魔法少女さや☆マギカ2 守られる者(前) |
守られる者(前)
『止めて』
「……え?」
「どうしたんだい、上条沙弥」
「やめなさいっ!!!!!」
天から現れた巴真由はあの夜出会った時と同じ魔法少女の衣装に身を包んでいた。白い獣の首根っこを掴み投げ飛ばす。激しく鉄のフェンスにぶつかったキュゥべえはそれでも表情一つ変えずに静かに言う。
「巴マユ、君はこんな所で油を売っていていいのかい? この町に魔法少女は君だけなのに」
「っ……サヤ、こいつの言う事聞いちゃ駄目。こいつの言う事はとても優しく魅力的に聞こえるかもしれないけど、それはただの幻想なの」
「幻想……?」
「だから、絶対に契約しちゃ駄目……魔女は皆私が倒すから、貴方は普通に生活して普通に大人になりなさい」
そう言って諭そうとする彼女は妙に大人びて見えるとともに、何か突き放されるような物を感じた。彼女はまた青空の中へと消えて行った。
「魔女……?」
「全く……そう言えば、何も説明していなかったね。契約って事が先行してたけど、魔法少女になると上条沙弥、君の願いを何でも一つだけかなえる代わりに、魔女と戦う使命を与えられるんだ」
「それって、何なの? この前夜道で人形に襲われたけど、あれが魔女なの?」
「それは最近巴マユが追ってる魔女、『人形の魔女』リーゼロッテの使い魔だよ。使い魔は魔女を倒さない限り無限にわいてくるんだ」
キュゥべえは淡々と喋りながらも表情を変えない。何を考えているのか分からなかった。確かに動物の表情を読み取るのは人間のそれよりも難しいが、人語を普通に喋っているからこそそれが奇妙に見えるのかもしれない。
「……少し、待ってもらえるかな?」
「……良いよ、契約は君が同意しなければ完遂しない。本当にどんな願いもかなえるから、願いが決まったら意識の中でボクを呼ぶと良い。それから……」
キミガハヤクマホウショウジョニナッテクレレバ、巴マユダッテタスカルンダヨ……それだけ言って、キュゥべえはフェンスを飛び越えどこかへ消えて行った。
「マユちゃん……そうだよね、大変だよね。でも、私の願いって何だろう……」
何でも持っている満たされた自分。沢山の物を奪われてそれでも生きている巴真由とは対極にあった。自分の他にも魔法少女になるべき人間は沢山いるのではないか。
同時に、それは魔女との戦いに対する逃げではないかとも思った。あの日の恐怖をまだ沙弥は覚えている。だが、力があれば怖さも無くなるのだろうか……
「いけない、次の授業はじまっちゃう……」
時計を見てもうあまり時間が無い事に気がつく。結論が出ないもやもやした状況の中、彼女は次の授業へ向かった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「お疲れ様、巴マユ」
「キュゥべえ、また、あんたか……」
「君が大変そうだから、君の親友を魔法少女に誘ったのに。強情だよ、君は」
夕方。廃屋の中、巴マユは息を荒げて立っていた。何百体もの使い魔を虐殺しても、魔女には届かない。
胸に下げた魔法少女の証、ソウルジェムを見つめる。金色に輝いていたはずの宝玉は随分と色あせていた。
「こんな辛い事、背負うのは私だけで良いの……あんたは、大人しくしてて」
「分かったよ……でも、早く魔女を倒さないと」
「黙っててって言ってるでしょ!!!!!! ……消えなさい」
過労とソウルジェムの穢れにより真由の精神は壊れかけていた。キュゥべえはそれを分かっているためか別段声を荒げるでもなく言葉を紡ぎ続ける。
「仕事が上手く進まないのは君の過失だよ。全く、ボクに八つ当たりしないでほしいな。やっぱり、上条沙弥の力を借りるしか……」
「ふざけるなぁあああああっ!!!!!!」
真由の周囲に8本の杖が出現し、キュゥべえの周囲を取り囲んだ。先端からは光の矢が突き抜け、キュゥべえは回避しようとした物のいくつか掠ってしまう。
「痛いなぁ、巴マユ。君の相手はボクじゃない……っ?」
「この気配……今までの比じゃない、これだっ!!!!!」
真由は誰に言うでもなく自分に言い聞かせて、廃屋を出て空へ消える。キュゥべえは焼けて焦げた表皮を見つめて静かにため息をつく。
「さて、上条沙弥の所へ……」
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彼女達のCVは多分元ネタになった女の子達の声で良いような気がします。 | ||
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