真・恋姫無双 〜新外史伝第50話〜
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雛里が愛香を拘束し調査した結果、愛香が曹操軍に内応する事実が無かったので、そちらでの処分は無かったものの、しかし風を拘束しなかった罰として愛紗と同様に自宅謹慎処分が命じられたのであった。

 

その処分に対し、愛香は

 

「申し訳ありません。謹んで処分をお受けします」

 

桃香や雛里に申し訳なさそうな顔をして、粛々と処分を受け入れた。

 

ところが、愛紗や愛香の一連の処分に対し、一部の文官や武官からの愛紗たちへの処分が甘すぎるので、更に厳重な処分又は死罪や追放と過激な声が出始めていた。

 

これは風や以前から劉備軍に入り込んでいる風の手の者が、既に劉備軍の数名の文官や武官を既に金等で籠絡させており、風の指示でその文武官たちに愛紗たちを処分するように申し向けさせたのであった。これには文武官たちも表だって寝返る訳でも無く、あくまで愛紗への処分の要求であったため、すんなり指示を受け入れ、そして指示通り雛里や凪たちにそれぞれ愛紗への処分を要求していたのであった。

 

因みに雛里に愛香と風が会談した密告の手紙を送ったのは、このグループの手の者である。

 

勿論、雛里たちはこの要求を却下したが、文武官たちも建前上

 

「勿論、私たちは関羽様と同じように劉備様にお仕えしている身で、劉備様や?統様を信じております。しかし関羽様たちを余りこのように贔屓し過ぎますと、示しがつきません。今回は我々もこれ以上のことは言いませんが、今後同じようなことがあれば、我々も黙ってはおりませんぞ。これで失礼します。」

 

文官の1人が最後に脅しとも言える捨て台詞を言いながら、文官たちは雛里の執務室から出て行った。雛里は今回の文武官のこのような行為も曹操軍の仕業と薄々と感じてはいるが、現在のところ、内通等の証拠がまったく掴めていないため、どうすることもできなかった。

 

そしてそんな中、愛紗の屋敷に近付く不審者がいたので、付近を警戒していた兵士は不審者を捕えようとしたが、残念ながらその者を取り逃がしてしまった。

 

しかし不審者は逃走する前に手紙を落としていったので、兵士は手紙を上官に差し出したが、上官はその手紙を見て驚いた。

 

手紙の中身は、華琳から愛紗宛への条件を記載した上での勧誘の手紙であった。

 

それを見た上官は、驚いてその手紙を桃香に差し出した。

 

桃香はそれを見て、話が具体すぎて信じられないとショックを受けていたが、この騒ぎを聞き付けて雛里がやって来たので、この手紙の真意について、雛里に聞くと、

 

「気にする必要はありません。曹操さんの罠で、私達が踊らされる必要はありません」

 

「密書を届ける人が、そのような失敗をするとは考えられにくいです」

 

雛里は華琳の罠と言い切り、桃香は安心したが、だがこれには他の文官が

 

「何を言っているのですか??統様、もしこの手紙のことが事実であればどうするのですか?」

 

「貴方の目は節穴ですか?今までの関羽さんの働きを見て信じられませんか」

 

雛里に言われ、文官も黙ったが、しかし別の文官が

 

「以前の関羽様であれば、信頼は出来ましたが、今の関羽様は劉備様や?統様に反抗し、そして町では謀反の噂もありますので、今の関羽様を信頼することは出来ません」

 

「それより当人を呼び出し尋問すればいい」

 

「簡単に言うが、これが事実でない場合、この償いをどう付けるつもりだ」

 

喧々諤々と会議は紛糾すると思われたが、

 

「何言ってるの皆!今まで愛紗ちゃんがやって来てくれたことが信じられないの!愛紗ちゃんがそんなことするはずないよ!」

 

桃香がこの言い争いを見て怒り心頭となり、そして感情が高ぶって、最後には泣きながら大声を出したため、これには皆が驚き、文官たちも流石に桃香のこの姿を見て、愛紗をこれ以上の追及が出来ず、この集まり自体が自然と流れ解散の形になってしまった。

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〜陳留〜

 

「見事に劉備のところ、踊り狂っているわね、風?」

 

徐州の調略から帰ってきた風の報告を受けて、開口一番華琳がそう呟いた。

 

「それで風、私達はまだもう少し、劉備たちの踊りを見ているのかしら?」

 

「はい〜、次に仕掛けが終われば、そろそろ徐州攻略の準備をお願いしたいのですが、恐らく戦いは短期間で終わりますので、春蘭ちゃんたちは楽しめないでしょうけど〜」

 

「まだまだ戦いが続くから、たまにはこんな戦いはあってもいいわよ。

それで風、一つ聞かせて欲しいのだけど、貴女、劉備のところを諜略する時、死刑囚一名を貸して欲しいと言っていたけど、この者をどうするの?」

 

「はい〜。実は……」

 

華琳から風が先の会議で願い出ていた死刑囚の扱いに説明を求められ、その説明が終わると、華琳は今一つ冴えない表情を見せた。

 

それを見た風が華琳に

 

「何かこの策で、気に入らない点でもありますか〜」

 

「いいえ、貴女のやり方が間違っていないわ」

 

「でも華琳様の顔を見れば、そうは見えないのですが?」

 

「華琳様、お耳汚しながら一つ申し上げますが、一本の木も引き抜かず、一つの石も避けずに覇業は成し遂げられませんよ〜」

 

「剣を振うだけが戦場ではありません。こういう裏側の戦いも立派な戦いですので〜」

 

口調はのんびりしているが、風の確りとした発言に華琳も苦笑いを見せ

 

「言いたいことを言うわね、貴女」

 

そして華琳は、先程と打って変わり、表情に変化があり覇気のある声で

 

「では早急に貴女の策を実行しなさい」

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〜漢中〜

 

以前治めていた劉璋が悪政を引いていたため、治安回復を重視と考えた璃々たちは、まずは税の適正に戻して民の慰撫に努め、そして悪徳役人の追放や財産没収して綱紀粛正を図った。

 

そして内政が得意の朱里が長安から応援に来て、璃々を中心とした漢中残留組も漸く一息入れることが出来た。

 

そして執務中の璃々と朱里の元に菫が入って来た。

 

「朱里様、今、益州から偵察が帰って来て、取り敢えずの情報を持って来ましたっす」

 

2人は菫の報告を聞くため筆を置いたが、現在菫は朱里の元において修行中の身である。

 

朱里は今後の勉強のため、今回は益州の情報を集めるのに菫を担当として扱っていたのである。

 

「今のところ葭萌関は現在も張任、厳顔、魏延、法正が未だに陣を構え、我々の襲来を待ち構えているっす」

 

「それで本来巴郡の太守で厳顔が葭萌関にいるため、代わりに現在、守っているのが、黄忠という武将ですが、領民からは厳顔と同様に尊敬を集めておりまして、武芸の方も弓の名手と呼ばれております」

 

それを聞いた璃々は、大声こそ上げなかったものの流石に驚きを隠せず、

 

「…菫、その黄忠さん、女性の武将かな?」

 

「はい、そうですよ。あ、そうそうあまり関係ないですけど、この黄忠という武将、未亡人で幼い子供もいるそうですよ〜」

 

璃々はこれを聞いた瞬間、腕組みをして考え込んでしまった。

 

朱里は璃々の様子が少しおかしいと思い、心配になり

 

「璃々さん、どうかされましたか?」

 

「いや、何でもない。それで申し訳ないけど、菫、練兵場に行って星お姉ちゃん呼んできてくれる」

 

そしてしばらくすると星が執務室に現れ、

 

「どうした璃々、私に用とは大事な話か?」

 

「ええ、そうですね…。特にこの話はご主人様や私たち家族にとって重要な話です」

 

璃々がそう言い切ると、朱里が

 

「ひょっとして先程の黄忠さんやその子供さんの事が関係ありますか?」

 

「流石、朱里だね。そのことだよ。以前に私たちがご主人様の世界やこの世界に来る前に、別の似たよう世界にいたことがあるって言ったよね」

 

「今ここで私が北郷璃々、お母さんが北郷紫苑と名乗っているでしょう。これはこの世界に同じ名前が2人もいたら、ややこしいと思い、私たちがご主人様の世界で使っていた名前を使っているの…」

 

ここで璃々がここで言葉を切ると、朱里が

 

「もしかして…」

 

「その通り、この黄忠という名前は、以前の世界でのお母さんの名前で、私の名前は本来黄叔と言うけど、なぜか私はずっと皆から真名の方で呼ばれていたから、そっちの名前は使ったことないの」

 

すると星が

 

「璃々よ、最初の話は分からぬが、お主の話を聞くとこの世界の紫苑やお主が現れたということでいいのか?」

 

「そうです。益州にこの世界のお母さんや私もいるそうなのですが…」

 

璃々が複雑そうな顔をしていると星と朱里が

 

「何を悩んでいるのだ、璃々。確かに別の世界のお主たちがいることを知って驚くのは当然かもしれぬが、紫苑は紫苑、お主はお主、それに黄忠殿は黄忠殿で全く別人ではないか。

それにだ、まだその黄忠殿とやらと戦うと決まった訳ではない。言い方は悪いがその時になれば考えたらいいだろう」

 

「星さんの言う通りですよ。もしかしたら顔や姿が全くの別人かもしれませんし」

 

2人からそう言われると

 

「それもそうだね、私は私だもんね。万が一戦うことになれば、私はご主人様やお母さんを守るために全力で戦うから」

 

璃々は改めて決意を新たにした。そしてしばらくしてから、この件について、やはり一刀に報告する必要が考えた璃々は、陽平関を恋と音々音、漢中を星と菫に任せ、璃々と朱里は長安に向かったのであった。

 

説明
本日、パチンコ恋姫無双をやりましたが、見事に負けました(涙)。

しかし、この作品もとうとう50話に達してしまいましたが、まだまだ終わりが見えないです…。

でもこんな拙作を見て頂いている読者の方に改めて感謝しています。

では改めて第50話どうぞ。
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コメント
いや、大泣きは嫌いじゃないよw雛里、それこそ適当に罪をでっちあげて粛清すればいいものを…風の勝ちな書き方のようにも見え、雛里もなんらかの考えがあるようにも見え・・・(PON)
zarukuzisuさん>死刑囚がどうなるかは……次回明らかになります。(殴って退場)
死刑囚は劉備たちに保護させるんじゃないかと思ってるがどうなるか楽しみだな(zarukuzisu)
summonさん>正直書いていて桃香が気の毒なキャラになっているのは、気のせいでしょうか。(殴って退場)
ataroreo78さん>足元を見ず、力のみを求めてしまうとね…。色んな意味で難しいです(殴って退場)
1+1=11さん>確かに演義と恋姫の曹操のギャップありすぎですね。この話の華琳には少し演義の曹操の部分が含んでいますが、ベースは同じですので。(殴って退場)
ヨシユキさん>今回の華琳さんには、こういう部分を飲んでいたただきます。(殴って退場)
骸骨さん>正直言えば、あまり恋姫らしくない手口かも。(殴って退場)
陸奥守さん>さすがに長安から軍を動かすのは無理ですね。一応次回あたりにその辺の動きを。(殴って退場)
タケルさん>この場合の風は関羽獲得は最初に難しいと言っており、徐州攻略を主としています。(殴って退場)
オレンジペペさん>会うのはもう少し後になりますので、しばらくお待ち下さい。(殴って退場)
アロンアルファさん>華琳の場合、癖のある人物やそういう人物でも能力があれば使いそうですけど。(殴って退場)
桃香、最後には泣いて大声出して自然解散とか…君主としてもう…ね。(summon)
今の徳無き劉備軍じゃ金で裏切る連中が出てもおかしくないか。結局はやることなすこと裏目に出てるわけだ(ataroreo78)
演義や正史の曹操からすれば十八番の離間策も、恋姫の曹操は嫌いそうですよね(笑)小賢しいとかいって。恋姫の曹操(華琳)は、そう言う所スポーツマンっぽくて変と言えば変ですが(^^;(1+1=11)
本来はこういった謀略の類は好みそうに無い華琳も覇道のために割り切ってますね。(ヨシユキ)
風は死刑囚を使って何するつもりなんだろう。はじめは華琳様も乗り気じゃなかったみたいだし。(量産型第一次強化式骸骨)
今回の件一刀達はどう考えているのかな。情報集めはやってるだろうしタイムラグがあるにしても忠告する時間ぐらいはあると思うのだけれど。さすがに軍を動かす等具体的な行動は無理だし。(陸奥守)
もし仮に曹操達の謀略が原因で関羽が追放されるとしても、魏に行くとは絶対に思えないんだけど、曹操達はその辺はどう考えてるんだろうか?(タケル)
やっぱ内通者がいたか。徐州を手に入れても華琳ならそう言う輩は不安要素になる為、切り捨てそうだけどね。(アロンアルファ)
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