真恋姫無双 〜蜂蜜姫の未来〜 第7話 |
この作品は恋姫無双の二次小説で袁術ルートです。オリ主やオリキャラ、原作キャラの性格改変やオリジナルの展開などもあります。
そういうのが許せない方はスルーしてください。
※一刀アンチ作品ではありません。
第7話
七乃達はそれぞれ作戦通りに配置につき、あとは戦が始まるのを待つばかりとなっていた。
七乃視点
斥候の報告では賊の数は二百八十程度で、見張りが邑の正面に二人、物見櫓の上に二人の配置だそうなので、作戦変更の必要性は特にありませんね。
「それじゃあ皆さん、賊だからって油断せずに行きましょうねぇ〜。まずは先陣突撃で〜す」
連れてきた五百の兵のうち三百を伏兵として邑の裏手の森に配置、突撃部隊として百五十人を正面から突撃、賊が出てきたところで部隊を少しづつ後退させて、潜ませていた伏兵と連携して挟撃しちゃいましょう。ちなみに残りは本陣待機です。
「さてまずは第一段階成功ですね」
そんな事を考えてる間に賊が出てきましたね。そして、十分に賊が出てきたことを確認すると、そろそろ頃合いと読んだ七乃が伏兵部隊に合図を出すために銅鑼兵に告げる。
「さぁ、銅鑼を鳴らしてくださ〜い。包囲して殲滅しますよ〜」
なんていうか呆気ないですねぇ、まぁ楽に終わらせられるならそれに越したことはありませんけど。早く帰ってお嬢様に褒めていただきたいですし。
兵は賊たちに対して、逃げ道を残しつつ包囲していく。『窮鼠猫を噛む』という言葉にもあるように、猫に追いつめられたネズミは死に物狂いで猫に反撃し猫は思わぬ一撃をもらってしまうというものだ。こんな戦いで兵の命を無駄にするわけにはいかない。
戦闘はそれからほどなくして終わった。
「それじゃあ死体の後片付けをしたら帰りますよ〜」
指示を出していると霧里さんがこちらに走ってきました。どうしたんでしょう?
「七乃、ちょっと待て」
「どうしました?」
「この時代って土葬が基本なんだよな?」
「そうですよ」
何を当たり前のことを、と思っているととんでもない発言が飛び出しました。
「あー、言いづらいんだが死体を焼くべきだと思う」
「それはなぜでしょう?」
この時代は儒教の影響が強く、火葬は遺体に対する冒涜であると捉えられています。よほどの理由が無い限り同意できませんね。
「死体を残しておくと虫が湧き死体の肉を食べ、その虫が街や邑に行って病をまき散らす恐れがあるんだ」
「そんなことがありえるんですか!?」
流行り病などが起きるのは、死んでいった者の怨霊や怨念が原因だと考えられていました。まさか、虫が病を運んでくるなんて誰が考えるでしょう。
「絶対とは言えないが、可能性は限りなく高い」
険しい顔で私に告げる大地さん。嘘を言ってるようには見えませんね。わかりました、すぐに指示を出しましょう。
「誰かいますか!」
「はっ」
「話は聞いてましたね?すぐに穴を掘って賊の死体を焼きますよ」
そして兵士全員で死体の処理を終えた私たちはお嬢様のもとへ帰ります。
大地さんについて、前線にいた兵士の報告ではそれほど動揺は感じられなかったってことですけど、あの人は本心を隠すのが上手いですからね。やせ我慢してるんでしょう。
視点アウト
大地視点
討伐を終えて城に帰って来てから俺はすぐに部屋へと駆け込んだ。
怖かった。
目を閉じれば、戦場で人を殺す映像がくっきりと映し出される。
手には、人を斬った時の感触と噴き出した血の生温かさが残っている。
耳をふさいでも聞こえてくるのは、死ぬ間際の断末魔の叫び。
逃げられない、逃げちゃいけない。
これは俺が決めたことだ。そのことから逃げ出しちゃいけないんだ。でもそれ以上に自分という人間が壊れていくような感覚も感じていた。
「大地さん、ちょっといいですか?」
思考の海に沈んでいく俺を、明るい声が引っ張り上げた。
「あぁ、入ってくれ」
吹き出ていた汗をふき、軽く水分を口に含ませて平静を装う。
「だいぶ追い詰められてますね♪」
ポーカーフェイスも張勲には無意味だったか。
「まったくだ。自分でもここまで取り乱すことになるとは思わなかった」
うんざりするように大地は自分の状態を告げる。
「まぁ、私には関係ありませんけど」
「そうだな。で用件は?」
「どうでした?初めて人を殺した時の気持ちは」
まったく、痛いところを平然と突くのか。
「そう…だな。まずは、気持ち悪かった。胃の中の物全部吐き出したい衝動に駆られたよ。次は、美しいと感じた俺自身に怖気が走った。そして、人間という生物はこんなにも美しいのかと、気付かされた。とても…そう、とても美しかった。生を求めて足掻く人間はこの地球上のどんな生物よりも無様で、それでいて美しかったんだ。俺は頭がおかしいんじゃないか、普通じゃないんじゃないか、って思った。こんな俺がお前たちの側に居ていいのかってそんな事ばかり「もういいです!!」が……」
大地は七乃の大声にハッとした。自分は一体何を言っていたのか、七乃の前でなんという事を口にしてしまったのか、そんな後悔に押しつぶされそうになっている大地を七乃は優しく抱きしめながらこう言った。
「今度そんな事を言ったら許しませんよ」
子供をあやすような優しい声で。
「あなたはここで一生扱き使われる運命なんです。だから、あなたに決定権なんて無いんですよ。分かりましたね?」
言外に「出て行くなんて言わないでください」と。
「でも…」
大地がなんとか反論しようとするが
「わ・か・り・ま・し・た・ね!」
有無を言わさぬ七乃の口調に大地も思わず「はい」と言うしか無かった。
「分かればいいんです。あなたの頭がおかしいかどうかなんて些細なことです。それともあの時私に言った言葉は嘘だったんですか?」
「いや、あれはほら、なんていうか……」
しどろもどろになりながら、必死に弁明しようとする大地を見て七乃は薄く笑む。
「はぁ、もういいですよ。それよりもこれからよろしくお願いしますね、だ・い・ちさん♪」
それだけ言うと、七乃は機嫌が良いのか鼻歌交じりで俺の部屋を出て行った。
今回の戦場で感じた事は多分これからも感じるだろう。俺はそれを受け入れていかなきゃいけない。そういうのも全部ひっくるめて自分自身なのだから。
大地はこれから始まる袁家の生活に僅かな期待と不安を胸に、眠りについた。
視点アウト
そのころ、大地へのスパルタ教育を綿密に思い描く七乃は楽しそうに廊下を歩いていた。
「七乃、何かいいことでもあったの?」
「八恵ちゃんじゃないですか、どうしたんですかこんな夜更けに?」
「質問しているのは私なんですけどね。えっと、私は大地殿の様子が気になったもので。それで何があったんですか?」
「私は大地さんと蜜月を過ごしてきたんですよ♪」
「なっ!?なんてうらやまっ!?…じゃなくて破廉恥な!?知り会ってそれほど間もない男女が夜に殿方の部屋でなどと!もっと段階を踏んでからです!じゃないと許しませんっ!それに私の方が……と…だが」
顔を真っ赤にしながらも、最後のつぶやきは聞こえてなかっただろうか、とどこか心配する点がずれている八恵。
「八恵ちゃん、少し落ち着きましょうか。はい、深呼吸してください。吸って、吸って、止める!」
「すぅー、すぅー、ふっ!」
「あははー」
八恵をからかうのが面白くなってきた七乃だったが、これ以上はまずいかなと自重することにした。
「ぷはっ!止めちゃダメでしょうが!」
「いやぁ、八恵ちゃんはおもしろいですねぇ〜。あはははは」
「まったくもう、それで実際のところはどうなんですか?」
「そうですねぇ〜、一応合格って感じですかね」
「へぇ、あなたが認めるということはそれ相応のものだったんですね」
「まだまだ危なっかしいところはありますけど、第一歩としては十分です」
「そう、それは良かった」
「それに自分が任された部隊に対して的確な指示をしていた点も評価できます。実際問題、軍の内情を知らない人間があれこれ余計な指示を出すのを兵は嫌います。だから最低限の行動指標だけを示して、あとは自由にやらせるというのはなかなかのものかなぁ、と」
大地が指揮していた部隊長の報告内容は以下の通りであった。
「あの方の指示は単純かつ合理的でした。自分の援護さえしっかりやってくれれば、あとはこちらに任せると言ってくださいました。ああいう方はどこの軍でもやっていけると自分は考えます」
「それはそうと八恵ちゃん、抜け駆けは許しませんからね〜」
「なっ、何のことですか!?」
ホッとしたのもつかの間、どうやら先ほどの八恵のつぶやきをしっかりと聞いていた七乃。
「私も気にいっちゃったってことですよ」
呆然とする八重を尻目に七乃は自分の部屋へと帰って行った。
「大地さんの部隊、ですか。ふふ、ふふふふ」
この日の七乃は心の底から笑っているように見えた、と後に八重は語った。
おまけ
雪蓮が戦から帰ってくるのを首を長くして待っている女性がいた。
その女性は眼鏡の奥に鋭い瞳を光らせていた。
「たっだいま〜」
何故か上機嫌で南陽の屋敷へと戻ってきた孫伯符こと雪蓮。
「お帰りなさいませ、孫伯符様」
その主を恭しく主を出迎えたのは、雪蓮の断金の誓いの親友である周公僅こと冥琳。
ただ事ではない親友の雰囲気を感じ取ったのか、雪蓮は身構えるが冥琳は感じの良い笑みを浮かべるだけで何かを言おうとはしなかった。しかたなく雪蓮は仕方なく自分から話を斬りだすことにした。
「あ、そうそう。今日、張勲たちの討伐に着いてったんだけど、そこで面白いものを見つけたの」
「そうですか。それはいったいどのようなものなのでしょうか?」
「見慣れない将が前線で指揮してたんだんけど、その将が結構強かったのよ!」
興奮しながらも、雪蓮は今日見つけた自分と渡り合える存在を冥琳に伝えた。
「なるほど。我が主は見慣れない将がいるとすぐにその実力を知りたくなる戦闘狂なのですね」
冥琳はそんな将の事よりも無断で張勲たちの方に着いて行った主の行動に腹を立てていた。
「で、でもさぁ、私たちの敵になるかもしれない相手の戦力は知っておいて損はないと思うんだけど…」
「武力偵察なら明命に任せれば事足りるだろう。武力偵察にわざわざ主君が出るなど聞いた事がない!」
そこで初めて冥琳は声を荒げた。突発的とはいえ、自分たちの主が気になる人物の武力偵察に無断で出かけるなど聞いた事が無い。主君としてもっとしっかりしてほしいという冥琳とは対照的に、笑いながらも雪蓮の行動に納得してくれているのは孫呉の宿将とも言える黄公覆こと祭だった。
「まぁ、冥琳もそこまで目くじらを立てる事はあるまい。策殿がやりすぎた事も分かるが、それ以上に袁術の新戦力が分かった事も大きいじゃろう?」
祭は冥琳に雪蓮の間に妥協案を出し、両者痛み分けの形へと持っていった。
「冥琳、確かに何も言わずに言った事は謝るわ。でもね、私の勘が告げていたの。あそこには何かがあると」
祭の案に乗っかった雪蓮は冥琳に対して謝りながらも自身が持ち帰った情報の有用性を説明していった。
「なるほど。確かに雪蓮が教えてくれた情報は有益だ。だが、今後はあまり無茶をしてくれるな。私の心臓に悪い」
冥琳も妥協案としてこれからは行動前にしっかりと説明もしくは伝言をする事を雪蓮に約束させた。
「冥琳さま〜、宴の準備ができましたよ〜」
部屋の外から柔らかな声が聞こえてきた。そういえば穏に宴の準備を任せていた事を思い出した冥琳は、すぐに返事を返し雪蓮たちと宴の準備がされている広間へと向かうのだった。
あとがき
今回は大地が自分の価値観に悩むというのがメインとなっています。
あと、雪蓮たちの話について結構あっさりまとめてしまいましたが、そこについては捕捉で書くつもりです。
そして、七乃が最後に大地の部隊設立をほのめかしていますが、成立するのはかなり時間がかかると思います。
ps,ガンダムラウンジに誰か来ないかな?
それでわしつれいします。
説明 | ||
今回は戦というよりも大地自身についての話がメインになります。 アドバイスなど頂ければ、ありがたいです。 それではどうぞ |
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コメント | ||
大地の部隊はごく普通の部隊なのかな。出来れば未来の知識を有効に使って妙な部隊を作って欲しいけど。(陸奥守) | ||
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