勇者伝説セイバスター 第4話「地球を守りし勇者」 |
第4話「地球を守りし勇者」
ここは勇者研究所の第1資料室。部屋の中においてある大半の物がほこりをかぶり、ほとんど掃除していない状態だった。ここで石橋が発掘物らしき石版と書物を交互に見比べながら何かを書き留めている。
「なるほど……こんな意味になるのか……」
石橋が書き留めるたびに独り言をつぶやく。と、その時、資料室のドアからノックが聞こえてくる。
「入りたまえ」
「失礼します」
そういって一人の研究員が入ってくる。その研究員の格好は不精に生えた髭と眼鏡というまるで浪人生のような顔だ。
「平山君か。それで、例のものは見つかったのかね?」
「はい。『勇者の碑文』の二枚目が見つかりました。それに書かれていた文字を写し取ったのがこれです」
平山と呼ばれた研究員が抱えていたカバンから資料を取り出し、石橋に手渡す。
「うむ、ごくろう」
「では、私はこれで……」
「待ちたまえ」
平山が立ち去ろうとしたその時、石橋が呼び止める。
「何か?」
「君も手伝ってくれないか?私一人よりかは効率がいいだろう」
「すみませんが、私にも仕事がありますので……それでは」
そういって軽く礼をして資料室から立ち去って行く。
「やれやれ、少し位は手伝っても損はないだろ……」
石橋がその後ろ姿を見てつぶやいた刹那、
ドガッ!ガラガラガラン!
資料室の外から何かがぶつかって転がったような激しい音が聞こえてきた。
「またバケツに躓いたな。相変わらず運が悪いものだ」
本来ならば慌ててその様子を見に行くのだが、石橋は何事もなかったように再び作業を始めていた。
「いたた……」
平山が痛そうに足を抑えてうずくまっている。その近くにはバケツが転がり、水が飛び散っていた。さっきまでその近くを歩いていた研究員達はその状況に驚き、平山をあきれた感じで眺めていた。
「おい、そこのお前! なんてことしてくれるんだ! 仕事が増えたじゃないか!」
その音に反応して駆けつけた清掃員が平山に向かって激しく怒る。
「すいません……」
平山が軽く頭を下げて謝る。
(あ〜あ、またやっちゃったよ……)
そう思いながら何とか立ち上がろうとしたが、
ズルッ!
「うわっ!」
足元にまで来ていた水によって足を取られ、平山は再び転んでしまった。
場所は変わり、ここはソルダーズが空に作った異空間の中。そこでソルダーズがどこからか持ってきた本を手に持って読んでいた。
「……ん?」
その時、ソルダーズが本に書かれている『何か』を発見する。
「なるほど……これはまた障害となるな……」
ソルダーズがそうつぶやきながら軽く笑みを浮かべる。
「だが、障害となる前に潰せば何の問題もないこと。私の勝利に障害はあってはならないのだ」
「随分な自信のようで」
その時、ゴルヴォルフの声がソルダーズの後ろから聞こえてくる。
「ゴルヴォルフか。自分が手柄を立てるためにまた私を閉じ込めに来たのか?」
「そんなことはしねーって。ただ、お前がいつ負けるかと楽しみでな。クックック……」
ゴルヴォルフが小さく笑った瞬間、ソルダーズは背中に背負っていた剣を抜いてゴルヴォルフに剣先を向けていた。
「これ以上私を怒らせるような真似はするな。さもないとお前の命はない」
その言葉は冷静に言っているように聞こえるが、その声のトーンは怒りのせいでかなり低くなっていた。
「わかったよ。それじゃ、俺は帰るぜ」
そういってゴルヴォルフはその場から去ろうとするが、急に止まってソルダーズの方を振り返る。
「そうそう、お前がさっき見つけた『奴』の居場所はE−273ポイントにいるぜ」
「なぜお前が知っている?」
「さあな。それじゃ、あばよ」
ゴルヴォルフが再び振り返って今度は本当にその場から去っていく。その場には今だに剣を納めていないソルダーズだけが残っていた。
「E−273か……」
ここは再び勇者研究所。空人、晴香、瞬治、誠也が行動を共にして研究所の中を歩いていた。
「しかし、石橋司令官の言ってた「見せたいもの」ってなんだ? しかもHBCじゃなくて勇者研究所に呼び出したりして……」
「何かあるんだろ。例えば勇者に関係する資料についての話とか……」
「そんな事は分かってるよ」
誠也が少しあきれたような、怒っているような感じで瞬治に向かって言う。
「あ、『第1研究室』って書いてある。確か石橋さんの言ってたのはここだよね?」
その時、空人は目的の部屋を見つけて扉の『第1研究室』と書いてあるプレートを指差していた。
「確かにここだ」
それを確認した瞬治がドアをノックする。
「入りたまえ」
石橋の声がドアの奥から聞こえてくる。それを聞いて空人達は瞬治を戦闘にして次々と部屋へ入っていく。その部屋の中には石橋ともう1人、研究員がいた。
「よくきたな。まあ、適当に座ってくれ」
「はい」
石橋の言葉に甘えて全員が椅子に座る。
「石橋司令官、話って何だ?」
「その前に、今回の事で大変活躍してくれた研究員を紹介しよう」
そういって石橋は研究員の方を見る。それに気づいた研究員は一歩前に出て軽く礼をして話し始めた。
「平山照明です。勇者研究所では第4研究室所属、HBCでは諜報を勤めています。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
晴香が礼儀正しく礼を返す。
「平山君」
「はい。皆さんのことは聞いてますので、早速本題に入ろうと思います」
そういって手元にあった資料を取り出す。その最初のページには『地球を守りし勇者について』と書かれてあった。
「今回皆さんを呼び出した理由は、『勇者の碑文』についてです」
「勇者の碑文?」
「はい。勇者の碑文とは、最近明日ヶ丘市内で発掘された遺跡から発掘された石版のことなんですが……」
平山が手元にある石版を立てて全員に見せる。その石版には何やら文章らしきものがかかれていた。
「この碑文にどうやら古代から地球を守っていた勇者のことがかかれているんです」
「古代から地球を守っていた勇者?」
「それは私が説明しよう。」
そういって石橋が平山の横に出てくる。
「実は、この地球に古代から地球を守っていた勇者がいるという伝説があるのだ。その伝説とはこれだ」
『勇者はこの星を守りし存在。この星に危機が迫りしとき、大地から獅子なる勇者現れて危機から星を守護す』
「それだけですか?」
「いえ、これだけではありません。今回発掘された勇者の碑文にも同じ伝説が書かれてあったのです」
平山が空人の質問に答えると同時に手に持っていた資料をめくる。
「更に、勇者の碑文にはその続きがありました。それを読み上げます」
『勇者、危機を滅ぼせし時勇者も我が身を封印す。勇者は再び危機が迫りし時のために深い眠りに就く』
「これが碑文に書いてある伝説の続きです」
「その勇者が封印されている場所ってどこなんだ?」
「この勇者の碑文には勇者が封印されている近くにこの碑文をおいたとされているので、おそらく明日ヶ丘市内のどこかに封印されていると思います」
「『どこか』ってどこなんですか?」
「そこまでは……もしかしたら、まだ発見されていない碑文にかかれているのかもしれません」
「まさか、それを聞かせるためだけに呼び出したってことじゃないだろうな?」
うやむやな答えを出した平山に対して誠也は少し睨み付けるような目つきになる。
「勇者は我々、いや、地球にとって必要な存在だ。封印を解いて地球を守ってもらわなければならない」
「それじゃ、どうやってその勇者を見つけるんですか?」
「そこで、君達に任務を与える」
石橋がそういってなぜか空人達を指差すポーズを取る。
「任務?」
HBCフォースオーダールーム。ここに再び空人達は集まっていた。
「それじゃ、頼んだぞ。なんとしてでも勇者を見つけてくれ」
「わかってる。ただ、今日中に見つかるという保証はできないけどな」
瞬治が石橋の言葉に答えながら準備を進める。
「晴香もついてくるの?」
「だって人手は多い方がいいでしょ?」
「そう……だね」
空人は晴香の言う事に否定しようとしたがその直前で否定する事を取り消した。何の意図でそうしたのかは定かでないが。
「しかし、誠也までついてくることはないんじゃないか?」
「いいじゃねーか。「人手は多い方がいい」だろ?」
そういって誠也が笑顔で瞬治の肩を組む。
「別にかまわないがお前の席は狭いぞ」
「大丈夫だって」
「物を置く所でもか?」
「………………」
瞬治のどう聞き取っても嫌みのような言葉に誠也は沈黙してしまう。
「本当なら我々もついていきたいのだが我々にも事情があってな……」
「そのぶん、HBCでサポートしますから安心して下さい」
「わかった。それじゃ、行ってくる」
そういって瞬治がヴァリアントに乗り込む。他の3人もそれぞれのメカ(空人と晴香はファイナル・車モード、瞬治と誠也はヴァリアント・戦闘機モード)に乗り込んでいった。
「絶対に勇者を見つけてきてくれ!」
「わかりました」
空人が返事した時、2つのメカは激しい勢いでその場を去っていった。
「司令官、本当に大丈夫なんですか?」
2つのメカの通っていった後を眺めながら平山は石橋に向かって話しかける。
「何がだ?」
「子供たちにこんなことを任せて……」
「平山君、彼らも立派な勇者なんだ。勇者を信じるんだ」
「はぁ……」
平山は石橋の言葉を聞いても今一つ信じきれずに浮かない顔をしてしまう。
「それに、いざという時は私がすべて責任を持つ!」
(だから余計に心配なんだけど……)
石橋の「責任を持つ」という言葉に平山は余計心配になってしまった。
「ん? 何か言ったかね?」
「いえ、別に……」
ここは明日ヶ丘市内のとある町外れ。そこは何もないただの原っぱのようであり、見渡すと遠くの方に家や商店街がまばらに見える。そんな場所にに2つのメカは到着し、その中から空人達が出てきた。
「さてと、ここまで来たはいいがいったいどこをどうやって探せって言うんだ?」
誠也があたりを見回す。その目に映るのは何の変哲も無い平穏な光景だった。
「そうぼやくな。それらしきやつを探せばいいんだから」
「どうやって探すんですか?」
「そうだな、俺と誠也はヴァリアントで空から探す。空人と晴香はファイナルと一緒に陸から探してくれ」
「わかりました」
空人と晴香が瞬治の言葉に返事をして再びファイナルに乗り込む。
「ほら行くぞ、誠也」
「わかった、わかったからそんなに押すなって」
誠也が瞬治に押されながらもヴァリアントに乗り込む。こうして、『地球を守りし勇者』の探索が始まった。
しかし、地球を守りし勇者は思ったより早く見つかることとなった。
「おい、瞬治」
「何だ?」
「あれって勇者じゃないのか?」
そういって誠也は前方に見える『何か』を指差す。
「……あの石像がか?」
その『何か』とは獅子の形をかたどった石像のことであった。その石像がかたどっている獅子は限りなく本物に相似しており、今にも動き出して激しく咆哮しそうな姿をしていた。
「だってよ、あの石像は獅子をかたどっているじゃないか。地球を守りし勇者も確か同じだったろ?」
「とにかく、行ってみて確認するしかないようだな」
そういって瞬治がレバーを倒すと、ヴァリアントは旋回をしてその場所へと向かっていった。
ほぼ同じ頃、ファイナルに乗っていた空人達も勇者の探索を続けていた。
「ん?」
空人と晴香が車の窓から外を眺めて探索をしていたその時、晴香が『何か』を発見する。
「ねえ、空人。あの石像って……」
「石像?」
空人が晴香の指差すものを眺める。それは瞬治たちが見つけたものと全く同じ獅子をかたどった石像であった。
「もしかして、あれが勇者さんなのかな?」
「う〜ん……もっと近くで見てみないとよく分かんないや。ファイナル、あそこに言ってみよう」
『わかった』
ファイナルは返事をするとUターンをして石像のある位置へと向かっていった。
そしてその石像のある林の中。その林は人工に作られたものではなく、今は少なくなった自然の林であり、どこか神聖な場所のような感じもしてくる。そんな林の入口近くにある石像の前に空人達は再び集合していた。
「これが勇者なのか?」
「多分、そうだと思うんだけど……」
全員がその石像を見上げる。それは空人達よりもかなり大きなものだった。
「それで、どうやって封印を解くんですか?」
「問題はそれだな……勇者の碑文には封印の解き方は書いてなかったって言うしな……」
瞬治が腕を組んで少し悩むように考える。空人と晴香も封印を解く方法を一生懸命に考えていると、
「だったら俺にまかせろって」
誠也が前に出てきて石像の前に立つ。その顔は自信たっぷりというような表情になっていた。
「…………?」
「目覚めろ! 地球を守りし勇者よ! 目覚めて俺達と戦え! 俺達と一緒に地球を守るんだ!」
誠也が大声でどこかで聞いたようなセリフを思いきり叫ぶ。それを聞いた瞬治は思わず激しくズッコケてしまった。空人と晴香はあまりにも大きな声のため、思わず必死に耳をふさいでいた。
「そ、それは違う……」
瞬治は体勢を立て直しながらも誠也にツッコミをいれる。その場は誠也の叫びによって、一瞬ギャグマンガのように化してしまった。
「これだったらいくらなんでも目覚めるだろ」
誠也が自信をもってしばらくその石像を眺める。
「……………………」
しかし、しばらく待っていても石像には何も変化は見られなかった。
「……おい」
「どうやら、目覚めさせかたが違うみたいだな」
瞬治が笑いをこらえながら誠也の肩を軽く叩く。と、その時、
ズドォォォォン!!
「うわっ!?」
空人達の後方で激しい爆発が起こった。いきなりの事だったので空人達は思わずパニックに陥ってしまう。
「いったい何だ!?」
「! あれをみろ!」
そういって瞬治が空の方を指差す。そこには巨大な鳥の姿をした魔物がいた。
「なんでここに……?」
「……そうか! あいつはこの勇者を狙ってきたんだ!」
「何!?」
全員が瞬治の言葉に驚いていたその隙に、魔物は再び石像を狙ってくちばしに力をためて攻撃の体勢を取る。
「また来るぞ!」
「くそ!」
それを見た誠也が何を思ったのか、急いで石像に向かって走り出し、石像の前で魔物に向かって構えを取る。
「誠也さん!」
「危ないぞ、誠也!」
「おい、まだ眠っている勇者! お前はこの光景を見て何とも思わないのかよ!? お前が守らなきゃいけない地球がやばいんだぞ!」
石像に向かって必死に叫ぶ誠也。その次の瞬間、無情にも魔物は石像及び誠也に向かって口から火の玉を放つ!
「目覚めろよ! 地球を守る勇者!!」
ドォォォォォォォン!!
誠也が思い切り叫んだその時、誠也と石像に火の玉が直撃して激しい爆発を起こした。
「誠也さん!!」
「いやああーっ!」
「誠也ー!!」
空人達が激しく絶叫する。その場はさっきと一転してまるで戦闘地のように化していた。
「嘘だろ……お前がそんな簡単にくたばるはずないだろ!?」
瞬治が絶望したような顔で巻き起こった煙に向かって大声で誠也に呼びかける。すると、
「そう、そのとおりだぜ!」
煙の中から誠也のいつもと変わらない、平然とした返事が聞こえてきた。
「え?」
全員がその声に一瞬驚く。煙が晴れて視界がはっきりしてくるとそこには獅子の顔を頭に持つロボットに守られている誠也の姿があった。
「誠也さん!」
「何とか助かったぜ。こいつが助けてくれたんだ……って、こいつ誰だ?」
誠也が変にとぼけるので全員が拍子抜けしてしまう。
「だ、誰だって……」
「おいおい、「誰だ?」って言うのはひどいじゃないか。お前が俺をおこしてくれたんだろ?」
誠也を抱えているロボットが誠也に向かってやや怒り気味にいう。
「ということは……」
「そう、俺はこの星を守りし勇者、『グランドレオン』だ。よろしくな」
「あ、ああ……俺は剣持誠也だ。よろしくな。……って、なんでロボットなんだ? 昔からいる勇者なら普通は……」
「俺はもともと精神体だから体は持っていない。だけど俺を目覚めさせた奴の『思い』によって俺はその体を作ることができる」
「なるほど。それで誠也、いや、俺達が考える『勇者=ロボット』の考えからロボットの体を手に入れたんだな」
瞬治がグランドレオンの説明を聞いて納得する。
「ま、そういうことだ」
「キイィィィィィィィ!!」
その時、自分を無視されて怒っているかのように魔物が金切り声をあげる。
「おっと、ゆっくり話してる場合じゃないな。グランドレオン! あの地球外知生体をやっつけるんだ!」
「『地球外知生体』っていうのはあの鳥のような奴のことだな?」
グランドレオンが魔物を指差して確認する。
「そう、あいつらがお前の守る地球をめちゃくちゃにしようとしているんだ!」
「よし、俺にまかせろ!」
そういってグランドレオンが誠也をおろし、魔物に走って勢いよく向かっていく。
「行くよ、ファイナル!」
「ああ!」
空人の呼びかけにファイナルが返事をすると変形してロボットの姿になる。
「ファイナル・ブレイブ!!」
空人が叫ぶ。すると、ファイナルの体が今までよりも強く輝きはじめる。
「セイバードラゴン!!」
ファイナルが空に向かってそう叫ぶと胸の飾りから1本の光が飛び出す。その光の先から竜の姿をしたメカが姿を現わす。そのメカ『セイバードラゴン』とファイナルの合体が始まる!
セイバードラゴンの前足の上腕部分のみが上に回転する。前足の前についている爪が下にさがり、後ろについている爪が上に折りたたまれる。そして前足の下腕部分が伸び、前足全体が横に回転して腕を形成する。
次にセイバードラゴンの膝の部分が前に倒れる。その形は足をさかさまにしたようだ。そして今まで腰の真横についていた足が移動して腰の下へ移動する。腕の時と同じように前についている爪が下にさがり、後ろについている爪が上に折りたたまれる。足を逆さにしたようなすねの部分が縦に回転し、下半身全体が横に半回転して足を形成する。
背中の翼が起き上がるとそこには一つのくぼみがあった。
「とうっ!」
ファイナルが飛び上がると車へと変形し、そのくぼみと結合する。そして翼が元に戻ると両腕から手が現れ、背中にあったキャノン砲が前に回転して砲口が正面を向く。
最後に竜の顔が首から分離し、胸と結合する。そして首が後ろに倒れると機体から顔が出現する。
「火焔合体!!」
ファイナルが叫ぶと額に竜の翼のような飾りが出現する。
「ファイナルセイバスター!!!」
ファイナルセイバスターが両腕を振り上げ、気合いを入れるように腕を振り下ろして構えのポーズを取る。
「俺達も行くぞ!」
「了解!」
同じようにヴァリアントに乗り込んだ瞬治の呼びかけにヴァリアントが返事をすると変形してロボットの姿になる。
「ドラゴンバーン!!」
ファイナルセイバスターが構えると胸の竜が口を開け、口から炎を放つ。その炎は魔物に向かって真っ直ぐ飛んでいった。
「何!?」
ドラゴンバーンが魔物に当たろうとした瞬間、魔物は簡単に身を翻して攻撃をかわし、地上を滑空する。
「通すか!」
だが、運悪くその進行方向にはグランドレオンが待ち構えていた。そして、
「レオンクロー!!」
グランドレオンが魔物に向かって構えると腕に収納されていた爪(クロー)が展開し、グランドレオンの手の甲に装着される。そしてそのクローで魔物に向かって引き裂くように切り付けていった。
「キイィ!」
その攻撃を受けた魔物はよけようとしたが完全によけきれず、翼に傷を負ってふらふらと地上に落ちていく。そこにはすでにサンダーエッジを発生させて待機していたヴァリアントがいた。
「ナイスアシスト、グランドレオン!」
瞬治がグランドレオンに向かってサムズアップをする。
「VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)
「サンダーエッジ!!」
ヴァリアントがその剣を魔物に向かって振ると雷の刃が魔物に向かってものすごい勢いで飛んでいき、魔物に電撃を食らわせる。
「よし!」
電撃を受けて苦しんでいる姿を見て瞬治がガッツポーズをとる。
「キイィィィィィィィィ!!」
勇者達の攻撃を一方に受けていた魔物がやけを起こし、グランドレオンに向かってやけくそ気味に突進していく。
「俺に立ち向かおうなんて、いい度胸してんな」
グランドレオンが魔物をあざけるように言う。
「だけどな、その度胸は別に使った方が得だったな。いくぞ!」
そして何を思ったのか、魔物に向かって走っていった。
「トライアングルフィールド!!!」
魔物とグランドレオンがぶつかる瞬間にグランドレオンはジャンプして魔物の頭上に来る。そして、手からバリアを発生させて魔物をそのバリアの中に閉じ込めた。
「キ、キイィ!」
魔物がバリアの中で激しくもがくがまったく身動きする事ができない状態となってしまっていた。
「今だ! 今のうちにこの地球外知生体を倒すんだ!」
グランドレオンが魔物がバリアから逃れられないように抑えながらファイナルセイバスターとヴァリアントに向かって言う。
「わかった!」
「了解!」
二人がバリアによって閉じ込められてもがいている魔物に向かって構える。
「ファイナルブレード!!」
ファイナルセイバスターが腰についていた剣の柄をつかんで剣を抜き、魔物に向かって構えると刃が炎に包まれる。
「ヴァリアントサンダー!!!」
それと同時にヴァリアントが腕を振り上げ、魔物に向かって手を突き出すとものすごい勢いでヴァリアントの手から雷が魔物に向かって飛んでいく。
ズドオォォォォォォォォン!!
雷撃が魔物とぶつかった瞬間、激しく大爆発が起こる。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
すかさずファイナルセイバスターが激しく咆哮しながら魔物に向かって走り出す。
「ドラゴンスラッシャー!!!」
ファイナルセイバスターが魔物の手前で飛び上がり、はるか上空から炎に包まれた剣で魔物を一刀両断する!
「キ・・・キィィィィィィィィ!!」
ドオォォォォォォォォン!!
しばらく魔物はそのままの状態でいたが、やがてそのダメージに耐え切れずに大爆発を起こす。
「I wish you go to the heaven」(お前が天国に行くことを願っておいてやる)
「やったあ!」
瞬治は決めゼリフを言い、空人は喜んでいた。
「俺を甘く見るな。俺はこの星を守るために生きてるんだからな」
グランドレオンも瞬治に負けじという感じで決めゼリフを言う。
「よくやったな、グランドレオン」
「ありがとよ、主」
グランドレオンが誠也に向かって礼を言う。
「あ、主ぃ?」
誠也がグランドレオンの発した言葉に少し驚く。
「そうだ。俺を封印からといたお前は立派な主だ。これからもよろしくな」
「……わかった。よろしくな!」
そういってグランドレオンに向かってサムズアップをして笑顔を見せる。
「よかったですね、誠也さん!」
「おうよ!」
同じように空人達にむかっても笑顔を見せる。
HBCフォースオーダールーム。そこに空人達をのせたファイナルとヴァリアントが獅子の姿をしたメカを連れて戻ってきた。
「おお、戻ってきたか」
(よかった……無事に戻ってきてくれて……)
平山が心の中でほっとする。それほど気が気でならなかったのだろう。
「それで、『地球を守りし勇者』は見つかったのか?」
「そこにいるぜ」
そういって誠也が後ろにある獅子の姿をしたメカを指差す。
「何だ? あのメカは?」
「だから、あれが勇者なんだよ」
「何だと!?」
石橋が誠也の言葉に思い切り驚く。
「あ、あれが勇者だというのか?」
「失礼な奴だな。俺はれっきとした勇者だ」
グランドレオンが石橋にむかって話す。
「訳を話すと少し長くなるんだけどな……」
そういって誠也が石橋に訳を話しはじめる。
誠也がすべての説明を終えると石橋が腕を組んで少し沈黙していた。
「う〜む……あれが勇者だというのなら納得するしかないな、平山君」
「え? あ、はい……」
そして口を開いたかと思うと急に平山に話をふるので平山が少し戸惑ってしまう。
「とりあえず、我々がその勇者達を調べることにしよう。ご苦労だった」
「本当に大変だったな」
瞬治がため息をつきながら独り言のように言う。
「それじゃ、遅くなるといけないから僕達は帰ります」
「おお、そうか。私が送っていきたい所だが……平山君、君が空人君達を送ってくれたまえ」
「わ、私がですか?」
平山が石橋に指名されたので再び戸惑ってしまう。
「よろしくお願いします、平山さん」
晴香がそんな平山に向かって軽く礼をする。
(まいったなぁ……)
平山は頭を掻きながらそう思いながらもファイナル(車モード)に乗り込む。続いて空人達も乗り込み、その場を去っていった。
「さてと、俺も帰るか」
「瞬治、帰りにどっか寄ってかないか?」
瞬治がフォースオーダールームを出て行こうとしたその時、誠也が瞬治に近づいて肩を組む。
「わっ、やめろって……」
二人がそのままフォースオーダールームから出て行く。そして、フォースオーダールームには石橋だけが残っていた。
「さてと……」
石橋が全員出ていったのを確認すると携帯電話を取りだし、どこかへと電話をかける。
「私だ。あれの完成具合はどうだ? ……うん、そうか。もう少し早くすることはできないのか? ……できる限りだ。たのむぞ」
誰かと会話を終えるとすぐに電話を切り、ポケットにしまいこむ。
「急いでくれ……」
石橋がため息をつきながらそうつぶやく。そのつぶやきに石橋はどんな意味を込めたのか、今は誰にも理解する事はできないであろう。
「……………………」
同じ頃、瞬治が上にむかうエレベーターの壁によりかかって難しい顔をしていた。
「どうしたんだ? 腹でも痛いのか?」
「そんなんじゃない。ちょっとな……」
そういって再び黙り込む。
(……やっぱり、一番近くにいるからすでに気付いていてもおかしくないか)
誠也が瞬治のその姿を見て何か意味のありそうな事を思う。
そして二人は無言のままエレベーターが止まるのを待っていた。
第5話に続く
次回予告
石橋だ! 君達に次の任務を与えよう!
ますます激化していく地球外知生体の襲撃。今、互角以上に戦えるのはファイナルセイバスターだけなのだ。
しかし、地球外知生体も日々力をつけて襲撃してくる。このままだと戦力不足になるのは目に見えている。
そこで、我々HBCはついにヴァリアントが合体するためのサポートメカを作り上げた!
これで新たな戦力となるはずだ。
さあ、その力を見せるんだ、ヴァリアント!!
ファイナルセイバスターに負けないその力で地球外知生体の襲撃を食い止めるんだ!
次回、勇者伝説セイバスター『強大なる雷光』
頼んだぞ、セイバスター! 今は我々が地球を守るのだ!
説明 | ||
アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。 | ||
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