たそかれ
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 その日その時間、((部室|ここ))には僕といつものように部屋の隅の椅子にきっちりと姿勢を正したまま座り、本を読む彼女しかいなかった。

 時折頁を繰る音だけが響く静かな空間。

 

 あまりに静かすぎたから。

 魔が差したのかもしれない。

 

 

「貴女は、彼のことをどう思っているのですか?」

 

 こんなことをふいに聞いてしまうのだから。

 

 

「……」

 規則的に頁を手繰っていた手が、一瞬、止まった。

 

「観察対象」

 しばしの沈黙の後に返ってきた言葉はいつもと同じ。

 無機質で無感情。

 

「いえ、僕は役割に応じた返答を求めているのではなく……個人的な物を聞いているのですが」

 

「…………」

 

 彼女はいつもの無表情のまま、こちらを向いた。

 まっすぐに見つめてくる瞳には感情が伺えない。

 

「……あなたこそ、彼についてどう思っている?」

 

 静かに開いた唇から漏れた言葉は返答ではなく疑問の投げ返し。

 

 

「…………僕は……」

 

 答えを聞く事も無く、彼女はまた手元の本に目を落とした。

 

 

「私たちは主役にはなれない」

 

「え?」

 

「この((物語|世界))の主役は涼宮ハルヒと彼。私たちは脇役にすぎない。

 もし、どちらかの役を求めても、そこに位置することはない」

 

「……分をわきまえろ、ということですか……?」

 

 

 それきり彼女は黙り込み、また規則的に頁を繰る音が始まる。

 

「……わかっては、いるんですけれど、ねえ」

 

 

 この世界を取るか、この想いを取るか。

 決まりきった事なのに、それでも胸が痛んで仕方が無いのは。

 

「脇役には脇役なりの悩みがありますね」

 

 静かに本を読み続ける彼女が、ゆっくりと、瞬きをした。

 

説明
友人のハルヒ本に寄稿した短文。古泉と長門の会話。
一応古キョンとの依頼でしたがどうとでもとれますね。
誰そ彼。逢う魔が時
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涼宮ハルヒの憂鬱

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