EYE |
「政宗様!」
小十郎に呼ばれ ハッと意識が戻る
「考え事ですか?手が止まっておいでですが?」
筆をもったまま動いていなかったらしい
「それとも居眠りですか?」
小十郎は世話を焼く
この頃は戦続きで政務がおろそかだった
気付いたら山のように仕事が溜まっていたのだ
「Ha! 居眠りなんかしてられっか!」
筆に墨をつけ直し 颯爽と仕事に取り掛かった
(元就さんの事考えてたなんて… いえる訳ないだろ…)
小十郎は感のいい奴だ
おそらく気付いているだろう
あの戦場で
元就さんを見た瞬間に
俺の中に雷が落ちたような
衝撃を食らったことを…
冷たい視線だった
片方しかない目が
その視線の全てを受け止めた
「貴様を殺してやる」
殺気だ
自分の瞳孔が開くのすら
分かった
その瞬間
コイツが欲しい
そう懇願した
それからというもの
頭の片隅
いや半分くらい?
元就さんのことで埋め尽くされている
戦場での刺すような眼差しも
甘味を見た時の一瞬の喜びも
時折見せる哀しそうな横顔も…
ただ…
−怒り−
西海の鬼に見せるような怒りの表情は
俺に向けては
まだ貰っていない
瀬戸内を争う二人にとっては
日常茶飯事のことかも知れないが
俺は−
羨ましくてたまらない
俺にもその怒りをぶつけて欲しい
輪刀で傷つけられたっていい
罵られたっていい
西海の鬼のように
俺は中国が欲しいわけじゃない
本当に欲しいのは−
腕をつかまれた
「?!」
「小十郎?」
また手が止まっていたらしい
「お疲れですか?」
政宗はとっさに手を振り払う
そしてかあっと顔を真っ赤にした
小十郎がくすりと笑う
「あの方の事をお考えですか?」
「っー!」
さらに顔が赤くなった
単純だ
自分でも分かった
とても恥ずかしかった
奥州の筆頭ともあろうものが
敵国の主に心奪われようなどど…
「真っ直ぐなのは良いことです。」
小十郎は微笑む
戦場の小十郎では考えられない
笑顔だった
「でも…」
ふと巻物に視線を寄越す
「政務はきちんとこなしていただかないと…」
「…」
空は繋がっている
海と同じように
この奥州の海も−
瀬戸内海に通じている
地図ならわずかな距離でも
実際は凄く遠くて
身悶えする
今は政務をこなすこと
そして…
戦のない平和な世を創ること
そうしたら
怒りではなく…
あの人の
一番見たい
「笑顔」
が見れるかもしれない
そう自分を落ち着かせると
政宗は再び筆を取った
説明 | ||
ダテナリオンリー 出てみたい! | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
423 | 418 | 0 |
タグ | ||
毛利元就 戦国BASARA 伊達政宗 | ||
実田さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |