真・恋姫†無双〜天兵伝〜 第5話
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「今日は良い天気だ。 昼寝するにゃピッタリの、とても良い天気だ」

 

 

何気なく、一刀は呟いた。

 

木々の間から見える蒼空には天高く昇った太陽が顔を覗かせている。雲は見当たらない。

 

 

「こんなに晴れてんのに、俺の往く先はどうも・・・・曇りがちだ」

 

 

一刀は『良くない』表情を浮かべる。

 

墜落から10日以上が経過していた。しかし、友軍の救助は未だに来ないままであった。

 

 

「味方は来ず、来るのは妙なヤツばっか。変なチンピラ、それと―――――」

 

 

言葉を止めた一刀は、視線を隣に移す。

 

 

「妙なガキ」

 

「ガキじゃないです・・・・」

 

 

一刀の隣で頬を膨らます徐福。それを見た一刀は、少しだけ笑った。

 

 

「だったら、この状況をなんとかしてくれ」

 

「そ、それは・・・・・」

 

 

2人の眼前には、甲冑を着込んだ集団の姿があった。どうやらヘリの周辺10メートルをぐるりと囲んでいるようだ。

 

一刀はため息を吐いた。どうにも状況は良くない。

 

あの集団が賊なら、徐福がすぐにでも迎撃態勢に入るはずだ。なのに、彼女は短剣を抜くことはおろか、身動きすらとろうとしなかった。

 

 

「だったら教えてくれ。 あの連中は何者なんだ?」

 

「軍です。漢王朝の」

 

「・・・・軍?」

 

「はい。所々に劉表様の牙門旗が見えますので・・・・」

 

「リュウヒョウってのが誰かわかんねぇが、つまり『国軍』なんだな?」

 

「はい」

 

 

一刀は目を凝らした。

 

ボディアーマーはおろか、迷彩服すら着用していない。武器もライフルなどではなく、槍や刀剣などばかり。国軍の装備というには、どうも古風なものばかりだ。

 

 

「北郷殿、どうしますか?」

 

「『俺』の味方なのか、それとも敵なのか。その辺がハッキリしない以上はヘタに動けねぇよ」

 

 

相手方が先に動くまで、一刀と徐福は待つことにした。相手方も攻撃の意思があるわけでもなさそうだ。攻撃をするなら、包囲が完了した時点で仕掛けてきているはず。

 

やがて、一人の少女が数人の兵を引き連れて近づいてきた。桃色の髪、真珠のような白い肌。 こんな森の中では場違いに思えるような、お姫様のような美少女だ。

 

一刀は安全装置を解除したHK417を構え、即応態勢を整えた。

 

 

 

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「何か用か?」

 

 

すると、傍らの兵士が一刀の問いに応じた。

 

 

「我々は官軍だ。聞きたいことがあるのだが、この巨大なものはお主のか?」

 

「・・・・正式にゃアメリカ海兵隊のモンだが、現状では俺の管理下だ」

 

「つまりお主の物なのだな。 では、これが何なのか、なぜここにあるのか説明できるな?」

 

「こいつは『CH−53 スーパースタリオン』、米海兵隊の輸送ヘリだ。 輸送任務中に敵勢力の攻撃を受けてここに墜落、俺以外は全員戦死しましたとさ。おしまい」

 

「・・・・は?」

 

 

彼らの反応はどうもイマイチだった。何を言っているのか理解できていないようだ。

 

一刀は「ふむ」と少し考える。

 

 

「あー・・・・ちょいと聞くが、『黄金の三日月地帯』は知ってるか?」

 

「なんだそれは?」

 

「じゃあ、有志連合」

 

「知らぬ」

 

「アメリカ軍」

 

「知らん」

 

「AK-47」

 

「えー、けー?」

 

「IED」

 

「あ、あいーでー?」

 

 

 

一刀が活動していた国の国軍は、アメリカ軍を通じて10万丁以上のM16自動小銃や4000台以上のハンヴィー等を導入していたはずである。そもそも、警察組織でさえ自動小銃や携帯式ロケットランチャーなどを使用しており、準軍事組織と化している。

 

つまり、彼らが軍人を名乗った時点で『違い』が生じているのだ。おまけにアメリカ軍を知らないなんて明らかにおかしい。

 

 

一刀は構えを解き、銃口を地面に向けた。刹那、言いようもない感情が一刀の全身を駆け抜ける。全身が脱力していく。だが、それでもHK417はしっかりと持つことができた。

 

そんな一刀に、徐福は心配そうな表情を浮かべる。

 

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「・・・・映画みてぇな展開になってきたよ。俺は伊庭三尉じゃねぇってのに」

 

「あの、なにを仰っているのか・・・・」

 

 

一刀は大きく深呼吸をして気持ちを整える。そして、ニカッと笑みを浮かべて徐福の頭を優しく撫でた。

 

 

「あぅ」

 

「心配してくれてありがとうな」

 

「そっ、そんな・・・・っ!」

 

 

数回ほど撫でると、外野になりつつあった兵士達に視線を戻した。

 

 

「で、アンタらはここに何しに来たんだ?」

 

「うむ。 この森に『天の御使い』が降臨なさったという情報があった。我々はこちらの劉表様の命を受け、御使い殿を探しに来たのだ」

 

「リュウ、ヒョウさま・・・・ねぇ」

 

 

一刀は、兵士の傍らに立つ少女に視線を移した。目が合った劉表はビクリと身を一瞬だけ硬直させ、ビクビクと怯えたような表情で一刀にペコリと挨拶をした。それに合わせて、周りの兵士が数歩下がった。どうやら、彼女がこの集団の頂点に立つ人物のようだ。

 

 

「あ、あの、劉表と申します・・・・・。字は景升です・・・・・。荊州の刺史を務めさせていただいております・・・・」

 

「俺は北郷一刀。字は無い。徐福、お前も名乗ってやれ」

 

「あ、はい。 我が名は徐福、字は元直です。 水鏡女学院で学問に励んでおります」

 

 

同性だから安心感を得る事ができたのだろうか、はたまた年が近いように見えたからか。徐福を見て、劉表は初めて柔らかな笑みを浮かべた。

 

 

「で、劉表サマ。『天の御使い』様とやらを見つけてどうするんですかねえ?」

 

「は、はい・・・・。 できれば・・・・その・・・・我が荊州に迎え入れたい所存でして・・・・・」

 

「我が荊州?」

 

 

少女の言葉に、一刀の眉がピクリと動いた。すると、徐福は一刀に刺史についての説明をしてくれた。

 

 

「劉表様は荊州の長官を務めておられるのです。州の長官、これを刺史と呼ぶんですよ」

 

「へぇ、そうなのか」

 

「は、はい・・・・」

 

 

ポッと顔を赤らめる劉表。照れているのだろうか。

 

『気弱な雰囲気を漂わすお姫様』という役が似合う子だ。

 

 

 

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「あの・・・・北郷、様・・・・」

 

「?」

 

「貴方様は・・・・『天の御使い』様ですか・・・・?」

 

 

天の御使い。その言葉を聞いた時こそ笑っていたが、今は少し違う。解釈次第では、『天の御使い』を名乗ることはできる。

 

どう返事すべきか。

 

ここはおそらく自分の知る世界ではない。ならば、ある程度なら情報を露見しても大丈夫だろう。

 

 

「俺は日本国陸上自衛隊、特殊戦闘技術分隊の北郷一刀 三等陸曹だ。御使いを名乗ったことはない。だが、俺は『この世界の人間じゃない』可能性がある。俺が言えるのはそれだけだ」

 

「え・・・・では貴方様は・・・・」

 

「俺が『天の御使い』かどうかはよくわからん。その辺はアンタらが決めりゃいい。 だが――――」

 

「わわっ!?」

 

「―――――俺はコイツの命令無しにゃ動くつもりはねぇ」

 

 

一刀はニヤリと笑みを浮かべて徐福の頭に手を置く。

 

 

「徐福は愛国者でなァ。 俺が協力するって約束したんだよ」

 

「ちょ、ちょっと北郷殿!?」

 

「さぁ、どうする?」

 

 

徐福はただただ困惑していた。

 

一刀が何をしたいのか、皆目見当がつかない。まったく理解できない。

 

相手方も徐福同様に困惑していた。この男は何を言っているのか。どうすべきなのか。兵士たちは顔を合わせ、困った表情を見せ合っている。

 

そんな中、劉表だけは一刀をじっと見据えていた。少し怯えた顔で。

 

 

「どうする? 劉表サマ」

 

「わ、私は・・・・」

 

 

ゴクリと喉を鳴らし、震えた声で劉表は自分の意思を伝えた。

 

 

「わ、私は・・・・貴方様を・・・・御使い様だと信じます・・・・」

 

「根拠は?」

 

「えっと・・・・その・・・・そ、その服装とか・・・・」

 

「ほう」

 

「その服は・・・・変わった模様です・・・・。わ、私の知る限り・・・・このような模様は・・・・人の手では作り上げることができません・・・・。だ、だから・・・・」

 

 

気弱な声で、ボソボソと喋る劉表。

 

だが、言っていることは中々おもしろい。

 

 

「てっきり銃のことを言われると思ってたが・・・・なるほどねぇ。 まぁ色々気になるところはあるが」

 

「ご、ごめんなさい・・・・」

 

 

劉表の声が震えだす。

 

なんて気が弱い女の子なんだ。 ちょっと怒鳴れば、すぐにでも号泣するだろう。

 

 

「それで? 俺を連れて行くのか??」

 

「は、はい・・・・」

 

「言っただろ。俺は徐福の命令なしにゃ動くつもりはない」

 

 

すると、劉表は徐福の方へ視線を移した。

 

徐福にとっては、自分の住まう土地の最高権力者である劉表を前に、緊張せずにはいられなかった。

 

 

「徐福様・・・・お願いがございます・・・・」

 

「は、はひっ!?」

 

「私どもに・・・・その・・・・ご助力願えませんでしょうか・・・・?」

 

「え、ええっ??」

 

「荊州の現状はご存知かと思います・・・・。今の荊州には・・・・知に富む者も・・・・武に秀でる者も少ないのです・・・・」

 

「それはつまり、私と北郷殿を仕官させたい。ということですか!?」

 

 

コクリと、劉表は深く頷いた。

 

願ってもない出世話だった。あとは自分の意思次第。応じるか否かでこの話は決着がつくだろう。

 

ふと、一刀の方へ視線を移した。

 

すると、一刀と視線が重なったその時、彼は一瞬だけ目配せをした。

 

 

まさか、一刀は狙っているのか?

 

荊州が欲しているのは、『天の御使い』だ。つまり北郷一刀、彼だけである。

 

だが、一刀は自分自身を『餌』にした。

 

徐福が志す『乱世の終結』を達成させるために。

 

 

だとすれば・・・・。

 

 

劉表からすれば、徐福は天の御使いを得るための『備品』にすぎないだろう。

 

 

「(だが、関係ない。)」

 

 

自分には、北郷一刀がついている。

 

彼がいる限り、動ける。

 

 

「わかりました」

 

「ありがとうございます・・・・!」

 

 

劉表は喜んだ。周りの兵士の表情も、どこか安堵しているように見えた。

 

 

 

 

 

そんななかで、一刀はニヤリと笑みを浮かべていた。

 

 

 

この日より、徐福は劉表に仕えることとなった。一刀も『天の御使い』として荊州に身を寄せることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
お久しぶりです。
受験終わった!

今回けっこう端折ってます。
4話分を1話にまとめたんで、変な所もあると思います。
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コメント
皆様コメントありがとうございました。 これからものんびりと書いていくつもりなので、暇つぶし程度にでも見ていただければ幸いに思います。(マーチ)
受験乙です! これはもうストレス発散に書きまくるしかないですね?(ぇw そして劉表たんなんという小動物系w (よーぜふ)
劉表登場、そして徐福と一刀をゲット!さて劉表といえばいくつかの問題をかかえていますが、それが二人にどのよう影響を与えるか、次回を楽しみにしています。(睦月 ひとし)
待ってました!!先生の作品は自分にとっても大変な励みになります!これからも頑張っていきましょう!(海平?)
復帰おめでとう。次回も期待してます(TAPEt)
受験お疲れ様です。これからは執筆活動に専念して下さいww楽しみにしています。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
受験乙カルロス。(patishin)
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