星降る夜に願う事 1 |
星降る夜に願う事
『サスケ君・・・お願い。』
あの日、あの晩、別れた記憶が今も鮮やかに蘇ってくる。
『・・・行かないで!?』
風にそよぐ彼の髪。
それが、まるで闇の中に染まっていってしまいそうで・・・。
『貴方が居ないと、駄目なのっ!』
心が、張り裂けそうに痛い。
どうして?
何故、貴方はそちらへと行ってしまおうとするのか!?
『私・・・貴方の為ならば、なんでもするっ!!』
だから、だから、だから。
お願い・・・行かないで!?
それは私の心からの叫び。
自分の胸に秘めていた、彼への想いと不安。
そして・・・どうしようもなく怖い、予感。
・・・お願いだから、こっちへ来て?
あの蛇の化身の如き化け物。
大蛇丸のところになんて、行かないで!
ううん、行かせない!!
そう思うのに・・・。
『やっぱりな・・・。』
『え?』
『俺と、お前達とは住む世界が違う。目指すものが違うんだ。』
暗い声。
とても低くて、重くて、辛くて、悲しくて・・・。
そこに、付け入る隙なんてものは感じられない。
これは、彼の・・・意志なの?
『サスケ、君・・・?』
『お前・・・うざいよ。』
『ッ・・・!』
どう・・・して?
『行かないでっ!もし行くのならば、私大きな声を出してそして・・・!!』
ザワリ。
風が大きくそよいだ。
瞬き程の間に、大好きな彼の姿はそこから消えていた。
気がつけば、背後。
自分の背中に感じた吐息。
『サクラ・・・。』
サスケ・・・君?
お願いだから・・・。
『ありがとう。』
――行かないでっ・・・!
叫びたいのに、引き止めたいのに、聞こえたその言葉がどうしようもなく切なくて。
だって、それは確かに彼の本心からの言葉。
そして私への、メッセージ。
・・・サヨウナラ・・・
直後、鈍い痛みが首筋に走っていた。
それは、サスケ君が私に手刀を振り降ろしたからだと、すぐに理解して。
霞んでいく意識の中、グッと抱きしめられる感触と、大好きな彼の香りを鼻に感じていた。
「さ〜くらちゃんってば!暗い顔してどうしたんだってばよ!」
ハッとして大きく目を見開けば、そこに青くてキラキラとした瞳があった。
思わず何度か瞬きをして、ようやくそれがナルトの目だと気がつく。
「もしかして、どこか身体の調子でも悪いとか?」
「・・・ううん。何でもないの。ごめん、ちょっとボーっとしてただけよ!」
あたしはそう言って、ニッコリと微笑んで見せた。
大丈夫、そう、きっと彼は大丈夫だから・・・と。
自分の胸にそう言い聞かせる。
今、私達は音の郷。
あの大蛇丸の居る場所を目指し、自来也様と共に偵察の任務についているのだ。
そして、願わくば・・・!!
「ふーん。って、あ!もしかして・・・!?」
「え?」
「またどーせサスケの奴の事思い出してたとかっ!?」
グッと大きく顔をしかめてそう言ったナルト。
私はそんな彼に、思わず苦笑する。
本当に、ナルトってばサスケ君の事となると何処か粗野な口調になるのよね。
でも・・・。
「う、ん。・・・ちょっとだけ、ね。」
素直にそう認め、今度は薄く笑い返した。
ナルトに対してサスケ君の話をするのは、今は気が引ける。
だって、私は彼に・・・彼の気持ちを無視して、一方的に強く切実な願いを告げてしまったから。
――ナルト、私の一生のお願い・・・サスケ君を連れ戻して・・・!!
――サクラちゃん・・・。
彼が、どんな風に思ったのか?
私の言葉を、どんな風に聞いたのか?
そんな事、考える余裕すらもなくて・・・!
――本当に・・・サスケの事が大好きなんだな・・・。
呟かれたその一言が、後になってこの胸にじわじわと染みを広げていった。
ごめん、ナルト。
本当に、ごめんね・・・。
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