君の為の魔法
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実際アーサーは友達を作るのくらい簡単だと思っていたのだ。あの変態気質で女ったらしのフランシスでさえ汽車の中で何人か手に入れていたのだから、自分は出来過ぎて大変だろうと思っていた。人気者過ぎて身動きが取れなくなったらどうしよう、そうだやっぱり家柄順で優劣を決めて、自分に相応しい人間を近くにおこうと、そこまで考えていて、気がつけばひと月が経っていた。

 

 

***

 

 

「畜生、カリエドの野郎……、マグル出身の癖にッ」

口先でそう呟きながら、誰も整備しなくなって生え放題になっている花壇の中を手で探る。気味の悪い虫が掌の上を何度も這うのを、払いのけながら、探る。見つからないだろうということも分かっていた。物探しの呪文を自分は知らないし、使いこなせる自信もない。見つからないと頭の端では分かっているくせにそれを認めることが出来ないのは、プライドのせいか、あれが大事で仕方がないからなのかアーサーは自分自身で分かっていなかった。

「畜生、畜生、畜生」

呟きながら、必死で探す。

もしかしたら力の弱いピクシーが持って消えてしまったかもしれない。汚れない様にと魔法をかけていたから、きっとアイツらのいい栄養になるだろう。もしそうだったらどうしよう。どうしよう、どうしよう。

一瞬、涙腺が緩んで、アーサーは乱暴にローブで目を擦る。泥の付いたそれで、きつく何度も擦ったせいで頬は茶色く汚れ、目に入って少し痛かった。それでも諦められない。今から、図書館に行って物探しの呪文を調べてこようか――?いや、駄目だ。もし他の人が見つけたら?その人は自分に返してくれるだろうか?嫌われている、自分に――…?

 

 

 

 

(カークランドって、スリザリンの?)(あー、純血主義の嫌なやつね)(緑の目だから直ぐに分かるぜ)(瞳の色もネクタイの色もご丁寧に緑色だ、さすが根っからのスリザリン)(箒も乗れないくせにな)(友達もいない)(食堂で一人でご飯食べて可哀想)(自業自得だろ、あんなヤツ)

 

 

誰がお前らみたいな低能と一緒に飯なんか食うか。心の中で何度もそう呟いてこのひと月暮らしてきた。血統主義の何が悪い。血を守ろうとして、何が悪い。魔法使いが血統にこだわるのは当然だ。そう教えられて来ただろう。だれだってそうだ。フランシスだってその筈だ。俺だけじゃない。秩序を乱す、下賤なマグル出身者に、純血の尊さがわかってたまるか――ッ。

わかるはずがない。だから誰ともつるまない。自分がそう決めただけだ。自分がそれを選んだだけだ。一人でいる方がよっぽど有意義だと、そう考えただけだ。選ばれなかったわけじゃない。俺は、一人でいることが、本望なんだ。

 

 

 

 

 

アーサーの小さな掌が、くしゃりと土を握った。手の甲に、大粒の涙が落ちる。一人でいるのなんて怖くない。嫌じゃない。可哀そうじゃない。辛くない。平気だ。平気だ。平気なんだ。だって俺は間違ってない。間違っていない。でも――。

(もし今、友達が居たら?)

たった一人でも、信じられる人間が居たら、俺は図書館に行けたし、物探しの呪文を調べることだって出来た。一人じゃなければ、こんなところで泥まみれになることもなかった。一人じゃなければ、カリエドに絡みに行くこともなかったかもしれない。あいつがフランシスと一緒に居る所さえみなければ、不要な嫌味を言うこともなかった。殴られもしなかった。探し物が――ロケットが、飛んでいくことも、きっとなかった。こんな場所に落ちることもなかった。失くすこともなかった。

(弟の写真が、入っているのに……)

一人じゃなければ、寂しくなかった。

沢山じゃなくても良かった。たった一人でよかった。

俺を信頼して、俺も信頼できる友達が、本当は、きっと欲しかったんだ。

 

アーサーは、膝を抱えて、小さく蹲った。心が痛くて苦しくて、何もかもが限界のように感じた。

もうだめだ。太陽も落ちる。この花壇は広すぎる。杖で明かりを灯しても、まったく足りないほど広いじゃないか。

諦めよう。大丈夫。そう肩を震わせながらアーサーは自分自身に言い聞かせた。大丈夫。平気だ。ロケットくらい大丈夫。弟の写真何て要らないだろう。アイツはもう家族じゃないんだから。だから要らない。要らないものだったんだ、最初から、あれは。

だから――大丈夫。

 

「どうか、しましたか?」

 

アーサーはびくりと肩を揺らす。顔を上げて、泥だらけのローブでまた目を擦った。まずい。こんな姿誰にも見せられない。そう思った。カークランド家の嫡男が、泣いているところなど――。そこまで考えて、アーサーは動くのを止めた。

フランシス以外に声をかけられるのが、初めてだとその瞬間に気が付いたからだ。

自分に声をかけたんだろうか。急に不安になる。いやでも、この辺りには自分しかいないはずだ。幻聴じゃないか。ピクシーの悪戯かもしれない。期待するな、期待するな、期待しちゃ駄目だ。でも――。

 

「カークランドさん、ですよね?」

アーサーは振り返った。

振り返って、彼を見上げる。すると、体の細い貧相な東洋人の少年が、心配そうな顔をして自分を見下ろしているのと目があった。

「――中国人か?」

「いえ、日本人です」

ぐすりと鼻を啜って尋ねると、何が可笑しいのか東洋人の少年はにこりと笑って訂正する。アーサーはその姿を瞬きすら忘れてジッと見つめた。東洋人が自分のしているものと同じ、緑のネクタイに裏地が緑のローブを身にまとっている姿が珍しかったからじゃ決してない。そんなヤツ、3年生に一人いるから見慣れているし、どうでもよかった。

アーサーはただ、自分に笑いかけている人間の存在が珍しくて、驚いていただけだ。

「泣いていたのですか?」

頬が汚れていますよ。

少年がまたくすりと笑う。嘲笑でも失笑でもない。暖かい笑い声だった。

「泣いてなんか、ねぇよ」

「目が真っ赤ですよ」

そう言って少年は真っ白いハンカチをアーサーに手渡した。咄嗟に手を伸ばして受け取ってしまい、アーサーはハッと我に返り、心中で言い訳を繰り返す。

違う、これは違うんだ。そうじゃなくて、使ってやらないと、この東洋人のメンツが潰れると気を使っただけだ。紳士の当然の嗜みだ。それ以上の意味なんてない。

「探し物ですか?」

さっきから、ずっと下を向いていらっしゃいましたけど。

「違う」

咄嗟に、アーサーは嘘を吐いた。誤解は自滅を招くと、知っていたからだ。高揚した頬と、動機を抑えながら、騙されるな、絆されるなと戒めるように何度も口の中で呟いた。

弱みを握られるのも恩を売られるのもごめんだった。見た目こいつはスリザリンだけれど、自分を疎んでいる連中と同じに違いない。ハンカチを受け取ってしまったのは誤算だったけれど、それだけだ。

俺なんかに誰も優しくなんてしない。

そんなことこのひと月でアーサーは十分すぎるほど学んでいた。

「見つからないんでしょう?」

「違う、探してなんかいない」

「手が泥だらけですが?」

「フクロウの餌のミミズを探していただけだ。お前には関係ない」

「泣いていらっしゃいました」

「目に泥が入っただけだ」

(関係ない。どっかへ行け。俺に関わるな)

アーサーは珍しく、視線を泳がせて下を向いた。平素自信にあふれ、陰口をたたかれようと真っ直ぐ前を向いている彼からは、考えられない仕草だった。

東洋人の少年は、アーサーを射る様に見つめる。

それが、彼には痛くて仕方なかったのだ。

 

「仕方ありませんね、私が見つけて差し上げます」

 

呆れたようなため息を、少年が吐いた。そのまま言葉を続け、同時にローブの袖から薄い紙を一枚取り出す。薄く、よく見ると人型に切ってある紙を彼は、右手人差し指と中指に挟み、ぴんと指を立てた。

何をしているかアーサーは分からず、ただただ彼の動作を見守るだけだった。お得意の皮肉すら出てこない。何故だか、声を出してはいけない様に、アーサーは感じていたのだ。

 

「『命じる――失せ物を探し給え』」

 

母国語なのだろうか、理解できない言葉の羅列にそう思った瞬間、アーサーは生まれてこの方聞いたことのない音が耳の中で折り重なるように響きはじめるのを感じた。少年の声であることは確かなのに、言葉を成していない様に響く。まるで耳に蓋でもされたような気分だった。その感覚が一〇秒ほど続いた後に、まるで当たり前のように少年が自分の左手の人差し指の皮を噛みちぎった。

その迷いもしない動作に、アーサーは、口の中で小さく悲鳴を上げる。初めて、自傷行為を目の当たりにした気分だったのだ。

(怖い。恐ろしい。一体、何が起きているんだ)

わずかに流血したその指で、少年は、右手に挟んだ紙に触れた。掠めるような触り方だった。そのはずなのに、紙はまるで意思を持ったように血を吸い――一瞬でその紙は薄桃色に染まり上がる。

 

(なんだ、これ――?)

アーサーは目を見開いた。見間違いならそれでもいい。でもそうじゃない。事実、目の前の紙は、白から薄桃色に変化している。今現在も。

血を吸った――?ただの紙が――?そんな魔法、ホグワーツの教科書に載っていたか?魔法史の授業は得意分野のはずだ。どんな魔法が、このイギリスで繁栄し消えて行ったかを自分はよく理解している。理解しているはずなのに――ッ。

(人間の血を吸う、紙の話なんて)

聞いたこともない。

 

紙が、少年の指から、離れた。逃げた。放たれた。アーサーにはそのどれが正解なのかまったくわからなかった。そのどれでもあるように見えたからだ。

すごい速さの向かい風が吹いた。

その瞬間、紙は勢いよくアーサーの額に張り付き、そして、刹那離れ、空中の中でまるで思案でもするかのように制止すると、闇の中に消えた。

――意思を持っているかのように。

 

「――……なんだ、これ?」

額に恐る恐る触れながら、アーサーは震える声でそう言った。皮肉も、悪態も、罵声も、何もかもが出てこなかった。それらすべての存在を忘れてしまったかのようだった。

アーサーの問いかけに、少年は困ったように微笑みを返すと何も言わずに、アーサーの背後を指さした。

「後ろ、見てください」

アーサーは言われた通り振り返る。

体が震えているのを感じた。情けない。でも怖い。だって、目の前の少年の得体が知れない。

 

視線の先には、あの薄桃色の紙が居た。

風が吹いているはずなのに、制止し、空中に浮き、まるでこちらを観察するかのように、そこに。

アーサーは息を呑んだ。

鳥肌が立ち、産毛が総立ちになる感覚を初めて覚えた。背中から汗が溢れ、奥歯ががちがちと震える。

「――なんなんだよ、あの、紙ッ」

「式神ですよ――あ、ありました」

気付けば、自分を追い越して、少年は紙が浮いている場所の下をがさがさと探り、嬉しそうに声を上げた。よくもあんな奇妙な代物に近寄れるものだ。どんな悪魔か、呪いかも分からないのに。

「ペンダント――?ああ、ロケットですね、はい、これでしょう?」

 

少年から手を差し伸べられる。

アーサーはびくりと体を揺らし、逃げるように後ずさった。駄目だ。こいつは駄目だ。俺じゃ駄目だ。勝ち目がない。怖い。どうしよう、どうしよう。そう思って、目を閉じようとした――瞬間、漸く気付く。

少年の掌に乗っている――ものに。

 

「はい、どうぞ」

呆けているアーサーの手をとり、少年が、ロケットをその上に乗せた。探し求めていた重さにホッとして、無意識にぎゅっと握った。良かった、と思った。見つかった。失くさなかった。平気だった。

慌ててロケットの中の写真を確認する。

二人の弟の写真が、綺麗にその中に納まっていた。

もう家族じゃないけれど――大事で仕方がない弟の写真が。

「――よかったぁ」

呟いて、アーサーはそれをぎゅっと握りしめる。手の平を額に押し付けて、目を閉じた。

よかった。よかった。本当によかった。

これだけが心の拠り所だった。この二人だけが、ここでの自分の居場所だったのだ。

 

「よかったですね」

見つかって。そう言って、少年がまた笑う。少年の存在を意識の外に忘れかけていたアーサーは驚いたように目を開け、それから、少年を凝視すると、小さな声でありがとうと言った。

それはアーサーがこの学校に来てから初めて使った言葉であり、心の底から思った言葉でもあった。

「いいえ、礼には及びません――代わりに、と言ったらなんですが、ここで私がしたことはご内密に」

もうバレている人にはバレていると思いますけど。

そう言って少年が肩を竦める。

初めてみた年相応の動作だとアーサーは思った。

 

 

体に合っていないのか緑色の裏地のローブは大部肩が余っていて不格好だった。髪は真っ黒で、目だって真っ黒だ。何を考えているのか分からないし、正直見た目じゃ、年齢も分からない。自分より随分年下に感じるけれど、アーサーがこの学校で最低学年だということを考えると――上級生なのだろう。

 

 

改めて、まじまじと見つめると、少年は恥ずかしそうに下を向いた。さっきとはあまりにも違うその動作に、アーサーは戸惑うどころか、酷くホッとするのを感じた。

(こいつは怖くない。大丈夫だ)

アーサーは手を伸ばして、彼の手首をぎゅっと握りしめた。そうしていないと、少年が逃げてしまうような気がしたからだ。

「名前、聞いてない」

「――……ホンダ、です」

「ホンダ?ファミリーネームは?」

「いえ、あの、ホンダがファミリーネームで、キクがファーストネームです」

すいません。分かりにくかったですね。

そう謝りながら、菊が頭を下げる。

頭を下げる必要なんてないのに、とアーサーは寂しく感じた。早くここから居なくなりたいという彼の気持ちが、伝わってきて、辛い。なんで逃げていこうとするんだろうか。自分が失礼な態度をとったからか――?

逃げようとして、怯えて、得体のしれないものだと勝手に決めつけた。

(見つけてくれたのに――最低だ)

 

「見つけてくれて、ありがとう。助かった」

「いえ。ずっとああしていらっしゃったので、心配で――こちらこそいきなりお声をかけてしまってすみません」

「それは良いんだ。本当に助かったらッ……、怯えてしまって悪かった。初めて見た魔法だったから……その、少し驚いて。あれすごいな。紙に血を吸わせてた。あの術は――」

上級生になったら習うものなんだろうか?本田は何年生なんだ?そう続けようとした言葉を、本田自身が遮った。少し困ったような声だった。

「あれは、陰陽術です」

魔法ではありません。

すいません、またそう続けて、本田が頭を下げる。

もしかしたら謝るのが癖なのかもしれない。本田のつむじを見ながら、アーサーはそう思った。

「オンミョウ、ジュツ?」

「そうです。日本の魔法使いのようなものです」

「日本の、魔法使い?」

「そうです、でも、学内ではあまり使ってはいけないと言われていたので、どうぞご内密に」

「それは――いいんだ、分かった。でも」

アーサーは、ぎゅっと本田の腕を掴む。

オンミョウジュツは日本の魔法だと彼は言った。杖も使わずに、魔法を使う人間が、いるだなんて。

(自分は、知らなかった)

あんなに魔術史を勉強したのに――ッ。

「すごいな、さっきの魔法」

呟くよりもずっと小さな声でアーサーは言った。

すごいな。と口の中で繰り返す。その様子を、本田は少し不思議そうな表情で見つめ、小さな声で、ありがとうございます、と言った。

「褒められたのは、初めてです。気味悪がられて嫌われてしまうばかりだったので、そのせいで友達も出来なくて――」

そう言いながら、本田がまた笑う。

嫌われる――?それは本田が、だろうか。

こんなに良い奴なのに、なんでだろう。魔法だって、そりゃ最初は驚いたけれど、よく見るとすごい魔法だ。自らの血液――つまり生贄を捧げて、無機物を使役する魔法――少し黒魔術に少し近いものがあるのかもしれない。今度図書館で調べてみよう。確か、オンミョウジュツだとホンダは――。

そこまで考えて、アーサーは、思い出す。

本田が、指先を噛みちぎっていたことを。

「そうだッ、お前、指大丈夫か?」

「あー、いえ、大丈夫です。ちょっとだけしか血が出てないので」

「血が出てるんだろッ?痛くないのか?」

「大丈夫ですよ、カークランドさん、手を離して――」

「よし、待ってろ、今治してやるから指出せ」

「ええ?ちょっと――ッ」

アーサーは、本田が逃げない様に再度強く腕を握ると、ローブのポケットから杖を取り出した。まだ真新しい、その杖は、数えるほどしか魔法を繰り出したことがない。本田もそれに怯えているのか、大丈夫です、と何度も同じ言葉を繰り返す。

呪文を失敗すると、大変な目に合うからだ。

でも、アーサーはこの呪文だけには自信があった。

何故なら、何度も使っているから。

自分自身に――対して。

 

 

「『エピスキー、癒えよ』」

 

 

歯で乱暴に噛み千切ったせいで、血がにじみ出ている患部に杖を向けてそう唱える。大きな傷を完璧に治すことは出来ないけれど血を止めたり、擦り傷程度なら治すこともできる。

――嫌われるのだって簡単じゃないのだ。

フランシスやカリエドは暴力に訴えかけてこない分まだ良い。いくら喧嘩したって、呪いをかけてやろうと思わないのはそのせいだ。でも上級生は違う。絶対にいつかとけない呪いをかけてやる、とアーサーは心に誓っている。アイツ等はアーサーを見ると、理由なく攻撃してきたりするからだ。

 

(緑の目だから直ぐに分かるぜ)

(瞳の色もネクタイの色もご丁寧に緑色だ、さすが根っからのスリザリン)

 

医務室に何度も何度も行くの何て絶対に嫌だった。苛められっこのレッテルを張られるのだって嫌だった。だったら自分で治すしかない。だから一番最初に、この魔法を覚えた。どんな呪文よりも先に、絶対に間違えない様に。

 

 

本田の傷は、ゆっくりと時間をかけて治っていった。杖の先から出る、淡い光の粒子のようなものが傷を修復する様を本田はジッと見つめて、そのままゆっくり目を閉じた。

「この魔法は、自信ある」

まあ、他も、俺はすごいけどな。

そう言いながら照れ隠しのようにアーサーが笑う。それを見て、本田もくすくすと笑った。

わあ、笑った、とアーサーは思った。

笑った。笑ったぞ。俺の話を聞いて、笑った。馬鹿にするわけでも、呆れるわけでもなく、ちゃんと、俺の話を聞いて、笑ったぞ。

 

嬉しくて、アーサーは胸の奥がむずむずするような感覚に襲われた。頬が熱くて堪らない。泣きそうなようなそうでないような感覚を一生懸命に抑え込みながら、アーサーは、まだ掴んだままだった本田の腕をぎゅっと掴んで言った。

 

「お、俺が、友達に、なってやるッ」

 

お前が怪我したら、治してやるし。食堂でご飯だって一緒に食ってやるし、それに、お前が物失くしたら今度は俺が一緒に探してやるからッ。

「だから、うんって言え、馬鹿ッ」

ガタガタと本田の手が震えているような気がして、アーサーは少し驚いた。でも、それは間違いでアーサーは、自分の手が震えているんだと遅れて気が付いた。本田はそれを見ながら、真っ黒い瞳を細めて、声をあげて笑うと、目を瞑って下を向きながら、うんと小さな声で応えた。

 

 

 

 

 

END

説明
APHで魔法学校パロです。友達と考えて盛り上がって書いちゃった感じなのでいつまで続くかはわかりません。本編はアーサーくん11歳と菊さん12歳が友達になっちゃう系のお話です。一応シリーズ化してますが、時系列バラバラで、登場人物も往々にして違います。もし長くなるようなら、もしかしたら時系列順に並べるかもしれません。そんな感じ。登場人物設定などは書きはじめると満足しちゃいそうなので書かないです。分かりにくくてもフィーリングで。 ※ 人名表記     
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魔法学園ヘタリア 朝菊 アーサー・カークランド 本田菊 

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