真・恋姫†無双〜愛雛恋華伝〜 45:【動乱之階】 程を知り 知らぬを知る
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◆真・恋姫†無双〜愛雛恋華伝〜

 

45:【動乱之階】 程を知り 知らぬを知る

 

 

 

 

 

楊州の治所である歴楊からさらに東へ向かうと、孫堅を始めとした孫家が治世を任されている呉郡がある。

その呉郡の中でも拠点と行っていいだろう町が、呉だ。

 

ここまで来ても、華雄は未だ疑問を拭うことが出来ないでいた。

自分が付いて来る意味は本当にあったんだろうか、と。

 

使者役として鳳灯がいて、護衛に華祐と呂扶がいる。

この面子の中で自分のやることなどないではないか、と。

 

華雄とて理屈は分かっていた。重用されているとはいえ、厳密にいえば鳳灯と華祐は外部の人間なのだ。それなりの内容を携えて使者に立つとなれば、正式に近衛に属する者が出向くのが道理だろう。その白羽の矢が華雄に立ったとしても不思議ではない。

だが、頭脳では鳳灯に及ぶことはなく、武においては華祐にも呂扶にも及ばない。

同行する面々に勝るものがなにもない、求められたのは"近衛に属している"という肩書きだけだったのではないか。

そんなことを考えてしまえば、落ち込み気が荒むのも無理はない。

 

とはいうものの今回、華雄に同行を求めたのは他でもない、華祐である。

 

「孫堅殿の娘、孫策殿はなかなかの武を持っているらしいぞ。あわよくば仕合ってみたいと思わんか?」

 

そんなことを口にし、華雄をそそのかしたのだ。

 

そそのかされた彼女にしても、在野の手練という存在は気になるようになっていた。なにより、目の前にいる自分そっくりの華祐という存在。外見ばかりか得物や武の振るい方まで似ているというのに、手が届かない。そんな人間が世に出ず埋もれていたことを知り、驚きもし歯噛みもしたのは記憶に新しい。

同時に、己の見識の浅さというものを知らされた。だからこそ、経験による知というものに求める。

ゆえに、今回の同行を承知したのだが。

なにもすることがないまま、楊州に入り歴楊を経て呉まで辿り着いている。

それが、要らぬ考えが持ち上がってくる切っ掛けになっていた。

 

引っ張って来た華祐にしても、過去の自分自身といっていい華雄の見識を広げ経験を積ませたいという意識があっての提案だった。

道中になにか騒動でもあれば、華雄に丸投げしてみようといった考えもあったのだが。想像以上になにごともなく呉まで到着してしまったのは誤算であった。

楊州は、古くから土着宗教などによる暴動が多かった地域である。程度はあってもまだ活動が活発かと睨んでいたのだが。孫堅らの治世、ひいては新生した漢王朝の意識は思いの他行き届いているようだ。孫堅にせよ、楊州の牧を務めている袁術にせよそれを補佐する張勲にせよ。「面倒くさい」が口癖の割りに、やるべきことは最低限しっかりやっているということなのだろう。

 

平穏な世を目指すという意味では喜ぶべきことだと思う。だが今回に限っては、それでも素直に喜べなかったりする。

本当に、孫策にぶつけることくらいしか出来ることがない。

どうしたものか、と。不穏当な目論見が外れやや不満顔な華祐だった。

 

 

 

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さて。

呉に到着して早速、孫堅に面会を求めることにする鳳灯たち。

ただ、一刀ひとりだけが別行動となった。

洛陽での同僚が尋ねる面子の中に、ただの民草が混じっているなど不釣合い極まりない。

彼はそういって同行を断っている。

当たり前の判断ではあるのだが、この面子ではその当たり前が通用しない恐れがある。何食わぬ顔で、ただの料理人を州牧やら太守やらに面通しさせかねない。お願いだから偉い人たちに紹介しようとしないでくれ、と懇願した。

元々一刀自身にも人と会う用事がある。そういって彼は退散したのだった。

 

呂扶も彼について行こうとしたが、華祐に引き止められている。

彼女を孫堅に会わせること。華祐がここまでやって来た理由はそれなのだから、その当人がいなくなっては堪らない。

 

こうして。華祐が呂扶を引き摺り、その後を鳳灯と華雄が歩くという一団が出来。一刀はそれを微笑ましく見ながら、ひとり手を振り見送ったのだった。

 

 

 

「久しいわね鳳灯」

 

少し前まで洛陽で顔を合わせていた仲間を招き入れ、孫堅は人懐こい笑みを浮かべる。

 

「華祐に華雄も、よく来たわ。歓迎するわよ」

 

ことに華祐と華雄には、互いに武をぶつけ合ったからこそ得た親近感、のようなものを見せる。

自身が武官であることもあって、文官軍師である鳳灯よりも武人である華祐たちの方が親しみを感じるのかもしれない。

 

「募る話もあるけれど、それは後でお酒でも呑みながらにしましょうか。

まずはお堅い話を済ませちゃいましょう」

 

孫堅の表情が、温和なものから少し引き締まったものに変わる。

引かれる様にして鳳灯もまたやや気を引き締め、袁術らに行ったものと同じ内容を伝える。

 

黄巾賊が行った一連の騒動、その経緯。

太平要術の書について。

それに対する現時点での近衛の対応、これからのことについてなど。

そして、遠くない内に漢王朝としての対応策が正式に通達されることになるだろうことも。

 

「……なるほど。面倒なことが起きてたのねぇ」

 

鳳灯の説明をひと通り聞き終え、孫堅は呆れたような声を上げる。

腕を組み、長い脚を扇情的に組み替えながら、しばし思考に耽ったかと思うと。

 

「説明してくれた鳳灯には悪いのだけれど、ウチの娘にもう一度同じ話をしてもらえない?

あの娘たち、今ちょっと外に出ていていないのよ」

 

実際に今の呉を取りまとめているのは自分ではなく娘の方なのだ、と、言葉を繋げる。

孫堅曰く、彼女には娘が三人おり、上の娘は軍部を主に取りまとめ、真ん中の娘は政を手掛けている。末の娘は年齢のこともあり任せている物はないが、どちらかというと軍部寄りだとか。

それぞれまだ若輩なために、孫堅ら夫婦や古くからの仲間側近などの助力はある。それでも、いずれ一族を率いる者としての自覚を育てるために、領主としての主な判断や決定などをすべて任せているとのこと。

 

「そんなわけでね、今の呉に関わるあれこれはすべて娘たちにやらせているのよ。

わたしから伝えてもいいけれど、そういった内容なら使者本人から直接話を聞いた方がいいでしょうしね」

 

といった会話が交わされ、幾ばくか関連のあるだろう情報のやり取りが済み。

ひとまず、鳳灯とのやりとりは終了した。

 

 

 

「普段は家族や仲間らと一緒になって走り回っているから、たまにこういう高いところに座ると肩がこって仕方ないわ」

 

場所は謁見の間だ。名目上はこの地を治める太守であるがゆえに一段高いところにいた孫堅がぼやく。これみよがしに肩を回して、疲れた疲れたと口にする。

文官側の用件が終われば次は武官だ、とばかりに。

 

「それで、貴方たちはどうしたの。

まさかわざわざここまで吹き飛ばされに来たわけじゃあないでしょう?」

 

華雄を見ながら、孫堅は、人の悪い笑みを浮かべていう。

洛陽ではまったく歯が立たないままだった華雄は、一瞬悔しそうな表情を見せた。そんな彼女の肩に手をやり、華祐がなだめてやる。

 

「私の場合は、そういった意味の理由も確かにありますが。

孫堅殿に、会わせてみたい者がいまして。呉まで足を運んだのです」

 

黙って立っているだけだった呂扶を見やり、華祐はいう。

これまでずっとひと言もしゃべらず傍らにいた人物。

洛陽で会い見知った人物そっくりではあったが、どこか違うことには孫堅も気付いていた。

 

「気にはなってたのだけれど、呂布じゃないわよね? 彼女」

 

華祐の後ろに立つ呂扶を指差しながら、不思議そうにつぶやく。

当然といえば当然な反応だ。彼女は、呂布には会ったことがあっても呂扶に会ったことはない。

長く共に戦っていた友だ、と、華祐は紹介する。

 

「悔しいですが、彼女は私よりも手強いですよ」

 

華祐の実力は、実際に手合わせをしている孫堅はよく知っている。

その彼女が、自分よりも上だといって憚らないのだから、相当なものに違いない。

 

「……呂扶。よろしく」

 

言葉少なに名を告げ、硬くなるでもなく自然に手を差し出した。

手を取り応えただけ。だがその力の抜け具合に触れただけで、孫堅は呂扶に興味を持つ。

身体の奥底を巡る血が滾ってくる感覚を覚えていた。

なるほど、武人として彼女と相対するのはそそられる。面白そうだ。

 

と思う一方で、ふと、別に思いついたことがあった。

呂扶を見、次いで華祐と華雄を見る。

 

孫堅は笑みを浮かべる。

なにか面白いことを思いついた、といわんばかりの笑みを。

 

 

 

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政庁からさほど遠くないところに、呉の将兵が屯する兵舎がある。

一刀は、呉軍に組み込まれたという江賊の面々と顔を合わせるべくそこを訪れた。

声をかけるよりも早く、向こうの方が一刀の姿を見つける。

名を呼びながら近づいてくるむさい男たちに苦笑いしつつ、手を振り応えながら近づいていった。

 

久しぶりの対面に、野郎同士ならではの荒っぽい話が弾む。

呼び出されてここまで足を伸ばしたという話から、"姉さん"の近況にまで及ぶ。

なんでも今は、雇い上げた主と一緒に郊外に出ているという。

その地域は畑や農耕地が広がる場所だった。

いつ戻ってくるかも分からないため、一刀は農耕地を見て回るついでにこちらから探してみることする。

なら早速、と。厨房が用意できるなら明日の夜あたり晩飯を作ってやろう、などと江賊の面々と約束し。彼はその場を離れた。

 

余談になるが、一刀が約束した晩飯の話。

江賊らの話を聞きつけたのか、なぜか孫家側の将兵たちも多く混ざってやって来た。

どちらにも好評だったが、後日この振る舞いが孫家上層部の将軍らの耳に入り。一刀の名前が知られることになる。

 

 

 

呉の町を出て、少し足を伸ばす。しばらく進んでいくと、田畑らしき開けた場所が所々に見えてくる。

畑仕事に精を出す人たちの邪魔にならないようにし、それでも時折声をかけ話を聞いてみたりする。土地の調子や実りの程、暮らしの按配など、ただの世間話の中であれこれ情報を仕入れようとする辺りは商人の一面を持つゆえなのかもしれない。

 

歩き続けているうちに、ふと目に付いた畑があった。

作られているのは、カボチャ。実りが多く、手のかけられ方も他と違うように感じられた。

 

そういえば、カボチャ料理は作ったことがなかったか。

そんなことをつらつらと考え。一刀は畑を眺めながら、作れそうなメニューを思い出そうとする。

 

座り込み野良仕事をしている人に近づき、ここのカボチャはどこかに売りに出されているのか尋ねる。

残念ながら、ここ一帯の畑はすべて孫家に関係する一族自前のものだとか。出来たものが売りに出されることはほとんどないらしい。

 

「一族だけではなくて、配下の家族といったところまで回っていくものよ。残念だけれど、町で売られるものではないわ」

 

一刀の残念そうな顔に、受け答えをした彼女は済まなそうに、それでいて嬉しそうににいう。

自分たちの作るものに興味を持たれ、手に入らないと知って残念がられる。済まないと思いつつもどこか誇らしさを感じてしまうのは、仕方ないのかもしれない。

 

向けられた笑みを見て、彼はやっと、声をかけた人が若い女性だということに気がついた。

いかにも農夫、といった出で立ちをし、土塗れで汚れた格好。

だがそれでも、目の前の彼女はひどく魅力的に映る。

 

しばしの間、思わず見とれた後。

一刀は不意に、鈴の音を聞いた。

次いで、彼の首筋になにか冷たいものが触れる感触。

 

「貴様、なぜこんなところにいる」

 

冷たい声。

少しばかり肝を冷やすが、聞き覚えのある、問い詰めるようなその口調に思わず苦笑を漏らす。

 

「顔を出せっていったのはそっちの方でしょ、"姉さん"」

「その名で私を呼ぶな」

 

淡々とした声と共に、刀の鞘が一刀の頭に叩き込まれる。

大きく、鈴の音が鳴った。

 

甘寧こと、甘興覇との再会。

そして、孫権こと、孫仲謀との出会い。

また新たにひとり、一刀は、歴史に名を残した有名人と邂逅する。決して当人が望んだわけではないのだが。

 

 

 

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"以前の世界"において、孫策を始めとした孫家一派は、袁術に虐げられていた。一刀は、鳳灯にそう聞いている。

とはいえそんな言葉を聞いても、彼にしてみれば、正直なところ「そうなんだ」とうなずくことしか出来ない。

彼自身、孫堅という人を見たことがない。"天の知識"においても、孫家と袁術がどのような関係であったかなど知らないのだ。

 

一刀は強いて高名な人物と知り合いたいとは思っていない。

現状から考えてみると、彼のいっていることは矛盾して見える。

だが少なくとも、そうと知って自分から近づいていくようなことはこれまでほとんどなかった。

 

"姉さん"こと、甘寧にしてもそうだ。

 

三国志の歴史における三大勢力のひとつ、呉。その重鎮といっていいだろうひとり、甘寧。

一刀が彼女との誼を得たのは偶然でしかない。

そもそも知り合った時点では、彼女はまだ、歴史から見て"偉い人"ではなかったのだ。

 

かつて、幽州の商人たちが仕入れの旅に出た際のこと。一刀は護衛のひとりとしてそれに同行していた。

幽州の商隊は揚州に入り、さる地方の領主と商談を行った。

だがその相手は悪徳領主そのものといった傲岸さで賄賂を要求してきたため、決裂。

地元である幽州を治める公孫?の気質が映ったかのような、この時代としてはらしからぬ商人たちだったということもあるが。長い目で見て、アレと付き合っても絞られるだけで旨みがないと判断したせいでもある。

その後、別の町に移動しているところで賊に襲われた。

評判のよくない悪徳領主や商人だけを襲う義賊として、平民の間で名を知られた「錦帆賊」。

甘寧は、それを統べる立場のひとりだった。

悪評が広く知られている領主の屋敷から出てきた商人たち。ならば悪徳を成す一味に違いない。

一刀たち幽州の商人たちが襲われたのは、そんな理由からだった。

甘寧は一刀に向かって行く。それは本当に偶然だった。ただ、護衛を務める輩のひとりを無作為に選んだに過ぎない。

 

襲われた方はたまったものではない。ただでさえ意に沿わぬやり取りをし、得る所がなかったのだ。

虫の居所が悪かったという理由もあって、商人たちは賊たちを全力で迎え撃つ。八つ当たりといってもいいだろう。

だが気持ちだけでどうにかなるような甘いものでもない。

ましてや甘寧は、将来その名を残す将のひとりである。彼女が振るう武を受けて、彼如きがなんとか出来るはずもなく。ほんの数合斬り結ぶだけで、彼はその手から得物を奪われる。

 

「悪徳領主に虚仮にされたと思えば、今度は賊に襲われてこの様か。やってらんねぇなオイ」

 

組み臥されたまま相手を睨みつけ、悪態を吐く。そんな一刀の言葉に疑問を持った甘寧が、得物を突きつけながらも話を聞き出し。幸いにも、互いに死者が出る前に誤解を解くことが出来た。

 

その後にもそれなりに諍いはあったものの、互いに利するところを見出し手打ちにということになり。以降、主に米の輸送という仕事を思いついたことから、一刀と甘寧ら錦帆賊との誼は現在まで続いている。

 

そんなあれこれを、一刀は面白おかしく披露する。

聞いたことのないような話や、自身の知らない時期の甘寧についてなど、そのひとつひとつに孫権は興味深く耳を傾け。

自身に都合が悪い、または隠しておきたいような話題が挙がりそうになるたびに、甘寧は表情を変えずに刀の鞘で一刀を叩く。

その様子は、気の知れた知己同士が談笑しているとしかいいようがない。

 

孫権は、自分の護衛役でもある甘寧の態度が新鮮なものに感じられた。

お役目大事とばかりに、普段から常に冷静な言動と佇まいを崩そうとしない彼女である。鋭い視線はきつい印象を与えているように見えるだろう。そんな甘寧が、傍目こそ常のものと変わりないが、自分の知らない男性に少なからず気を許している。自身が信用する護衛が、それなりに信用を置いているように見える男。甘寧を側に置く者として、興味が湧く。

 

「ふたりとも、仲がいいのね」

 

唐突に、孫権がそう言葉を挟む。

 

「仲がいい?」

「私たちがですか」

 

はっ。

ふっ。

 

なにをいっているんだか、という風に、質は違えどふたりは同時に一笑してみせる。

 

「商売相手としては、まぁ信用しているつもりですけどね」

「互いの利を見据えた上でなければ、接点などなかったからな」

 

互いに口にするのは憎まれ口。いいたい放題なふたり。しかし傍から見れば十分に仲がよく見える、一刀と甘寧。

そんな反応を見て。孫権はさも愉快そうに、どこか品よく笑った。

 

 

 

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和気藹々、といっていいだろう雰囲気のまま、三人は呉の町まで戻って来る。

 

これまで担ってきた輸送の仕事やその他もろもろについて彼と話すことがある、と。

甘寧はしばし離れる許しを請う。孫権はもちろんそれを了承した。

 

「私も、後で混ぜてもらっても構わないかしら。北郷、あなたの話ももっと聞いてみたいし」

「俺は構いませんが」

 

ちら、と、一刀が甘寧を見やる。

彼女は少しばかり表情を動かしたように見えたが。

私の方は問題などない、と、ただうなずくだけで彼の視線に答える。

 

「分かりました。ではまた後ほど、そこの"姉さん"の話を面白おかしく吹聴して」

 

すべていい終えるより早く、何度目か分からない甘寧の鞘が一刀の頭に叩き込まれる。

それを見て孫権は、やはり愉快そうに笑うのだった。

 

 

 

政庁の内部を奥へと進む孫権は、戻った旨を報告するために母の姿を探す。

 

「あら、丁度良く戻って来たわね」

 

孫堅の方が先に、周囲を見渡す娘の姿を見つけ出した。

なにかが楽しみで仕方がないような、そんな嬉々とした雰囲気を隠そうともせずに声をかけてくる。

実の娘である。これまでの経験からだろう、あからさまに明るい態度を見て孫権はいぶかしむ。

 

「……お母様、今度はなにを企んでいるんですか?」

「人聞きの悪いこといわないでよ蓮華」

 

そんな娘の胡散臭そうな声音にもめげることなく、孫堅の表情から笑みが抜ける様子はない。

 

「洛陽からちょっと、使者みたいな人たちが来ていてね。貴女にも改めて話を聞いてもらいたかったのが、ひとつ」

 

確かに、それならば自分を探す理由になる。政に関わることならば孫権に話を通すのが、今の呉では当然のことなのだから。

しかし、孫堅が笑みを浮かべる理由にはならないだろう。

ひとつ、といったのだから、他にもあるに違いない。

 

「……それで、他はなんですか?」

「その使者にね、ちょっと縁のあった護衛が付いて来てるのよ。

 

孫堅の浮かべる笑みは、心底楽しそうであり、またそれ以上になにかを企んでいるような色を含んでいた。

仕方なく、先を促す。

 

「雪蓮に、洛陽の武将をぶつけてみようかと思ってね」

 

その表情は、面白がってなにかをしようとしているものだ。

孫権は、母親のそんなところを見抜いてしまい。知らず軽い溜め息を吐いた。

 

 

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・あとがき

立てたつもりはないが、フラグだというならそうだというのもやぶさかではない。(なんだそれは)

 

槇村です。御機嫌如何。

 

 

 

 

 

唐突ですが華雄さん乱入。

対外的には外部の人間である鳳灯&華祐コンビだけで使者役なんてやらせていいの?

みたいな意見をいただいて。

なるほど確かにそうかもしれない、と素直に思って。

あと別に書きたいシーンが出来てしまったので、急遽ニューチャレンジャーとして突っ込んだ。

44話も、後ほど修正するつもりです。

 

 

みんな大好き、蓮華さんと思春さんが登場。

ご存知の方も多いでしょうが、かぼちゃと孫権のエピソードを練りこんでみた。相手は張飛じゃなくて一刀ですけど。

シチュエーションのせいかな、蓮華さんがはじめから柔らかめでほんにゃりしています。

初登場時に警戒心バリバリじゃない蓮華さんって、見ないような気がする。

 

また今回の蓮華さんを考えたとき、

「方々から見事だといわれる彼女のお尻は、野良作業の継続から生まれ、実り、引き締められたことで出来たのだ」

という妄想に駆られました。

微塵も後悔していない。

 

 

 

 

チンタラして本筋が進まないことに定評のある槇村ですが。

もう少し、回り道が続きます。

なぜなら槇村がそれを書きたいから。

 

……せめてスピードを上げるようには努めます。

 

説明
みんな大好きなあの人たちが登場。

槇村です。御機嫌如何。



これは『真・恋姫無双』の二次創作小説(SS)です。
『萌将伝』に関連する4人をフィーチャーしたお話。
簡単にいうと、愛紗・雛里・恋・華雄の四人が外史に跳ばされてさぁ大変、というストーリー。
ちなみに作中の彼女たちは偽名を使って世を忍んでいます。漢字の間違いじゃないのでよろしく。(七話参照のこと)

感想・ご意見及びご批評などありましたら大歓迎。ばしばし書き込んでいただけると槇村が喜びます。
少しでも楽しんでいただければコレ幸い。
また「Arcadia」「小説家になろう」にも同内容のものを投稿しております。

それではどうぞ。
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コメント
由さま>うん、そこがいいよね。(コピペ?)(makimura)
patishinさま>うん、そこがいミソだよね。(makimura)
黒乃真白さま>本筋あっての寄り道ですので、ほどほどにな。(自分でいうな)(makimura)
summonさま>まぁそうしなければ“恋姫無双”っぽくなりませんからねぇ。(身も蓋もないな)(makimura)
jonmanjirouhyouryukiさま>そう、そこから外れたものを書いてみたかったんです。うまく出来ているだろうか。(makimura)
陸奥守さま>ただでさえ書くのが遅いので、そう回り道ばかりもしていられないんですけどね。(makimura)
量産型第一次強化式骸骨さま>うん、それも少し意識しました。だから不思議じゃないんだぜ。(makimura)
アルヤさま>そういっていただけるのは嬉しいのですが、次から本筋に入りますよ?(makimura)
オレンジペペさま>目指したのはまさにそれ。恋仲にならないような空気を意識した。(makimura)
ロウェンさま>今回もまたお待たせしてしまいまして。柔らかい感じが、不自然なく捉えていただけていればいいのですが。(makimura)
一刀と姉さんのコンビはいい味がでてるな(由)
甘寧との仲いいってのがミソだねq(patishin)
一刀の出番が多くなるのでドンドン回り道して下さい! それにしても御遣い補正ないのに主人公補正は余計にかかってるな一刀さんww(黒乃真白)
一刀さん、お偉いさんに会いたくないから別行動したのに会った相手が蓮華とか…どんまい!(summon)
本編より回り道の方が多くなりそうだけどまあいいや。面白いから。(陸奥守)
なぜだろう、一刀と思春がお笑いコンビに見えてしまったwww(量産型第一次強化式骸骨)
回り道?ドンと来い。なぜなら回り道している間は一刀の出番が多いからだ!(アルヤ)
待ってましたよー 蓮華と思春が柔らかい感じなのがいいですねー(ロウェン)
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