霖之助の節分・魔理沙の節分
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香霖堂

「お邪魔するぜ霖之助ー!!」

いきなり豪快に扉を開けて入ってくる少女がいる。

彼女の名前は霧雨魔理沙。本業は泥棒で副業は魔法使いの僕の親友だ。

「おい、今失礼な事考えてなかったか?」

「そんなことはないさ。」

ズイ、と顔を寄せて問いただしてくる魔理沙を適当に躱して新たな会話でもしてやることにしよう。

「今日は何を盗っていくつもりだい?」

「そんな言い方だと私が泥棒扱いされているみたいだぜ。」

魔理沙は僕の店を自分の物置か何かと勘違いしているのか?

「魔理沙が盗っていた商品はいつになったら返してくれるんだい?」

「死ぬときに返してやるよ。」

お決まりの台詞が炸裂する。これはもう何を言っても無駄だな。

「それに私はそこまで盗んだ記憶はないぜ?」

なんてことだ、どうやら魔理沙には自分にとって都合の悪い過去は自動的に忘れていくシステムが備わっているらしい。

これからは魔理沙が盗んで行ったものをメモしていくか。

「それじゃあ今日は何をしにきたんだい?」

僕はお茶を魔理沙に出してやった。

「よく聞いてくれたぜ霖之助。」

そう言って魔理沙は肩掛けカバンから何かが入った袋を取り出した。

「豆まきしようぜ!!」

「豆まき?」

なるほど、カレンダーを見てみたら今日は2月3日。節分か。

「それなら太巻きも用意しないとね。」

確かまだ一本残っていたかな、それを魔理沙にあげよう。三年前のやつだけど。

「そんなものはいらないぜ。今日は豆まきさえできればいいからな。」

僕の服の背の部分を握りながら外に出ようと扉の方へ歩いていく魔理沙。少しは後ろ早歩きでいる僕の身にもなって欲しいものだ。

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「さぁて、それじゃあ始めるか。」

「始めるのはいいけどやっぱり鬼は僕かい?」

楽しそうに準備している魔理沙に声をかけてみる。

「いや、鬼はいらないんだ。豆さえ撒いてくれりゃあそれでいい。」

そう言って魔理沙は豆の入った袋を取り出して中に手をつっこんでいた。

「それじゃあ別にここでやらなくても博麗神社でやればよかったんじゃないかい?」

「やれやれ分かってないな霖之助は。」

「?」

「あの霊夢の事だ。『食べ物を無駄にしてんじゃないわよ!!』ってな感じで襲いかかって来るだろ?」

「一理ある」

成程。妙にリアル感漂う説得だったな。

「それにまいた豆を拾って食べちまいそうだしな。」

簡単にイメージできてしまう。

「第一この豆は食用じゃなく実験用なんだし食われるとこっちも困る。」

聞捨てならない言葉が出てきたぞ。

「魔理沙、その豆を一体何処に向かってなげつけるきだい?」

「人には投げないから安心していいぜ!!」

そう言った瞬間僕の背筋が凍った。僕は魔理沙が何を使用としているのか理解したくはなかったが、分かってしまう。

「馬鹿ッ!!魔理沙止めろ!!」

そう言って駆け出した僕だが魔理沙は僕の制止を軽く無視し、手に握っていた豆を僕の店の方向へ撒き始めた。

その豆は何処か紫や緑の混じった色をしていて、とても禍々しいものだった。

そしてその豆が地面にポトリと地面に落ちた瞬間。その豆が爆発しそこから星形の弾幕が爆風と共にあちこちに散らばって行った。

「うわあぁぁぁあああ!!僕の店がぁあ!!」

撒かれた豆は僕の店に直撃するとそこで爆発し、店の壁などをお構い無しに破壊していく。

「おぉこんなにも威力が上がっていたのか。これは実践でも使えそうだぜ。」

喜んでいる魔理沙を見ているととても悔しくなる。

僕も男だ、ここは一発殴らないと気が済まない。

「魔理沙ぁ!!くらえぇええ!!」

地面を蹴り、拳を固め振り上げ、力を込める。

「お!珍しいな。霖之助が私に挑んでくるなんて。それじゃあ私も相手をしてやるぜ。」

そう言って魔理沙は八卦炉をポケットから取り出し僕の方へ構える。

「・・・。もうダメかもしれないな、僕。」

そう呟いた後の記憶はなかった。

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「う・・・ん。」

気がついたとき空は夕日に染まっていた。

起き上がろうとすると体全体が痛む。どうやら手加減はしてくれていたらしい。

「ん?」

足元に何かが置いてあることに気づく。そこに置いてあったのは竹皮に包まれたおにぎり一つ。そして

「手紙かな?」

それを広げて読んでみる。

『霖之助へ。

 今日はお疲れさん!!

 私の実験に付き合ってくれてありがとな。

 今日の実験で完成した豆の名前は「マジックスタービーンズ」にすることにしたぜ。

 これから私の新たなスペルとして活用していくことにするぜ。

 お礼といってはなんだがそこにおにぎりを用意した。

 今日は節分だから本来は太巻きを作るべきだったんだろうが私は料理が苦手だ。

 だからおにぎりにした。 有難く食べるんだな。

 ちなみに今年の方角は北北西だそうだ。 その方角に目印を付けておいた。

 それじゃまた遊びにくるぜ。

                         marisa                      』

 

周りを見渡してみると木に星マークが書かれた紙が貼られていた。

「成程ね。魔理沙らしいな。」

僕はその木の真正面に向くように体を動かす。正直体はまだ痛い。

「なんだこれ?」

竹皮を開いてなかにあるおにぎりを取ろうとしたのだが。そこにあったのは真っ黒の球体。

「・・・。海苔・・・なのかな?」

試しにつついてみる。米の感触がしたからこれは海苔で間違いなさそうだ。

あらかじめ説明を受けていないとただの古い爆弾にしか見えないが。 それが魔理沙だ。一生懸命工夫した結果がこれだったのだろう。

「いただきます。」

爆弾おにぎりにかぶりつく。

「これは・・・。」

中身は何も入っていない。でもどこか懐かしい味がした。

しかし一瞬で米の味に戻ってしまう。 僕はその味を忘れたくはなかったのだがどうやら海苔は味付け海苔を使用してるらしく、その味が口に広がっていった。

「たまには僕の方から会いに行ってやるかな。」

気に入りそうな本でも買って。家に居るかわからないけど。

そしてもう一度あのおにぎりを作ってもらおう。あれは僕の大好物になるな。

心で独り言を言いながら空を見上げる。

「今日も星が綺麗だな。」

ふと気が付いた。体の痛みが完全に無くなっていたのだ。

「これもあのおにぎりのおかげかっと。」

立ち上がりながらまた独り言。店は穴だらけで実に風通しがよさそうだ。

「今からでも魔理沙の家にでも泊めてもらおうかな?」

でもそんな考えは一瞬で頭から消した。自室は無傷だから問題ない。

明日に修理すれば元通りになる。

自室に戻りベットに寝転ぶ。入口からの風が気になるけど寝てしまえば気にならないか。

明日になればまたあのおにぎりを食べれると思うとなんだかワクワクしてくるな。こんな気持ちは久しぶりだ。

「さて、もう寝よう。」

僕は眼鏡を近くのテーブルに置いて布団をかぶる。

「なかなか寝付けないのは子供みたいだな。」

でもそれでもいい。

明日魔理沙と会えるならなんでも。

「おやすみなさい。」

僕は早く明日になれと思いながら、一人暗い部屋に就寝の挨拶を済ませた。

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霧雨魔法店・魔理沙自室

「さて明日は霊夢のとことパチュリーんとこに行くか。」

説明
魔理沙は「霖之助」ではなく「香霖」と呼ぶらしいです。
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霧雨魔理沙 東方節分の日 東方 森近霖之助 

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