ライバル 前編 |
川神学園には、各学年にSクラスがある。
Sクラスは成績優秀者を集めた進学クラスで、定期試験で五十位以内から滑り落ちてしまうと、ほかの成績上位者と入れ替えてしまう。
そんなわけで、Sクラスに所属する者は、休憩時間になっても落伍者になるまいと誰もが必死に勉学に打ち込んでいるため教室は静かなものだった。
「退屈そうだな、兄貴」
Sクラスの生徒である那須与一が、ペンがノートの上を走る音を聞きながら、天井を見上げてため息をつく直江大和に、親しげに話しかけてきた。
「そうだな。2−Fにくらべたら退屈かも」
大和は、以前在籍していたクラスのことを思い出す。
問題児の寄せ集めクラスだと言われるだけあって、退屈な授業から解放される休憩時間はやたら騒がしかった。
「……そう思うなら、戻ればいいのじゃ大和。わざわざ此方と一緒についてくる必要なんかなかったのじゃ」
いつも高級な着物ではなく、川神学園指定の制服を着た不死川心が恥ずかしそうな顔で言う。
「俺、心がいないと寂しいもん」
「にょわ!!??」
大和は素直に本音を言うと心はさらに真っ赤な顔になった。
(それにしてもすごいな兄貴は……。あの不死川を恋人にするどころかFクラスからSクラスに乗り込んで来るとは……)
それを尊敬な眼差しで与一は、大和に敬服した。
与一が思うように、大和は以前はFクラスにいたのだが、恋人となった心を追いかけてSクラスに転入してきた。もちろん実力で。
その与一は、九鬼財閥が生み出した「武士道プラン」のメンバーで、『那須与一』のクローンと言われているのだが、あるキッカケから大和を『兄貴』と呼んで慕ってもいた。
「フハハハ! 大和よ、もうクラスには慣れたか!?」
豪快な笑い声とともに、2−Sのいろんな意味での中心人物である九鬼英雄とそのメイドである忍足あずみが大和の席に来た。
「まあ、雰囲気はF組とはかなり違うけど、それなりにうまくやってるつもりさ」
「それならばよい。なにか困ったことがあれば、我に頼ってくるがいい」
ふだんいがみ合うことが多いF組にいた人間とはいえ、そのことで区別するつもりはさらさらないあたりの懐の深さに大和は一目置いてしまう英雄。
「だ、大丈夫! 大和は此方が面倒みるから問題ないのじゃ!」
だけどそれを心はなぜか慌てたような口ぶりではさむ。
「フハハハ! そうだったな、我よりも不死川が適任だったなっ!」
二人が恋人同士だったことを思い出した英雄は、豪快な笑い声と共に侘びてそのまま教室を出て。
「……けっ、バッカプルが」
その後をなぜか悔しそうな顔するあずみが二人に聞こえるように呟いて英雄の後をついて行く。
(……さすが兄貴。あの不死川にここまで言わせるとは)
その始終を傍観していた与一は、ますます大和を尊敬してしまうのだった。
次の休憩時間、心が大和に尋ねた。
「大和、先ほど返却された英語の小テストの点数、どうだったのじゃ?」
大和は机の中から解答用紙を取り出すと、心の前に広げて見せた。
「満点。Sクラスに編入したんだから頑張ったよ」
「当然の結果じゃの。此方の認めた男が満点じゃなければどうする」
心は口では偉そうに言いつつも大和の頑張りに賛美する。
「心も?」
「当然じゃ。ほれ……」
心も解答用紙を大和の前に広げて見せた。
「さすが心。大好きだよ♪」
今度は大和が心に賛美と愛の告白を捧げる。
「こ、こら! 人前で言うのではないのじゃっ! 恥ずかしいじゃろ!!」
心の顔は真っ赤だった。
「五月蝿い奴だ。ずっとF組にいればよかったのに……」
休憩時間になっても落伍者になるまいと必死に勉学に打ち込んでいるうちの一人の生徒がぼそりと呟く。
「………なんじゃ? お主、此方達に文句あるのか?」
幸せ一杯な気持ちを害されてしまった心は、その生徒を睨んだ。
「……別に、何も」
生徒はそっぽを向く。
「っ!」
生徒の態度に腹が立った心は、近づこうとすると大和が止めた。
「うるさかったな。悪い」
大和はとりあえず謝っておく。こういう場合、謝って場所を自分達が変えればいい話だ。
「駄目じゃ大和。コイツは此方達を侮辱した、許せないのじゃ」
……が、心は一歩も引こうとはしない。
「………心」
「ひっ!?」
だけど、大和が殺気のはいった声で心の名を呼ぶと震えて黙った。
(………おお、兄貴すげーぜ)
そして与一は、ますます大和を尊敬していた。
「……君と話すことはない」
放課後、大和はその生徒に話かけていた。
一応はクラスメートでもあるし、関係を悪化させたままでいるのはよろしくないなと思ったのだが、断られてしまった。
「どうしたのですか? 大和くん」
途方に暮れる大和に親しげな口調でSクラスのクラスメートの生徒である葵冬馬が親しげな口調で話かけてきた。後ろには榊原小雪と井上準が一緒にいる。
「いや……彼に話かけようと思ったら、断られただけだよ」
チラリと去っていく生徒に目をやる。
「ああ……彼ですか。彼は貴方に嫉妬を抱いているのですよ」
「嫉妬?」
「彼は以前はC組にいたのですが、貴方と同じように好きな女性がS組にいたので、一緒に過ごすために努力してS組に入ったのです………ですが」
「振られたのか……」
「ええ……貴方に捕られてしまったのです」
「捕られた?」
葵は微笑んだ。
「彼は、不死川さんが好きだったんです」
それは、意外な事実と真実を大和は得るのだった。
続く……
おまけ
「これ、未完だから」
アインはこの話の後編は書く気はないらしい。
「え……じゃ、なんで投稿したの?」
「消すの勿体ないから」
アインの笑顔は微笑んでいた。
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男の嫉妬は醜いぜ(VVV計画の被験者) | ||
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