歯食いしばれよ。できるだけ手加減はしてやる」

 腰にマウントされていたドライゴウラムに手をかざし必殺技を発動させる。

 

――ライダートリニティ

『RIDERTRIBITY!!』

 

 ドライのマントが消え去りビットが周囲を飛び回る。そのままビットはドライの後方で円を描く様に回転を始め、三つの円が形成される。

再び大剣モードに携行武器を変形させ、深く腰を下ろした。

「おりゃぁぁぁ!!」

 大きく剣を振り回し、衝撃波の嵐がフィーアに襲いかかった。同時に余剰エネルギーが後方から一気に噴出され、威力が軽減された。しかしその攻撃力はフィーアを一時停止させるには十二分の威力だった。

変身が強制解除された尾木が目の前に転がっているのを見て、ため息と共にドライの変身が解除された。

 

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――2012年1月25日 14:30

――学園都市 理系学区

 新ライダーの強力な一撃を受けた尾木は病院に搬送された。

それを最後まで見届けた一騎は、雄介と一条警視、亜真菜に歩み寄った。

「大丈夫か、和泉」

「うん」

「ありがとうございます。五代先輩」

 そう言って、ある意味師弟関係の二人が再会した。

「いいよいいよ、みんな何事も無かったようだし。あの人も……きっと大丈夫でしょ」

「ええ、尾木は頭が悪い人間じゃないです。少し立ち止まって頭を冷やせば、すぐに分かってくれる……そう思ってます。」

 いつもの調子だった。少し変わってしまったが、笑顔は変わっていなかった。

しかしその横の一条警視は少し険しい顔だった。

「それにしても五代。変身するなとあれだけ言ったはずだぞ」

「そうですよ、五代先輩。これ以上変身したら……」

「それは雨無君もだよ!」

 ついでを言うなら雄介の変身を硬く禁止している人間はあともう少し居るのだが、一条警視と一騎よりも凄まじい勢いで、亜真菜が一騎に詰問し始めた。

「大丈夫だ、アレはヌルじゃない。……まあヌルのエネルギーを殆ど使っているが」

「それって結局一緒何じゃないの!?」

 亜真菜の勢いに、先ほどまで戦いを繰り広げていた男とは思えない押され方で後ろに下がっていく。

「え、あ……あ、そうだ!五代先輩!いつまで学園都市に!?」

「あ、ああ!実はさ、一騎君の顔見たらすぐに冒険に出ようかなって……」

 いきなり焦り出す二人の仮面ライダーを見て、一条警視と亜真菜は吹き出すのであった。

 

 * *

 

――2012年1月25日 18:58

――学園都市 中央区

――本土連絡橋駅

「少しくらいゆっくりしていけばいいのに」

 本当に急だった。突然現れたと思ったら突然冒険に出る。それが五代雄介だった。そして一条警視も情報を仕入れ本土に戻ろうとしていた。

「日本にはしばらくいるつもりだよ。おやっさんのところにも行かないといけないし……榎田さんもジャンにも。まあ学園都市で一条さんと椿さんがいたのは少し運が良かったかな」

「そうですか」

 ため息混じりにそう呟いた。色々と話を聞かせてほしいということもあったが、戦いが尽きない学園都市にいればきっと彼はクウガに変身するだろう。それだけは避けたかった。

「それに、海外で映司くんが待っているしね」

「映司に会ったんですか?」

「うん」

 仮面ライダーオーズ。彼も旅先で冒険者と出会っていた。彼もまた旅人として、研究者として世界を旅していた。

「一騎君のこと言ってたよ。前向きになれたって」

「そんなこと言った覚えはないんですけどね」

「何気ない一言が誰かを助けることもある」

 そう言って一条警視はサムズアップを一騎と雄介に見せた。

「そうやって俺達も助けられたんだ。今だから言えるけどな」

 そうやって三人が笑い合った。ちょうどその時、ベルが列車が出発を知らせた。

「また会おう、雨無君」

「また、どこかで。一騎君」

「はい、何れまた」

 

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――2012年1月27日 10:02

――学園都市 理系学区

――地下ケーブル口 

 地下を這っているケーブルの隙間。その隙間で財団Xの学園都市当面の幹部が、試験管を眺めていた。

「もうすぐだ……もうすぐだ……もうすぐ」

 既に狂っていた。狂っていなければ出来ない事もある。それが目の前の試験管に入っていた。そして彼の後ろで爆音が鳴り響いた。

「さーて地下だからな。既に包囲は完了しているから大人しくしな!」

 完全悪役の台詞を携えて正義の味方が登場した。

「……それか。新作のタイプブラッドは」

 一騎も試験管を視界に入れた。中では人型の影が見えるところを考えるとおそらく怪人が"製造"されているのだろう。

「まさかあんただったとはな。たかだか一回の入札に負けたせいでここまで恨まれるとはな。フィーアの開発権は得ただろうに」

「貴様は自分の研究が認められない事をどう思う」

「ああ?」

「私は貴様が恨めしい!!私の兵器は!強化外骨格は完璧だった!」

「お前は兵器を、フィーアを兵器として造っているつもりだったのか」

 だからこそあの尾木の暴走っぷりだったのか。

「そうだ!お前が造ったその仮面ライダーも兵器だ!」

「違う!」

 はっきりと否定した。否、はっきりと否定できる。

「仮面ライダーは誰かを傷つけるんじゃない。そりゃ道を誤った奴はごまんといるかもしれない。だけど仮面ライダーは誰かのために、誰かの笑顔のために戦う存在だ」

「笑顔だと!?それこそ笑わせるな!そんなものが何のためになる!所詮は綺麗事だ!!」

「ああ、綺麗事だ。だからこそ、実現したいんだ」

 そう言って一騎が歩み始めた。それに釣られる様に研究者も下がり始める。

「俺は、俺の研究は何れ誰かの笑顔のためになると信じている。あんたの研究は、何を産み出すんだ」

「私は……力だ!」

 そう言いながら、試験管に備え付けられたスイッチを押した。

「私はこの力を使って世界の王となる!!」

「そう言う奴は決まって失敗するのが相場なんだよ!」

 確保に向かおうとした瞬間試験管にヒビが入り、中に封じ込まれていた脅威がアインツの世界に降臨した。

その姿は、ぼさぼさの髪を伸ばした異形だった。

「さあ、やれ!この私を王とするために!!」

 幹部はヒステリックにマッドサイエンティックにそう叫んだ。

しかしその異形は父の姿を見て確かにこう言った。

 

――ギネ

 

 子の太い腕が父の腹をたやすく貫いた。

「な……ぜだ?」

 信じられない。疑問の断末魔をひねり出しながら、学園都市を脅かし続けた驚異は果てた。

タイプブラッドとして産み出され、体内に制御装置が内蔵されている以上、命令は聞くはずだった。しかし目の前にいる驚異は、もはや生物と言えないレベルの化け物であった。

「……未確認生命体……第0号」

 その姿はかつて"新世紀の悲劇"と呼ばれる事件で大量の人間を虐殺した存在だった。この惨劇にあっけを取られていた一騎だったが、すぐに我に返り、コードを入力した。

 

――変身!!

 

 アインツギアからいつもの様に白いリングが跳び出し、光球を形成する。今までにもこの防御フィールドに助けられた。

しかし相手はその防御フィールドを見るや吶喊を開始し、光球に拳を突き立てた。まるでそれがなかったのかのように突き破られ、勢いを一切失わず驚愕の表情の一騎の腹にその拳が突き立てられ、腰に巻いていたアインツドライバーとアインツコマンダーが破壊された。

「なん……だと……」

 意識は薄れ、血は吹き出し、一騎は暗い床に突っ伏した。

 

――ゲブロン

 

 一騎はまだ生きていた。

腹にある霊石。彼をライダーたらしめるそれは確かに彼を生かしていた。

 

――キリザ ボグゾ エガゴビ ギデグレスンババ

 

 未確認生命体第0号、ン・ダグバ・ゼバはそこで力のほんの一部を開放した。

その力はネットワークを通じて全世界に影響を及ぼした。世界各所に点在する財団Xの全コンピュータが火花をあげたのだ。今この瞬間、たった一体の生命体によって財団Xは崩壊寸前まで追い込まれたのだ。

そして人類種の天敵は、学園都市を食い始めた。再び完全な姿となり、再びあのゲームを楽しむために。

 

 * *

 

次回予告:

 

EPISODE28 赤い瞳は優しさの証

 

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おまけ:仮面ライダー設定

仮面ライダードライ

アインツが擁するもう一つの切り札であり、学園都市最強のライダー。金色のエネルギーラインに、漆黒のアーマーを持ち、瞳は明るく輝く赤。

アイン、ツヴァイに次ぐ三番目のライダーだが、正しい意味は雨無一騎が変身する三番目のライダーである。アインツの世界に存在する仮面ライダーの技術を結集されたと言っても過言ではない。また強化変身の際に名前が変わる初のライダーでもある。

AIを搭載したドライゴウラムをツールとして、アインツドライバーにマウントされているアインツコマンダーにかぶせる様に装着し、二本角と羽根を展開させる事で、それぞれ青と緑のリングが飛び出しアインツギアから飛び出る赤いリングとも組み合わされる事によって黒い光球が形成され、それを破る事で変身終了となる。

余剰エネルギーがマント状になりアーマーからあふれ出している。平常時においてこのマントは物理的な攻撃力と防御力を持つが、必殺技発動の際にはこのマントは消えてしまう。

ヌルとは違い、圧倒的なまでの攻撃力で相手を叩き伏せるスタイルを取る。攻撃力だけでいえば歴代のライダーの中でも上位に位置する。また攻撃力だけではなく、殆どの能力はアインツよりも上昇しているが、防御力に関してはヌルに大きく劣る。

携行武器としてゼロガッシャーからヒントを得た武器・ドライティターンと、ディスクアニマルから発展した吶喊型ビットシステムを所持する。ドライティターンには大剣モードと砲撃モードがあり、遠近において圧倒的な攻撃力を提供する。

必殺技はエネルギーで形成されたマントで特殊なフィールドを作りだし相手を拘束、そのままライダーキックを放つライダーアルティマ。そして携行武器ドライティターンによる三連続のなぎ払い、ライダートリニティ。そしてヌルの能力を最大限に利用した相手のエネルギーを吸収し尽くすライダーアブソーブの三つである。

 

 

説明
この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。

執筆について
・隔週スペースになると思います。
・明日0:00に最終話更新です。
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タグ
仮面ライダー 仮面ライダーEINS アインツの世界 TINAMIの世界 仮面ライダークウガ 

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