仮面ライダーEINS 最終話 赤い瞳は優しさの証
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――2012年1月30日 ??:??

――学園都市 理系学区 医療学部 

――一騎の研究室

「……」

「待って、起きちゃダメ」

「……和泉?」

 目を覚ました一騎が始めに見たのは亜真菜の顔であった。

仰々しくベットに寝かされていたが、目に映る風景はいつもの自分の研究室であった。

「一騎君、3日も意識が戻らなかったんだよ」

「3日!?」

「……実際にはどれくらい時間がたったか分からないんだけどね」

 亜真菜はそう言って、窓の外を見た。その窓の奥には黒い空が広がっていた。

 

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 最終話 赤い瞳は優しさの証

 

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――2012年1月30日 ??:??

――学園都市 理系学区 医療学部 

――一騎の研究室

「俺を倒したのは……」

「ああ、未確認生命体第0号……復活した時と同じ姿をしていたよ」

「ということは不完全体か」

「君、アインツギア巻いてないと多分即死だったよ」

 不完全体でなお、アインツの防御フィールドをたやすく貫通し、アインツコマンダーを破壊したというのか。

「アインツは?」

「ほぼ直っているよ。後はエネルギ濾過技術と制御基盤だけど……」

 そう言って晴彦は用意していた紅茶を一騎と亜真菜に渡した。

「無くても動くところだな」

「そう言うわけでもないんだよ」

 紅茶を手渡したその足で、自分の席にゆっくりと腰を落ち着けた。

「現在学園都市は空間的に隔離されている」

「空間……的?」

「外部との連絡が一切取れない」

「そんな馬鹿な……」

 たった一層の壁で全てが遮断されていた。

「悪い状況は重なるものだね。十人委員会全員が学園都市を出払っているんだ」

 昨年の銀河王事件。そして政府直轄のツヴァイチームの宣戦布告。出払っていても無理はない。

「……それだけじゃない。学園都市全体が黒い壁で包まれ徐々にだけどエネルギーが枯渇し始めている」

 晴彦が学園都市を望む事ができる窓に近づいた。その窓から見えていた風景は、無のような黒い空に、灰の様な銀淵だった。

「おそらく第0号がエネルギーを吸収しているんだと思われる。そのエネルギーが他のグロンギの復活に使われるか、それとも自分が完全体になるためかは不明」

「クローンなのに……元と同じ意志と力を持っているというのか?」

「……あれは生物を超越してるよ」

 信じられないといった感じで天才サイエンティストは脱力した。絶望が空間を支配していた。かつて"新世紀の悲劇"で人間を虐殺した恐怖が復活した。

「ハル、さっき空間敵に隔離されているといったよな」

「ああ、言ったよ」

「ということは……ドライゴウラムは召喚できないんだな」

 一騎の問いに晴彦は無言で答えた。

「ドライは使えない。アインツは壊れているし到底敵わない。なら使うべきライダーは一つだ」

「……やはりヌルを使うんだね」

「あのときアインツに変身したのが失敗だ。ヌルに変身すれば最悪の事態は避けられたかもしれないのにな」

「君が一番判ってないよ。ヌルは……ヌルは何れ君を生物兵器へを変えてしまう」

「大丈夫さ。偉大な先輩が今も元気に冒険してるじゃないか。それに……」

「それに?」

「切り札は使えるときに使わなきゃ意味がない」

「……奇跡を信じるほかないみたいだね」

 そう言って晴彦は力なく窓ガラスに身体を預けた。

「奇跡になんて対して価値なんてない。奇跡は起こそうとするから起きる。その行動自体に価値があり、奇跡そのものに価値はない」

「強いね」

「仮面ライダーだからな」

 

 * *

 

――2011年1月30日 ??:??

――学園都市 理系学区 医療学部 

――ロードチェイサー・カスタム格納庫

「行くんだね」

「ああ」

『一騎。外はどうなっているか分からない。そこで変身していくのをお勧めするよ』

「了解」

『……死ぬなよ』

「おいおい。いつもは不死身みたいな言い方だな」

 あくまで相棒の心配を、いつもみたいに冗談めかして返した。こんな時だからこそ……笑顔なのだろうか。

「雨無君」

「ん?」

 呼ばれたが視線は合わせず。ロードチェイサー・カスタムの計器を弄っていた。

「死なないでね」

「何だ、君も俺を不死身扱いか?」

「雨無君!!」

 不安に押しつぶされたような金切り声を上げた亜真菜に少し驚いた様だが、一騎はすぐに笑顔を取り戻しいつものサムズアップと共に受け継がれた言葉を紡いだ。

「大丈夫」

 雨は降っていない。たった一人でも絶望に立ち向かってみせる。

「君ごと守るさ。かつて多くの先輩たちがたくさんの笑顔を守ったように」

 一人はかつて古代で笑顔を護るために戦い、現代まで白い闇を封印し続けた。もう一人は未確認生命体関連事件でたくさんの笑顔を護るため戦い、自らの笑顔を失ってまで戦い続けた。

居場所、願い、夢、友、教え、道、時、愛、世界、街、絆、宇宙、そして笑顔。英雄達はそうやって護ってきた。

彼らになることはできない。だが肩を並べることはできる。

「だから見ていてくれ。俺の変身」

 そう言うと亜真菜は静かに頷いた。

 

一騎は一歩踏み出した。静かに、そして確実に。

 

腰にヌルのベルトを召喚する。

 

刻まれた文字は

 

無に帰す戦士 何にも染まらない黒をもって 絶望から全てを守らん

 

右手を左天に、左手を右の腰に当て覚悟を決める。

 

何も言わず、否何も言えず。

 

右手を右に滑らせ、左手も左の腰に滑らせる。

 

右手で宙を斬り、意志を載せた。

 

鈍い銀のベルトは彼の体を白いベールで包み漆黒の体へと変身させる。

 

黒い体に赤い血流。城壁の如くの凄まじい装甲。全身に纏われた荒々しい突起は秘められた凶暴性を表していた。

 

しかし装着者はその凶暴性を、護る力……全てを包み込む優しさにその力を使った。

 

――その瞳は優しく輝く赤い瞳だった。

 

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――??

――銀淵 

 

――まるで銀世界

――彼が造り出した白い闇

――かつて彼と英雄が戦った九郎ヶ岳

――まるで誇示するかのように

――まるで楽しんでいるかのように

――まるであのときのように

 

――ジャア

 

――ザンネンザ ベゾ キリジャバギ

 

――キリザ ジャバギ クウガ

 

――キリデザ ボグゾ エガゴ ビ デキバギ

 

――ガア

 

――ゾン チバラ バエギデモラグヨ

 

――そして黒と白は駆けだした

――まるであのときのように

 

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 学園都市との連絡橋では五人の仮面ライダーが黒い結界と対峙していた。響鬼、カブト、電王、キバ、そしてWとオーズがそれぞれ攻撃を開始していた。

 

「こりゃ魔化魍の力も取り込んでるな」

 黒い結界に吸収された烈火弾を見て、腰から装甲声刃を取り出す。

「響鬼、装甲!」

 装甲声刃をかけ声で発動させる。響鬼が紅の身体に姿を変えていくのと同時に、ディスクアニマルが集まり、響鬼の新たな鎧となる。

「はぁ!」

 ここにいる仮面ライダーの中では最強の攻撃力を誇る装甲響鬼(アームド響鬼)へと強化変身を終える。

 

 そしてその横ではカブトが恨めしそうに結界を見ながら、決意を秘めて天に手を掲げる。

「共に立つ者が力を合わせれば、天の道は誰にも阻めやしない」

 カブトが掲げた手。そこに小さいながらも威圧感を発するハイパーゼクターが召喚される。

ハイパーゼクターは装着者の意志をくみ取り、自ら腰にマウントする。

「ハイパーキャストオフ」

『HYPERCASTOFF!!』

 カブトのアーマーに電撃が走り、よりマッスルな身体へと変化していく。高速を越えた早さ、ハイパーカブトが顕現する。

 

「みんな。てんこ盛り、行くよ!」

『SUPER CLIMAX FORM!!』

 さらにその横では、アインツと直接面識のない電王ソードフォームがケータロスをバックルに装着したところだった。

『おう!ひさしぶりだぜ!』

『あんまり張り切りないでよ、みんな!』

『いんや、ここは本気になるところやで!』

『わーい!ひさしぶりだ!!』

 電王の周りに赤青黄紫の電仮面が舞う。と、そこに白の電仮面も現れる。

「ってジークまで!?」

『こんな美味しいところを我に取らせないとは……貴公らは水くさすぎる』

 そんなこんなで電王は超クライマックスフォームへと姿を変えた。

 

 そしてキバの周りにはキバットバットV世、タツロッド、そして三体のアームズモンスターの胸像が舞っている。

「いくよ!みんな!」

「ああ、出し惜しみは無しだ!」

「皆さん!行きますよ!」

 タツロッドのかけ声と同時に三体のアームズモンスターの胸像が現れキバが再変身を行う。

新たな驚異と戦った結果生まれた新たな覚醒、ドガバキエンペラーフォームのお披露目だ。

 

 Wは一番攻撃力のあるヒートトリガーから強化変身のためにサイクロンジョーカーへと換装したところであった。

『翔太郎、この結界は地球の記憶も内包している。対抗するにはエクストリームしかない』

 フィリップの声にエクストリームメモリが戦場の空を舞う。

「了解だ!相棒!」

 相棒の言葉にエクストリームメモリを掴んだWはダブルドライバーにエクストリームメモリを挿入、展開する。

『XTREME!!』

 Wのセンターラインが開き、究極のW・サイクロンジョーカーエクストリームに二段変身が終了した。

 

 オーズ・タトバコンボはメダジャリバーでの必殺技オーズバッシュを黒い結界に放ったところだ。

「こりゃダメだ」

 当たった感触すらなかった。

一筋縄ではいかない。だからこそ持ち得る力全てをぶつける。装填されていた赤黄緑の3枚のメダルを一旦取りだし、深紅のメダル2枚とヒビの入ったタカメダルを取り出しオーズドライバーに再装填する。ついこの間完全とはいかないものの修復されたものだ。いずれ彼も戻ってくるだろう。

「行くよ……アンク」

 

――変身!

『タカ!クジャク!コンドル!タージャードルー!!』

 

 オーズ・タトバがオーズ・タジャドルコンボへと変身する。火炎と飛行を司るその最高コンボが翼を広げた。

「はぁ!!」

 戦場を駆け抜ける赤く暖かい風にサイクロンジョーカーエクストリームの銀が金に変わりさらなる究極、サイクロンジョーカーゴールドエクストリームへと飛翔する。

「サンキュー、オーズ」

「ライダーは助け合いですよ」

「そう、ライダーは助け合いだ」

 今まで居なかった声に強化変身を終えた全員が振り返った。

そこにはカメラを肩からぶら下げた一人の青年が黒い結界に向かって静かに歩いていた。

 

――変身

『KAMENRIDE!!DICADE!!』

 

 世界の破壊者……否、世界の観測者が変身を終える。仮面ライダーディケイド、門矢士がEINSの世界に現れた。

「君は……」

 キバがディケイドの姿を見て何かを感じ取った。しかしディケイドは自身の運命を大きく変えていた。だからこそ全てを繋げる仮面ライダーに惹かれたのだろうか。

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておいてくれ」

 そう言うとディケイドライバーが腹から離れ、代わりにケータッチが腰に装着される。

『KUUGA!AGITΩ!RYUKI!555!BLADE!HIBIKI!KABUTO!DEN-O!KIVA!DECADE!!』

 ディケイドもまた最強フォームであるコンプリートフォームへと二段変身を終えた。

 

「もう一人忘れて貰っては困る」

 強化変身を終えた全員が振り返ったさきにはワインボトルを持った青年が結界に向かって歩いていた。

「今、僕たちのヴィンテージが芳醇の時を迎える」

 GOROと貼られたワインボトルを変身ベルトに装填し、その覚悟を叫んだ。

 

――変身

 

 彼の立っていた地面に巨大なGの文字が浮かび上がる。シャードと戦い抜いた英雄、仮面ライダーGだ。

「久しぶりだな、G」

「この未曾有の事態だ、じっとしていられない。……もう一人来たようだ」

 

 Gの視線の先に釣られる様に全員が空を見上げると、ロケットモジュールで煙雲を作りながらフォーゼが戦場に登場した。

「間に合ったぜ!おお、すげえ!ライダーが勢揃いだ!Wとオーズもいるぜ!」

『如月、集中しろ』

「分かってるって、賢吾。けどよ、この状況燃えなければライダーじゃないぜ!!」

『相変わらずだな、君は。行ってこい!仮面ライダー!!』

 必殺技を放つためフォーゼは空中で姿勢を変え、黒い結界へと吶喊する。

 

「鬼神覚醒!!」

 

「ハイパー……キック!」

『MaximumRiderPower!』

 

『FULLCHARGE!!』

「へへ、もう一回」

『FULLCHARGE!!』

 

『ドガバキエンペラーブレイク!!』

 

『XTREME!!MAXIMUMDRIVE!!』

 

『SCANININGCHARGE!!』

 

『Roket,Drill,LimitBeark!』

「オールライダー・フルパワーライダーキック!!」

 

 響鬼は音の斬撃を振りかぶり、フォーゼはそのまま突っ込み、他のライダーは空中に跳び立ち、それぞれが出すことができる最高の必殺技を黒い結界に打ち付けた。

十人のライダーがほぼ同時に必殺技を放つが、黒い結界は僅かに揺れただけだった。全員が結界に食らいつくがいつ吹き飛ばされてもおかしくなかった。

「なんて堅さだ……!」

「おい、お前!もっと気張れ!!」

 キバ・ドガバキエンペラーの弱音に電王・超クライマックスが檄を入れる。

総勢十人の同時ライダーキックは想定でも1000tを軽く越えている。さすがに僅かに揺れたが、後一押しが足りない。

「来た!」

 Wの声があたりに響く。

連絡橋に一つの影。あまりにも大きい黒いバイクの先端には金色に輝く牙。搭乗者は……。

「この世界のクウガか!」

 ディケイドが叫んだ。

搭乗者は赤い装甲に優しさを忘れない明るい赤。かつて世界を救ったもう一人の英雄、クウガだ。

 

――超変身!

 

 赤のクウガがビートゴウラムの上で金の黒のクウガ、アメイジングマイティに二段変身を行う。同時にビートゴウラムにも雷のリント文字が輝きその力を増す。

搭乗したまま突っ込むライジングビートゴウラムアタックだ。

「青年たち!踏ん張れよ!」

「ああ……!」

 響鬼装甲の一言にハイパーカブト背中の羽が輝きを増す。

「行きますよ!皆さん!」

 オーズ・タジャドルの合図と共に全員が最後の一押しの如くに力を込めた。一度も一斉に顔を合わせたことのない全員が全く同じタイミングで一押しを行なわれたのは奇跡か、それとも運命か。

ライダー達の力に、黒い結界が耐えきれず僅かだが、しかし致命的なヒビが生じた。

「いけ!」

 Gの声と共にライジングビートゴウラムアタックが結界に炸裂した。

 

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――??

――銀淵

 まるであのときのように。白い方は笑って、黒い方は泣いて。白い方は自分の笑顔のために、黒い方は誰かの笑顔のために。

わかり合えなかった。わかり合えるはずもなく。決して理解し合えない。

その溝を象徴するかのようにドーム上の結界に亀裂が走り、真っ二つに引き裂かれた。

結界が崩壊を始めた瞬間、ン・ダグバ・ゼバの身体から凄まじい量のエネルギーが放出され始める。不完全なその身体では学園都市が抱える全エネルギーを抑えきれないらしい。

その光景を薄れる視界で納めていたヌルは、消えゆく意識の中ドライゴウラムを召喚する。召喚されたドライゴウラムの腹には修復されたアインツコマンダーが抱えられていた。

役者は揃った。

ヌルのベルトがアインツドライバーに据え変わり、そこを止まり木にドライゴウラムが合体する。

 

――変……身

『DRAI!』

 

 走りながら赤青緑の三つのリングをくぐり抜け、ヌルからドライへと変身を終え、腰にマウントされていたドライゴウラムに手をかざす。

 

――ライダー……ドレイン

『RIDERABSORB!!』

 

 空中に跳び立ちン・ダグバ・ゼバに左脚の飛び蹴りをお見舞いする。

僅かの衝撃を与えられ後ろに下がったが、ドライの真意は威力ではない。ン・ダグバ・ゼバが制御しきれていないエネルギーがドライの左脚に集まり始める。

わざわざ学園都市全域のエネルギーを集めてくれたのだ。これだけのエネルギーであれば白き闇を葬れる。ドライゴウラムに再び手をかざし、大本命の一撃を満身創痍の全身に命令させた。

 

――ライダー……キック!!

『RIDERALTIMA!!』

 

 そう宣言した瞬間、ドライのマントがエネルギーの竜巻へと姿を変え、肩と太股にマウントしていたビットが宙に跳び立ち竜巻を制御、ン・ダグバ・ゼバを封じ込める。ドライは再び空中に跳び上がり、今度は回転を加え威力を増大させる。その流れは彼が尊敬している先輩と全く同じフォームだった。

 

――おりゃぁぁぁぁ!!

 

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次回予告:

エピローグ

説明
この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。
・最終話ですが、エピローグを後日掲載します。
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