魔法少女とま☆ラビ(第四話)
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<魔法少女とま☆ラビ>

 

 

第四話

 

 

キャぐるみットの猛威を無事退けることに成功した、とまとラビの二人。

だが、キャぐるみットはあの一匹だけではない。このままでは第二第三のキャぐるみットが

いつ現れるかもしれない。

そう思った二人は、周囲に目を配りながら、なるべく見晴らしの良い平地を探すように、そそくさと移動を開始した。

特にラビは、先ほどの笑いの顔を隠していた時のような、半分ふざけていた時とは比べものにならないほど、真剣な表情で周囲に注意を張っていたのである。

ようやく本腰を入れてくれたラビに、とまはやれやれとした顔つきで、先ほどの戦闘で痛めた背中を押さえながら歩いていた。

 

「そういえば、とまちゃん。」

森の中を歩きながら、ふいに出された声に、えっという顔でラビの方を振り向く、とま。

 

「住人たちのほとんどが感情が無くなっちゃったって言ってたけど、とまちゃんは平気だね?なんで?」

 

とまは、その質問に考え込むように静かに答えた。

「・・・あたしの家系はね、なぜか平気だったの。本当・・・なんでなんだろ・・・。」

「あたしの住んでた近くの住人たちはね、前に見に行ったことがあるんだけど、さっき言ったとおり感情がほとんどなかったのよ。」

「でも、あたしの家だけは・・・ううん、正確には【とまとウサギ族】だけはってことかなぁ。」

「あんまり遠くには行ってないから、他がどうなのか?わからないんだけどね。少なくとも足を運べる範囲ではそうだったの。」

 

異世界は人間界と同じように広い。だからこそ、全住人がすべてそうなのかも見て確認しておく必要性がある。

無事ならば力を合わせるべきだからだ。

それを二人は同時に考えていたのか、ラビが続けて口を開いたことに、とまがすぐに反応した。

 

「だったら、他の住人たちがどうなのかも見ておこうよ! うまくいけば力を貸してくれるかもだし。ね?」

「うん、そうね。不思議ニンジンを探すには、どっちにしても世界のあちこちに行かなくちゃならないんだろうし、そのついでに見ておくことも出来るしね。」

 

「そうと決まれば、どんどん先を急ぎましょ。」

 

話がまとまり、再び周囲に気を張りながらそそくさと森の道を進む、とまとラビの二人。

細い山道をなるべく避けながら、ようやく少し広くなった草原らしき場所を遠くに確認出来た。

油断しないように、さらに注意深く進む。

 

「あっ!」

 

細い道を歩きながら、その途中で足を止め、ラビがいきなり声を出した。

 

「どうしたの?ラビちゃん。」

 

とまが問い返すと、ラビはサッと進行方向を指さしながら言った。

「あれ! あそこ! あそこに何かいる!!」

 

とまが、ギクッとしながら緊張した顔つきでラビの指さす方向をじっと見つめると、確かに遠くに姿が見えた。

遠くだったこともあり、念のため、ラビも今一度確認するように見つめると、やはり間違いなく何かの姿だった。

 

先ほどのキャぐるみットとの問答無用の流れによる戦闘のこともあったため、とまとラビの二人は用心して、先にある存在に見つからないように、もっとよく見える距離まで近づいていった。

 

こっそりと草むらに身を隠しながら近づくと、やがてその後ろ姿がハッキリと見えてきた。

「人だ! 人がいるよ、とまちゃん。それも二人も!」

 

 

 

その言葉に驚くように、とまは返事をしながら確認した。

「人・・・ホントだ。なんでこの世界に人が・・・あれ?でもあれって・・・。」

 

とまが言い終わる前に、ラビは同じ人がいることに気を許したのか、さっさと身を隠していた動作をやめ、草むらから出て堂々と近寄っていこうとした。

 

「あっ!待ってよ、ラビちゃん!」

 

その時、先にいた二人組の一人が、とまとラビの気配に気が付いた。

「誰っ!?」

 

その言葉とほぼ同時に、その者は持っていた武器を鋭く振り切り、そこから空気を切り裂く「かまいたち」のようなものが放たれた。

そしてそれは驚くほど正確に、勢いよくラビの方へ向かって飛んできた。

 

「わっ! なになに!?」

 

よくかわしたと言わざるを得ない、マグレだろうか。それほど偶然性を疑うくらいの動きだったが、とにかく俊敏な反応でラビはとっさに体をひねらせ、風の刃・かまいたちを避けた。

 

その後ろから、とまが声を張り上げるように話しかける。

「待って! あたし達は魔法少女とこの世界の住人よ! あなた達はもしかして、あたし達と同じなんじゃないの!?」

 

とまのその言葉の最中にも、相手は既にかまいたちの第二撃を放とうとしていたが、もう一人の男の声がそれを止めようと手で武器を遮った。

 

「まあ待てよ、夕ぎ・・・夕子。あれは俺たちと同じ一行なんじゃないのか?」

 

「俺も自分達以外のは見たことはないけど、組み合わせを見る限り、たぶんそうだぞ。」

 

その言葉に、にわかには信じられないといった表情で、夕子と呼ばれる少女は言い返した。

 

「なに?同じってどういうことですの? だってあなたはあんな姿じゃなかったですわよ? あんなトマトがムダにくっついた・・・。」

 

とまがムカッとした表情で反応しながら、

「ムダにくっついてて、悪うござんしたね。 あたしは、とまとウサギ族だからコレでいいのよ!」

「それよりも、あなた達ももしかして、不思議ニンジンを探しに来てるの?」

 

とまの問いかけに、ふふんといった顔で二人は答える。

「そうですわ。 世界を救うために、不思議ニンジンを探してますの。」

「そうだぜ。ちなみにもう俺たちは、一本見つけたけどな!」

 

その言葉に、とまとラビはビックリして聞き返した。とまもそうだが、ラビも不思議ニンジンという言葉を聞いてはいても、それがどういうモノなのかは見ていないのでわからないのである。

しかも、ニンジンとはいえ、先ほどのキャぐるみットのこともある。人間界の常識でニンジンを想像してはいけないのかもと、特にラビは気になっていた。

 

「不思議ニンジン!それってどういうモノなの? 見せてよ、ね?」

それを聞いた男は、夕子の腰もとを指さしながら、

 

「もう見てるじゃないか。」

 

頭の周りにクエスチョンマークが飛び交うような訳がわからない顔で、とまとラビは男の言うことをさらに聞き入った。

 

「夕子の持ってる、この剣。 これがそうさ。」

「えっ!不思議ニンジンって、剣のことなの? じゃあ、こういうのがあと六本ってこと?」

 

その問いかけに、否定するそぶりで手を振りながら男は続けて言う。

 

「違う違う。不思議ニンジンは、見た目はただのニンジンだよ。その実に文字が刻まれてはいるけどね。」

 

「俺たちが持ってるのは、七つの不思議ニンジンの一つ、【冷徹の不思議ニンジン】さ。」

「で、この【冷徹】を司る不思議ニンジンを、夕子が持ってる剣に融合させてるんだ。言うなれば【冷徹のニンジンソード】だな!」

 

その説明に、とまは自分の持ってきた杖、ラビに渡したあの杖についても閃き思いついた。

「ラビちゃん、もしかして・・・・。」

「うん、わたしもそう思う。」

 

次に、二人声を合わせたように口を開いた。

「わたし達の杖も、不思議ニンジンを探して融合させれば、何か変わるのかも!」

 

ぱぁっと閃いたその考えに興味津々に喜ぶ二人を見て、男はぼそっとつぶやいた。

 

「お前たち、何も知らないのか・・・?」

 

とまがそれに気が付き聞き返すと、男は陰った表情でこう言った。

 

「・・・俺からは詳しく言わない。お前の持ってるその文献にあるとおりのことだろうしな。ただ・・・・。」

 

「ただ・・・?」

 

「やるからには、それなりの覚悟をもって行動しないとだぞ。」

 

そう言った男の横から、夕子が割り込むように口を出してきた。

「もういいでしょう。さ、行きましょう。 じゃあ、あなた達もせいぜいがんばってね。」

 

そう言って、そそくさと先に行こうとする二人を見て、とまはラビに提案する。

 

「ねえ、ラビちゃん。」

「ん?」

 

「あたし達、何も詳しく知らないみたいじゃない?」

「そうだね〜〜。」

 

「あの人達・・・夕子さんだっけ?そのお供の方も事情を詳しく知ってそうだし・・・。」

「うんうん。」

 

「いっそのこと、一緒に行動しちゃった方が良くないかな?」

「あははは。そりゃそうだよね〜〜。だってわたし達、行き当たりばったりの行動だったし、それに・・・。」

 

「それに?」

「またあのキャぐるみットみたいなのが出てきたら、わたしキツイ〜〜。」

 

二人は、はははと軽く笑いあいながら、

「じゃあ、どうやら意見は一致したってことで。」

「うん、あの二人にご一緒しよっ!」

 

そうと決まったら、善は急げといわんばかりに、とまとラビは大声で

「おーーーーい! わたし達も一緒に行くよーーーーっ!!」

 

少し先を歩いていた夕子達は、慌てて追いかけてくる二人に気が付き、振り返り立ち止まった。

 

「・・・どうする、夕子?」

「ごめんですわ! 面倒だし、馴れ合いなことはキライ!」

 

「でも、意外と役に立つかもだぜ、あの二人。それに、目的を果たすにはどこかで何かの助けが必要になることだって・・・。」

 

その言葉にキッとした顔つきで、夕子は答えた。

「あなた、あたしがなぜ一人で行動しようとしているのか、その訳を知ってるでしょう!?あの子達も同じ運命を辿るつもりなら、それこそ、その前にあたし達がやらないと・・・・。」

 

もちろんという顔で、真剣な顔で男はそれに答える。

 

「当たり前だ。来たるべき時には俺たちがやるんだ。あいつらにやらせてはいけない。」

「俺だって、あいつらにこの役目は任せない方がいいと思う。でも、実際あまりのんびりとは出来ないことも事実だろ? なら、手伝いだけしてもらった方が能率が上がると思わないか?」

 

「あくまでも、サポートだけしてもらうって気持ちで、さ?」

「・・・責任は虎次郎、あなたが持ちなさいよ?」

男の説得に、いやいやながらも、そういうことならと渋々した顔で納得した夕子。

そして、近寄ってくる、とまとラビの二人に確認するように言った。

 

「あなた達・・・どうしてもと言うなら構いませんけど、くれぐれもあたし達のジャマはしないことよ?いい?」

 

「はーーーい。」

 

「・・・良いのは返事だけじゃないことを祈りますわ。」

 

そして、男が先ほどまでとは正反対かのような明るい表情で自己紹介を始めた。

 

「俺は虎次郎。ネコ族の虎次郎だ、よろしくな。」

 

ネコと聞いて、とっさに身構える二人は

「ネ、ネコ!? ネコって、じゃあ、さてはあのキャぐるみットの仲間!?」

 

それを聞いて、虎次郎は顔を真っ赤にして怒りながら答えた。

「ふざけるな! 俺をあんな野蛮な一族と一緒にするなんて!ネコ族にもいろいろあるんだよ!俺は普通の穏健派だ!」

 

「穏健・・・その割には随分ご立腹なようですけど・・・。」

「ちゃかすな、夕子!」

 

そこでラビはふと思い出して、虎次郎に聞いた。

「虎次郎ってさ、人間の姿してるけど、本当の姿って、とまちゃんみたいなの?」

 

すると、思ったとおりというタイミングで、虎次郎はその姿を変えて、小さな姿へと変えていった。

その大きさは、とまとほとんど同じ。そして、小さな体にネコの着ぐるみを着たような姿だった。

 

「そ、コレが俺の普段の姿だ。どうだ、ビックリしたか。」

 

「全然〜〜、とまちゃんで一度見ちゃったから・・・いってみれば、ネタバレ?」

 

がくっとした虎次郎と、そのやりとりを見ていた夕子は、先を急ごうと皆に声をかけた。

 

「くだらないこと言い合ってないで、さっさと行きますわよ。」

その足を早めながら、ついでとばかりに自己紹介に自分を追加する。

 

「・・・もう知ってると思うけど、あたしは夕ぎ・・・いえ、夕子。」

「ま、一応人間ってことで、よろしくね。」

 

『一応』という言葉が入ってたことが一瞬気になったラビだが、夕子のつんとした雰囲気からそこを聞き返すことが出来ず、その場では深々と頭を下げてよろしくという態度をとった。

 

そう言った夕子の肩に乗りながら、小さくなった虎次郎は

「夕子はすごいんだぜ! なんたってな・・・あの・・・。」

「虎次郎!」

 

ハッとなって口を両手で押さえながら、動揺した虎次郎はなんでもないといった顔で、

「な、なんたってな、あの魔法少女なんだぜ!」

 

あからさまに取ってつけたような続きの言葉に、とまとラビは呆れ顔になりながら、自分たちも自己紹介をした。

 

「なにそれ?魔法少女なのはわたしも同じだし〜〜。」

「・・・その格好と武器を見ればわかるけど・・・?」

 

「まあまあ、とまちゃん。それはそうと、こっちの自己紹介がまだだったよね。わたしはラビ、人間のラビよ。」

「あたしは、とまとウサギ族の、とま。・・・よろしくね。」

 

「・・・よろしく。」

そっけない顔で答える夕子に対して、虎次郎は元気よく

「おう!よろしくな! これから一緒にがんばろうぜ!!」

 

こうして、とまとラビ、そして虎次郎に夕子といった、二つの魔法少女たちが合流し、やがて共に行動するようになった。

何も知らない、とまとラビに対して、なにかと詳しく知ってそうな虎次郎と夕子。

 

虎次郎は何かを知ってそうな雰囲気であり、夕子は何も言おうとしない。

だが虎次郎は、とまとラビには「覚悟を持っているのか」と確認をしていたところもあり、夕子はその身の上も言わないでいた。

この二人にはまた、とまとラビとは違った事情を持ち合わせているのだが、二人がそれを知るのは、もっと後のことだった。

 

 

 

説明
オリジナルの魔法少女としてイラストで描いてきたものの文章化・第四話です。
ここでついに二人目の魔法少女・夕子とネコ族の虎次郎が登場します。
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